東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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超人機コロン

超獣戦隊ライブマン』感想・第9-10話

◆第9話「バラよ熱く香れ!」◆ (監督:長石多可男 脚本:井上敏樹
 3年後、傑作『鳥人戦隊ジェットマン』のメインライターを務める事になる井上敏樹が、『超新星フラッシュマン』から3年連続の参戦。
 めぐみの友達の結婚式に出席する勇介たちだが、不審な女が新郎に香水を拭きかけると新郎は突然、謎の女に激しく求愛して式を投げ出してしまう。それは、男をマゼンダの愛の奴隷に変えてしまう香水・ラブトワレの効果であり、自ら真っ赤なスポーツカーで走り回ってはラブトワレの効果を試して回るマゼンダが、超楽しそう(笑)
 「ラブトワレを大量に作り出せば、全世界の男共はわたくしの、操り人形と化すでしょう」
 完全に、自分が気分いいだけですよ!
 「愛か……フン、最も低俗な感情だな」
 「そして、不必要な感情だ」
 当然、ケンプとオブラーには不評だが、ビアス様はそのユニークさを高く評価。
 「だが、愚かな人間どもは、愛こそ至上のものと考えている。その愛を逆手に取るとは、見事だ」
 ラブトワレの製造には大量の石油を必要とするという説明に、ビアス様は「石油などという原始的なエネルギーは、全てラブトワレに変えてしまうがいい」と作戦許可を出し、「愛」や「石油」について、ボルト側がどう捉えているのか、を台詞にする事で感覚の違いが悪役サイドの個性として積み重ねられていくのが、細かく巧い部分。
 ラブトワレの魔力に狂わされた新郎はマゼンダを探して街を彷徨い歩き、傷心の新婦、そして無神経な男達(笑)
 「でも男心も変わるわけだし……」
 「男心と秋の空?」
 「いい加減にしないと! ――ぶつわよ」
 と言った時には既に平手打ちが一閃しており、めぐみさんは基本、女帝気質。
 そのくせどうも天然ぽいので、そういうところがルームメイト時代から現マゼンダのプライドを刺激しているのかなと(笑)
 真っ赤なスポーツカーを目撃しためぐみ達はその後を追い、怪しい香水を手にした女が、頭脳獣を使ってガソリンを窃盗している現場を目撃。
 「読めたぜ、貴様の正体!」
 「……なんのことかしら?」
 「随分素敵な香水を作ったみたいね、マゼンダ」
 パイプを踏みつける男衆、しらばっくれるマゼンダ、その背後に立つめぐみ、の一連の流れが格好良く、ライブマンは繰り出されたモヒカン兵士と戦闘に。マゼンダに操られた新郎がライブマンに襲いかかるとライブスーツを切り裂くパワーを見せ、恐らくは洗脳により脳のリミッターが外れている的な理屈かと思われますが、マゼンダは、自分が楽しいよりも、こちらの研究に予算を割いた方がいいのでは(笑)
 その新郎が、新婦が身につけていた思い出のバラのコサージュの香りを嗅いで気絶した事から、バラの花にラブトワレを分解する成分が含まれている可能性が浮上し、基地のコロンがこれを分析。一方、マゼンダは次々と石油を入手しながらラブトワレを精製していき、ライブマンはそれに立ち向かう。
 「マゼンダ! あなたは愛を弄ぶ魔女だわ! 許せない」
 「ふっ……ひがむのはやめなさい」
 「なんですって?!」
 「美しい花は、あまーい蜜で、虫を誘う。このラブトワレこそ、私の蜜」
 悠然と座り込んでラブトワレの精製を行うマゼンダは一抹の狂気を感じさせる笑みを浮かべ、ビアス様とケンプの存在感が強烈ですが、マゼンダとオブラーもそれぞれいい味を出しています(オブラーは既に人間の姿を完全に失ってしまいましたが、第3話回想におけるスポーツジムでの勇介への語りは、インパクト抜群の熱演でした)。
 ……考えてみれば、マッドサイエンティストの描写は東映ヒーロー物の十八番ですしね!(若干の語弊があります)
 「ふざけるな!」
 マゼンダへと飛びかかる勇介と丈だが、ラブトワレを振り掛けられてまんまと愛の奴隷になってしまい、熱烈にマゼンダを抱きしめて愛を囁くと、凄いジャンプでめぐみを攻撃。
 「私の力を思い知ったかめぐみ! 私は愛すら作り出す事ができるのよ」
 陶酔したマゼンダと、戦いを諦めないめぐみの凜々しい表情が好対照となり、ルックスはアイドル系でチームの頭脳派ながら、視線の強さは武闘派寄りなのが、めぐみの格好いいポイント。
 80年代戦隊において女性メンバー二人体制の場合、大雑把に〔アイドル系・武闘派系〕に色分けされていたのですが、女性メンバー一人のチームでその双方を鮮やかに担っているのが、好キャスティング。
  日頃の恨みを込めて めぐみの顔面に飛び蹴りを決める勇介だが、いよいよ窮地のその時、勇介と丈を跳ね飛ばす勢いで突入してきたクーガーを駆るコロンちゃんがバズーカをぶちかまし、情報処理担当のサポートロボかと思いきや、かなりアクティブ。
 早くもクーガーが専用車めいてきていますが、最終盤、クーガーに大量の特殊爆弾を積んで、「オヤジ(星博士)の仇じゃぁぁぁぁ!!」とヅノーベースに特攻をかけないか不安になってきます。
 バズーカから放たれたのはコロンがバラの花から抽出したラブトワレの解毒剤で、正気に戻った勇介と丈はマゼンダに怒りの反撃。いいところ無しだった男二人の見せ場ではあるのですが、結果としてマゼンダを殴り飛ばす機会を失っためぐみ、メイン回だというのに若干の殴られ損。
 情け無用の顔面パンチを受けた際にラブトワレを詰めたビンが砕け散ってマゼンダは撤退し、タンクヅノーはさくっと撃破。巨大戦も高速でクラッシュし、改めて結婚式でオチ。
 戦隊サブ参加3年目となった井上敏樹、後の活躍を知っているというのはありますが、及第点ではあるも物足りない出来。この時期だと、曽田-藤井体制が強固なので、三番手のライターに求められていたものがなんであったのか、というのもあるのでしょうが……一番それらしいのは、(プロデューサー案件かもですが)サブタイトル(笑)
 今後、ケンプ回の担当がある事を、期待したいです。

◆第10話「スケボー迷路破り」◆ (監督:山田稔 脚本:曽田博久)
 ガラの悪いスケボー少年・真也に絡まれ、復讐のリーゼント魂を注入しようとしていた丈は、真也の姉・陽子に一目惚れ。経営の苦しいピザ屋を繁盛させてみせると安請け合いしてスケボーによるピザの配達を提案するとこれが大当たりするのだが、街に出現したメイロヅノーが、街中を迷路に変えてしまう。
 「頭脳獣メイロヅノーは、走りながら次元転換を行います」
 考えたの、ケンプか!
 ……いやなんか、技術的には多分トンデモなのですが……どうして、得意満面の表情で迷路を発生させる事になりましたか……。
 「という事は、メイロヅノーが走り抜けた後は、迷路空間になる、という事?」
 「ああ。街中が迷路になるのさ」
 「面白い。愚かな人間どもが混乱する様子、目に浮かぶようだ」
 「我が頭脳武装軍ボルトの科学力の恐ろしさを、思い知らせてやるがよい」
 内容的には物凄い嫌がらせレベルなのですが、皆あまりに自信満々すぎて、大変面白い事に。
 そして、我関せずと黙々とボディを磨いているガッシュ、おいしい。
 天才的頭脳と悪魔科学の使い道としてはともかく、街中が不思議な迷路になってしまうと迷惑な事は確かで、ここで、「道を歩いていると目の前に迷路が出現する」のではなく「気がつくと何故か迷路の中に入り込んでいる」事で、チープさを越える不条理さを出した演出がお見事。
 ピザを配達中の丈、郵便配達員、下校中の小学生達、が次々と迷路に入り込んで目的地を見失い、更には自動車があらぬ方向から飛び出しては事故を起こして街は大混乱に陥り、凄く阿呆な作戦だったのに、予想外に被害規模が大きくなって凄く面白くなってきたぞ……!(笑)
 丈が遭遇した迷路ヅノー(滑走状態)を空と陸から追うライブマンだが、次々と作り出される迷路と頭脳獣のスピードに翻弄され、逆に迷宮ビルに囚われてしまう事に。
 「ようこそ、迷路の館へ」
 頭脳獣の力を自慢しに現れたケンプは、新技・ビューティフルブーメランを放つと気障な仕草と微笑を浮かべてライブマンを翻弄し、もう、何をやっても面白い状態(笑)
 ケンプを追う勇介たちだがまたも行く手を迷路に阻まれ、更に迷路が、爆発!
 ……なんか身内に、発想が全く同じだった人が居ましたね……。
 思いあまった丈は窓を突き破る事で強引に脱出すると、ピザ屋に帰還。真也から馬鹿にされながらも、必ずこの苦境を解決してみせると陽子に約束し、そこに新たなスケートボードを手にした勇介とめぐみが姿を見せる。
 「ジェットスケボーだ」
 「ジェットスケボー?」
 「この小型ジェット推進装置で、10倍のスピードが出せるようになってるの」
 ……それは、人体への安全性に配慮はされているのでしょうか。
 小回りの利くスケボーを使い、迷路ヅノーが迷路を作るよりも早く追いつこうとする丈だが、街に飛び出してしまった真也を救った際に足を怪我してしまう。丈の本気を知った真也は代わりにジェットスケボーを操ると迷路ヅノーにジャンピングアタックを決め、第1話の時のような事故が起こらなくてホッとしました。
 ライブマン集合で主題歌バトルに突入し、イエローライオンのジェットスケボーで青春爆発ファイヤーから、バイモーションバスター。
 巨大戦は二話続けて極めてあっさり片が付き、もはや戦闘シーンよりも、「超獣剣!」を取り出すシーンを見せたい勢い。実際、獅子の口から吹き出した炎が剣の形を取り、それを振り回すと電光が迸るのは、大変格好いい。
 今回から勝利後に胸のライオンが吠えるシーンが追加され、ライブマンの活躍により、ボルトの迷路で出前が届かない大作戦は失敗に終わるのであった。
 店を手伝うようになった真也から陽子への告白を焚き付けられる丈だが、これを固辞。
 「俺たちは恋をしてる暇はないんだよ。悪く思わないでくれ」
 ゲストとの恋愛要素はさっくり消滅するのが一話完結式ヒーロー物らしいところではありますが、明らかに粉をかけ、奮闘している姿を見せつけ、実際に成果を出して好感を稼ぎに稼いだ挙げ句に、「恋をしている暇はない」は、だいぶ酷い男だぞ丈!
 ナレーション「陽子と真也の店は、きっと繁盛するだろう。爽やかな思い出を残して、丈は、格好良くとはいかなかったが、街を、後にした」
 格好良くスケボーで走り去ろうとした丈は思い切りひっくり返って決めきれず、何故か股旅物のようなナレーションで、つづく。
 ……まあ、目的意識が明確かつ拠点が海中移動要塞なので、ひとつところに長く留まらずに全国を移動しながらボルトを追っている、と考えれば納得は行きますが。
 ケンプが両手を広げて「ああ。街中が迷路になるのさ」と言い出した時はどうなる事かと思いましたが、“天才の無駄遣い”“トンデモ科学力の迷走”が思わぬ成果をもたらす展開がテンポ良く進行し、割と面白かったです。
 怪人のハイスペックな能力が斜め上の作戦で空費される(事がある)、のは戦隊シリーズの一つの面白さといえますが、今作はそこに三天才それぞれの個性が加わる事で、作戦そのものの面白さ&変な方向へ進んだ時の説得力が生じると同時に、キャラクターの肉付けにもなっているのは、巧い設計。
 また、コロンが輸送機に乗り、空中から迷路ヅノーを見つけて地上のライブマンをナビゲートする、という用い方も面白かったです。……電撃戦隊なら多分、そのまま空爆に持ち込んでいますが!
 次回――予告内容もサブタイトルも、ちょっと困惑……。