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四大巨神、地球最大の決戦

『魔進戦隊キラメイジャー』感想・第33話

◆エピソード33「巨獣パニック大激突!」◆ (監督:田口清隆 脚本:荒川稔久
 タンク! シールド! サムライ!
 「この俺の最大の作戦が今、幕を開けるのだ!」
 ヨドンアイビーによる地球ヨドンフォーミング計画のタイムリミットが迫る中、小夜を欠き、邪面獣3体同時出現の大ピンチに深刻な空気の作戦会議が描かれ、机を囲む一同は至極真剣なのに、状況の見立てに使ったコマがそれぞれ素っ頓狂なのが上手いくすぐり(特に前回今回は面白邪面師ポジションが不在なので、これが『キラメイ』らしさの表現にもなっています)。
 「……俺のせいだ。俺が調子に乗って背中を押したせいで、小夜ねぇは」
 どう考えても不可抗力なのに、小夜が敵の手に落ちた事に深く落ち込むタメくんは、ホント真面目でいい奴だな……!(ここまで落ち込むという事は、小夜ねぇに近付く悪い虫への身体検査が甘かった事を反省しているのかもしれませんが……なお悪い虫は今回潔く登場せず、戦隊らしいゲストの扱い方ではありますが、時雨と宝路から小夜へのリアクションをねじ込む場所が無かったのは、ちょっと残念)。
 瀬奈と姫様が即座に両サイドから為朝を励まして劣勢挽回の為に切り替えさせるのがおいしく、三怪獣を各ロボットで相手して、アイビーは王様でどかーん、と真面目な顔でアヒルの置物を動かす充瑠(笑)
 ところが、アローで連絡を取った王様は、聖地に乗り込んできたガルザの相手で手一杯。
 「すまない。今は手が離せない。充瑠くんを借りるよ」
 か、借りられた……?!
 「私はいつも、君と共にある」
 超不穏な事を言い出した!
 王様の体内に精神を引きずり込まれた充瑠は聖地での兄弟対決を目撃し、修行を重ねて怒りとか憎しみとか嫉みとか妬みとか僻みとかのエネルギーを高めたガルザが、これまでの戦いで把握したキラメイジャーの戦力を計算した上で、突出した切り札であるオラディンを封じる作戦に出た事を知る。
 「いくら奴らがあがこうと、勝てる筈がないんだよ!」
 「そんな事ない!」
 切り札としてのオラディンの存在を強調してきた物語の流れにより「それを封じにくる悪役」と「それを封じられても諦めないヒーロー」の対比がビシッと決まり、今作ところどころで隙はあるものの、大枠の構成が納得度の高いものになっているのは、大きな強み。
 「王様は来られない。為くん、俺たち二人で、小夜さんを助けに行って、種を破壊しよう」
 「……わかった」
 絶望的状況、封じられた切り札、からの、でも俺たちは負けない! がヒーローの姿として劇的になり、姫様がヘッドドレスを取り出してお母様に触れてくれたのも鮮やか(これは後で、伏線として機能する事に)。
 「みんな……絶対無事に再会しようぜ!」
 為朝の合図でミッションスタートし、キラメイジンのバンク合体前に、ジェットとヘリコが飛び出すカットを挟むのが、全体に勢いをつけて非常に良かったです。
 研究所へ乗り込んでいく充瑠と為朝のダッシュ変身の背後に、3大ロボ登場の絵を合わせ、キラメイジャー強襲!
 地上のバトルと巨大戦をパノラマ的なカメラ映像でカットを割らずに納め、突き刺さる日本刀! 突き刺さる砲弾! 突き刺さる光線!
 「私の胸に、絶望の二文字はない!」
 「ならばこの俺が植え付けてやる!」
 聖地ではオラディンとガルザが激しくエネルギーをぶつけあう中、研究所に突入するもハイパーペチャットの大軍団に囲まれた赤黄だが、床を撃ち抜く事で地下への侵入に成功。アイビー種子を破壊しようとするも小夜を人質にしたヨドンナが現れて武器を手放さずを得ず、地上では、まさかの邪面獣ジェットストリームアタックにより、ロボット勢が大苦戦。
 悩んだ赤は何故かアローを召喚するが、その一撃は種子ではなく虚空に向かって放たれ……キラメイジャーに勝機無し? と思われたその時、天井を突き破ったグレイトフルフェニックスの巨大な手が、ヨドンアイビーをぐいっと確保。
 王妃様のヘッドドレスを目にしていた充瑠は、王様も石に意識が移せる筈だとひらめキングし、王様が一時的に意識を宿したアローを射出。アローに宿った王様は自らの力で聖地へと飛んでいき、フェニックス石からキラメンタルが消えたと思い込んで勝利の哄笑をあげるガルザを貫くと、その隙を突いて再びフェニックス石に乗り移り、正気を取り戻したハコブーと合体して地球へと駆け付けたのだ!!
 駆け付けた、のだ…………?
 一応、ヘッドドレスで布石を打った事にしてはいるものの、好き放題に石から石へ意識(と言っていますが、実質的に魂)を動かせる時点で「???」の消えない出鱈目な力技なのですが、作品全体への好感度の貯金があるので、これぐらいはまあ、許せる範囲。
 ……どこまで荒川さんの筆が反映されているのかわかりませんが、戦隊×荒川稔久で考えると、デカマスターしかり、ゴセイナイトしかり、ゴーカイシルバーしかり、作品世界がそこまで重ねてきたものを時に粉砕するような出鱈目なヒーロー像というのは、ヒーロー性の持つ根源的な要素として、荒川さんが好むところだったりするのかもしれません(『ゴーカイvsギャバン』のギャバンなども、そういった描かれ方でしたし)。
 その点でオラディンに関しては、「戦死」から始まった事により、このキャラはこういうキャラです、と受け手に納得してもらう為の出鱈目さのファーストインパクトが不足しているのが、作り手と受け手の間で、しっくりこないズレを生んでいる面があるのかもな、と(途中でオラディンの扱い方そのものが変わって、中盤から最強キャラ描写が入るようになった可能性も考えられますが)。
 「あーあ……面白い展開になってきちゃった。僕は帰るけどね」
 ヨドンナは撤収、小夜は解放、種を確保し、王様も戦線に参加と、逆転したかに思われた戦況だが、ヨドン陣営にはグレイトフルフェニックスの足にしがみついて地球に辿り着いたガルザがスモッグジョーキーで急遽乱入。
 決して諦めないヨドンガッツを見せたガルザ、むしろアタマルドに放置されていたら、それはそれでどうなったのかちょっと気になりますが、あの世界でガルザが好き放題に暴れまくったら、王様が精神崩壊する可能性があったのか、或いはガルザが、世界ごと封印されてしまう危機だったのか。
 「諦めろガルザ! 地球をヨドンへイムみたいにはさせない!」
 「ほざくな。完全発芽まであと5分だ」
 赤は王様、黄桃はキラメイジンに乗り込み4vs4の巨大戦でアイビー種子の争奪戦が展開し、スーパー戦隊》名物・大事なアイテムパス合戦を巨大バトルで行うのは、シリーズ過去作品の意識が強く見える今作らしい成る程のアイデア
 予告に入っていたスモッグジョーキー急降下列車アタックは格好良く、なんとか種子の破壊を試みるチームキラメイだが、ドリラー渾身の一撃でも歯が立たず、逆にジョーキーの手の中でとうとう芽の先端が出てきてしまう。
 「もはや猶予は無い。勝てるな諸君!」
 「勝てます! 為朝の作戦で!」
 「っおい! ……て、一応ツッコんだが任せろ」
 弱気を見せる緑に王様がキラメイジャーへの信頼を被せ、それにノータイムで断言した赤がすかさず黄に振るパスの流れが格好良く、三怪獣の連携攻撃を逆手に取ったフォーメーションで迎撃に成功するチームキラメイ。
 「おのれ! この種だけは守る!」
 「もう諦めろ!」
 ……ここだけ取り出すと、赤の方が悪役っぽい(笑)
 ジョーキーさんは殺らせない! と立ち上がった三怪獣は、グレイトフル宇宙斬りで敢えなくまとめて爆砕されるが、ドリラーパンチで傷一つ付けられなかったアイビー種の外殻は、そのグレイトな必殺技でも破壊不能、という計算結果が博多南から伝えられる。
 「おい無鈴、計算間違いだろ?!」
 「検算は5回もした!」
 は博多南さんの立場とエンジニアとしてのプライドが見えて格好良かったです。
 「はははははははは!! 後一歩というところで残念だったな。今度こそおまえたちに為す術は無い。地球はヨドンヘイムと化すのだ! ははははは、はっはっはっははは!」
 もはや種を大事に抱えている必要も無くなった気がするジョーキーの中で勝ち誇るガルザだが、再びひらめキングした赤のアイデアにより、王様の意識をアローに移す事で、なんとアローがロボットサイズに巨大化。
 今回2回目のひらめキングにして今回2回目の出鱈目な力技なのですが、平たい頭で台座になるギガントドリラーの図が面白すぎたので、何もかも受け入れます(笑)
 『ゲキレン』コラボ回でシルバーが“自転車を下から支える人”をやっていたのが活用されているのも、上手い。
 15の魂が一つになった、全キラメイエネルギーを集中したグレイトフルゴーアローがアイビー種子に直撃し、木っ葉微塵にチェックメイト
 「……うぉぁぁ!! 運が良かったな、オラディン。だが、次はこうはいかんぞぉ!」
 抱えていた種ごと消し飛んでいたらどうしようかと思ったジョーキーはなんとか無事で、鮮やかな捨て台詞を残して退却し、この俺の最大の作戦は今、幕を閉じるのでありました。
 (……ガルザ、おまえは、この私を封じる事で、作戦が成功すると思ったようだが、それは違う。……小夜くんは、捨て身の変身解除で、ヨドンアイビーの情報をみんなにもたらした。瀬奈くん、時雨くんも、宝路も、それぞれの持てる限りの力を尽くして、邪面獣たちにダメージを与え続けた。為朝くんは、冷静な分析で、敵の攻略法を生み出した。そして充瑠くんは、二度のひらめキングで、敗北寸前の状況を、見事に翻した。
 ……ガルザ、おまえの敗北の理由は、充瑠くんをリーダーとした6人を甘く見た事だ。傷ついても磨き上げ、また、輝く。ピンチになるほど心を寄せ合い、増幅し合えるのが、彼らのキラメンタルなのだ!)
 注目していたオラディンとガルザのやり取りは、いきなりバトルに入っていてそれどころではありませんでしたが、ラストの王様モノローグにおいて後半の「……ガルザ」のところで、映像が「勝利の凱旋を行うキラメイジャー」から「ヨドンヘイムに帰還したガルザの孤独な背中」に切り替わる事で、キラメイメンバーを讃える王様のまとめが、そのままガルザへのメッセージとなって綺麗に着地。
 王様は相変わらず出鱈目なのですが、「そんな王様に依存しきっているわけではないキラメイジャー」と「そんなキラメイジャーを信じる王様」の関係性を改めて組み直せたのは、良かったと思います(塚田-荒川的には、デカマスター案件の回避は念頭にあったのかもしれません)。
 また、博多南さんの「検算は5回もした!」を間に挟む事で、ガルザの悪の計算も含めて、限界は超えないが、計算は越えるキラメイスピリットを表現できたのは、秀逸。
 《ウルトラ》シリーズでの実績があるとはいえ、《スーパー戦隊》自体に初参戦の田口監督に一つの山場を任せる大胆な起用でしたが、『キラメイジャー』とはこういう戦隊だ! のど真ん中をしっかりと射抜いてくれて、特にラストのモノローグに被せた両陣営の対比は鮮やかでした。
 「見ていろキラメイジャー。これまでのような生ぬるい作戦は終わりだ! 俺のこの手でおまえらを、地獄の底に落としてやる!」
 屈辱と怒りに震えて邪メンタルを滾らせ、ますますハカイダー化の進むガルザの明日はどこにあるのか。そしてキラメイジャーはゆく。ヨドン軍との、果てしなき戦いの道を。
 ……ところで、第9話の時点ではキラメイジンはカウントされていなかった様子でしたが、ガルザが口にしていた「クリスタリアに伝わる、伝説の四巨神」は今回の四大ロボという事でいいのか、それとも年明けに一ひねりあるのか。
 次回――為朝×ヨドンナ再び! に、今作では意外とやっていないコンビ回で楽しみ。