東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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年末恒例企画(大変長い)

2020年を振り返る:特撮編

 今年も、〔東映特撮YouTubeOfficial〕〔ULTRAMAN OFFICIAL by TSUBURAYA PROD.〕を中心に色々踊らされた日々でありました。
 年末恒例、今年も各部門に分けてランキング形式で振り返ってみたいと思います。対象エピソードは、昨日の更新分まで。対象作品は、“それなりの話数を見た上で、今年、最終回を見た作品&劇場版&現在見ている作品”という事で、以下の通り。
〔『キカイダー01』『光戦隊マスクマン』『超獣戦隊ライブマン』『忍風戦隊ハリケンジャー』『海賊戦隊ゴーカイジャー』『魔進戦隊キラメイジャー』『高速戦隊ターボレンジャー』『ウルトラマンネクサス』『ウルトラマンG』『ウルトラマン80』『仮面ライダーゼロワン』『牙狼GARO>』『快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー en film』『天装戦隊ゴセイジャーvsシンケンジャー』『帰ってきた動物戦隊ジュウオウジャー』『スーパー戦隊199ヒーロー大決戦』〕
 性質上、上記作品のラストにまで触れている場合がありますので、ご了承下さい。
 『鎧武』はまだ視聴本数が少ないので、今年のランキングからは対象外としました。
 昨年のランキングはこちら→〔2019年を振り返る:特撮編/ものかきの繰り言〕
 今年はまず、燃え上がれ正義のメカ部門から。

☆メカ部門☆
1位 スーパーライブロボ (『超獣戦隊ライブマン』)
2位 ロボット再生装置 (『キカイダー01』)
3位 ゴーカイオー (『海賊戦隊ゴーカイジャー』)
次点  スモッグジョーキー(『魔進戦隊キラメイジャー』)

 第1位は、《スーパー戦隊》史上初のスーパー合体! 2号ロボ導入3作目にして、物語にがっちりと噛み合った盛り上がりを生んで大きな存在感を発揮したスーパーライブロボ。1号ロボであるライブロボも、動物モチーフを押し出した見栄えのするデザインから力の入った超獣剣召喚エフェクトが大変格好良かったですが、そのラインを活かしながらの追加装甲によるマッスル化が(制作サイドとしては苦肉の策だったそうですが)強化形態としての説得力が高く、物語とデザインの両面で、『ライブマン』終盤を加速させてくれた、素晴らしいロボットでした。今年トップクラスに燃える初登場だった、会心の名機。
 「スーパービッグバースト!!」
 第2位は、世界的悪の組織シャドウにトドメを刺した基地破壊ファザー渾身のロボット再生装置。自前の科学力に問題を抱えるシャドウ組織が、外部の天才科学者に待望の超兵器を作らせて予算問題を解決に導くも、「高度すぎて細工されても気づけない」という致命的失策から組織壊滅の決定打となるのが、あまりにも絶妙なシャドウらしさでした(笑) また『01』最終回は、シャドウ最後のオカルト兵器ハムスターギロチンも印象深く、なんだかんだダメ過ぎて面白いの領域に突入していたシャドウ分の加点も含めて。
 「あの機械が30体のロボットを再生すると、自動的に地下のシャドウ基地が大爆発を起こすようになってる!」
 第3位は、でっかい夢の宝箱、ゴーカイオー。巨大ロボットとして特別好きか、と言われると実はそうでもないのですが、“大いなる力”の発動体として、内部から色々飛び出すブラックボックスの仕様が面白かったのに加え、海賊の象徴としての船(ゴーカイジャーにとってのベース)をそのまま巨大ロボに落とし込んだデザインは、良かったです。
 「夢をこの手で掴むまで、俺たちは突き進むだけだ!」
 次点として、悪のライバルメカの筈がヒーロー側に乗っ取りを繰り返され、屈辱の誤爆伝説を生んだスモッグジョーキー。……作劇的には色々と難があったのですが、ちょっと離れたところから見ると、歴代屈指の 酷い扱い 面白メカの側面もあるな、と(笑) ヒーロー側から用済みにされるやガルザの移動用ぐらいの存在感……の酷い扱いから年末に入って逆襲に転じてくれましたが、果たして下克上はあるのか?! デザインも割と好きです。
 「見よこの爪、この牙、チェーンソー!」
 続いては、愛と勇気を教えてくれる残念部門。

☆残念部門☆
1位 ハカイダー (『キカイダー01』)
2位 ブレドラン (『天装戦隊ゴセイジャーvsシンケンジャー』『スーパー戦隊199ヒーロー大決戦』)
3位 姿三十郎 (『光戦隊マスクマン』)
次点  太宰博士(『高速戦隊ターボレンジャー』)

 祝・二連覇! おめでとうハカイダー! ありがとうハカイダー
 前年、“正しく悪い意味で残念なライバル”として圧倒的戦力を見せつけたハカイダーですが、『01』後半戦では“真のライバル”ワルダーの登場により、何かと無理のあったライバルの座を転がり落ちた結果、“正しく悪い意味で残念な三下”の地位を確立し、むしろキャラクター性が安定(笑) 錯乱した言行はそのままに悪役としての新たな魅力を見せると、嫌がらせと時間稼ぎ要員と負け犬の遠吠えを繰り返した末、宿敵をビジンダーにすり替えようとするが無惨に瞬殺・ぼくのかんがえたさいきょうのデビルハカイダーを披露・1話で3回の爆死、と最後まで非の打ち所の無いCLIMAXジャンプを決め、あのクレナイ・ガイさんでさえ成し遂げられなかった偉業を達成。大変、忘れがたいキャラとなりました。…………いずれ機会があれば、正統派ライバルとして輝いていた頃の勇姿も見たいものです。
 「悲しめ……! ほざけ! そして死ね!!」
 第2位は、“残念なライバル”路線を飛び越えて、もはや出オチ芸人という未踏の高みに到達した、色々なブレドラン(笑) 『ゴセイvsシンケン』で血祭のブレドランが出てきた時のどういう顔で見ればいいのかわからない気持ちや、『199ヒーロー大決戦』における巨大ブレドラン詰め合わせの虚無感など、本編ラスボスとは思えない感情を呼び起こしてくれる、良くも悪くも《スーパー戦隊》シリーズ唯一無二の存在となった事を評価しました。
 「なんだ?! あの、化け物は?!」
 第3位は、いっけんダンディーな紳士の風貌で、その一面にスポットを当てた“あしながおじさん”エピソードもあったものの、その実態は闇討ち上等オーラパワーおじさんな姿長官。二年前の鬼軍曹・伊吹長官との差別化の為か、部下から容赦ないツッコミを受けるなどコミカルな要素を加えて愛嬌を引き上げ、真っ当なチームワークを説くなど若者達を導く大人としての姿も描かれたのですが……悲劇的な運命の別離を「青春は短いもの」扱いでまとめたのがあまりにも衝撃的で、この人きっと、矢的先生より酷い女性観の持ち主だぞ!! と思う他なく、光戦隊の闇は深い……。
 「大丈夫。俺の目に狂いはない」
 次点には来年への期待票も含めて、妖精おじさんこと太宰博士。割と二枚目の資産家ながら、妖精の研究に没頭する余り、信念を持った瞳で高校生を死地に送り込める狂気のマインドを身につけているが、その当人は妖精と意思疎通する為に毎度ゴーグルを装着しなければいけないのが絶妙に残念であり、自分が近所で不審者扱いされている事を認識していないのもポイント高し(笑) 果たして、山口先生との関係に進展はあるのか?! ブレーキの搭載されていない具合からも期待の逸材です。
 「――信じろ、その若さを。18歳。人生で一番美しい時。そのパワーは、最高の力を発揮するんだ」
 今年は、二連覇を果たしたハカイダーインパクトが強かったのに加え、キロス、イガム、溝呂木など“正しく悪い意味で残念な悪役”が目立ち、脳内投票がそちらに引きずられがちだったので、来年は、部門本来の主旨に沿った残念が登場してくれる事を期待したいです。3位と次点の二人も、どちらかというと「最低な大人部門」寄りですし!(笑) ……なお、時雨のアニキは程々にポイントを稼いでいたのですが、スタッフも役者さんもちょっと狙いすぎ感があるのが不利に働いて惜しくもランク外となりました。
 今年は粒ぞろいだったのは、君に出会えて良かった助演部門!

☆助演部門☆
1位 コロン (『超獣戦隊ライブマン』)
2位 オオヤマ (『ウルトラマン80』)
3位 邪美 (『牙狼GARO>』)
次点  風雷丸(『海賊戦隊ゴーカイジャー』)

 第1は下馬評通りのぶっちぎり! 我らが超人機コロンさん!!(さん付け必須) ライブクーガーによる前線投入を皮切りに、バイクで頭脳獣を轢く、掌底で戦闘員を叩き伏せる、ライブライオンを操縦する、身を挺してレッドに捨て身の覚悟を教える、ライブボクサーの動力になる……と数々の活躍を繰り広げた末にとうとう巨大ロボを単独で操縦してしまい、お助けキャラとしては割と都合良く出入りしているのですが、それを貫き通す事でキャラクター性と面白さにまで昇華されたのがお見事。また、勇介専用ヒロインぶりやメンバーとの繋がりなど、“第六(四)の戦士”として最後まで丁寧に扱われたのが素晴らしく、初見時はどうなる事かと思いましたが、終わってみれば今年屈指の良キャラでした。
 後まだ『ライブマン』の総括を書けていないので、これはそのメモ的なものにもなるのですが、“過去への意識”が強い本作において、星博士の退場によりサポートキャラの座についたコロンさんだけが、“ゼロから彼らと思い出を作っていく存在”であり、最終的に美しいものを見ずに戦いだけを記録する役割に殉じたガッシュとの対比においても、『ライブマン』において重要な存在であったと思います。
 「人間を操る事が出来ても、ロボットの私は操れなくてよ!」
 第2位は、多分この人が居なければ『80』を早々に脱落していたUGM日本支部キャップことオオヤマ。怪獣戦国時代生き残りの猛者にして、脅威の《説得》スキルを誇る交渉の達人であり、色々と粗の多い作品なので冷静になるとかなり酷い発言も飛び出すのですが、その圧倒的ダンディーぶりで大体許します! 今年の顔が好み枠(笑)
 「城野隊員は一ヶ月、ハラダ隊員は半年間、休みなしで勤務につくこと」
 今回、3位以下はかなりの混戦だったのですが、博多南さんやMPリーダーを押しのけて、集計直前になって第3位に飛び込んできたのは、魔戒法師・邪美!
 なにかと胡散臭い魔戒騎士ギルドの暗部に踏み込み、これまでにない距離感から鋼牙とカオルの関係性にスパイスを加え、物語を終章へと導く加速剤として、非常に良いキャラクターでした。今年は良くも悪くも副隊長のインパクトが強かった佐藤康恵さんのキャスティングも絶妙にはまり、登場話数は2話のみながら、印象深い存在に。『牙狼GARO>』は作品としてゲスト(敵)のキャストに力を入れているのに加え、レギュラーであるゴンザとザルバも話が進むにつれて良い味を出しており、脇を固めるキャラクターが魅力的な作品ですが、そんな『牙狼』勢代表、という要素も含めて。
 「……いい魔戒法師にはなれたけど、いい女にはなり損ねた」
 次点は、スポーツ気分で宇宙忍者を狩るカラクリ・風雷丸。メカ部門では……という気もしないでもないですが、やたら人格がハッキリしている事と、口調が暗黒おまけコーナーでお馴染み『ハリケンジャー』ナレーションと融合している辺りも加味して。オリジンはその『忍風戦隊ハリケンジャー』でありますが、そちらでは機械的だった喋りがやたら流暢になっていたり、“大いなる力”の中でもかなり強力だったりと、割と世界観を破壊する水際のハチャメチャぶりが妙に印象強くてランクイン。これが多分、宇宙に轟く野球の力だ!
 「海賊とニンジャ一つとなりて、天下御免の手裏剣装備――」
 また、昨年に続いて特筆すべき存在として、後半戦も絶好調だった『キカイダー01』ナレーションを挙げておきたいと思います。名調子はそのままに、マリ/ビジンダーの登場後は過剰な肩入れが半ば二次創作の領域に突入し、忘れがたい存在感となりました。
 「マリよ、結局は、誰もおまえの宿命の体を助ける事はできないのだ。マリ、ゆけ。泣くなマリ。おまえの道は自分で切り拓くのだ」
 「泣けビジンダー。ゼロワンにすがって泣くがいい。そして明日になったら、あの太陽のような明るい笑顔を見せるのだ」
 「微笑んでくれマリ、見せてくれビジンダー、あの太陽にも負けない、輝くような笑顔を」
 ……『ハリケンジャー』の暗黒おまけコーナー、『80』の必要以上の介入、も合わせまして、今年はナレーションの印象深い年であったかもしれません(笑)
 続いて、めざせ!地図にない場所を、昨年からの新設部門二つ。

☆印象の強かった脚本家部門☆
1位 曽田博久 (『超獣戦隊ライブマン』他)
2位 荒川稔久 (『魔進戦隊キラメイジャー』他)
3位 香村純子 (『海賊戦隊ゴーカイジャー』)
次点  金子香緒里(『魔進戦隊キラメイジャー』)

 第1位は、80年代中盤以降の作品配信により、連続メインライター真っ盛りの曽田博久。『光戦隊マスクマン』が終盤のまとまりの悪さから消化不良気味に終わってしまい、もはや勤続疲労による下降線やむなしなのか……と思っていたところから『超獣戦隊ライブマン』では再び輝きを取り戻し、特にキョンシー回以降は、戦慄の切れ味。よりによって転機といえるのがキョンシー回なのが凄いのですが、「今ここに5人の戦士が」から「16歳ケンプ恐獣変身!」を経て「大教授ビアスの崩壊!!」へ、演出陣と共に完成期にある80年代戦隊作劇を縦横無尽に駆使して散りばめた要素を着地へと導いていき、快調時の曽田先生の筆力をまたも見せつけられる1年となりました。
 惜しくも第2位は、『鳥人戦隊ジェットマン』での初参加から数えて21作目、『海賊戦隊ゴーカイジャー』以来のメインライターとなった『魔進戦隊キラメイジャー』において、30年目のトップフォームを見せつけてきた、戦隊マイスター・荒川稔久! 放映前は、塚田×荒川体制で外したら辛い……というのもあって不安もあったのですが、見事にそれを吹き飛ばしてくれる快走で、そのスキルと引き出しに唸らされます。放映スケジュール変更の影響もあってか担当本数はやや少なめですが、それがアベレージの高さに繋がっているようにも思われ、年明けの完結までいい形で走り抜けてほしいです。
 また今年は『海賊戦隊ゴーカイジャー』も完走して荒川稔久イヤーとなり、根幹を外さないヒーロー作劇の中でキャラクターの魅力を積み上げていく手腕の確かさに、改めて唸らされる事になりました。
 第3位は、名悪役バスコの創出など『ゴーカイジャー』において八面六臂の活躍で作品を支えた香村純子。初視聴となる『ゴーカイ』前半の参加回が、後の抜擢と活躍に深く頷ける出来の良さで、ベースとなる脚本力の高い人だな、と改めて。「ギンガ」回も「ライブ」回も良かったのですが、個人的には香村さんの技量の高さが詰まっている「道を教えて」が一押し。
 上位に実績勢が並ぶ中、次点には、金子香緒里。参加本数は少ないですが、作品の構成要素への目配りが良く、何を拾って何を押せばいいのかが良く見えている印象。特に、宝路とマブシーナの関係性を掘り下げつつ、この物語において姫様にさせるべき事はなんなのか、を汲み取った第15話はお見事でした。生産力がどのぐらいか、というのはわかりませんが、下さんともども、順調に伸びていってほしい期待株。

☆印象の強かった監督部門☆
1位 長石多可男 (『超獣戦隊ライブマン』他)
2位 東條昭平 (『超獣戦隊ライブマン』他)
3位 山口恭平 (『魔進戦隊キラメイジャー』)
次点  大井利夫(『忍風戦隊ハリケンジャー』)

 第1位は、80年代戦隊を支えた名匠・長石多可男。80年代戦隊勢は、改めてやはり凄かったブーストがかかりやすいので有利なところはあるのですが、完成期に入った80年代戦隊作劇のテンポは今見ても非常に気持ち良く、それを工業製品ではなく、芸術作品に留めた事への寄与はやはり大きかったように思えます。曽田先生、藤井先生とのコンビも脂がのって、特に『ライブマン』第37話「16歳ケンプ恐獣変身!」は衝撃の傑作でした。今年の演出面での印象度は、あのエピソードがぶっちぎり。
 第2位は、同じく80年代戦隊を支えた名匠・東條昭平。元々、長石・東條の両監督は高く評価しているのですが、特にこの『マスクマン』~『ライブマン』の時期は、ほぼ2人ローテをこなしつつ、最初から最後まで両者揃って手抜きの無い演出で映像面の見所が多いのは、両雄の存在感を際立たせてくれました。『ライブマン』最終回の十字架が強烈でしたが、オブラー退場回における尾村母の苛烈な描き方も、さすが東條監督、という好演出でした。
 第3位は、前年の上堀内監督に続いて、《平成ライダー》畑から《スーパー戦隊》のパイロット版に抜擢された山口恭平。正直、不安先行だったのですが、蓋を開ければ山口監督のノリが予想外に戦隊とはまり、これが『キラメイジャー』だ! というスタイルを見事に作り上げる、パイロット監督としての素晴らしい仕事となりました。劇場版がコロナ禍の直撃を受けた影響もあってか、本編への出入りが激しくなっているのが惜しまれますが、今後も活躍を期待したいです。
 次点として『ハリケンジャー』第31話「流星と三匹の狼」における、影を食われた人間が知性を失った獣と化してしまう経緯を、影によるゴア表現(捕食と人体損壊)で示す演出が印象深かった、大井利夫監督。《スーパー戦隊》で出来る表現のギリギリ近くを突いたと思われる工夫が、大変面白かったです。
 今年の振り返りランキングもここから後半戦に入りまして、キラキラ輝く為に僕らは巡り会った悪の組織部門。

☆悪の組織部門☆
1位 ヨドン軍(ヨドンへイム) (『魔進戦隊キラメイジャー』)
2位 武装頭脳軍ボルト (『超獣戦隊ライブマン』)
3位 宇宙忍群ジャカンジャ (『忍風戦隊ハリケンジャー』)
次点  宇宙帝国ザンギャック(『海賊戦隊ゴーカイジャー』)

 第1位は、組織の全体像こそふんわりしているものの、数を絞って掛け合いの魅力を出した幹部と、その繰り出す面白怪人のバランスが取れ、非常に、見ていて楽しい悪の組織となったヨドン軍。特に、被り物+マント+タイツ、というコスト削減の事情を伺わせるシンプルな造形ながら、時にはそのフォーマット自体を大胆に活用し、マシュマロ邪面、百人一首邪面、ト音記号のおじさん、などの傑作怪人を次々と送り出してきたのは素晴らしく、“怪人の面白さ”へのフォーカスが作品そのものを大きく加速させました。また、怪人→怪獣の二段構えの構成と、戦隊としての様式美を両立させようとする作劇も総じてスムーズに決まっており、非常に作品構造と一体感が高い組織であり、年明けも最後までこの調子で走りきってほしいです。
 「宝路、ヨドンヘイムはいいぞ……ふぅはははっはっはっは!」
 第2位は、青春と魂を悪魔に捧げた天才集団、武装頭脳軍ボルト。……ビバ・ビアス! ヒーローサイドとの強烈な因縁の構築に始まり、首領ビアスと三天才(初期)が非常に魅力的で、物語を牽引。「作戦が面白くなりがちなのは常人の発想を超えた天才だから」「ラスボスの真の目的は別にあるので目の前の勝敗に一喜一憂しない」とエクスキューズの論理構築も優れ、完成度の高い組織でした。中盤以降、幹部クラスの増量がやや足を引っ張るも、各キャラを消化不良にする事なく終盤の物語に落とし込み、作品全体の冴え渡る出来もあって、その崩壊まで極めて満足度が高かったです。一番好きだった怪人はメイロヅノー。
 「地球は真の天才、大教授ビアスを中心とした、天才だけによって支配されねばならん!」
 第3位は、トップのムカデ様はともかく、幹部クラスの暗黒七本槍が魅力に富み、まとまりの良い悪の組織だったジャカンジャ。幹部同士のライバル意識はありつつも、馴れ合いにならない程度に同僚としての仲間意識があるのが総じて程よい愛嬌と緊張感になり、作品の土台を支えてくれました。一方で、七本槍を愛しすぎて各々の退場タイミングが遅くなった事が終盤の詰め込みを生んでしまいましたが、最終回で、これだ! というものを見せてくれたので、その点の満足度も高し。怪人デザインも面白く、安定して評価の出来る組織でした。
 「最後は、花丸であった」
 次点として、史上最強の悪の組織として登場した宇宙帝国ザンギャック。ザンギャックに関しては「本腰を入れるとヒーローが勝てない」前提で1年間の物語を成立させる為に、「辺境方面への遠征軍」「トップはバカ皇子」「親バカの皇帝が息子に武勲をつけさせようとしている」「女狐とイエスマンと政治的事情に振り回される有能な重臣」「帝国の版図が広すぎて質にムラが大きい行動隊長」といった理由を積み重ね、それを物語の“面白さ”と繋げる事で茶番劇にしなかった(帝国側から見ると、「殿下の地球遠征自体が茶番」になっている二重構造も巧い)点に、『ゴーカイ』の長所である設計図の上手さが見え、殿下は実にクリティカルな発明であったな、と(笑) そこから終盤、名優・小川真司を起用しての皇帝陛下のおなり、も存在感を増幅させて、見事な構成でした。
 「今度こそ一気に地球を制服して、父上に見せつけてやる! そうだ、俺も行くぞ」
 この世に悪のある限り、ヒロイン部門は、史上屈指のヒロインがスパーク!

☆ヒロイン部門☆
1位 岬めぐみ/ブルードルフィン (『超獣戦隊ライブマン』)
2位 マブシーナ (『魔進戦隊キラメイジャー』)
3位 ナビィ (『海賊戦隊ゴーカイジャー』)
次点  野々宮瑞生(『ウルトラマンネクサス』)

 圧倒的脳内投票数で第1位に輝いたのは、総じて完成度の高い『ライブマン』の中で時折飛び出す、めぐみさんの可愛いさで何もかも強行突破しようとする展開を見事に成立させた聖女級ヒロイン、岬めぐみ。
 初期3人で掘り下げが順調だったのも功を奏しましたが、歴代最強クラスの語りモードを発動し、作品における「救済」の役割を一手に担い、圧倒的ヒロイン力でありました。戦隊における女性メンバー二人体制においては、武闘派系/アイドル系、の役割を振り分けるのが定番になっていたのですが、その二つを一人のキャラに統合した部分のあるめぐみを、見事に演じきった森恵さんも会心の好キャスティング。自転車爆走に始まり、湖ダイブも自ら演じるなど、文字通りに体当たりの演技を含め、その凜々しい美貌でキャラクターの説得力を引き上げてくれて、歴代戦隊メンバーでもかなり好きなキャラの一人となりました。
 「だから私も、16歳のおんなじ気持ちに戻って、精一杯、剣史にぶつかってみたいの」
 第2位は、極めて真っ当かつ丁寧に「亡国のプリンセス」をやってくれているマブシーナ姫。一見ぎょっとするデザインに正攻法の声優さんをあてた上で、侵略者から地球に逃れ、失意の中で希望を見出し、戦いの中で自分に出来る事を見出していく姿がしっかりとした段取りで描かれており、ヒロインとしての安定した扱いと、それを素直に応援できる性格の良さが高ポイント。……ホント、あの家族に囲まれて、よくこんな真っ直ぐに育ったな姫様……。……いやまあ、あの家族、親戚の叔父さんを除いて、真っ直ぐといえばこの上なく真っ直ぐなのですが……。とにかく、立ち位置といい性格といい、古典的な姫キャラをやりつつヘッドバットも忘れない良い正ヒロイン像で、作品ともども完結まで走り抜けてほしいです。
 「皆様のヒーローが、わたくしのヒーローなんです」
 第3位は、『海賊戦隊ゴーカイジャー』の真ヒロイン、鳥ことナビィ。年によっては助演部門かヒロイン部門でトップを狙える存在だったのですが、今年はこの両部門を『ライブマン』勢が圧倒的得票数で制し、最終的には『ゴーカイ』ヒロインズ代表の座に納まる事に。……代表です。万能の導入である鳥占い担当の便利キャラを劇中に落とし込む為の愛嬌として、「船長」として肩肘張っているところのあるマーベラスが素を見せる相手、に設定したのがとにかく絶妙で、マーベラスもナビィも双方得をするという、まさに相思相愛(論理の飛躍)。とにかく設計図の巧さが目立つ『ゴーカイ』でしたが、それを体現する良キャラでありました。
 「おいらだってやるときゃやるんだー! はーでにいくぜー!」
 次点として、『ネクサス』後半戦の正ヒロイン・野々宮瑞生。脚本に太田愛さんを投入して立て直しを図った『ネクサス』後半戦は、立ち位置を明確にし、しっかりと愛嬌を付けたヒーロー&ヒロインの存在が物語に入るフックとして大きく機能したのですが、登場から最後まで、きっちりとヒロインをやり切ってくれて、好感度の高いキャラとなりました。イラストレーターに大外強襲を決められなくて良かった(笑)
 「私が初めて記憶を消した少女。彼女の身に起こった事を、私は忘れるわけにはいかない」

 続けて、あまりの激戦に今年は大幅増量でお届けするのは、満足したら届かない悪役部門。見ていた作品数が多かった事もありますが、今年は非常に当たり年となり、まずは6-10位!

☆悪役部門☆
6位 大教授ビアス(『超獣戦隊ライブマン』)
7位 サーガイン(『忍風戦隊ハリケンジャー』)
8位 時計ホラー(『牙狼GARO>』)
9位 オヨブー(『光戦隊マスクマン』)
10位 ゴーデス(『ウルトラマンG』)

 第6位は、武装頭脳軍ボルト首領・大教授ビアス。とにかく中田譲治さんの妖艶な美貌と美声が素晴らしく、悠揚とした台詞回しもあいまって顔出し系ボスキャラの新境地ともいえる存在感を発揮。悪のカリスマとしての説得力がお見事でした。基本、思わせぶりな態度で余裕を崩さず問題を引っ張っていくスタイルなので、終盤どうなる事かと思われましたが、その真の目的が明らかになる時、真の邪悪が姿を現す構成もはまり、作品全体のテーマを体現する悪役として見事な使い切りでした。
 「ふふふ、ライバル出現の効果が早速現れたというわけだ。こうでなければならん」
 第7位は、暗黒七本槍・五の槍サーガイン。当初はチューズー坊といがみ合う前半のメイン行動隊長といった雰囲気で、デザインは面白いけど中盤ぐらいの退場なのかな……と思っていたら、意外な面倒見の良さと、傀儡を提供できる便利さが効いたのか終盤まで生存する事になり、結果として武人としても発明家としても、右肩上がりにスペックが増していく事に。剣を取ってはハリケンジャーを叩きのめし、傀儡を作っては天雷旋風神を打ち破り、最終的には、正直ちょっと盛りすぎなのでは、という領域に到達しましたが、岡本美登さんパワーもあって大変格好良く、最終盤の見せ場も嬉しかったです。あのムカデ様が退場を悼んだという点でも、ジャカンジャに欠かせぬ幹部でありました。
 「偉大なる発明は、常に人の真似から始まるのだ」
 第8位は、時計ホラー。着ぐるみ怪人の制約に縛られない人外の怪物、という事で様々なバリエーションを見せるホラーですが、昆虫のような擬態の末に、大時計の機械室そのものに融合するという仕掛けの面白さと状況設定の盛り上がりが印象深く、カラクリ龍なども含めて豊富なバラエティで楽しませてくれた『牙狼』の敵キャラ代表として。
 「たとえ! 残された時間が僅かでも! 人には、その時間を最後まで生き抜く権利がある!
 第9位は、地底忍者オヨブー。顔も含めて全身赤ずくめ、というギョッとするデザインながら、渋い声音とキザな仕草に岡本美登さんの魅力が全開。『マスクマン』が謎の忍者押し作品だった事もあり要所要所の活躍も嬉しく、最終盤には武人としての格好良さも存分に見せてくれて、結局、あらかた竜頭蛇尾に終わってしまったチューブ勢の中では、一番輝きを見せながら己の役割を全うしてくれたのが高ポイント。
 「卑劣に徹してこそ忍びよ」
 第10位は、異星の邪神ゴーデス。肥大した頭部と触手、というタコ型レトロ火星人を祖型にした気配を残しつつ、人面に似た顔を持つ巨大芋虫は一度見たら忘れがたいインパクトで、大変素晴らしいデザインでした。悪の化身としての拡張性も高く、字幕版の問題でキャラクター性が掴みにくかったのと、作品構成の都合により前半戦のみで退場となったのが惜しまれる悪役。
 「おまえは、どんな星へ行っても――食い尽くす事しか知らない」

 ここから上位陣は、5位から順にお届けします。まずは第5位…… 
 
5位 ドクター・ケンプ (『超獣戦隊ライブマン』)
 悪魔に魂を売り、道を誤った学友として物語の縦軸を堂々と担い、最初から最後まで宿命のライバルであると同時に外連味たっぷりの芝居で面白悪役としても風格を見せる大活躍だったドクター・ケンプ、見たいと思っていた『ライブマン』の中でも見たいと思っていた悪役でしたが、広瀬巧さんのキャスティングも最高で大満足でした。ビューティフル・レインボー! ……あと、この台詞だけで並の悪の幹部1年分の元は取れたな、と(笑)↓
 「こういう知性を感じさせない言葉はいいたくないのだが……くたばれ!」

4位 ワルダー (『キカイダー01』)
 続いて第4位は、『キカイダー01』後半戦に旋風を巻き起こした“真のライバル”殺し屋ワルダー! 自分をライバルキャラだと思い込んでいるハカイダーが崖下の底なし沼に埋まって白昼夢を見続ける中、霧の奥から現れた白い影! 登場する悪役が次々と自ら格を落とし錯乱状態に陥っていく事には定評のある『01』にまさかれっきとしたライバルが?! という衝撃に加え、殺し屋ロボットに生まれついたが故に善悪の識別すら出来ない嘆きが、イチローやマリの鏡像としてその存在を引き立てる事になった上に、ワルダーが正しくライバルの座についた事により、ハカイダーが正しく三下の座について新たな輝きを放つ事になったのは、まさにミラクル。『01』という作品に欠けていた物語の座標軸として重大な役割を果たし、作品が“跳ねる”原動力となった名悪役でした。
 「なにが悪で、どれが善であるのか、拙者には、それがわからぬのでござる」

3位 クランチュラ (『魔進戦隊キラメイジャー』)
 いよいよベスト3の一番手は、邪面使いクランチュラ! めぐみさん・鳥・姫と合わせて、今年の“可愛い”四天王ですね! 口出しという変化球なデザインから、当初は1クール目の終わりぐらいに退場する系? とさえ思っていたのですが、気がつくと作品に欠かせない存在となり、怪人作りへの美学、悪の組織幹部なりの倫理観、どこか貴族的な気質、と全てがヒット(笑) 神尾直子さんの演技に高戸靖広さんが声をあてるという着ぐるみ的な見せ方も絶妙にはまり、ガルザとのやり取りも面白く、歴代悪の組織の幹部キャラでもかなりのお気に入りに。今年の、第一印象から“化けた”系のキャラ筆頭でもありましょうか……そう考えると、マブシーナ、為朝、クランチュラ、と『キラメイ』勢はそういうキャラが多いかも。
 「兄弟なら当然連携して、闇エナジーを集めて邪面獣を召喚してくれると思ったのにぃぃぃ!!」

2位 バスコ・タ・ジョロキア (『海賊戦隊ゴーカイジャー』)
 そして第2位は、「よおマべちゃん」から「猿?」の衝撃デビューを飾り、物語をかき回すトリックスターにしてマーベラスのネガ像として強烈な存在感を見せたバスコ。一度聞いたら耳に付く神経を逆撫でする台詞回しと、コロコロと変化する表情、嫌な嫌な嫌な奴として宇宙海賊たちの向こうを張る素晴らしいライバルぶりで、戦隊シリーズ史上でも、トップクラスに好きな悪役の一人となりました。飄々なとした態度の割に陰険な策士ぶりが最後まで貫かれたのも良く、演じる細貝圭さんの芝居も素晴らしかったですし、人間体も完全体も、海賊×ダークレッド、として抜群に良いデザイン。サリーとのコンビも会心のアイデアで、実に完成度の高い悪役でした。
 「何かを得るためには、何かを捨てなきゃ。俺、あんた達を捨てるよ」

 かつてない強豪たちと、べた褒めで思い入れも強いバスコを抑え、栄えある第1位に輝いたのは…………「いや。あいつら極めて本気だ」

1位 ラグビー邪面 (『魔進戦隊キラメイジャー』)
 くしくも今年同様の大激戦だった2017年以来となる怪人枠から、ラグビー邪面!! シンプル極まりないデザインから、70年代を彷彿とさせるノリで「滑稽にして残虐」という戦隊怪人の魅力を正面から叩き込んできて、『キラメイジャー』のスタイルを堂々と宣言してきた、今年を代表する傑作怪人。とにかく『キラメイ』は、“怪人の魅力”が“作品の魅力”に繋がっているのが素晴らしく、究極、邪面師が面白ければ見ていられる、の領域に到達しているのですが、作品全体への貢献度が非常に高い邪面師の先陣を切って、これが『キラメイジャー』だ! を見事に体現してくれた名怪人でした。総合的に今年最大のヒットであった「邪面師」の代表として。
 「地獄ラグビー後半戦、いくぞー!」

 激戦そして波乱の末、明日に生きるぜヒーロー部門は、例年同様、5位から順に。

☆ヒーロー部門☆
5位 村雨真木埜(『魔進戦隊キラメイジャー』)
 今年、一番、“ヒーロー的に痺れたシーン”はなんだったろう……と、つらつら考えた末に思い浮かんだのが、「地獄百人一首に参戦して取り札を一閃するかるたクイーン」でして……考えれば考えるほど、今年最高に格好良かった、という事で史上初、ゲストキャラからのランクイン(笑)
 瀬奈に対する屈折した感情と、勇気ある善良な人間性ブレンドがキャラの魅力に繋がる荒川マジックに、パイロット版に続いて「これが『キラメイジャー』だ!」と示した山口監督の演出がぴたっとはまった名作回だった事も加え、キャスティングも良くていいゲストキャラでありました。
 「何をしてるのせなはやみ!」

4位 姫矢准/ウルトラマンネクサス (『ウルトラマンネクサス』)
 作品的には色々アレだったのですが、なんだかんだ好きだった姫矢さんが第4位。溝呂木の登場後、そのカウンターとして正統派のヒーロー性が積み上げられたのは、作品の目指していたものと合致していたのかはともかく、『ネクサス』前半戦の有り難いポイントになってくれました。姫矢編終盤、ヒーローとしての雄壮さよりも悲壮感が前に出てしまったのは好みから外れる部分もあったのですが、与えられた光の意味を求め、自傷的に苦しみもがきつつも、それでも立ち上がり続ける姿は、英雄でありました。
 「孤門……光は、絆だ」

3位 不破諌/仮面ライダーバルカン (『仮面ライダーゼロワン』)
 作品的には色々アレだったのですが、なんだかんだ好きだった不破さんが第3位。……顔と基本のキャラクター性は好みでした……でしたのですが、詳細を確認しておこうと思って『ゼロワン』感想を読み返していたら段々と目からハイライトが消えそうになってきて、本当に不破さんが好きだったのかさえ、自信が無くなってきてしまったのですが……おかしい……不破さんの格好いいシーンもあった筈……あ、第33話のバルキリー&バルカンのコンビアクションは大変格好良かったです。唯阿さんも当初のキャラ付けや立ち位置的には好きだったのですが、2クール目の迷走が本当に惜しまれます。この二人が、きちっとバディ継続してキャラを深め合っていれば、少なくともそこは好きになれたと思うのですが……なんか段々、二次創作票みたいになってきましたが、「もしも不破さんがアルトのギャグに素直に笑っていたら」は、考えずには居られないif世界です(笑) そんなわけで、唯阿さんとのコンビ票も含めて。
 「俺がやるといったらやる! 俺がルールだ」

2位 冴島鋼牙/黄金騎士ガロ (『牙狼GARO>』)
 第2位は、闇に生まれ闇に忍び闇を切り裂く宿命の騎士、魔戒騎士・冴島鋼牙! 白いロングコートを颯爽と翻して剣を振るう姿は非常に格好良く、演じる小西さんの端正な二枚目ぶりも含めて、現代バトルファンジーとして実写作品にこのデザインを落とし込んで成立させた絵作りがまずお見事。エロ・グロ・バイオレンスを看板に掲げつつも、ヒーロー作品として、現代異能アクションとして、照れずにやりきる作品としての長所を体現した主人公で、作品トータルでの、充実した生身アクションと工夫を凝らしたCGバトルも素晴らしかったです。
 人格的には、微妙にツボを外れるというか、なんか惜しい……みたいな位置づけなのですが、多分、もうちょっと見えない所でカオルに関して悶えたりしてくれるとより好みだったかも(笑) そういった隙の無さも個性であるわけですが……なお、残念部門にもエントリーしかけていたのですが、生まれ育ちが生まれ育ちなので、熟考の末にエントリーを外しました。
 「俺は不器用じゃないし、冷徹でもないぞ」

1位 射水為朝/キラメイイエロー (『魔進戦隊キラメイジャー』)
 今年は悪役部門を筆頭に豊作だった他部門と比べると、ヒーロー部門がもうひとつだったのですが……考えてみると、恐らく脳内で「コロンさんの壁」があって、コロンさんを越えていかない限りインパクトが弱い、といった事になり……結果的にヒーロー部門が一芸勝負寄りになってしまった気がします(笑)
 そんな中、その壁を軽々と乗り越え、今年抜けてツボに突き刺さった第1位は、導きシューティング・射水為朝! 戦隊イエローの第1位獲得に、選んだ私がビックリだ!!
 為朝は第一印象からの逆転、という部分も大きいのですが、あまり好きになるタイプではなさそうだな……からの、あれなんか、滅茶苦茶真面目でいい奴だぞ?! が大変ツボに突き刺さり、仲間を想う情熱と、それ故にシビアな判断を買って出る冷静さ、そして端々に漂わせるさりげない気遣いに演者の達者さが加わってのさっぱりとした雰囲気が、大変好きなキャラになりました。また、ちょっと贔屓されすぎなのでは、と不安になるぐらいの勢いで、マッド系に寄るのでもクール気取りにされるのでもなく、その「真面目さ」を物語が茶化さずに描いてくれているのも好感度の高さになっており、その上で、「それはおまえの良い所でもあるが悪い所でもあるんだぞ」と時雨が切り込んでくれたイケてる二人が年末に大変クリティカルで、エピソードにも恵まれて圧勝。後は年明け、ヨドンナともう一つ二つドラマが発生する事を期待したいです荒川さーん!!
 「速攻で行くぞ。誕生会の続きやるんだろ!」

 そんなわけで上述のように今年は「コロンさんの壁」が存在し、ゴーカイ勢は後述する事由があり、やや悩ましいランキングになる中、年末ギリギリに傑作メイン回が出て充瑠が猛追してきたのですが、村雨真木埜を外しがたく惜しくもランク外となり、年明けの最終章で、来年の躍進を期待したいところです。
 作品部門……に進む前に、今年、特別に名前を挙げておきたい方が、岡本美登さん。
 『チェンジマン』の宇宙海賊ブーバを皮切りに、ボー・ガルダン、オヨブー、ドクター・アシュラ、と4年連続でレギュラーないし准レギュラークラスの悪役を演じ、前年からの80年代中盤以降の戦隊配信の中で、縦横無尽の活躍を大変楽しませていただきました。今年はそれに加えて、『忍風戦隊ハリケンジャー』でもサーガインで登場し、80年代悪役を意識したのかと思われる仕草がサービス満点で、キャラの格好良さもあって非常に嬉しかったです。私の中ではJACの演者さんにおいて、高橋利道さんと並んで覚えやすい顔の方だったのですが、改めて、非常に忘れがたい存在となりました。
 「豪、4+8は幾つだ?」

 最後に、時代に輝け作品部門!

☆作品部門☆
1位 『海賊戦隊ゴーカイジャー
2位 『超獣戦隊ライブマン
3位 『キカイダー01』

 第1位は、《スーパー戦隊》に触れた全ての人々へのエールにして、至高の戦隊賛歌に辿り着いた『海賊戦隊ゴーカイジャー』。後半戦はリアルタイムで視聴しており、今回、10年越しの完走となったのですが……いやぁ面白かった! 魅力的なキャラクター、力の入ったアクション、原典を大切に扱う姿勢、豪華レジェンドキャストの一方でそこに寄りかかりすぎない作り、各話アベレージの高さ、と年間通してハイレベルにまとまり、改めて、よくぞここまでやり切った、という傑作でした。
 《スーパー戦隊》35周年記念作品にして、色々な点で、時代の生んだ快作であったな、と。
 なお、作品トータルの評価に対して、各部門でそこまで猛威を振るっていないのは、後半は二度目の為、もありますが、今作の圧倒的長所としての作品のムラの無さ、キャラクターの魅力がそのまま作品の魅力に統合されている部分が、個人単位での票に結びつきにくかったとご理解下さい。特にゴーカイメンバーに関しては、個々のキャラの魅力や好きなポイントが最終的に「海賊戦隊」として分かちがたく統合されている、というのが私の中でありまして、仮に「海賊戦隊」でノミネートしたら、ヒーロー部門の1位を競っていたかな、的な戦隊です。
 「俺たちは海賊だ。欲しいもんはこの手で、掴み取る!」」
 僅差で第2位は、近い! 爆発近いよ! でお馴染み、『超獣戦隊ライブマン』。友人の死と大殺戮から始まる衝撃の開幕により、敵味方の強烈な因縁を導線としながら、復讐の一念に溺れぬ為にあらゆる生命の為に戦う大義を掲げたヒーロー像を徹底し、ヒーローにおける公と私、二号ロボの投入、といった80年代中期戦隊の課題に一つの解を出しながら最後まで走り抜けた傑作。
 科学と倫理、青春の輝きと表裏一体を成す儚さ、世界における真の「悪」とは何か……『科学戦隊ダイナマン』以降、曽田博久-鈴木武幸体制で描かれてきたテーマが幾重にも折り重ねられ、冴え渡る演出陣、鉄壁のサブライターぶりを見せる藤井先生など、完成期を迎えたといえる80年代戦隊作劇による山場山場の外れの無さに悪役サイドの使い切り具合も素晴らしく、曽田戦隊の一つの集大成として、抜群の出来映えでした。
 「おまえ等に2年の月日があったらな、俺達にも2年の月日があったんだ!」
 昨年の二強(『チェンジマン』『ガイア』)同様、今年も1-2位の作品が抜けていて3位の選定にだいぶ悩んだのですが、トータルでの迷走ぶりは如何ともしがたいものの、ワルダーの登場を契機に長坂先生の筆が走り出し、見応えのある好篇が生み出された『キカイダー01』を第3位に。
 純粋正義の化身であったイチロー兄さんが、マリ、ワルダー、の登場により物語中の“理想の超越者”となった時、善悪の判断をつけられる存在とは何か? そうなる事は果たして正しいのか? ロボットと人の狭間、人と神の狭間……といった命題が浮かび上がってくるのが刺激的で、「人造人間コミュニティの物語」として個々のキャラクターが輝きだす、味わい深い作品となりました。最終的にその命題を突き詰めきれなかった面はありますが、それはそれとして、最終回のはっちゃけ具合はこれぞ『01』! という感じで好きです(笑)
 「悪のあるところ必ず現れる、悪の行われるところ必ずゆく。正義の戦士、キカイダー01!」
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 今年は、70年代作品後半戦に始まり、現行《仮面ライダー》、《ウルトラ》3世代、《スーパー戦隊》4世代、そして初めての《牙狼》、と割とバラエティ豊かなラインナップになった事もあり、ある程度、満遍なく取り上げたいという意識の入ったランキングとなりました。
 その中で、立ち位置(使い方)の面白さが印象的なキャラクターを取り上げると、コロンさん、鳥、ザルバ……といった辺りになり、今年は個人的に、“人外のサポートキャラ”の目立った年でありましょうか。現行『魔進戦隊キラメイジャー』もその路線でありますし…………うん、本当は、『ゼロワン』もそこに入る筈だったのにな……(遠い目)。
 『ゼロワン』は、1クール目は割と好き→2クール目以降にあれよあれよと轟沈して宇宙の藻屑に消える、個人的に『ビルド』の時と全く同じパターンとなってしまい、色々な期待が消し飛んでしまって残念無念。
 むしろ『キカイダー01』の方が、振り返ってみるとなんだかんだ心に残った作品になっていて、見ている最中は七転八倒していましたが、終わってしばらく経ってみると、まあ、あれはあれで……みたいな扱いに(笑) 年代もあってお世辞にも完成度が高いとは言いがたいですが、ワルダー登場後は非常に切れ味がありました。
 ……あと、ネクサスの素さんも一応、“人外のサポートキャラ”に入るでしょうか(笑) なんで! 棺桶と! 一緒に来るんですか!!
 『ネクサスは』前期後期ともにOP曲は好きで、色々あれな『80』も「遠くの星から来た男が~」のくだりは好きで、全体的に好きな主題歌が多かったので、ちょっと小ネタを挟んでみました。
 待望の『ライブマン』、食わず嫌いだった悪印象の払拭された『ハリケンジャー』、10年越しに完走できた『ゴーカイジャー』、非常に楽しんでいる『キラメイジャー』、と戦隊勢が好調だった中、途中までの印象は良かったが後半で急失速した『マスクマン』が惜しかったですが、来年は『キラメイジャー』のクライマックスと、突然の昭和バンカラが投入された『ターボレンジャー』がどう転がっていくのか、楽しみです。
 発表された新戦隊は、香村脚本に中澤監督で、そこに白倉Pが果たしてどんな化学反応を起こすのか……現状におけるコンセプトしては頷ける一方で、好みに合うかはなんとも言いがたいものがありますが(00年代に獲得したファン層からの、大胆な切り離しを伴う原点回帰、みたいな意識も見えるので)、《スーパー戦隊》を取り巻く状況の好転を祈りたいです。
 ……どちらかというと敵側に、ハカイダーポジションとかワルダーポジションが居たらツボに入りそう、みたいな気はしています(笑) バルジオンモチーフのゼンカイギラー(仮)とか期待できそうかな、とか。
 あと『セイバー』は…………余裕が出たら…………。『ゴーバス』後半戦を配信合わせで見られるかは、見立てとしては曇り模様といった感じ(とりあえず優先順位としては『鎧武』)。
 長々と振り返って参りましたが、今年の締めは、やはりこの台詞で。
 「大人になっても覚えてて。みんな、勇気という名の魔法が使えるの。それがきっと未来を照らしてくれる。私もスーパー戦隊にそう教えてもらったの」
 それでは来年も、皆様に良き特撮ヒーロー作品との出会いがあらん事を!