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ARAKAWAスペック(煩悩300%)

忍風戦隊ハリケンジャー』感想・第29-30話

◆巻之二十九「残暑とスタンプ」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:吉田伸)
 「あちぃ……あちぃよ~。夏も終わりだってのに、なんて暑さだ」
 え、炎山?!(それは、川上英幸脚本回です)
 というわけで、個人的に『ウルトラマンガイア』の藤宮×稲森担当にして、地球洗濯プレシャス・テンカイ回が印象深い、吉田伸が(戦隊シリーズ?)初参戦。
 ゴウライジャーと和解し、七本槍の一本こそ倒したものの、仮面の忍者軍団や強化を続ける傀儡に当てにしていた新戦力は軽くしばき倒され、衰えるどころか勢威を増すジャカンジャの脅威に対してチームを引っ張る司令塔の必要性を感じたハムスター館長、吼太の鍋奉行ぶりに目を留める。
 「吼太、今日からおまえをハリケンジャーのリーダーに、任命する」
 突然の館長命令に責任感を刺激されて張り切る吼太だが、その傍らで大ショックを受ける鷹介。
 (俺がハリケンジャーのリーダーじゃなかったなんて……3人揃った時は、いつも俺が真ん中だった)
 た・し・か・に(笑)
 組織内ヒエラルキーがこれといって示されないままなんとなくレッドがチームを引っ張っていく系の作品の場合、気がつくと勢いでレッドが真ん中に立っている現象のメタツッコミ的ですが、とぼとぼ歩きながら(え、そういう事じゃなかったの……)と呟く鷹介が非常に面白かったです。
 そんな鷹介は、自動車用信号の真ん中が黄色である事に気付き、その光に邪悪な顔で高笑いする吼太の表情が重なるのが、見事な演出(笑)
 「なんで俺がリーダーじゃないんだぁぁぁぁぁ!!」
 良くも悪くも思い込んだら一直線な男の叫びが夏空に虚しく響く街には、残暑(というかポスト)忍者が出現し、その巨大な舌で舐めた人間を次々と切手に変えてしまう(そのまま放置するタイプだったら大惨事になるところでした)。
 いち早く現着した鷹介は、敵の勘違いをいい事に、そうそう俺がリーダーですと役職を詐称。そのまま一人でポストを倒す事でリーダー返り咲きを狙うが、新体制の初陣に張り切る吼太が七海と駆け付けて担当の入れ替わった名乗りが披露され、無情な現実を突きつけられてしまう。
 「よし! みんな、俺の指示に従え!」
 根の真面目さかリーダー学やマネジメント関係の書籍を読み漁っていた吼太はさっそく強権を発動し……後の某獣拳戦隊を思い出さずにはいられません(笑)
 ……考えてみると、前年もリーダー代行を気取っていたイエローが俺ルールを制定して組織の綱紀粛正を図っていましたが、戦隊において、イエロー×リーダー=権威主義、なのか(笑)
 初手からトリプルガジェットを放つも破られたハリケンジャーはゴウライジャーに助けられるが、迅雷兄弟の前にはマンマルバが嫌がらせに現れ、カブトライジャーに「おまえの命は、次の満月まで」と告げると撤収。その間も、赤が黄の指示に全く従わず、ハリケンジャーの空中分裂は進んでいくばかり。
 …………ええと誰か、「儂の目に狂いは無い」とか力強く言い切っていたハムスターが居ましたね……。
 ミッション続行の為にポスト忍者が姿を消すと、鷹介と吼太は掴み合い寸前の状況になって間に入った七海さえ突き飛ばす荒れ模様(直後、一鍬が止めに入るのがタイミング的においしい)。
 (兄者……こんな奴らの為に)
 二人は互いの醜い人間性を剥き出しにし、とうとう、一鍬に見限られる(笑)
 「今のおまえ達に必要なものは何か、よく考えろ!」
 一鍬は鷹介と吼太を放置して兄者を助け起こし、兄者が珍しく年長者らしい事を言うのですが、「なんでもない」を連呼しながら現在進行形で一鍬の肩を借りてなんとか歩き去って行く兄者にだけは、チームワークとか語られたくない(笑)
 忍風館では館長が、「三本の矢」の故事を引いて仲違いを収めようとするが束ねた矢はめきっと折れ、こんな時に限ってトンチ解釈を発動した鷹介は、「たとえ一本でも鋼の矢なら折れないぜ!」と宣言。より強く太い矢となってポスト忍者を倒した方がリーダーだ! と上官命令を完全無視した鷹介と吼太は鍛錬へと走り……つまりこれが、
 「ふふふ、ライバル出現の効果が早速現れたというわけだ。こうでなければならん」
 なんですねビアス様!
 「も~、なんでこんな事になんねんな!」
 「深刻な亀裂にならなければ良いが」
 腕組みハムスター、物凄い、他人事。
 それはそれとして二人は苛烈な修行に励み……互いを罵りながら、奥義の巻物を投げつけ合い、その修得を目指す事に。一方、人間切手はサタラクラの残暑見舞いに貼り付けられて宇宙全土に配達目前になっており、物凄く邪悪な作戦に。
 それを止めるべく、赤と黄がそれぞれの奥義を炸裂させると、館長は「全て私の計画通り」と適当な事を言い出すが、赤と黄は直後に再び揉め始め、館長株の下落が止まりません。
 「結束を失ったハリケンジャーなど、なんの価値もNothing」
 仲裁に入った青がその隙を突かれて人質にされ、屋根の上に現れたシュリケンジャーから、ハリケンジャーの強さの本質を見失い個人技に走った「ユー達が望んだ展開」だと指摘される赤黄。どちらかというと「館長が無駄に招いた苦境」という気はしますが、ここで、「ハリケンジャーの強さとは何か?」を、バックアップメンバーを含めたチームの力、と示してきたのは中盤の再確認として綺麗に決まりました。
 ……まあそこにゴウライジャーが加わっていないのが、今作の挑戦的な部分にして、微妙に、まとまり切るのか不安なところでありますが(今回、ゴウライジャーがピンポイント登板になったのは、兄者の扱いの難しさ&初登板の吉田さんの書きやすさに配慮して、というのはありそうでしょうか)。
 「俺はただ前に突っ走る事しか出来ない。きっと羨ましかったんだ。俺には無い慎重な部分持っている、おまえが」
 「鷹介……」
 「後を頼むぞ!」
 「鷹介、後なんて頼まれるかよ!」
 シュリケンジャーの言葉に自分たちの過ちに気付いた二人は、赤の玉砕戦法を黄が制して、疾風流奥義・人間サーフィンにより二人でまとめてポストに突撃して成敗バイし、総じて取り残され気味の青が、ちょっと可哀想。
 見事な合体攻撃で勝利を収めた二人に、「今のが奥義の真の姿だ」と緑が説明し、実は両者に凄く嫌な感じで巻物を投げつけていたのは緑の変装だった、というのは巧い使い方でした。
 巨大ポスト忍者のべろべろ忍法に苦しむ旋風神だが天空神が助勢に入り、改めて吼太は鷹介こそリーダーにふさわしいと身を引き、新たなシノビメダルが転送されて飛び出したのは、カラクリスタンプ!
 ……て、ほぼボールそのままなのですが、究極奥義・スタンプ百烈押しにより消印無効されて人々は切手の姿から解放され、トドメは天空武装からのダイナマイト扇風機で葬り去り、巨大戦からも外される青、今回、だいぶ不憫(笑)
 本部に戻った3人はおぼろカレーを揃ってたいらげ、和気藹々。
 「ふふ、雨降って地固まるか」
 なんか、自分の不始末を全て、水に流したぞこのハムスター。
 リーダー争いからのてんやわんや、は数年置きの定番イベントといった感じですが、慎重で控え目な吼太にも男の意地がある部分にスポットを当てた上で、最後はハリケンらしく爽やかに収めて、面白かったです。代償としてハムスター館長の株価がリーマン・ショックしましたが、館長は愛弟子たちの生け贄となったのです……。
 次回――荒川さぁぁぁん?!

◆巻之三十「アイドルと友情」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:荒川稔久
 「びびっと参上! びびっと電撃! 出まして来ました、フラビジェンヌでーす!」
 フラビージョの遺伝子を元に強さも度胸も愛嬌も全てのステータスを300%増しした傀儡、美少女忍者・フラビジェンヌ(見た目は昆虫系)が登場し、冒頭から荒川さんの筆がフルスロットル。
 「そんなのを造るとは弱みでも握られたのか?」
 いや割と、サーガインは面倒見が良いと思います。
 赤点続きの他の幹部に代わり、フラビージョ発案による究極の作戦……の実行前にゴウライジャーの攻撃を受ける美少女忍者だが、凄まじい強さでゴウライジャーを圧倒し、何が凄いって、最近のサーガインが凄い。
 こんな回でかつてなく走馬灯が見えてしまう霞兄弟だがそこに野球忍者が助っ人に現れ、勿論、勝負になるわけがなかった。
 ハリケンジャーもやってきた所で一時撤収命令が下され、充電に二週間かかる、という弱点が発覚。性格も300%献身的だった美少女忍者は他の七本槍からの好感度を急上昇させ、傲岸に振る舞っていたフラビージョが、多数決により自分の分身にその座を奪われてしまう衝撃の展開(笑)
 「一の槍の称号は、フラビジェンヌちゃんのものね~」
 「あん、そんな~」
 充電中に幹部達に甲斐甲斐しく尽くす美少女忍者だが……
 (すぐにこいつらを倒して、ジャカンジャの首領になってやる。私の野望は、フラビージョの300倍だもんね)
 その内心では密かに牙を研ぎ、この間ずっと無言のムカデ様は多分、(くつろぐなら、儂の部屋以外のところにしてくれないかな……)と考えていた。
 それから一週間――かつてない強敵、美少女忍者がまさか充電中とは思わずにその動向に困惑するハリケンジャーだが、川越らしき場所でCDを手売りしていた七海の前に、ジャカンジャを追放されたフラビージョが現れて身の上を語っていたところ、なんと、アイドルにスカウトされてしまう。
 「歌嫌い?! ナナちゃんと一緒に、アイドルやってみない?!」
 只今無職のフラビージョは二つ返事でこれを引き受け、さすがに疑念を抱くハリケンジャーだが、ここは監視の為にむしろアイドルユニットを組むように、と館長命令が下され、前回の今回だけに、館長の判断への不安がぬぐい去れません。
 かくして結成されたアイドルユニット・BIJYOCCO7の、デビューに向けたトレーニング風景が挿入歌に乗せて描かれ、今回も大変ノリのいい渡辺監督。
 「どうなんだ、あいつ?」
 「凄く真面目にやってるよ。なんか……信じていいかも」
 熱意溢れるトレーニングを通して七海とフラビージョは急速に距離を縮めていき、宇宙忍者学校の落ちこぼれから宇宙コギャルとなり、「いい目をしている」とムカデ様のスカウトを受けた過去をフラビージョは明かし、ム、ムカデ様ぁぁぁぁぁ?!
 「なんでも良かったの、生きている意味が、見つかれば。でも、そのジャカンジャでも、また落ちこぼれ」
 「……わかる気がする、その気持ち。私も、落ちこぼれだったから」
 二人のやりとりが、やたら情感的に描かれ、私は今、何を見ているのか(笑)
 「……でも、今は違うよ。私たちには歌があるじゃない。この歌で、みんなが笑顔になれたら、落ちこぼれた事なんて、どうでもよくなるよ。だから、BIJYOCCO7で頑張ろう? 私たち歌で、みんなをハッピーにしよう。そうしたら、ジャカンジャだって見返してやれるよ!」
 七海の言葉に二人は笑顔で手を取り合い、物凄い勢いで七海が可愛くなっていくのが、荒川さんホント怖い……。
 そして、初めは世を忍ぶ手段に過ぎなかった「歌」の存在が七海の中で大きくなっている事が窺えると共に、成り行きはともかくなんだかんだ最後はジャカンジャに戻るのだろう、とメタ的にはここでフラビージョ退場とは思えないけどここまで七海が心を開いて打ち解け合っている雰囲気だと、因果応報のロジックはともかく(倫理観は明らかに悪ですが、直接作戦指揮を執っているわけではないのも揺らぎとなって)まさかの足抜けもあるのでは、と思わせる巧みな感情コントロールから、フラビージョのお願いに答えて忍風館に連れて行く事で、その可能性を上乗せしてくるのが、先を読めなくしてお見事。
 フラビジェンヌが充電中である事を明かしたフラビージョは、2日後の出現を前に制御装置を作ってほしいと協力を要請。発表会を控えた夜、制御装置を手にしたフラビージョは、何故か映画村に現れた美少女忍者に、たった一人で立ち向かう。
 その真意を見定めようとフラビージョの後をつけていた鷹介と吼太の前で、フラビージョは壮絶な戦いの末に制御装置を取り付けるが……その途端、気配に気付いていた鷹介と吼太への攻撃を指示。
 「あたしはみんなが苦しむのが、いっちばーん愉しいんだもん」
 全ては野心300%のフラビジェンヌを完全な制御下に置くための芝居だった事を明かしたフラビージョは、七海の気持ちを訴える赤と黄を嘲笑い、それ単独では特徴的というほどではない台詞が、キラキラしたアイドルの夢と対比される事により、破壊力を増して劇的に突き刺さってくる、実に巧みな構成。
 煩悩300%のアイドルネタから、七海の魅力と、フラビージョの魅力を、それぞれ別のベクトルで引き出す、匠の業前にほとほと唸らされます。
 特に、歯車を噛み合わせていく事で一つの台詞の効果を最大限に引き上げ、改悛の余地が残されたタイプの愉快犯系に見えたフラビージョが持つ、明確な悪意の濃度を引き上げてきたのは、秀逸。
 ……実はこれまでムカデ様の事を、割と節穴系なのではこの人……と疑っていたのですが、謹んでお詫びと共に訂正させていただきます。確かに、いい目をしていた!
 それから、前回は構成の都合で蔑ろにされ気味だった七海の気持ちを鷹介と吼太が真っ直ぐに代弁してみせるのが、ハリケンジャーの熱い友情の形として良かったです。
 (許せない!)
 フラビージョはBIJYOCCO7のデビュー告知ポスターを引き裂いて踏みにじり、それをモニター越しに見つめる七海の怒りの表情と、哄笑を続けるフラビージョの対比もばっちり決まり、アイドルPV風演出で満足していたわけではないと、渡辺監督もしっかり魅せてきます。
 美少女忍者の振るう槍の前に赤黄にトドメが迫ったその時、季節外れの桜吹雪が舞ってその動きを止め(恐らく、超忍法・クライマックス特殊効果)――4人が目にしたのは、スモークをバックに和服に番傘を広げた姿で、橋を渡ってくる野々七海!
 ……て、これがやりたかったのか!!
 (というかこの為に、太秦ロケを敢行したのでしょーか)
 イントロから「忍び恋」が流れ出すと、歩み寄る七海のシルエットが障子に映るカットが挟まり、もはや完全に『必殺!』(笑)
 「来たわね、お馬鹿さん」
 せせら笑うフラビージョは下忍軍団を召喚し、対する七海は、帯に手挟んだ短刀を引き抜くと、着物姿のままの立ち回り!
 「信じた人に裏切られ……それでも信じる人の道。涙は人に、見せるまい。怒りの力にすればいい。笑顔溢れる明日の日を! ひとえに願い、変わります。――成敗」
 下忍軍団をばったばと切り裂き、桜吹雪の中で歩き変身を見せたハリケンブルーは、怯むフラビージョが繰り出したフラビジェンヌを軽々と薙ぎ払い、なんとゴーグルオフのまま300%怪人を一人で撃破。
 「そんな馬鹿な!」
 「七海の怒りは500%だったんだ!」
 巨大美少女忍者に対し、カラクリボール14号・ヒトデ膝当てが投入され、「忍び恋」@ロックアレンジをバックに、究極奥義スターライトニードロップが炸裂し、前回の不遇を完全に帳消しにする、ハリケンブルーオンステージでした。キャンペーン中は伊達じゃない!
 ジャカンジャに帰還したフラビージョはムカデ様から-300点を付けられ、汚名返上しようと忍風館にミサイルを撃ち込もうとするが、発射したミサイルはムカデ城に誤爆し、忍風館の場所を知った件をどう処理するかと思ったら、落第忍者なので覚えていなかった、という凄いオチ。
 破られたポスターを手に取り見つめる七海だが、それは吹き付ける風にあおられて飛び去ってしまい、涙がこぼれ落ちぬよう、空を見上げる七海であった……でつづく。
 結論:館長の目は今回も節穴。
 放映時は夏休みシーズンだったりしたのか、ここ数話、個人的にはチューズー坊退場直後に少し入れてほしかったようなバラエティ豊富なキャラ掘り下げ回が続きましたが、なかなか粒ぞろいの出来。その中で、大筋をたるませず物語を引き締める為に投入・継続された意図が見えてきた兄者要素を担当する宮下さんが、自由度の低さもあってか苦戦気味なのが少々気がかりですが、宮下さんは、そういう巡り合わせの人なのか。
 次回――兄者、満月に死す?!