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狼、誓う

牙狼GARO>』感想・第15-16話

◆第15話「偶像」◆ (監督:金田龍 脚本:小林雄次梶研吾
 創作活動に行き詰まる造形家が狂気に近い焦燥の末にホラーに取り憑かれる、「悪魔に魂を売る芸術家」『牙狼』バージョン。
 ところがその造形家が、雑誌のインタビュー記事においてカオル父の名前をあげていた事からあれよあれよと運命の歯車は転がりだし……わざわざ電話連絡してくれた出版社の人(10年以上前に置き忘れたぬいぐるみも保管してくれていたり、滅茶苦茶いい人)にはなんの責任も無いのですが、またも変態を呼び寄せてしまうカオル。
 そんな事は露知らず、造形家に取り憑いたホラーを追いかけていた鋼牙だが、なかなかの強敵。回避行動をしながら空中で円を描いて着地と振り向きざまに鎧を纏う格好いいアクションを決めるも、身軽に飛び回るインコホラーを仕留めきれずに逃がしてしまい……
 「なぜ境界を越えたのです」
 「あの街は西の管轄です」
 「あなたの戦うべき場所ではない」
 お・こ・ら・れ・た。
 「……その台詞、こいつにも言ってやれ」
 おおっと、冴島鋼牙選手、咄嗟に横を向いて涼邑零選手を巻き込みに行ったぁ!
 「ふっ。俺なら、確実に仕留めてた」
 だが、零選手、余裕のカウンターが脳天にヒィッッット!!
 「俺はホラーを狩るだけだ。西も東も関係ない」
 話・ず・ら・し・た(笑) (冴島鋼牙 2R TKO負け)
 そんな鍔迫り合いが起きていたとはこちらも勿論知るよしもなく、造形家の元を訪れようとするカオルは、零と遭遇。
 「俺が、君を守る」
 セクハラ黒王子枠の零ですが、その悲劇的な過去が描かれた事で、色々やさぐれてはいるけど人を護ろうとする意思は本物であると了解できるようになり、2クール目早々に過去が描かれたのは、視聴者と劇中人物の情報差も活きて、良いタイミングとなりました……まあカオル視点だと、白い方も黒い方も裏設定が多すぎるというか(笑)
 理想の作品を求める造形家は、粘土像に合わせてモデルの体がひしゃげる因果の逆転した力を得、間接的な人体破壊と屍食の描写は今作ここまででもトップクラスにグロテスク。そんな凄惨な映像の合間に、海や空といった自然風景、また廃工場などをオブジェ的に捉えた画が少々ファンタジックに差し挟まれるのは、「指輪」回なども踏まえると金田監督のセンスが出ている感じでありましょうか。
 「鋼牙、カオルがホラーとニアミスだ」
 「……あの、馬鹿」
 一方、廊下に立たされていた鋼牙はカオルの身に迫る危機を知り、色々な意味で真心が篭もっていて良い呟きでした(笑)
 「鋼牙! 二度も掟を破って許されると思ってい」
 「一度も二度も同じだ!」
 鋼牙は管轄を越えてカオルの元へ急ぎ、父の話を聞く筈が狂気に陥った造形家に追われる事となったカオルは、いつになく正統派のホラー映画ヒロインとして悲鳴をあげて逃走中。
 「才能のある人間には相応の天罰が下る。あの父親のように、君も死ぬんだな」
 「……芸術に……才能なんて関係ない」
 「才能を持たずに生まれた、人間の苦労が、君にわかるかぁ」
 「お父さんは、自分の信じる道を、極めたいって思ってた。ただ、それだけ」
 悪魔に魂を売った男を相手に、カオルの芸術家としての志、わだかまりのあった父への歩み寄りが改めて描かれたのは巧く繋がり、絶体絶命のその時、造形家の手にしたナイフを弾き飛ばしたのは――破邪の短剣。
 キャットウォークの手すりに刃を滑らせて火花をあげるのが二刀の見せ方として大変格好良く、ホラー造形家に斬り掛かろうとする零だが、咄嗟にカオルを持ち上げた造形家は足場の下へと投げ落とし、さすがの零もどうにも出来ないその時、飛び込んできた鋼牙が――ダッシュお姫様抱っこ(5話ぶり3回目)。
 そして、今回は、丁寧に下ろしました!(初)
 「悪趣味極まりないな。女の子はもっと優しく抱いてあげないと」
 今回は零のターンとなり、鎧を装着すると二刀を接続した飛び道具でインコホラーを切り刻み、怒濤のラッシュで、ホラー伏滅。
 「美しい……完璧な造形……俺にこんな作品が、作れたら……」
 ゼロに羨望の指先を伸ばした造形家は消滅し、落下時に落としたスケッチブックを零から受け取るカオル。
 「そんじゃまた」
 「待って! …………ありがとう」
 「あのさ……俺、名前は零だけど、ゼロだけど……ちゃんとここに居るから」
 自らゼロで構わない……そう思った男の心にしかし、例え名前は「零」であろうとも、誰かに己が存在を目にして欲しいというさざ波が立ち……そうでなければ、魔戒騎士は戦い続けられないのではないか、そんな事も感じさせつつ、今回のEDは零バージョンで、つづく。

◆第16話「赤酒」◆ (監督:金田龍 脚本:小林雄次雨宮慶太
 「この風、郷愁をそそられる……」
 「ああ」
 「鋼牙、時は満ちた」
 鋼牙とザルバは、魔道具を作る職人、魔戒法師・阿門の元へ向かい、劇中初めて、鋼牙が礼儀正しい!!(笑)
 20年に一度、因果の巡りからホラーの出ない夜――鋼牙は旧知の法師より、20年前に鋼牙の父・大河と法師が競うも決着の付かなかった魔戒ゲーム・バルチャスの勝負の続きを求められる。
 かくして二人は木札をぶつけ合っては互いの気力によりイメージバトルを繰り広げ……OP映像を流用している関係で、法師が明らかに脳内に零を召喚しています(笑)
 「時に……ゴンザは、元気か」
 「相変わらずです」
 法師の問いに鋼牙の表情が緩むのが大変おいしく、ホラーとの戦闘無しで鋼牙とゲストがボードゲームを繰り広げる合間合間に、終盤戦に向けた数々の布石、父・大河のエピソード、鋼牙の普段は見せない表情と本音、と様々な要素を詰め込み、法師役の麿赤兒さんの演技力で間を繋ぐという、非常に大胆な内容。
 「おまえは、本気で人を愛した事があるのか? 大河は、おまえを愛するがゆえ、自ら犠牲となって死んだ。だからおまえは、人を愛する事を無意識の内に拒んでいる。愛すれば、いずれ残酷な別れが訪れる事を知っているから」
 「違います」
 「いいや。だからおまえは未だにあの女に、真実を打ち明ける事も出来なければ、浄化の為に、命を賭ける事もしない」
 「違います!」
 思わず席を立った鋼牙は、法師に背を向けながら、絞り出すように言葉を紡ぐ。
 「最初は……ホラー狩りの餌にすぎませんでした。しかし、気付いたのです。あの子の存在が、俺の戦いの、糧になってると。…………あの子は……俺の手で守ります! 100日目が訪れる前に、必ず。……それがたとえ、魔戒騎士の道に反するとしても。あの子の命が、少しでも輝けるなら!」
 「――それが聞きたかった」
 前回ラストの零の言葉に滲む想いの流れで、人を護ろうとするならば否応なく人と関わる事になり、それはやがて、人と向き合う事を求められる……魔戒騎士としてホラーを狩る一振りの剣であろうとした鋼牙が、魔戒騎士であるからこそ“誰か”の存在に意味を感じる自分を認め、それを聞いた法師は、カオルの浄化に必要な素材が近々手に入りそうな事と、巨大なホラー出現の予兆が高まっている事を告げる。
 「だがその時、あの女を守ってやれるのは、おまえだけだ」
 そしてもう一つ、ホラーに喰われて死んだと思われていた、大河の弟子バラゴの生存可能性が高まり、父を殺したのは、バラゴを喰ったホラーだと思っていた鋼牙は困惑する。
 「己の友が敵になることもある。また、その逆もしかりだ。広い目で、物事を見ろ」
 「……俺にはわかりません。誰が敵で……誰が味方なのか。そして、この戦いに、終わりがあるのか」
 「言っただろ。魔戒騎士の戦いに、終わりは無い」
 バルチャスは法師優位に進むが、鋼牙の投了を止めた法師は勝負の結末を次の機会に預け、それはそのまま、20年前の大河の言葉であると明かす。
 「勝負は20年後にお預けか」
 「……あの爺さん、20年後まで生きてると思うか」
 「簡単にはくたばらんだろ」
 鋼牙は法師の元を後にし、ゲームの決着を持ち越しつつ互いの「約束」とし、それを大河の存在と繋げたのは、気持ちの良い着地点。また、鋼牙の中に受け継がれる血と想い、そして今も鋼牙を見守る大河のにこやかな姿を法師がイメージする事で、昭和スポ根スパルタ親父の要素が強かった大河への好感度に上方修正がかかったのは良かったです(笑)
 「大河、おまえさんの息子は、立派に成長した。ただ……次に会う時は、こいつを飲み交わしたいな」
 サブタイトルに用いられ、濃厚なトマトジュースのようで印象的だった真っ赤な酒杯――どこか不吉な色彩が視聴者の心を乱すと共に、鋼牙のトラウマを刺激し、法師はその克服を期待してみせる暗示的要素――にカメラが寄るのは、洒落たオチ。
 そして帰路についた鋼牙は、心配して迎えに来たらしいカオルと再会。
 「……おかえり」
 「……ただいま」
 無表情を、取り繕った!
 バトル無しを工夫で乗り越える系のエピソードでしたが、麿赤兒さんの強烈な存在感のみならず、旧知の人物に対していつもと違う表情を見せる鋼牙、なんだかんだとその鋼牙の帰りを待って食事にも手を付けないカオル、そのまま庭で眠り込んでしまったカオルにそっと毛布をかけるゴンザ、とキャラクターの魅力を加えるサービスシーンも行き届いており、今作らしい気配りのある内容でした。
 今回のEDは鋼牙で、次回――再びエロス&バイオレンス方面?