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ウルトラマン80』感想・第23話

◆第23話「SOS!! 宇宙アメーバの大侵略」◆ (監督:外山徹 脚本:山浦弘靖
 地球へ帰還する宇宙探査船……といえば先日も吸血ボールに襲われて乗組員が全滅していましたが、今度は宇宙アメーバに襲われて全滅し、いいことないな……。
 宇宙アメーバに襲われながらも最後の力で送ったSOS信号をキャッチしたUGMから、チーフ・矢的・タジマが出動し、今日もユリ子が通りすがりに天気予報を告げ、作り手の側も色々と大変そうではあります。
 母艦スペースマミーの出撃シーンは格好良く、探査船に外から近付いた矢的は、船内で増殖する宇宙アメーバを確認。探査船は既に地球の重力圏内に入っており、このままでは地球上に宇宙アメーバがばらまかれてしまう……。ミサイルで爆破するには既に時間がなく、取れる手段は探査船に直接乗り込んで地球の重力圏から離れるように操縦する事のみ。だが乗り込んだ隊員はアメーバにやられて生きて帰れないけどな! と犠牲前提の作戦が即座に提案されて「他に方法はない」と断言されてしまうのが実に『80』ですが、発案者のチーフは、例の事件以来、明らかに死ぬチャンスを窺っている人なのが、物凄いタチの悪さ。
 一人っ子だとか兄弟が沢山居るとかそれを言うなら僕には悲しむ家族が居ないので、といった月並みなやり取りの後、イトウとタジマを気絶させた矢的は自らの犠牲を厭わず探査船に乗り込んでいき……いやなんかもう、そこまで完全に気絶させられるなら、80! で解決しても良いのではないでしょうか。
 これはシリーズの厄介なポイントではありますし、安易に変身しない事の理由付けを物語に組み込んでいた『ガイア』後に見ているから余計に気になるのもありそうですが、生粋のウルトラ人である80の場合、命を捨ててまで地球人として藻掻く事の必然性が非常に薄いので、どうにもこうにも矢的先生の変身基準の雑さが目立ちます
 変身して解決しようとしたらトラブルで変身できなくなってしまった、といったような状況をもう一つ組み込まないと状況が説得力を持ちにくいわけですが、「(基本的には)最終的に80に変身して立ち回りを行わなければならない」縛りも同時にあるので、それを成立させやすくする為のキャラクター性を、矢的が失っているのが、つくづく辛い。
 矢的は調査船を地球から離れる針路へ向けて発進させ、目を覚ましたイトウはキャップに事態を報告し、犠牲前提の作戦を勝手に実行しようとしたらこんなトラブルが起きました! と後から連絡されるキャップの方も大変です。
 矢的と連絡を取ったキャップは、地上から爆破用のミサイルを発射した上で矢的には脱出を命じるが、コックピット内部に入り込んでいたアメーバ退治の際にヘルメットに穴が空いてしまい、脱出が不可能になりましたと律儀に報告する矢的……もしかして、80になれるのを忘れている??
 矢的をミサイルで木っ葉微塵にするわけにはいかない、と今度はミサイルを自爆させようとするキャップだが、運悪く隕石にぶつかったミサイルの装置が故障。仕方が無いのでスペースマミーに連絡してミサイルを撃墜させ、宇宙空間を舞台に、宇宙船だのミサイルだの隕石群だのを見せていく映像面では面白いのですが、そんな特撮映像の為に無用のトラブルを発生させるのがあまりに露骨で、ストーリーはがったがた。
 究極的にはウルトラ能力で解決できてしまうシリーズにおいては、SFサスペンスの賭け金が矢的の命というのは致命的な相性の悪さ。
 (美しい星、地球……僕はもう二度と、あの星へは帰れないのだろうか)
 そして矢的は、悲壮感れる現状に酔い痴れて、なんだか、完全に、出来上がっていた(笑)
 (だがそれでもいい。僕は地球を守る為に、M78星雲からやってきた男だ。地球の為に戦って死んでいけるなら、それで本望だ)
 どさくさに紛れて地球来訪の目的をリライトする矢的ですが、やはり、80になれるのを忘れている??
 ……いやまあ、ウルトラマン80としては生き延びても、「矢的猛」としては死ぬ、という事なのかもですが、なんだか、矢的猛として美しく死にたいという、80の抱える謎の暗黒面が噴出しており、地球に来たのはそもそも、失恋による傷心旅行だったのでは疑惑が浮上します。
 動力室で増殖をし続けるアメーバが操縦席に入り込もうとする事で、他に生存者の居ない筈の船内においてドアに激しいノックのような音が響く! なんて演出は良かったのですが、追い詰められているパイロットが、80に変身すればすぐに脱出できるけど何故か地球人として死ぬ気満々の矢的猛、なのが大変困ります。
 「俺たちUGMはな、地球という一つの大きな家族を守る為に戦っている。死ぬのも地球の為なら、生きるのも地球の為だ。どんな事があっても死んではいかん。決して死ぬな! いいか!」
 前方に近付いてきた小惑星に着陸して、スペースマミーに救助させる窮余の一策に望みを繋ぐキャップがメンバーと共に矢的を叱咤激励し、2クール目の問題点だった「UGM隊員としての矢的猛のアイデンティティ問題」がようやく掘り下げを図られるのですが、操縦席へのアメーバの侵入を許した矢的は、小惑星に墜落して激突死の寸前に思わず80!し、巨大怪獣と化したアメーバと取っ組み合いが始まる、何もかも台無しの茶番劇。
 80十八番の打点の高いキックを、遅回しで見せる事で低重力を表現するのは格好いい演出で、とにもかくにも80は巨大アメーバ怪獣を撃破。
 矢的はわざとらしくヘルメット無しで倒れているところをチーフとハラダに救出され、なんだこの話……。
 地球に無事に帰還した後、矢的先生の鳩尾を殴り飛ばす癖に対し、殴られた二人からお返しがあったのは、良かったです(笑)