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美しいあしたのために

高速戦隊ターボレンジャー』感想・第37-38話

◆第37話「カンフー謎少女」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 肘を左脇の下から離さぬ心構えでやや内角を狙い抉り込むように振り抜くべし!
 「随分変わったバトンの練習ね」
 近所の公園で殺人バトン投法の特訓に励んでいたはるなは警官……じゃなかった、拳法着姿の少女に声を掛けられ、金属製の鈍器で標的の頭をかち割る練習ですとは大きな声では言えません!
 「なんの為にこんな事やってるの? あなた、普通の高校生じゃないわね。なにか秘密を持っているの?」
 「秘密だなんて……いきなりそんなこと聞かれて、答える義務は無いとう思うけど」
 一目会ったその日から無性に気に入らない時もある、はるな軍曹は思いの外、攻撃的なリアクションを見せてバチバチと飛び散る火花。
 「じゃあ、腕尽くで聞くしかなさそうね」
 少女は少女で、私たちがわかり合えるのは拳だけ! と肉体言語による対話に移行し、戦意喪失するまで叩きのめしてから、静かなところでじっくりと友好的に話し合いをします!!
 はるなと少女が、力vsヤミマルばりの激しい肉弾戦に突入していた頃、ズルテンが自身の細胞を元に造り出したロボット生命体・ズルテンメタルタイプが街に出現。メタルズルテンは裏技ツーにより人々を奇怪な鋼鉄ロボ人間に変えてしまい……青ざめた肌でぎこちなく動く人々の映像が、凄く、《レスキューポリス》ぽい(笑)
 「ズルテン!」
 「なんだおまえお色直しでもしたのか!」
 「そういえばスマートになったようだな!」
 「違う……あいつズルテンじゃないぞ!」
 ヤミマルも(こいつにこれほどの科学力があったとは……)と驚くメタルズルテンですが、そろそろ、暴魔博士レーダの怨霊が乗り移っていたりするのかもしれません……暴魔百族のそれが、「科学」なのかはさておき。
 なお、おなら回の力との交流は無いも同然の扱いなのですが、まあズルテンだしな……で納得できるので、ズルテン強い。
 「ぬふふふ、鋼鉄ロボ人間は、体だけでなく心も失い、ただの機械になるのだ」
 メタルズルテンは、鋼鉄の肉体でボウガンもレーザーもGTソードさえも跳ね返し、普通に強い。
 更にズルテンと手を合わせると暴魔ラブラブ天驚拳を放ち、凄く強い。
 ストリートファイトを継続中のはるな軍曹は、銃器禁止のルールで徐々に追い詰められるが、そこに控え目に言って尻尾を巻いて逃げ出したらしい男衆が駆け付け(4人だと戦力ダウンなので、連絡の取れないはるなを探してやってきたと思われますが)、軍曹に迫る打撃を見て地面に落ちていたバトンを拾った炎力くん、振りかぶって思い切り投げたーーーーー!!
 ……さすがにそれは、どうかと思う。
 危うくファイヤー魔球で顎を砕かれるところだった少女が落としたロケットの中には、山口先生と一緒に写った写真が入っており、その正体は先生の妹・ミカと判明。
 「先生の妹が、なぜ私を襲ったりするの?」
 山口先生は突如として姿を消した光と小夜子、そして力たち5人の不自然な態度の数々に真剣に悩み教師としての自信を失っており、いきなりの香港はどうしようかと思ったのですが、高校生戦隊の秘匿性が起こすさざ波を、確かに担任からするとショック……と関係者視点で捉え直すのは山口先生の掘り下げにもなって、上手い流れ。
 当時の見せ方及び戦隊の作劇から、そこまで秘密に気を配っていたとは言いがたいのは難ですが、一応ここまで、山口先生の前では変身していなかった筈ですし。
 「生徒が心を開いてくれない先生なんて、もう先生とは言えないわ。わたし……先生をやっていく自身を失ったの」
 道場破りばりの妹の行動は姉を心配するゆえと収まり……まあそれで香港から日本までやってきて、殺人バトン投法の特訓を見せられたら、殴り合いも始まりますね!
 「いったいお姉ちゃんに隠して何をやってるの?!」
 (……ターボレンジャーの事は絶対に言えない……)
 (命がけで戦ってるなんて事がわかったら、先生はますます心配するだけだわ)
 気まずげに視線を彷徨わせる5人の背後に、バトン殺法の的がぶら下がっているのが、大変シュール。
 香港仕込みの地獄カンフーで絶対に口を割らせてやる、と宣戦布告を受けた5人だが、事の元凶の一人といえる妖精おじさんからの連絡を受けて市街へ戻ると、人間離れした怪力のロボ人間が大暴れの真っ最中。
 後を追ってきたミカの視線に変身を躊躇する5人だが、タイミング悪く姿を見せた山口先生がメカ首輪をはめられてしまい、間に合いこそしなかったものの、先生を助けようとダッシュするや5人が一切の躊躇をせずに変身するのは、気持ちの良い流れ。
 駆け寄ったミカとターボレンジャーはロボ山口に叩き伏せられ、メタルズルテンに猛攻を浴びせるミカだがその攻撃は全く通用せず、気力が足りない!
 「お嬢ちゃん、元気がいいな。にゃっ」
 ミカをかばった桃は二人まとめて高々と吹き飛ばされ、変身解除。
 思いあまったミカは、ダメージの残る軍曹から変身ブレスを強奪すると、その力で姉の復讐を遂げようとするが……
 「待って! それを使っちゃ駄目!!」
 スイッチを押すと全身に電流が走って爆発が起こり、えぐいセキュリティが付いていた(期待に応える太宰博士)。
 衝撃で吹き飛んだブレスを拾ってシーロンが現れると、一瞬だがミカの目にもその姿が映り、妖精を見られる人間しか変身できないし、世間体があるので大っぴらには語れないのだと秘密の理由がスムーズに説明され、仮にミカに妖精適応力が0だった場合、今頃、骨も残さず消し飛んでいたに違いありません。
 「私たちは、妖精の姿を見、声を聞いた時から戦士になったの。この世の美しいもの全てを守るために。この美しい世界、美しい人の心を」
 キリカ誕生編以降、流れ暴魔サイドに心情描写が寄っていましたが、最終クールを前に高速戦隊ターボレンジャーとは如何なるヒーローなのか、を再確認するのは実に手堅く、カンフー少女強襲のぶっ飛んだ冒頭からここに辿り着くのが、実に熟練の手並みです。
 一方、残された男4人は、ロボ山口を先頭としたズルテンコンビに大苦戦し、景気良く生活指導を受けていた。
 そこへ桃とミカが復帰すると、ロケットの中の写真を見たロボ山口の人の心が戻り、振り向きざまにゴッドハンド! メタルズルテンに渾身の一撃を叩き込むと自力で人間に戻り、生徒との絆はこれといって関わらずに姉妹愛オンリーで復活してしまったのは、正体キープの事情があったとはいえ、惜しかった部分。
 この一撃がきっかけとなり、メタルズルテンの弱点がヘソと見切ったターボレンジャーは、磨き抜いた殺人スポーツで集中攻撃を仕掛けるとコンビネーションGTクラッシュからVターボバズーカでビクトリー!
 すっかり前座扱いが板に付いてきたターボロボは、メタルズルテンの飛び道具に苦戦して今回も噛ませ犬扱いを危ぶまれるが、ターボカノンで反撃すると久々の気がする「高速剣だ!」で見事な逆転勝利を収めるのであった。
 先生の問題は、ミカが説得してくれて丸く収まり、香港への飛行機を見送るはるな達。
 ナレーション「一瞬でも、妖精シーロンを見ることが出来た若者が居たという事は、はるな達5人を、とても勇気づけた。はるな達と同じように、自然を愛し、人を愛し、青春を力一杯生きている、仲間が居ると、いう事なのだ」
 ヒーローの戦いは、決してヒーローだけの戦いではなく、その広がりの可能性を示すナレーションが綺麗に締めて、つづく。
 ……それにしても、第13話で藤井邦夫が放り込んだ山口先生→太宰博士を、曽田さんが一切拾おうとしないのですが、そこまで、え……? そこ……? というネタだったのでしょうか(笑)
 この二人が最後に出会ったの、第22話の平手打ち案件が最後のような気がするのですが……その後、太宰邸が大爆発し、大妖精17に居を移した博士は失踪した認識のような……。

◆第38話「人を喰う地獄絵」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:渡辺麻実)
 この後、『ジェットマン』『ジャンパーソン』でインパクトの強いエピソードの演出がある蓑輪監督が、戦隊監督デビュー(前年は『仮面ライダーBLACK RX』に参加しており、東映ヒーロー諸作で長く助監督を務めていたそう)。
 美術室を逆立ちで走り回っていた俊介は、デッサン用の彫像を破壊した事から美術準備室の掃除を命じられ、その最中に不気味な絵に閉じ込められていた地獄絵ボーマを甦らせてしまう、高速戦隊にあるまじき大失態。
 レーサーボーマ回に続き、封印の絵が雰囲気出ていてなかなか格好良く、思い切り山羊の悪魔ながら大ぶりの角が見映えする地獄絵ボーマも、悪くないデザイン。
 地獄絵ボーマはキリカによって大帝の元へと連れて行かれ、地獄絵中心の時は、画面周囲にエフェクトが入って従来とは違った味付けがされているのですが、正直……見づらい。
 俊介の罰は掃除から美術鑑賞の感想文提出に切り替わり、美術館に向かう5人だが、先回りして美術館に潜り込んでいた地獄絵の中に、はるな、大地、洋平が次々と取り込まれてしまう!
 「人間は皆、俺の芸術の中で、地獄色に染まって、死ぬのだ……!」
 辛うじて地獄絵フィニッシュを逃れる力と俊介だが、自らの傷を完全に修復する暴魔獣の前に一時撤退を余儀なくされ、その間に地獄絵ボーマは人々を次々と絵の中に閉じ込めていく。
 地獄絵ボーマの本体は絵そのものだが、絵を破壊すると囚われの人々の命はない……責任を感じる俊介は捨て身で地獄絵の内部に入り込もうと覚悟を決め、その肩を力強く叩いて後押しする太宰博士、じゃなかった、何かに気付く太宰博士。
 「待てよ! ……奴は絵の中で、人間の持ってる色を吸収するんだったな……」
 太宰博士のアドバイスを受けた力と俊介は、敢えてエネルギーを放出すると、真っ白なスーツで地獄絵の中に閉じ込められ、
 「博士の言った通りだ。これなら動きが取れる!」
 ……?!
 今作の特徴の一つといえる漂泊スーツを暴魔攻略のアイデアに持ってきた事そのものは悪くなかったのですが、「人間の生命力を“色”として認識している」→「スーツのエネルギーを放出して白色になってしまえばエネルギーを吸収されない」→「地獄絵の中でも自由に動けるぞ! ……いや、本人の生命力は吸われる上に、まともに戦闘できないのでは」と、頓知を通りこして意味不明になってしまい、完全にコースアウト。
 解放された仲間たちの私服が脱色されて真っ白になっている表現などは面白かったのですが、「生命力を吸い取る」事を「色を吸い取る」事で表現するのと「真っ白になったから吸い取るものが何もないぜ!」は繋がっているようで繋がっていませんし、その理屈だと吸い取るものが何も無いと死ぬのでは……と、滅茶苦茶な事に。
 「いいか、白というのは全ての色の基本だ。だから奴の、白い部分を見つけるんだ。そこはきっと、無防備だ」
 太宰博士に、博士らしく助言させたい、といった狙いもあったのかもですが……白も色なら吸い取れるのでは……と更なるロジックの迷走を生んでしまい、もはや単純に、苦手:白、みたいな事に。
 額の弱点にボウガンを撃ち込むと地獄絵世界が大崩壊し、皆の色も戻ってターボレンジャー大復活から、コンビネーションボウガンが炸裂してあっさりビクトリー。
 首が残った地獄絵ボーマはどういうわけか自力で巨大化し、ターボラガー発進。バトルボールを正面から命中させるとパンチの連打を叩き込み、スクリューラガーキックで決着がつくのでありました。
 「ラゴーン配下の暴魔なぞ、こんなものさ」
 反論の余地が全くありません!
 一件落着して、石膏像代わりに半裸の俊介が美術のモデルを務める事になり、これは描かされる方が罰ゲームなのでは……で、つづく。
 次回――直球サブタイトルシリーズ。