東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

永遠の戦士たちはいつも君のそばに

海賊戦隊ゴーカイジャー』感想・第50話

◆第50話「決戦の日」◆ (監督:竹本昇 脚本:荒川稔久

 ――勝利の明日が待っている 約束さ 終わらないファンタジー

 絨毯爆撃を受けるゴーカイジャーはなんとか巨大ロボに乗り込むが、その頭上に広がるのは無数の帝国艦隊……圧倒的な物量と火力の前にレックスが倒れ、火力には火力だ、とフルブラストで対抗から、ライオンに風雷丸にヘッダーにビースト、と次々召喚する総力戦となり、「借りましょう」とか「頼んだぞ」とか、すっかり「力を使う」から「一緒に戦う」になっているのが、沁みるところ。
 マッハルコンとマジドラゴンも呼び出し、ドリル神も立ち上がるとメガレンジャーの“大いなる力”を発動して(銀の方で引き出せるという事は結局あの後、二人は焼き肉の絆で結ばれたのか)カルビを焼き始め、じゃなかったメガウィンガーの翼を装着し、ゴーカイオーは劇場版で見せたゴレンゴーカイオーへと合体。
 艦隊相手の激しい空中戦が展開し、スパルタンだダイナマイトだフェニックスだ、と焼き払い、地球の空を轟沈する宇宙艦隊の爆炎で紅く染めた二大ロボは、恐らく戦隊史上に残るキルマークを稼ぎ出す。
 「見たか……これがレジェンド大戦を勝ち抜いた、スーパー戦隊の“大いなる力”だ!」
 「……ふん、悪あがきが二度通用すると思うな」
 だが、ザンギャックの艦隊は雲霞の如く湧き続け、次々と戦闘不能に陥る“大いなる力”。
 「貴様等も、派手に散るがいい」
 旗艦から放たれたグレートミサイルによりドリル神とゴーカイオーは立て続けに撃墜されると、追い打ちのミサイルの直撃を食らい、ロボットから投げ出される6人。そして、鳥ーーーーーーーーーー?!
 憎き海賊達を圧倒的人海戦術でねじ伏せた皇帝は、敢えて一夜の猶予を設け、地球人類に皆殺しを宣告。
 「我らに逆らった事を、じっくりと後悔せよ。うわはははははははは……!」
 「なんかねぇのか……あいつらに勝つ方法は」
 散り散りになった海賊たちは歯噛みし……その時、一同の脳裏に思い浮かぶのは金色ピラミッド。
 「宇宙最大のお宝……」
 だが、その代償は――
 「使える? アレを……」
 「僕らがアレを使っちゃったら……」
 ――34のスーパー戦隊の存在そのもの。
 「どうすりゃいい……」
 悩める海賊戦隊はひとまずガレオンでの合流を目指し、その途上、瓦礫に挟まれて逃げ遅れた母子を救おうとした鎧は、元マンモスレンジャーの恐竜人類・ゴウシと出会う。
 ルカとアイムはゴーゴーファイブ回で出会った母子を目撃し、幼い少女がゴーミンの突き出す銃から母と妹の前に立ってかばおうとするところを救う。
 「偉いぞー。よくママや妹を守ろうとしたね」
 「怖くはなかったの?」
 「怖かったけど……ゴーピンクのお姉ちゃんも怖かったって言ってたから」
 「マツリさんが?」
 「スーパー戦隊の人にも怖い時があって、でも守りたいものがあるから勇気を出して戦ったんだって。だから……」
 「……そっか」
 ヒーローから勇気を貰った少女が大切なものを守ろうとする姿を見せる、べったべたな展開なのですが、50話の積み重ねの上でそれが具体的に示されるのが、海賊戦隊の旅路と重なって胸にぐっと突き刺さります。
 ジョーとハカセは崩れたビルの中から人々を救い、笑顔を忘れず励ましの言葉をかけ続ける中年男性(『天装戦隊ゴセイジャー』より天知博士)を目撃。
 「大丈夫ですよ。諦めない気持ちがあれば、必ずなんとかなります。弱気はNGですよ! スーパー戦隊もそうやって、ピンチを乗り越えてきたんです!」
 そして、その傍らでは、一人の女性(『魔法戦隊マジレンジャー』より山崎さん)が子供達に励ましの言葉をかける。
 「大人になっても覚えてて。みんな、勇気という名の魔法が使えるの。それがきっと未来を照らしてくれる。私もスーパー戦隊にそう教えてもらったの」
 そしてマーベラスは、かつて第2話で出会った「少年」が、野球殺法で木刀を振り回してゴーミンと戦っているのを目撃。
 「強くなったな……おまえ」
 「……全然だよ。……でも、気がついたんだ。スーパー戦隊になれなくても、戦える。これが俺なりの守り方だって」
 「なるほど」
 「おまえこそ見つけたの? ……この星の価値」
 「ああ、でかいもん見つけた。おまえの言うとおり……どこにでもあった。……ここにもな」
 少年のハートを拳で叩くマーベラス

 ――君の心にしるしはあるか?

 「なんだよそれ」
 「さあな。……無茶して死ぬんじゃねぇぞ」
 マーベラスは少年の頭をポンと叩くと軽く揺すって背を向けていき……こんな状況とはいえ、会心のスーパーアニキタイムが出来て、超満足げ(笑)
 二大ロボが敗北し、外へと散り散りに投げ出される危機的状況から、一同が自然とガレオンに集う過程においてこの星で見つけたものを再確認するのが、実に自然な流れで描かれて絶妙な構成。
 そしてそれは、
 「私たちはスーパー戦隊にはなれなかったけれど、勇気という名の魔法は誰でも使え、大切なものを守る為、未来を照らす為に自分なりに戦える。それを、スーパー戦隊が教えてくれた」
 事を伝え、至高の《スーパー戦隊》賛歌であると同時に、あらゆる視聴者へのエールとして今作は一つの極みに到達し、お見事!
 特に山崎さんの台詞は、この一言の為に今作があった、といっても頷けるぐらい会心でしたが、その背景として『マジレンジャー』のキーワードを取り込みつつ、「魔法」を比喩表現にする事により、原典では作劇の都合上、魔法を生み出すギミックとなっていた面のあった「勇気」について、そもそも、「勇気こそ世界を変える魔法なんだ」と原典の語り直しまでやってのけているのが、素晴らしい。
 6人はガレオンに集合し、お宝を守って、鳥、生きてた。
 「おいら、絶対みんなが戻ってくるって、信じてたもんねー」
 ヒロイン度高すぎるぜ鳥……。
 だが、状況は引き続き絶望的。海賊の要といえる船も航行不能になり、このままでは夜明けと共に座して死を待つしかない……。
 「……おまえら、このお宝の事なんだが」
 最後の切り札になりうるものは、宇宙最大のお宝による、宇宙全ての再構築。海賊達の旅は、果たして、この時の為にあったのか……? 一同が固唾を呑む中、真っ先に口を開いたのは、スーパー戦隊を愛しすぎる男・伊狩鎧。
 「使いましょう。それが……スーパー戦隊の方達の、想いでもあるんですよ」
 伊狩はゴウシとの出会いを語り、一同の中で最も地球とスーパー戦隊に視点が近い鎧が使用を決意する事で、それに対する海賊達の答が重みを増すのが、シンプルながら良くできた流れです。
 ――「ザンギャックを倒す為なら、俺たちはどうなってもかまわない。レジェンド大戦の時に、捨てる覚悟だった、命だ」
 この宇宙の平和の為に、ザンギャックを消し去れるならば、自分たちの存在は消えても構わない……それが、スーパー戦隊の先輩からのメッセージであり、鎧は断腸の思いで、その意思を実現しようとする。
 「だから皆さん、これを使って、ザンギャックの居ない、平和な宇宙を作りましょう。……それが……全てのスーパー戦隊の、願いなんです」
 だが……
 「……いや、使う気はねぇな」
 「……え?」
 「俺の結論も同じだ」「あたしも」「僕も」「わたくしもです」
 5人の海賊達は、さっぱりとした表情でその使用を否定。
 「……そんな……だって! 他に方法は!」
 「――あるさ。俺たちの手で、ザンギャックをぶっ潰すに決まってんだろ」
 犠牲の上の奇跡に拠らず、空に届く夢を掴み、明日を変える為に燃やすのは――学び、変わる、己自身。

 ――Just feei it, Don't think 'bout it キミだけの道!

 「わたくし達は知りました。スーパー戦隊の方々の、熱い想いと、戦いの歴史。それがこの星の人々を強くしたんです」
 「だからこんな状況でも、みんな希望を捨てずに、力を合わせて、最後まで戦おうとしてるんだ」
 「あたし達がその支えを消すなんて、出来るわけないじゃない」
 「この星には――スーパー戦隊が必要だ」

 ――ボーイ あきらめないで 信じてごらんよ 夢見る君が ときめく君が 明日のヒーロー

 「でも……みなさんの夢は」
 ここで鎧が、目の前の脅威への対処や、地球大事なだけでなく、メンバーそれぞれに願いや取り返したいものがある事を気に懸けられる奴なのは、凄く良かったです。
 「あの時は過去が変わればいいって思ったけど……あたし達、その過去を受け入れて生きてきたんだよね」
 「どんなに辛い過去でも、それを否定してしまえば、今の自分を否定する事になる」
 良いことも悪いことも全て含めて今があるから過去の改変を否定する、のは時間ものの定番の要素といえますが、海賊達は今を“捨てる”事を選ばず、自分たちは“何かを失ってきた”のではなく、“何かを得てきた”のだ、と鎧に告げる。
 「過去を変えれば、平和な未来が約束される。だがな、決められた未来なんかつまらねぇじゃねぇか」
 そして今も、海賊たちは夢を犠牲にするのではない――欲しければ、誰かを犠牲にする事なく自分で掴むのだ。
 それが、海賊ってもんだろ?
 かくして5人の決断は、今作が繰り返し描き続けてきた海賊イズムへと接続され、奇跡とその代償を天秤にかけた時、彼らはあくまで“海賊”なのか? それとも“スーパー戦隊”なのか?
 いや、“海賊戦隊”なのだと、スーパー戦隊の想いを受け止めながらも乗り越えていく。
 「鎧……後はおまえが、どうするかだ」
 君が諦めたのでは、手に入らない。先輩たちの示した二つの“道”に対して、黄金ピラミッドを手に、苦悶する鎧の出した答、は……
 「……俺は……俺は…………すいません、スーパー戦隊の皆さん! 俺は6番目の海賊、ゴーカイシルバーです! 夢はこの手で、掴み取る!」
 鎧はピラミッドを放り投げると空中で破壊し、地球意思さぁぁぁぁん!!
 ……いやまあ、この中に入っているわけでは、ないんですが。なんとなく。
 「これでおまえも一人前の海賊だよ!」
 多くの先達の後を追いかけてきた男は今それを乗り越えて本当の意味で俺の夢に辿り着き、今作における成長要素は主に、ハカセ、鎧、そして後半にマーベラス、に振られているのですが、前々回のハカセジャンプのように、段階段階のイベント回以外でもあちらこちらに盛り込まれているのが凝ったところで、最終回を目前にして、きちっと鎧の見習い卒業が描かれたのは、脱帽。
 涙をこぼす鎧の頭をマベがガシッと掴み、下っ端ーズ仲間のハカセが肩を叩くのが、おいしい。
 「さーてさーて、地球の諸君。ザンギャックに逆らった事を後悔しながら、あ、死にやがれー」
 そして一夜が明け、地球人類殲滅作戦の陣頭に立つダイランドーは、最後の抵抗を試みようとする地球人にゴーミンを差し向けるが、その時――叩きつけられる銃弾がゴーミンを薙ぎ倒し、海賊旗が風に翻る!
 6人の海賊達がヒーロー然と高い所に現れるとテーマ曲が流れ出し……思えば、第1話では悪役然と高い所に現れたものでした(笑)
 「あーらっらら、うちゅー海賊ども。まだくたばりそこなっていたとは、とっと消えチャイナー」
 「うっさいばーか」
 が開幕から炸裂するのが、逆転への狼煙として完璧すぎます(笑)
 「フッ……消えるのはおまえ達だ」
 「あなた達の言うことなど、聞く耳はありません」
 「僕たちも、この星の人たちも、おまえらみたいなの、だいっ嫌いだ!」
 他者を虐げる者たちへの抵抗において、海賊戦隊と地球人が心を一つにするに際して、シンプルな表現が好きな台詞。
 「滅びるのが目にみえているこの星で、海賊ごときが何しても無駄ダダダ!」
 「無駄なものか。それに、俺たちはただの海賊じゃない」
 「この星に、守る価値を見つけたからな」
 旗を掲げる鎧の横に立つのは、キャプテン・マーベラス
 「戯れ言はそこまで。どうせユーたちは死ぬだけチョイ」
 「死ぬ気はねぇな。だが、命を懸けてこの星を守る。それが、スーパー戦隊ってもんだろ!」
 最高の啖呵に眼下の群衆から歓声があがると主題歌が流れ出し、“35番目のスーパー戦隊”が今、立ち上がる。


「「「「「「ゴーカイチェンジ!!」」」」」」
「海賊戦隊!」
「「「「「「ゴーカイジャー!!!」」」」」」

 名乗りを決めて戦闘開始のタイミングで歌詞が「たった一つ自分だけの宝物誰も探してる」なのが絶妙で、ゴーミン、スゴーミンと次々と蹴散らすゴーカイジャーは、親衛隊の攻撃をジュウレンジャーのドラゴンアーマーで防ぐとそれをティラノレンジャーが着用して親衛隊に切りつけ、ファイナルウェーブとの合わせ技で撃破(『ジュウレンジャー』未見で詳細はわからず)。
 「な、なんなノこの強さ?!」
 「見たか! これが海賊戦隊だ!」
 狼狽するダイランドーへ向けて6人は突撃し、果たしてゴーカイジャーは、ザンギャックの暴威に打ち勝てるのか?! で、つづく。
 ……リアルタイムぶりの視聴ながら、さすがにこの回は結構記憶もあったので、油断していたのですが、いやーーー、この回は、本当に、素晴らしい。
 脳と心が揺さぶられまくって、少々整理に時間がかかってしまいました。
 台詞のメタ要素が強めの回ではあるのですが、同時に、前回から仕込んでいた「世界の破壊と創造」「奇跡と代償」「与えられた楽園」「守る為の力」「過去を変えるべきなのか?」など、神話的なモチーフや普遍性の高いテーゼと意識的に接続する事により、今作そのものを“貴方の世界と繋がった物語”にしようとする仕掛けが施されており、いうなれば《スーパー戦隊》シリーズをメタ的に再構築する事により、元型的神話の領域に押し上げようとする――もう少し控え目かつ噛み砕けば《スーパー戦隊》の昔話化が意識されている――野心的な部分が垣間見え、これが今作における、メタフィクション性へのスタッフの誠意なのかな、と思うところです。
 そしてその過程において今作は、あらゆる人に向けた至高の《スーパー戦隊》賛歌として完成を迎え……そう、その価値を決めるのは、君自身だ。
 (若干、野暮な部分もある個人的解釈になりますが、つまるところ“宇宙最大のお宝”の真の姿(意味)とは、「本来誰もが持っている筈の世界を変えられる意思と力」であったのかな、と)。
 次回――最終回。