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中世から来た男

仮面ライダー鎧武』感想・第13話

◆第13話「鎧武、バロンの友情タッグ!」◆ (監督:石田秀範 脚本:虚淵玄
 「関係が疑われるとされるインベスゲーム」というか、怪生物襲撃事件が話題になっていたらしいのに、これまで関連づけずに放置されていたのがビックリですね……。
 突然のニュース報道で、世間ではそういう事になっているんですよ、と物凄い勢いで外堀に土砂が流し込まれていくのですが、ここは前回までとは別の沢芽市なのでは……(『ウルトラマン80』理論)。
 これまでが、ビードライダーズという“子供の世界”だったのに対して、ユグドラシルという“大人の社会”と衝突する事で、否応なく“子供の世界”にクラックが入って“その外側”と接続せざるを得なくなった――だから「今まで見えていなかったものが急に目に入ってくるようになる」といった演出或いは構成上の意図かとは思われるのですが、初回時点では“外側”に片足突っ込んでいた紘汰を、「モラトリアム真っ盛りでよくわかっていなかった」みたいな感じで強引にビートライダーズ側に引き戻してしまった事で、あれ紘汰(思考的に)そっち側に居なかったっけ……となってしまうのがどうも、スタートして一歩目を間違えていたのでは感。
 ヘルヘイムの森の活性化により、インベスに襲われて怪我を負った市民の肉体そのものが異界の侵食を受けるようになり、危険区域の封鎖と市民の避難を提言する貴虎だが、問題の抜本的解決の為には引き続き事態を隠蔽しながらプロジェクト進めるべきだとプロフェッサーに制止され、ユグドラシル側にも徐々に色合いの差が出てくる事に。
 「いよいよ、ビートライダーズの連中を切り捨てようってのかい」
 ガキどもをあまり甘く見ない方がいいのでは? とDJが混ぜっ返すその頃、力を失い、力を求める初瀬は、徐々に追い詰められつつあった。
 「なんで……俺が脅えなきゃならねぇんだよあんな奴らに!」
 街を歩きながらインベスの幻影を目にして恐怖にかられ、不安を煽る心拍音を流しながら描かれるその彷徨は、精神が参りつつある人間の描写に石田監督の持ち味が活きて説得力のある面白い見せ方。
 「力さえあれば……もう一度あの力さえあれば!」
 一方、先日まで街の人気者だったビートライダーズはインベスゲームについて市民から追求される事になり、呑気に病院へ向かっていた紘汰・ミッチ・舞は、体から異界の植物が生えた被害者たちの姿を目にする事になる。
 ニュースを見ずに踊っていたチームバロンも糾弾の声を浴びせられるが、「出て行け」発言が戒斗の「立ち退きを要求できるのは強者だけ!」魂に火を点けてしまい、生身の市民を相手にバロンに変身すると、インベスを召喚。
 「貴様らが俺たちより強いと、証明してみせろ」
 戒斗さん、「経済力」とか「社会的影響力」に対して「腕力」で対抗しようとしているところから少し考え直した方がいいのではと思うのですが、この“現実”に対する答の出ない藻掻きや足掻きをキャラクターの魅力として描きたい意識が、どうもうまく転がってくれません(確かにまあ、筋力は大抵の問題を解決するのですが……)。
 境界争いなら合戦じゃぁぁ! と主題歌ばりに戦国脳のバロンは槍をかざすが、そこに「正義の味方」を名乗って割って入ったピエールが、白鳥のように舞いながらブラーボに変身。
 インベスを軽々と蹴散らしてバロンと激突し、戦闘に巻き込まれた仲間が負傷した事で、チームバロンはすごすご撤収。ピエールは市民から喝采を浴び、少ない人数・安っぽい見せ方・移ろいやすい大衆の表現が、ひたすら邪悪。
 「このままじゃインベスが起こした事件は全部、僕たちビートライダーズのせいにされちゃいますよ」
 「……あ~、どうすりゃ本当の事をみんなに伝えられるんだ」
 知らなかった事とはいえ、全く責任が無いかといえばそんな事は無いと思うのですが、これまでの言行が言行だけに、「1%も悪いと思ってなさそう」に見えるのが、紘汰の困ったところです……。
 ミッチが、ビートライダーズは用意された人身御供だったのでは? と考えを巡らせる一方、紘汰はクラックから現れたドラゴンインベスを目撃。
 (ここで俺が戦っても……どうせ誰にもわかってもらえない。けど俺は!)
 あくまでインベスと戦おうとする紘汰だが、貴虎からライダー狩りを依頼されていたドリアンにインベスそっちのけで攻撃を受け、怒りの変身。
 「あんたは正義の味方なんかじゃねぇ!」
 あんな奴にベルト渡したの誰だよ……とぷんすかしていたものの、元傭兵の経歴に目を付けて手駒として利用する貴虎兄さんが頭の回るところを見せつけて苦戦する鎧武だが、今度は戒斗が乱入するとドリアンに生身の飛び蹴りを決め、コートの裾を払う仕草が無駄に格好いい。
 「おまえ、助けてくれるのか」
 「勘違いするな! ……俺は俺の敵を砕くだけ。貴様の都合など知らん!」
 「ああOK! じゃ、俺も俺の敵と戦うぜ」
 君達ホント、凄くナチュラルに多対一の戦いに持ち込むよね……。
 ヒーローvs怪人の構図だと特に違和感は無い筈で、これが従来作なら強敵ドリアンを相手に水と油の友情(!?)タッグ、となるところなのでしょうが、なまじヤンキーマンガの文法を取り込んでしまった為に、タイマンにこだわらない=物凄い卑怯者に見えてくる壮絶な脱線事故(あとドリアン、善人では無いですが、袋だたきにして爽快という程の悪人でもないですし)。
 「ここからは、俺たちのステージだ!」
 数は城、数は石垣、数は堀、戦いは兵隊の物量で勝負だ! とドリアンに襲いかかった2人は、バナナ鎧武&マンゴーバロンの組み合わせでドリアンを退け、ドリアンがやられ担当になる事で、前回の今回で赤肉メロンが強引に敗北する事にならなかったのはホッとしました。……一方で、「袋だたきにして爽快という程の悪人」ではないものの、事態を引っかき回す行動の結果としてそれなりの問題を発生させているドリアンの退場を毎度コミカルに描いてしまうので、諸問題の扱いの軽重が物語全体の中で更にあやふやになるのは、困ったところ。
 ドラゴンインベスを探す紘汰と、バナナロック返却を迫る戒斗は、更なる森の侵食、そして赤肉メロンに叩き落とされてきたドラゴンインベスを目撃。メロンは森の実を食べて巨大化したドラゴンを圧倒的な力で撃破し、兄さんは、炎の中で立ち上がるのが好きなの……?
 「……次はおまえ達だ」
 思わず感心していた紘汰と戒斗が慌てて変身する中、物陰から一連の出来事を見ていた初瀬の視線は、謎の実に吸い付けられ……
 「力……あいつらの力が……なんで俺には無いんだ……」
 こればっかりは、ガチャ運なのが辛い……。
 「もう一度俺に力をぉ!」
 貪るように実を喰らった初瀬の体が緑色の光に包まれ、その姿はなんと虎のインベスに変貌する! で、つづく。
 ビートライダーズはモルモット扱いの兄さんですが、初瀬に対してすぐに「吐き出せ」と呼びかけており、傲岸なエリート意識とそこから派生した責任感に裏打ちされた、大事の前の小事を地で行く人と思われる一方、部下の心配や市民の避難の提言など、“人命に関する一線”は存在する(ゆえにクズ共は実力で叩きのめして優しくお引き取り願う)のが、悪役サイドにおいては大変おいしいポジション。
 同時にそれが、シドやプロフェッサーなど、この連中は本当に人間として駄目そうだな……という仕事仲間と互いの明暗を引き立てる事になっており、ユグドラシル側のキャラ配置は巧く噛み合っているのですが……。