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遠くの星から迷い人

ウルトラマン80』感想・第37話

◆第37話「怖れていたバルタン星人の動物園作戦」◆ (監督:外山徹 脚本:石堂淑朗
 サブタイトルが、三行に、なった!!
 UGMは世間向けの広報戦略として、抽選で選んだ子供記者(少年少女1名ずつ)に基地内部や訓練風景を紹介し、爆風の中に前転で突っ込んでいく事で、怪獣野郎に対する恐怖心を徐々に麻痺させていく効果があります!
 子供記者からの質問に対して答えに詰まり、部下に振って誤魔化そうとする石堂脚本回のキャップが引き続き辛く、「どうしてUGMがピンチになってからではないと80はやってこないのか?」という禁断の問いに対しては、チーフが「人事を尽くして天命を待つ」の「人事」がUGMで「天命」が80なのだと捻りだし、アバン2分+OP挟んでAパート約6分、予告であれだけ煽ったバルタン星人のバの字も出ないまま、子供と触れ合うほのぼの路線で進行。
 掘り下げの薄いUGMメンバーをコミカルに描いて愛嬌をつけようとする狙いは悪くないのですが、(どんな事情があったのかはわかりませんが)そもそもハラダとタジマをリセットしなければ……と思うところですし、“コミカルな表現”の幅が狭い(概ね、すっとぼけた反応をするか、悪態をつくか)ので却ってキャラの濃淡が失われてしまい、新人二人はむしろ区別がつかなくなってくる事に。
 また、崩されるのがキャップ・チーフ・新人二人に偏っていて、矢的と城野は露骨に巻き込もうとしない為、作劇の不平等感も目立ちます(これなら、誰か1人をコメディリリーフに決め打ちした方が、色々とスムーズ)。
 子供記者の抽選に外れてやさぐれる少年にようやく悪魔の囁きが接触……したと思ったらその少年がいきなりUGMの基地内部に居る、謎展開。
 そこから2分以上も経ってから、少年は記者の少年に「お母さんが事故に遭ったと伝えに来た」事が判明するのですが、スペースマミー体験飛行から戻ってきた少年少女に極めて冷静に「普段と声が違う」と指摘されると露骨に動揺し、あまりにも雑。なんの確認作業もせずに全方位素通しのUGMの対応も前回に続いて煮すぎた春雨のようで、UGMのレッドマフラー隊化が、さすがに辛い……!
 あれこれあって少年が偽物らしいと判明するも、チーフの命令を振り切り、敢えて一対一で対峙する道を選んだ矢的の前で少年が現した正体は、バルタン星人。その目的は、80をバルタン星に連れ帰り、下等動物としてバルタン動物園で見世物にする事であった……つまり、地球はどうでもいいまさかすぎる展開(笑)
 矢的(今回も敵性宇宙人に正体バレバレ)と二人きりになるだけなら何もUGMに潜入しなくても良さそうなものですが、恐らく「シルバーガルも必ずセットでお願いします」とクライアントから無茶を言われて、泣く泣く高難度ミッションに挑む事になりました。
 余裕かましていたらバルタン母船にキャプチャーの危機に陥った矢的は、(人間として、ギリギリの限界まで努力するんだ)とすぐに変身しない理由を自分に納得させて機体の脱出装置を作動させ……それ自体は《ウルトラ》シリーズのぶつかりやすい命題への解答として納得のいくものなのですが、矢的の場合は当人が人間(地球人)なわけではないので、敢えて擬態である人間として努力する必然性は薄く(序盤だったら、生徒への手本とか意味づけできましたが)、高度に闘争本能の発達した先進種族として「人間の自助努力を妨げないようにする」視点とも違うので、こだわる場所が明らかにズレています。
 そもそも、胡散臭いとわかっている少年の正体を「人間として」UGMの仲間に伝えようとするのではなく、正体を暴く為に命令を無視して一対一の状況を作り出している時点で「80として」行動しているわけで、序盤からの欠陥ですが、どうにも地球人格とウルトラ人格が統合ミスで錯乱気味。
 パラシュートを切断されて結局80に変身した矢的(努力の成果を活かして「人間として」一撃入れる前に努力を無に帰されるので、どうにも締まらない展開)は、巨大化したバルタン星人の瞬間移動をウルトラアイによって見切るもハサミと蹴りで猛攻を受けるが、激しい空中戦に持ち込むと、ジャイアントスイングからバルタン母船に叩き込み、完全勝利。
 UGMは子供達に大人気! をアピールしつつバルタン星人を登場させ、更にシリーズの命題を盛り込んだ結果、そもそも矢的先生のアイデンティティが不透明という今作2クール目以降の抱える問題に正面から激突してしまい、やはり学園設定の消滅後、「矢的猛の地球人へのスタンス」が再設定されていないのは物語としては厳しいところです。