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新春初キラメイ

『魔進戦隊キラメイジャー』感想・第38話

◆エピソード38「叔父の月を見ている」◆ (監督:竹本昇 脚本:井上テテ)
 「プラークを補強して、虫歯エナジーチャージだ!」
 新年早々、人間を強制的に虫歯にする大変嫌な邪面師――虫歯邪面――が登場し、黄緑桃が虫歯の激痛で戦闘不能に陥る大ピンチ。
 歯に衣着せぬ、歯の浮くような、歯がゆい、歯が立たない、歯ごたえが無い……などなど、敵味方が「歯」にまつわる慣用句を多用するのは金庫邪面と同じノリで、金庫邪面回の脚本は下さん、監督は竹本さんだったので、監督ベースのアイデアでしょうか……?
 ザビューンストーンのサメレーダーにより虫歯邪面の弱点は頭上の虫歯穴と判明するが、最も有効そうなシャイニーブレイカーを持った宝路はお宝探しの真っ最中。連絡を取るも不自然な反応を返す宝路は何故かガルザと親しげで、後を追った充瑠と時雨が見たものは、ハイライトの消えた瞳で野点をしながら荒野に突き立つ三日月のオブジェに話しかけている宝路の姿。
 俺だってゴーアローしてくれたっていいじゃない……孤独のあまり、とうとう石像を友達だと思い込んでしまった昭和の男に治療の手立てはあるのか?!
 宝路の様子を慎重に窺う充瑠と時雨は、宝路が石のオブジェをガルザだと思い込んでいるのは、妄想フレンズではなく、最後の叶えまストーンによる幻覚の作用であると気付く。
 かつてクリスタリアに伝わる決闘の儀式をガルザと行った宝路は、3本勝負の2本を取ったところで乱入したオラディンに決闘の禁止を言い渡され、その決着を付けられなかった事がずっと心残りのあまり、ガルザに再び決闘を申し込まれるという幻影に囚われてしまっていたのだった……。
 異邦の星で新たな親族に認められたいと目をキラキラさせる宝路に対し、紳士的にそれを受け入れるかつての爽やかガルザ……なんて事はなく当時から深い害意を抱えていた事が明らかになるのですが、それが特に驚きではない事もあり、話の綾として面白くならず。
 せめて、“宝路が、決闘を持ちかけてくれた頃のガルザは信頼していた”旨が現実ベースで語られていれば、それに対するガルザの裏切りと、そんなガルザにまつわる過去を乗り越える宝路の姿も劇的になるのですが、宝路のガルザへの心情が掘り下げられるわけでもなく、物語を遡っても敵対関係になって以後の宝路に、ガルザに対する複雑な心境など欠片も見えた事が無かったので、“無から過去回想が生えてきた”にしかならなかったのが残念(この辺り、登場当初の銭湯回の微妙な出来もボディブローになっているかも)。
 その過去回想を、“深層心理の見せる幻”としたのが、ストーリー上の工夫ではあるのですが、その深層心理を納得させる仕込みが不足・重要アイテムである筈の叶えまストーンの作用が添え物扱い、と要素の連動というよりも、どっちつかずになってしまいました。
 虫歯組は虫歯邪面に歯ブラシ攻撃で立ち向かうも通用せず、こうなったら力尽くだとフェニックスしてゴーアローを叩き込もうとするが、本物ガルザに妨害される事に。
 ここも、虫歯×ドリル、という組み合わせの妙は面白かったのに、そのアイデアにこだわりきらずにゴーアローを持ち出してしまった事で、(実際に通用したのかはさておき)宝路にこだわらずに初戦から5人がかりでフェニックスしていれば良かったのでは……となってしまい、ガルザを召喚する都合で話のコアを歪めてしまう事に。
 虫歯組の苦境を聞いてひらめキングした赤は、ザビューンに頼んでガルザを強引に宝路の前に運搬し、ガルザは自ら、決闘にかこつけて宝路を抹殺しようとしていた種明かし。
 ガルザの攻撃でオブジェが破壊された事で幻影も解除され、青と武器を交換した宝路は銀に変身し、敢えて剣での勝負をガルザに挑む。
 「代わりに、ソードを俺にくれ」
 決闘がお流れになった心残りから一度は剣の道を捨てた宝路が、再び剣を手に取り過去の自分を拾い上げる姿は格好いいのですが、それが宝路のキャラクター性や、ここまでの物語と特に繋がっていないので、ただこの瞬間格好いいだけ、になっていて残念。勿論、それはそれで必要な事でなのですが、第38話としてはあまりにも物足りません。
 銀はガルザの不意打ちを見事に防ぎ、「同じ手は通用しない」というか、ネタばらしした直後に同じ手を使うのは、さすがにどうかと思うよ叔父上……。
 虫歯邪面は、ブレイカーで飛んでいった青がワンダーデンタルで撃破し、ガルザはシルバーに正面から敗北して割と本格的にガックリ項垂れるが、最後の叶えまストーンは皇帝の指令を受けたヨドンナによって奪い去られ、ヨドンナはすっかり『ジョジョ』第5部のドッピオ状態で、とぅるるるるー、とぅるるるるー。
 「宝路! 俺にトドメを刺さなかった事を、後悔する事になるぞ!!」
 ガルザは芸術展の高い遠吠えを決め、怪人戦スキップは何度かありましたが、まさかの巨大戦スキップで(闇エナジーは相当集まっていたと思いますし……)、妙にザビューンの出番が多いのはそういう事だったのか、と納得してつづく。
 終局へ向けて加速してほしい新年一回目としてはパッとしない出来でしたが、最大の不満は、この先どうなるのかはともかく、現時点では最大のキーアイテムである“最後のカナエマストーン”の発見と入手が凄く雑だった事。
 一応、〔幻影の罠にはまる → 仲間の助けで攻略 → 障害としてのガルザを撃破(宝路が過去を乗り越える事で宝を手に入れる)〕という構造にはなっているのですが、本物ガルザはストーンと全く無関係なので、エピソードとしてもっと、「ストーンの探索〔試練の突破〕」の方に焦点を合わせて欲しかったです。
 ガルザはガルザで、凄く雑に義理の甥っ子を暗殺しようとしていた事が発覚し、もっと水面下で地道に事を進めるタイプだと思っていたのですが……後、義理の息子を殺されそうになった事を把握している割には、王様のガルザへの対応がふわっとしており、せっかくガルザと宝路のクリスタリア時代の関係を描いたものの、しっくり収まるどころかピースが歪んでしまって残念。
 王様、自分に向けられた敵意に関してはともかく、周囲の人間に向けられた悪意には敏感に反応し、そういった場合には政治的立場などかなぐり捨てそうな人物(ヒーロー像)だけに、かえってもやもやとする事になってしまいました。
 次回――「ヨドン様にまだ別人格が?」……て、ヨドンナは人格って事でいいの?! ここに来て、皇帝自らテコ入れ出陣に困惑が先に立ちますが、果たしてどうなる。