『ウルトラマン80』感想・第48話
◆第48話「死神山のスピードランナー」◆ (監督:宮坂清彦 脚本:水沢又三郎)
母親が病気で入院する事になり、高校進学を諦めて家業の八百屋を継ぐ事になる中学生・マサオ……が導入のフックとして重すぎてどうすればいいのか悩んでいる内に、縞々の服(鬼のイメージか)を着込んだ謎のマラソン小僧が街に現れて騒ぎを引き起こし、山の怪異、再び。
「矢的、超能力を使うけど、いいわね」
「この際仕方ないか」
矢的は超てきとーにウルトラ盗み聞きにOKを出し、タチの悪いゲスト悪役はやたらコミカルに描写されて脱臭をはかられる(結果的に、ただただ感じが悪い)一方、ゲスト少年の重すぎる背景に加えて、少年のライバルはマラソン小僧に関わったばかりにアキレス腱を断裂し、話の見せ方と劇中の諸要素のバランスがあまりに悪くて、どんなテンションで見ればいいのかわかりません!
「キャップ、イダテンランは普段は大人しいマラソン小僧ですが、いったん怒らせると手の付けられない大怪獣になるって言われてるんですよ」
「うむ、俺もそれを恐れている」
トドメに、8話前の同脚本家による相撲小僧回と全く同じ筋書きで目が白黒する内に、場合によっては銃殺やむなし、と急なシリアスが持ち込まれ、マラソン小僧=イダテンランの確認を指示される矢的だが……
ナレーション「マラソン小僧は、友達になろうと思っていた子供達にからかわれたために怒り、イダテンランに変身した!」
早かったーーー!
マラソン大会さえ始まる前に小僧は怪獣に変身し、色々と面食らう展開が続くのですが、怪獣が猛スピードで街を駆け抜けていくと民家やビルが次々と吹き飛んでいく映像が大迫力で困ります(笑)
そんなエピソードで凄く久々にシリアスの世界に戻ってきたチーフが怪獣への強硬姿勢を貫いて矢的と衝突するもみんなまとめて吹き飛ばされ、Aパートの内に80が登場する変則構成。説得を試みる80だがあっさり殴り飛ばされてイダテンランは姿を消し(80が出てきた意味……)……マラソン小僧=怪獣の確認も出来ないまま、いよいよマラソン大会当日。
幾らターゲットが大会に出場しているからとはいえ、母親の為にマラソン大会の優勝を目指すマサオ少年にジープで並走してアドバイスを送るUGM、職権濫用が目に余ります。
大会はマサオと小僧のマッチレースになるが、悪巧みをする悪党コンビが犬を放った事で、犬の苦手なマラソン小僧がパニックに陥って怪獣へと変身。
前回に続いての主題歌バトルとなり……何をどうしても戦闘と曲調があまりに合わず、ただでさえ麻痺している感覚がどんどん冬眠に近付いていきます。
怪獣のダッシュ竜巻攻撃(DCヒーローのフラッシュがやるやつ)に苦しむ80だが、ボディプレスを回避すると、敵の突進の勢いを利用した投げ技から沈静化光線を命中させ、怪獣はマラソン小僧の姿に。
途中棄権となった小僧が80を相手に取っ組み合っている内にマサオ少年は大会に優勝、母親の手術は成功し……少年が大会に優勝した要因が、小僧が他の選手を潰した&小僧に煽られても自分のペースを守り続けた、なので、怪異への対処法としては正しい気はしますが、物語としてはピースの収まり具合が悪いまま(例えば、少年がマラソン小僧に勝つことで報酬を得るなどの、昔話的完成が全く発生しない)、なんか気が済んだ小僧は山に帰還。
マラソン小僧に関しては、ただただ、人の世の道理と関係なく走りすぎてていっただけで、それに振り回された人々と振り回されなかった少年の物語とはいえなくもないですが、怪異に振り回されるなと声援を送る主人公自身が人の世に干渉を繰り返す怪異カテゴリなので、こんなところでも矢的猛のアイデンティティがふわふわと虚空を彷徨います。
色々と話の出来に難がある『80』にしても、プロットそのまま流用〔山から怪異がやってくる → 悪党コンビがそれを利用しようとする → 人間の欲が怪獣を生み出すが80が説得して住処に帰っていく〕の脚本は幾ら何でもやっつけ仕事で、制作上のトラブルが何かあったのかと思ってはみたくなりますが……それも含めて、ここまででワーストクラスの出来。
次回――多分、また、予告ナレーションが内容の8割を喋った(笑)