東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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愛のためにできること

仮面ライダーアギト』感想・第19-20話

(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第19話「no fear no bone」◆ (監督:石田秀範 脚本:井上敏樹
 「正直、俺は失望している。天才・小沢澄子は、威勢がいいだけ。英雄・氷川誠は、図体がでかいだけの無骨漢」
 「無骨?!」
 氷川くん、基本的には穏健派(というか、怒りの感情を脳が把握するまでに時間がかかっている内に忘れてしまう感じ)みたいに描かれているのに、どうしてピンポイントで沸点が低いんですか?!
 「そうですよね。こういう細かい仕事は無理ですよね。氷川さん、無骨そうだし」
 「……無骨?!」
 だから、なんでそこでムキになるの?!
 香川に居た頃、彼女になんか言われたの?!
 司管理官の主導により、正面突撃しか能の無いG3ユニットの再編成案が進行する中、事件の真相に気付き、悩める北條は、司を告発。
 「後悔はしてない。……奴が殺したんだ。奴のせいでさおりは……」
 「それを、偏見というのではないですか。単に事実を、事実として重視する。あなたは、最後に自分の信条を裏切った」
 「そして君が、俺の信条を守ったというわけか」
 『クウガ』最終盤で描かれた、未確認生命体との戦いが終わっても、“争いのない平和な世界が訪れるわけではない”とフィクションから現実への回帰を更に押し進める形で、アンノウン事件に偽装した人間の犯罪が発生し、ヒーローフィクションの枠組みの中で人間の犯罪が発生するというよりも、ヒーローフィクションとクライムフィクションをその境界で交差させる実験的ともいえる作りになっているのですが、延々と北條と司のアップが繰り返されるやり取りは、さすがにもう少しどうにかならなかったものか。
 「しかし……俺が左利きになったのは、君をかばって、右腕に銃弾を受けた、後遺症のせいだ」
 「ええ……わかっています」
 「あの時……君を助けたのは、失敗だったな。…………いや、良かったとも。……素晴らしく優秀な刑事の命を、救ったんだからな」
 完全に、北條さん主役の刑事ドラマになっているのですが、『クウガ』直後の作品としても、第18-19話で突っ込んでくるのは前のめりに過ぎた内容だと思いますし、私利私欲に基づいて境界を侵犯した司が、ヒーローフィクションではなく、クライムフィクションの理屈で裁かれるしかないのは、どうにもこうにも消化不良。
 そして、クライムフィクションの側で裁くとなれば、どっぷりヒーローフィクション側の人間である氷川くんは身動き取れないまま不干渉を貫かざるを得なくなり、北條さんが幕引き役を務める事になるのも、ヒーロー・フィクションの中で描かれる「G3チーム解体の危機」が、道路の向こう側で解決に導かれてしまう居心地の悪さを覚えます。
 その頃、弱り切った涼は亜紀の部屋に辿り着くが、そこでは、間男が掃除機をかけていた! で、つづく。

◆第20話「裁くのは誰だ」◆ (監督:鈴村展弘 脚本:井上敏樹
 「ある意味でアンノウンよりも人間の方が怖いのかもしれない。裏があって表があって、更にまた裏がある」
 それはそれとして小沢さんは、G3ユニットの運用方法や、対アンノウン戦術について、真剣に考えた方がいいと思います!
 個人的な復讐に利用する為、重大事件の捜査活動全体を歪めた司管理官の所業は断じて許されるものではない一方、G3ユニットはG3ユニットで、作戦参謀完全不在の上、その問題点に無自覚なまま態度だけ大きいのが、大変困ります。
 そんな小沢が、さすがに暗い表情の北條を焼き肉に誘うも、敢えて偽悪的に振る舞う北條がそれを断るやり取りは良かったですが。
 「あなたは、なぜ俺を選んだ」
 「私が君を、選んだわけではありません。君が自らの手で、私の、使徒たる資格を得たのです。……此の世に出現した、最初のアギトを、殺した事によって」
 一方、今回も謎めいたやり取りの後、謎の青年から紋章の力を預けられた沢木は、亜紀に接触
 「おまえはまだ赤ん坊だ。だが、俺がおまえの時を早めた。おまえの力は、更に力強く、覚醒する。その力を、どう使うかは、おまえの自由だ」
 念動力を強化された黒衣の亜紀は次々と人間を殺害していき、外傷も無いのに内臓が致命的なダメージを受けている遺体は、真魚父の死因と酷似。被害者はいずれもアギト捕獲作戦に加わった機動隊員だと明らかになり……北條透の前に姿を見せる亜紀、が面白すぎます(笑)
 ギルスの復讐を目論んでいるらしき亜紀により、報復で命を狙われるだけで物語の面白さを3段階ぐらい引き上げる北條さんが絶体絶命のその時、3体のアンノウンが亜紀へと襲いかかり、駆け付けた翔一は亜紀と擦れ違うと、よくわからないままアギトに変身。
 剣を操る青ジャガーを倒すアギトだが、二刀流の赤ジャガーと杖を振り回す女ジャッカルに連係攻撃を受ける大ピンチとなり、2話続けて、ストーリーの軸線から離れたアギトがアンノウン処理係をやらされているだけなのはストレスの溜まるところですが、ヒーローの機能の一つに対して、露悪的な意図も感じます……そこからの脱却を志向する一方で、きゅぴーんの赴くままに人間(その人間の善悪には頓着しない)を守る翔一くんの存在と行動そのものが、メタ的なアイロニーになっているのは、今作の厄介なところ。
 一方、辿り着いた亜紀の部屋で気を失い、翔一に甲斐甲斐しく看病されていた涼の脳裏には謎の声が響き渡り……初期アギト(翔一くん)が自意識が薄いままアンノウンを処刑していたりG3に殴りかかっていたのは、この声が原因でしょうか。
 謎の声に突き動かされる涼の殺意は、榊家を訪れた真魚に向けられて……?! で、つづく。