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救えよ美しい星の命を

地球戦隊ファイブマン』感想・第7-8話

◆第7話「45mの小学生」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 掟破りのいきなり巨大生物・サイラギンが出現し、地球は大パニック。
 マグマベースから発進するファイブメカだがそれはドンゴロスの罠で、スペース地雷に吹っ飛ばされたCメカが操縦不能に陥ってしまう。そこへ戦闘機が空襲を仕掛ける巧妙な作戦で、冒頭からのメカ発進が仇となり、あれよあれよと危機に陥るファイブマンの図は、パターン崩しでなかなか面白い展開。
 BメカがCメカを回収、Aメカが変形して地上でトレーラーモードに合体するのもギミックを活かしたアイデアで、なんとか砲火を切り抜けるファイブマンだが、ファイブロボは起動不能。更には逃走中にメカから投げ出された数美がサイラギンに襲われ、何故か巨大な鉛筆を投げつけてくるサイが、超シュール。
 そして、巨大な鉛筆が地面に落下して砕け散る映像が、地味に結構な迫力。
 数美を助けに向かった黒がバイクで攪乱すると、巨大鉛筆を踏みつけて怪我をしたサイは座り込んで泣き出し、数美はその様子から、サイが巨大宇宙人の子供に違いない、と判断。
 便利な文矢がサイの叫びを通訳すると、学校をサボっていたらドンゴロスにスカウトされた宇宙の悪ガキであったと判明し……地球の子供が悪の組織に利用されるパターンの変奏曲になっているのは、洒落と捻りが利いています。
 教師根性を出した数美が学校が嫌になった理由を聞くと算数が苦手であると判明し、規格こそ巨大宇宙人なものの、その悩みは地球の子供と等身大。
 「地球の子供だろうと、宇宙の子供だろうと、算数のわからない子を放っておけないわ」
 数美は教師を買って出て巨大宇宙人との交流が始まり、勉強しないで学校をサボっている悪い子は、悪い大人に騙されてしまうぞ、という寓意になっているわけですが、それを教育で正す、のも巧いまとまり。……現実にはデリケートな問題も孕みますが、ここでは、サイは本当は学校が好き、と言及があるのが、一つの目配りにはなっています。
 「この、馬鹿者めが!」
 その頃、打倒ファイブマンに成功して特別ボーナスでがっぽがっぽや、と有頂天で酒を飲むドンゴロスに思い切り突き刺さる艦長のヤクザキック
 サイラギンの戦線離脱を叱責されたドンゴロスは慌てて現場へ向かうと、戦闘員に輿で担がれながらバズーカ砲を放ち、いきなりゴルリン6号を召喚。サイラギンを強制的に取り込んで巨大銀河闘士にしてしまおうとするが、間一髪でファイブトレーラーの修理が間に合い、ファイブロボvsゴルリン6号、のまさかすぎるマッチアップ。
 70年代や90年代には、サブライターとして数々の怪作を送り出している曽田先生ですが、フォーマットを守りつつのセオリー崩しの中で、魔球投手としての顔がチラリと覗きます。
 ファイブロボに阻まれ、サイラギンの巨大闘士化に失敗したドンゴロスは戦闘機部隊を出撃させ、サイを守りながらすくっと立つファイブロボ。
 「サイラギン、さあ、算数の授業の始まりよ! 命がけでやる気になれば、やれない事ってないわ!」
 これまで、ガチガチの武闘派である妹レミの陰に隠れ、なんとなく落ち着きのある長女ポジションの雰囲気を出していた数美ですが……やはり、星川家の娘でありました(笑)
 「さあ数えるのよ、わかったわね!」
 ファイブロボは迫り来る戦闘機を次々と撃墜し、戦場のど真ん中で、散った命の数を数えさせられるサイ(笑)
 「さあ、4機もやっつけたわ。7+4は?」
 死中に活ありメディテーションの心意気で脳細胞がトップギアに入ったサイラギンは、なんとか11を正解。
 「敵ははじめ12機攻めてきたわ。12-11、残りは?」


 問1:シンゴくんの愛銃は、コルト・パイソン357マグナムです。今、シリンダーには6発の弾丸が入っています。これを使って、襲い来る12人の特殊部隊を処理する方法を答えなさい。
 (予備の銃弾は所持しておらず、拳銃は特別な改造を施されていないものとする)

 「……何をもたもたしてるの!? やられてしまうわよ!」
 地獄に墜ちても忘れない、実践的すぎる算数の授業で命を賭けて正解に辿り着いたサイにも助けられ(ちゃんと手助けをするのが実に手堅い)、最後の一機を撃墜したファイブロボは、
 「悪の計算通りには、いかないわ」
 と初のソロ台詞で、残るゴルリン6号を、一刀両断するのであった。
 ドンゴロスはビリオンに鼻毛を引っ張られ、数美から100点を貰ったサイラギンは無事に母星へと帰り、あまりにも便利な文矢の通訳能力(まあ、いずれ銀河に打って出る時の為に、資料から学んだと理屈は通りますが)・銀河共通規格のランドセル・サイの星はスルーしたのゾーン?! など、荒っぽいツッコミどころは山ほどあるものの、パターン崩しの変化球から、悪ガキプロットの反転、教師ヒーローの志と狂気といった工夫と飛躍がインパクトをともなって絡み合い、見応えのある一編でした。
 次回――激しく漂う藤井先生の気配ですが……

◆第8話「輝け!一粒の命」◆ (監督:長石多可男 脚本:藤井邦夫)
 「俺にはあの助けを求める必死な声が、罠だとは思えないんだ」
 ゾーンの捕虜、クリスタル星人のサーヤからのテレパシー通信をキャッチした学は、最後の力でテレポーテーションを敢行するというサーヤから助けを求められ……今季もブレない藤井先生でした!!
 藤井邦夫も、個人的にここ数年で大きく印象の好転した脚本家でありますが、とにかく得意技を繰り出し続けるスタイル(時代劇も書いている方なので、その流れもあるのかと思いますが)は、ここまで来ると痺れます(笑)
 ゾーンに滅ぼされたクリスタル星最後の命を守りたい、と弟妹の反対を押し切って単身で指定されたポイントに向かった学はサーヤを無事に発見するが、その背後には銀河闘士随一のハンター・オオカミルギンが迫っていた。
 捕虜として、生体コンピュータの部品にされていたというサーヤの壮絶な過去に怒りを燃やす学だが、サーヤのデータを8㎜CD(!)で学習した狼ルギン、そして、ニート生活を脱したビリオンがその前に立ちはだかり、今回は、ビリオンの攻撃が、当たった!
 ビリオンの利き腕が左に変更されているような気がするのですが、つまり第3話ではまだ本気出していなかっただけなの?!
 「ここまでだ」
 「やめて! やめてください!」
 「邪魔をするな! 廃棄物め!」
 ゾーンによる生命の尊厳の剥奪が容赦なく描かれ、弟妹が駆け付けて窮地を脱する学だが、サーヤの生命力は既に限界を迎えようとしていた。
 「私は、宇宙捕虜のまま死にたくなかった。だから、最後の力を振り絞って、脱出してきたんです。私は、学の優しさのおかげで、自由なクリスタル星人として……死ねる」
 前作『ターボレンジャー』では、いまいち曽田さんと呼吸が合っていなくて心配だったのですが、ゾーンの非道さの強調と、それに抗う命の輝きの尊さを描いて作品世界の奥行きを広げるのは、さすがの筆致。
 「私に残っている力は、もう、このクリスタルパワーだけなのです」
 サーヤのこぼした涙は一粒のクリスタルへと形を変える。
 「サーヤ諦めるな! 生き抜いてクリスタル星を復活させるんだよ!」
 「……クリスタル星を復活させる?」
 「そうよ。ゾーンの犠牲になった、多くのクリスタル星人のために」
 「……クリスタル星人の為に!」
 星川兄妹に励まされ、弱々しくも、うっすらと笑みを浮かべるサーヤ
 「出来るよサーヤ。希望を捨てるな」
 「……学」
 太陽の光を鱗状に反射して、美しく輝く海の揺らめきから、その陽光を覆い隠して崖上にシルエットで立つオオカミルギンへと繋がるのが長石監督らしい情景美の取り込みで冴え渡り、迫り来るオオカミに対して、レミのカウンターパンチが炸裂。
 「ふっふははは。愚か者め!」
 爛々と目を剥く表情がいい感じになってきたビリオンが戦闘員を引き連れて現れると主題歌バトルへと突入し、ロマンス逃避行をプロットの軸に据えつつ、善と悪の対比からヒーローフィクションのど真ん中へと収束するのが、80年代戦隊作劇の一つの精髄といえる、匠の業前。
 もちろん藤井脚本なので、狼ルギンによって窮地に陥った赤を救う為にサーヤが最後の力でクリスタルパワー! クリスタルサーヤに絡まれる狼ルギンにブラザーアタックが放たれ、ゴルリン7号によって生み出された巨大オオカミは、
 「サーヤとクリスタル星を」
 「「「「「守りたまえ!」」」」」
 と超次元ソードで両断されるが力を使い果たしたサーヤは消滅してしまい、学は残されたクリスタルを空へ――遙かなる宇宙へと向けてかざす。
 「サーヤ……クリスタル星に帰り、クリスタル星を甦らせる種になれ」
 光を放ったクリスタルが空の彼方へ飛び去ると、サーヤの姿が浮かんで言葉が響き、なんとなくメルヘンに幕を閉じて、つづく。
 次回予告からラストシーンまで噎せ返るような濃縮藤井脚本成分でしたが、十八番のロマンスプロットを軸にしつつ、他者の命を踏みにじるゾーンの侵略行為の非道さ、それに立ち向かう星川兄妹の命を守る意思、荒廃した銀河を甦らせるという、復讐ばかりではない強い目的意識を描いて物語全体を巧みに掘り下げ、さすがのお手並みでした。
 次回――ぎんぎんがぎーん!?