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狼、刻む

牙狼GARO>』感想・第3-4話

◆第3話「時計」◆ (監督:横山誠 脚本:梶研吾小林雄次
 日没と共に行動を開始する新たなホラーは、人間に憑依して内部から食らうのではなく、時計に憑依する事で人から人に渡り歩く厄介な性質を持っており、ホラー時計をはめた人間の胴体がねじ切れて砂(食べ滓、との事)と化す、ホラー寄りの演出。
 ホラーの血を浴びたヒロイン・カオルには100日のタイムリミットが示唆され、世間離れの挙げ句、傲岸王子様キャラと化す鋼牙は少女マンガの世界を一直線に目指すが、あっさりと正体の明かされる指輪探知機。
 「何それ気色悪い」
 真っ逆さまに悪質なストーカーへと転落した鋼牙は続けて女子校へと突入し、やはり、お巡りさんを呼ぶべきだったのか。
 一方、少女マンガの世界なら、僕が負けるわけにはいかないな! と京本先生(やはり机の上には顔写真入り帯付きの自著が転がっているのですが、いったい誰に何をアピールしているのですか)が、物凄い開襟シャツ姿で登場し、イタリア?! 時空がねじれて、ここだけイタリアなの?!
 時計ホラーを追う鋼牙は、憑依された女子高生を助けようとした結果、今度はマダムに憑依されて水中へと逃亡を許し、巡り巡ってカオルに近付く時計ホラー、自転車の後輪に負ける(笑)
 クライマックスの舞台が教会の大時計の機械室というのは大変盛り上がるシチュエーションで、既に同化していた巨大時計ホラーの繰り出す歯車との戦いは、非常に格好良かったです。
 「たとえ! 残された時間が僅かでも! 人には、その時間を最後まで生き抜く権利がある! 貴様にその女は渡さない!」
 鋼牙がカオルを殺さず、気に懸ける理由が明らかになり(更にその背景がありそうですが)、歯車攻撃を防ぎつつ、黄金騎士へと変身。
 「な、何故だ……何故そこまで人間に荷担する」
 「それでも守るに値する。俺は信じる!」
 このやり取りはなにやら、魔界騎士そのものの出自に関わっていそうですが、黄金騎士必殺《おうぉー おおおおおー おおおーおー おーおーおーーー!》が炸裂し、時計ホラーを調伏。
 同じ「時計」を素体としながら、昆虫のような形状から、体内に魔界騎士を取り込む巨大な存在にまで姿を変え、「怪人」にこだわらなないデザインが独自の面白さを引き出して、秀逸なホラーでした。
 鋼牙は崩壊する教会からヒロインを救出し、ナチュラルなお姫様抱っこからのナチュラルな投げ捨て。
 「いちいちうるさい女だな」
 抗議するヒロインに時計を返却し、冒頭では「みんな何をそんなに急いでいるんだ」と呟いていた鋼牙がヒロインに告げる、「時間は大切にしろよ」が効くのは、上手い構成。
 そして今回は、夜の街を自転車で彷徨い続けるヒロインの背中でオチとなり、果たして、京本先生の原稿は間に合ったのか?!

◆第4話「晩餐」◆ (監督:横山誠 脚本:梶研吾小林雄次
 「逃げ出してきたのですか?」
 「尻尾を巻いて」
 「情けない」
 原因に心当たりはあるけれど、上司からの風当たりがきつい!
 魔界騎士・冴島鋼牙の次なる標的は、天才外科医・立神。自らの手術によって命を救った患者の、生の喜びに満ち溢れた状態を美味しくいただくのが至高の食事、と美食家を語る悪質な性格を全面に押し出し、ゲストの加勢大周の、(人間視点では)淡々と狂気に満ちた表情がインパクト大。
 お礼に訪れた元患者を後頭部から無数に生やした手術用具で切り刻み、横山監督の嗜好なのかパイロット版に比べるとゴア表現がちょっと強め。舞台が病院という事もあって血の表現も生々しく、ここまで来ると描写としてはちょっと苦手になります。
 ただ、犠牲者を切り刻むのに使った手術用具を一人オペにも用いているのは面白く、毎回こういったギミック面で面白がらせてくれるのは、今作の長所。
 「病院内での喫煙、鎧の召喚は厳禁だ。それが、エチケットだ」
 立神病院に乗り込んだ鋼牙だが、強力な結界の作用により魔界騎士の力を思うように振るえず、やむなく一時撤収。
 鋼牙の黄金騎士モードは、内部的な「変身」なのか、外部的な「装着」なのか悩んでいたのですが、医師ホラーいわく「鎧の召喚」という事で……イメージとして近いのは「蒸着」でしょうか。
 一方、家賃の滞納で部屋を追い出されたカオルは、出版社勤めの友人(第2話で登場)宅にあがりこむと、渋る友人に殺人料理を振る舞って病院送りとし、計・画・通・り(違う)。
 一日中、油絵を描いている同居人とか迷惑以外のなにものでもないので、冴島邸で同居生活へのフラグの香りが漂いますが、それはそれとして、友人の入院先が立神病院だった事から、ホラー医師、そして鋼牙とご対面。
 「あの男はホラーだ。おまえを食らおうとしている。あいつを野放しにしておけば、沢山の人が犠牲になるんだ。――俺を信じろ!」
 鋼牙の言葉がカオルを動かす事で、感情表現が薄く、口数と説明が少ないが、どんなに傷つき、他者に理解されなくても怯まない鋼牙の行動理念が強く打ち出され――何かと説明が少ないのは恐らく、誰かに理解される事を求めていないからなのだろうな、と――被害者遺族の少年に「強く生きろ」と告げるなど、鋼牙のヒーロー性を早めに明示してくれたのは、良かったところ。
 ロングコート好きとしては、季節感無視で白いロングコートをばっさばさと翻しながら跳んだり跳ねたり歩いているだけで+30点なので、今後の活躍にも期待です(同居の暁?には是非、カオルの殺人料理を無表情で食べきってほしい)。
 鋼牙の頼みを聞いたカオルは、ホラー看護士に追われながら病院の屋根に登るホラーゲーム展開で結界の札を引きはがし……鋼牙、なまじ自分が超人的な身体能力を持っているばかりに、三角屋根に登るぐらい誰でも出来ると思っているのでは(笑) 第1話の際も、「結界ぐらいパンチ一つで破壊できるだろう」と考えていた疑惑が浮上してきました。
 ホラー医師により、鋼牙の父も黄金騎士でありホラーに食い殺されて死亡した事が明らかにされ、結界の解除により、満を持して鎧召喚した黄金騎士は、看護士ホラーをさくっと成敗。
 「殺されて幸せなものなどいない! ……いや、俺は認めない!」
 少年期の回想が差し挟まれ、ベタなところでは、鋼牙の父が愛した女(鋼牙母?)が、ホラーだった/ホラーに憑依された/ホラーの血を浴びた、末に、父がその手にかかるなどして満足げに(?)死亡した事を鋼牙は肯定しがたいトラウマとして抱えている……などと推測されますが、出し惜しみしすぎずに主人公の過去をあれこれ予想させる要素を散りばめてくれるのは、良い具合に先に興味を引きます。
 黄金騎士は剣をライターの炎であぶる新モードで、クロスに放った衝撃波を自らの鎧に纏い、地を疾る斬撃で医師ホラーを両断。ホラーを貫いた剣風が、背後の病院の看板を縦に灼き消すのが大変格好いい。
 「頼む。最後の晩餐に、その女の肉を……」
 「ふざけるな!」
 何やら魔界語?で妄執を呟くホラーにトドメの横薙ぎを浴びせ、今度は横に飛んだ剣風が看板を切り裂くと、十字が完成して看板が消滅する、のは極めて格好いい締めでした。
 鎧を解除した鋼牙は汗だくで膝を付き、無愛想で説明不足でデリカシー皆無だが、人を守るために戦う心は真実だと感じるカオルであった、でつづく。