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仁義なきウルトラサイン

ウルトラマン80』感想・第38話

◆第38話「大空にひびけ ウルトラの父の声」◆ (監督:外山徹 脚本:若槻文三
 トラック事故で死亡した運転手が言い残した通り、事故の原因は怪獣なのか? だが、警察やUGMの調査でも怪獣の痕跡は認められず、責任逃れの為に苦し紛れの嘘をついたに違いないと、白眼視され責められる遺族の姿が繰り返し描かれて辛い……。
 父が嘘つきでない事を示す為にも、父の言葉通りに強くあろうとする少年は、父の作った凧で大会に参加し、大空高く浮かび上がる80凧の画は格好いいのですが、劇中の問題はまだ何も解決していないので壮快な映像とどんよりした気持ちの温度差が大きく、気持ちの持っていき場に困る展開。
 少年の80凧とガキ大将の怪獣凧の激戦で大会が白熱する中、やにわに黒雲がわき起こると鳴り響く雷鳴に打たれた怪獣凧のイラストが、巨大怪獣として実体化!
 ナレーション「ナカツ山の、頂上上空に、いつも漂う、怪しい黒雲の中に潜み、乗り移るものを探して彷徨い続けていた怪獣の悪霊は、凧に描かれた怪獣の絵に乗り移り、魔の神霊怪獣・ゴースドンとなって、その姿を現したのだ」
 凄い勢いでナレーションが説明を付けるのですが、怪獣がここに現れても運転手の証言の真実性には繋がらないような……と思うも、その辺りの軋轢はマッハで解決した事にされ、UGM出動。
 一番乗りで撃墜された矢的は緊急脱出したところに生身でゴースドンサンダー(放電攻撃の特撮は格好いい)の直撃を受け、地面に転がって戦闘不能に。
 (……体が動かない。俺は、俺は死ぬのか?)
 さすがのウルトラ戦士も大ピンチのその時、矢的の脳内に突如としてウルトラの父の姿が浮かび上がる!
 ウルトラマン80、おまえの勇気は死んだのか。肉体よりも早く、おまえの精神は、死に果てたのか。ウルトラマン80よ、立て! 立って戦え! おまえの勇気を、正義の矢として、悪を倒すのだ!」
 今回はここだけで、凄く面白かったです(笑)
 有無を言わさぬ迫力で、組長から闘魂を注入された矢的――恐らく、ウルトラ戦士が瀕死のダメージを受けた時の緊急セキュリティシステムとして、細胞に刻まれたウルトラスピリットが「四の五の言わずにくされ怪獣どものタマ取らんかいっ!」と全身に命令を送り、一時的に肉体を活性化するのだと思われます――は闘争本能の命ずるままに立ち上がり、80へと変身。
 本日も得意の飛び蹴りを一発ぶちこむ80だが、またも放電攻撃を受けて大ピンチに陥った上、怪獣の背中のやたら四角い翼(伏線)による暴風攻撃に苦しめられる。怪獣は更に物凄い勢いで飛び蹴りを連発し、意外性とスピード感が重なって、強烈なインパクト。
 苦戦する80は光線技で角を破壊する事に成功すると、ウルトラ凧紐を巻き付けて自由を奪った怪獣に向けてウルトラ突風を呼び起こす事によって凧揚げの要領で宙に持ち上げ、凧から生まれた怪獣をそのまま凧扱いしてしまうのは、ここまでくると突き抜けた出鱈目加減で面白かったです(笑)
 目には目を歯には歯を屈辱には屈辱を、とウルトラ渦巻きで怪獣を空中で高速回転させて弄んだ80は、そのまま地面に叩きつけるウルトラ三倍返し。これが大宇宙において血で血を洗う抗争を繰り返してきたウルトラ族の力だ、と全身から迸るウルトラオーラを突き刺して逆転勝利を納めるのであった。
 矢的先生は少年に80凧を渡し、怪獣被害の遺族たちは、それぞれが新しい一歩を踏み出し始める……。
 ナレーション「亡き父の願い通り、フトシは、激しい風の中をぐんぐん上がって凧のような強い子になるだろう」
 物語の転機となった凧揚げにかけて、世間の冷たい風に負けず、むしろその中を高く舞い上がっていく強さを少年は身につけていくのだ、と綺麗にまとめ、ここで止めておけば良かったのに……
 ナレーション「――ウルトラの父の励ましを受けて、悪の心霊怪獣・ゴースドンを倒した、ウルトラマン80の姿を目の当たりに見た、少年フトシは」
 それもこれも80とウルトラの父のお陰だね! と因果を無理矢理に逆転させた為に、ウルトラ族のプロパガンダみたいになってしまいました。
 ウルトラの父を出す、というオーダーありきの話だったのかなとは思うのですが、「ウルトラの父を出す」から「ゲスト父子の話にする」が、“両者の間に特に繋がりはない”ので「唐突に出てきたウルトラの父と80の関係を、全く関係ない少年の心情に一方的に重ねて何か関係があった気分にさせる」というアクロバットすぎる着地で、潔いといえば物凄い潔さ。
 メインライターだった阿井さんがこの時期に降板されたという事で、石堂さん参加後の路線が更に進められた結果、家族ドラマとSF要素の結合をナレーションさんに丸投げしているのですが、UGMを無理矢理コミカルに描こうとしない分、石堂脚本回よりは見やすかった、というのが正直。
 序盤の陰鬱な展開は見ていて辛かったですが、ウルトラ闘魂注入・怪獣の華麗なる空中殺法・ウルトラ凧揚げ、の三点セットで、最終的には妙な満足感に(笑)