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海賊戦隊天下御免

海賊戦隊ゴーカイジャー』感想・第11話

◆第11話「真剣大騒動」◆ (監督:坂本浩一 脚本:荒川稔久

 ――「それでも、一緒に居てくれる者がいます」

 桜の花びらの舞い散る中、二の腕剥き出しで訓練に励むジョーが冒頭から非常にスタイリッシュに描かれる一方、力強くコケるハカセ
 「この花を守る為に……凄いファインプレー!」
 自分が顔面ダイブするのを助けてくれた、とは考えないハカセの日常が辛い……!(笑)
 「ジョーさんは怖そうに見えますけど、本当は優しいんですよね」
 「……ふつうだ」
 一方アイムは左打者の内角を鋭く抉る高速スライダーを笑顔で投げ込み、あ、ちょっと、挙動不審になった(笑)
 花吹雪とアクション、花吹雪と決め顔、花を愛し、ちょっと照れるジョーがアバンタイトルから全力疾走し、ザンギャック艦隊と遭遇したゴーカイジャーは、今回も冒頭から巨大戦。
 二刀流でスゴーミンを切り刻んだゴーカイオーは、スターバースト・フルブラスト・マジドラゴンの大盤振る舞いでスゴーミンを撃破し、ブリッジで周囲に当たり散らす殿下の滑稽な一幕を挟み、本日の鳥占いは……「サムライに注意するなり」。
 ニンジャとサムライには気をつけろ……地球の常識ですね!
 種族:サムライを探して街に出た海賊達は剣道部員に目を止めて声をかけるが空振りし、その練習風景に考え込むジョーは、ザンギャックでの訓練時代を思い出す……割と激しいアクションがさらっと入る坂本監督らしい演出で、ゴーミンのしごきに気絶したジョーを助け起こしたのは、渋めの眼帯男「シド先輩」。
 ……ジョーが前髪を垂らして左目を隠し気味なのは、もしかして、シド先輩リスペクト? ……そうだった場合、額に手をあてて鼻で笑うのも、もしかしてシド先輩の癖……?(とりあえず、回想シーンでは行いませんでしたが)
 佇むジョーを気にかけたアイム(とてとて駆け寄ってから声をかけるのが、アイムの描き方の徹底している部分)の胸に、かつてルカから聞いた「ジョーに剣を教えてくれた人に関わる悲しい思い出」がよぎるが、突然鳴り響く陣太鼓。
 陣幕を張る黒子と共に現れたのは……丹波歳三、そして、シンケンレッド・志葉薫!
 最初から力強く名乗ってくれる先輩ってありがたい……!
 『シンケン』お約束の口上が入り、『侍戦隊シンケンジャー』からの登場は、姫そして丹波。『シンケン』本編最大の仕掛けといえるキャラクターで後年に見ると物凄いネタバレになっていますが、放映当時は2年前の作品という事もあってか(『ゴセイvsシンケン』にも登場しましたし)、この星では常識として堂々登場し、海賊戦隊は海賊戦隊なので、特に気にせず話が進むのは良いところ。
 時期的には『シンケン』レギュラー陣は戦隊を卒業して次のステップへ、という事情もあったのだろうかと推測されますが、姫&丹波は十分に『シンケン』らしさを出せる絶好のキャスティングで、個人的には姫ファンなので単純に嬉しい。丹波もセットでなお嬉しい。
 「単刀直入に言おう。シンケンジャーのレンジャーキーを返せ」
 「フン。単刀直入に言うぜ。……ふざけんな」
 「やむを得ぬ。――腕尽くで取り返す」
 海賊よりも交渉スキルの低いサムライは黒子から刀を受け取るとやにわにマーベラスに斬り掛かり、狙うは大将首一つ!
 マーベラスは姫の斬撃を鍔元で止めて弾き返すが、その勢いを逆に利用した姫が回転しながら再度の斬撃を放つのが格好良く、コートの裾を翻してそれを回避するマーベラス
 「ほぅ……よくよけたな」
 多分、少し前に宇宙一格好いい犬に仕留められかけた経験が活きています!
 ここまでの過去ヒーロー遭遇時における第一印象は、〔『マジ』:好意寄り、『デカ』:逮捕(ジャスミン)&殺意(ボス)、『ゲキ』:好意的、『ガオ』:殺意(ライオン)&不審(走)、『シンケン』:殺意〕なので、悪印象の方がどうも優勢。
 マーベラスが飛び道具を使おうとしたのに気付いたアイムが割って入り、“大いなる力”について聞くべきだと博士も口添え。
 「あぁん? いきなり切りかかってきたのはこいつだぞ」
 「なかなかいい太刀筋だ」
 ジョーが進み出て銃を抑えるとマーベラスもようやく矛先を収め、ジョーは姫に、レンジャーキーと“大いなる力”の秘密を賭けて、「俺と勝負で決めないか」と持ちかける……。
 一方、ザンギャック旗艦は突然乗りつけてきた小型宇宙船により時ならぬ騒乱に見舞われており、ブリッジまで切り込んできた青い怪人を押さえ込む腕の冴えを見せるバリゾーグだが、青い怪人の正体は、皇帝陛下直属の親衛隊長キャプテン・ザンギャックもとい凄い強いぞう。
 地球征服の手助けとして皇帝直々に派遣された親衛隊長は、ダマラスに直接批難を浴びせるレベルの大物で、降って湧いた増援に殿下は有頂天。
 「今度こそ一気に地球を制服して、父上に見せつけてやる! そうだ、俺も行くぞ」
 ここ数話で見せ方の方向性が固まってきた感のある殿下がブリッジ狭しと手を振り回すオーバーアクションを見せ、その背後に居る宇宙帝国ザンギャック皇帝の存在感が上昇し、そうか、王子、王子属性なんだな殿下……。
 バリゾーグを護衛に殿下直々の出馬が決定した頃、地上では場所を移したジョーと姫が向かい合い、姫、姫はどうして、帯に扇子を挟んだままなのですか、姫。
 てっきりこの後、帯に挟んだ扇子を利用した秘剣が炸裂するのではないかとドキドキしたのですが、さすがにそんな事はありませんでした(笑)
 「なぜ船長ではなくおまえが」
 「あんたの腕は本物だ。マーベラスとやらせたら怪我じゃすまなくなる」
 「随分なめられたものだ。まあいい」
 姫の実力は高い・故にマーベラスは姫に勝てるが加減の効かない戦いになる・無為に他者を傷付けるのは海賊の流儀ではない・自分なら一定の余裕を持った上で勝てる・ジョーの言わんとする事を正確に汲み取る姫、と海賊サイドの信頼関係と自負に加え、双方のキャラを持ち上げすぎもせず下げもしないバランス感覚が鮮やかなやり取りで、一同の見守る中、始まる決闘。
 スピード感のある激しい剣のぶつかり合いの中で、姫はシンケンレッドの代名詞ともいえる背中ガードを見せ、お互いどちらかといえば力よりも技と機敏さ、と剣技の性質の噛み合った真っ向勝負の堂々たる立ち回りに、袴姿でのアクションが新鮮なアクセントを加えます。
 白熱する戦いだが、その途中で始まるザンギャック艦隊の大攻勢。
 「いかん。勝負は一旦預ける」
 迷わず爆撃の方へと駆けていき、まっしぐらにゴーミン部隊に切り込む姫、格好いい。
 “変身能力を失ったかつてのヒーロー達は戦う事をやめてしまったのか?”
 というのは今作における厄介な命題であったと思うのですが、市民を助ける為に生身でゴーミンに立ち向かう姿が明確に描かれ、忍者や獣拳使いなど自前の戦闘能力が高いキャラクターは、各々の日常を守りつつ(守る為にも)、小規模なレジスタンス的戦闘は継続しているのであろうな、と想像できるのは納得の行く落としどころ。
 行動隊長レベルには太刀打ち出来ないのでゲリラ的な活動になっているのかと思われますが、いわゆる《昭和ライダー》的な「彼らは今もまだ、どこかで戦い続けている」事が、世界各地で多少なりともザンギャックの地球侵略活動を遅らせているのかもしれない(その上で、膨大な戦力を逐次投入し続けてくるのがザンギャックの恐ろしさ)と妄想が広がりますし、私の中で走先生は確実に、落ち着いた獣医を表の顔にして裏では夜な夜なゴーミンを狩って回っています(笑) 火器のたぐいは、別の物語が始まったイエローからの横流し品です。
 また、例えば子供達を導くジャンのように、物理で戦う以外の戦い方もある、といえますが、ここで、力はそこになくても魂は続く、というのが先達として海賊戦隊を認める以外の形で一つ描かれ、『シンケン』本編において最も「運命」と戦っているといえたヒーロー強度の高い人物である姫の見せ場が多くて大変満足。
 黒子や丹波の協力もあり市民を避難させる姫であったが、そこに降り立つ殿下と愉快な配下たち。
 「聞け、地球人ども。この俺こそが、宇宙帝国ザンギャックの総司令官、ワルズ・ギル様だ。この俺が直々に降り立ったからには、もはやこの星の征服も時間の問題。命が惜しい奴は、俺の足下に跪け!」
 高らかに宣言する殿下だが、そこへ海賊たちも姿を見せて、初顔合わせ。
 「ふざけた挨拶は、それぐらいにしとけ」
 「あんたが親玉ね」
 「皇帝の、バカ息子か」
 ジョーの吐き捨て方に大変気持ちがこもっており、それ、軍内部でみんな言ってたんですね(笑)
 力の入った「派手に行くぜ!!」から、挿入歌に乗せて各自の生身アクションを挟んでの変身となり、マベはあまり吹き替え入っていないように見えるのですが、役者さん結構動けるタイプだったのでしょうか。ルカ・ハカセ・アイムが、だいぶゴーミンに合わせてもらってのリアクション主体なのと比べると自分からの動きが多い感じ(ジョーは長髪で顔が隠せるので、ちょっとわかりづらい)。
 ゴーミン軍団を蹴散らしたゴーカイジャージュウレンジャーとなるが、親衛隊長凄く強いぞうはその座に恥じない戦闘力を見せてゴーカイジャーを次々と切り払い、ダイナマンになってのいきなりスーパーダイナマイトさえ弾き返す。
 「確かに、今までの奴らとは違うね」
 苦戦するゴーカイジャーは、狙うは大将首のサムライ戦法に切り替えるとギンガマンへゴーカイチェンジし、赤黄緑桃が親衛隊長を足止めしている間に青がゴリラパワーで殿下に襲いかかるが、その前に前に立ちはだかるバリゾーグ。
 「私はワルズ・ギル様の忠実なる右腕、バリゾーグ。ボスには指一本触れさせない」
 ここまで口数の少ない忠臣ポジションだったバリゾーグが剣の実力を見せ、青が殿下に近付く事のできない内に、背後で奮闘する4人も未だかつてない大ピンチ。
 「甘いな。まだまだ甘い」
 前方と後方で、ダメージによるゴーカイチェンジの解除表現が初めて描かれ、立ち上がった青の前で振るわれるバリゾーグの剣……
 (この構えは……まさか)
 回想のシド先輩と重なるその構えに立ちすくんだ青は、バリゾーグの必殺剣の直撃を受けて、完全に変身解除まで追い詰められてしまう。
 「シド先輩……シド先輩なのか?!」
 「シド? そんな名は知らない」
 「嘘だ!! この俺が、見間違う筈はない……その独特の太刀筋、シド先輩の技だ!」
 基本的にストイックで表情筋が固く、戦隊シリーズとしてはかなり崩しの少なかったジョーが、ほぼ初めて感情を剥き出しにするのが、ジョーの中の「シド先輩」の大きさを示すのに極めて効果的に機能し、ここまでの溜めが効いていて巧い。
 「その通り。バリゾーグは、我が帝国から脱走した、シド・バミックを改造したのだ」
 勿体ぶらずにさらりと真相を明かす殿下が、殿下が、ちゃんと極悪非道の悪者っぽい……! ……いやまあ殿下、TVのチャンネルを切り替えるぐらいの気軽さで地球人類殲滅を指示できる人だと思われるでの、最初から極悪非道は極悪非道で間違いないのですが。
 「生き別れの先輩と感動の再会だな。涙にむせんで、死ね」
 殿下にしては洗練された言い回しから、茫然自失のジョーめがけてバリゾーグの剣が振り下ろされるが、立ちすくむその姿に気付いた赤が駆け寄ると、バリゾーグの斬撃からジョーをかばって深傷を負い、変身解除。
 「マーベラス……」
 倒れかけるマーベラスだが、我に返ったジョーに寄りかかりながら背後に銃を乱射し、海賊のしぶとさが出た面白いアクションでした。この不意打ちに反応しきれなかったバリゾーグは剣を落とし、傷を負った殿下が青い血を流して大騒ぎ。
 「血! 血だぁ……! バリゾーグぅ! 今まで父上に叩かれた事さえなかったのに!」
 親衛隊長とバリゾーグは、痛がる殿下を連れて慌てて撤収し、戦場で軽傷を負って泣き叫ぶ悪の司令官……というのは、なかなか新機軸でありましょうか。最近、『01』ハカイダーの印象があまりに強烈で、悪の組織の幹部とは、の基準が揺らぎまくっていて自信はないのですが(笑)
 ワルズ・ギル周りの「ぼんくら王子に振り回される有能な家臣団」の図はヒーローフィクション以上に戦記物テイストが感じられますが、連敗を余儀なくされる悪の組織をどう見せていくのか、において、最初からトップが無能と置いた上で、その無能ぶりをキャラクターの魅力にコンバートしていくのは面白い組立ってになっています。
 「あと一息というところだったのに」
 「わざわざお出ましになどならなければ」
 完璧な芸術点を叩き出した殿下はインサーンのスイッチぽんで回収され、殿下が居ないと、やはり割と仲のいい二人(笑)
 「いかんな……傷は深そうだ」
 この戦いの顛末を見つめていた姫は、ガレオンに同道すると、刀傷に良く効く薬を提供。
 ジョーが見張り台で考え込む中、残りのメンバーは目を覚まさぬマベが横たわるソファの周囲でそれぞれ眠りに就き、畳+座布団を持ち込んで正座している姫、姫……(笑)
 「不思議なものだ……私はもう少しこの海賊衆を、見守りたい気分になっている」
 「それも姫の御心の深さかと」
 登場時は〔たたかう・たたかう・たたかう・にげない〕だった姫のコマンド一覧が、海賊たちの戦いぶりや身を挺して咄嗟にジョーを守るマーベラスの姿に〔たたかう・たたかう・みまもる・にげない〕に変化し――翌朝、姫は、そこで、ずっと正座して起きていましたか、姫。
 畳と座布団一枚のもたらす破壊力に戦慄しつつ、戦いに負けても腹は減る、と朝食準備中だった海賊たちだが、「一人でケジメをつけたいことがある。」と置き手紙を残してジョーが姿を消してしまい、未だ目を覚まさぬマーベラス……。果たしてジョーの行く先は?! そして、姫は海賊達を認めるのか? かつてない強敵の登場が巻き起こす混迷の中、つづく。
 初の前後編という事もあってか『シンケン』レジェンド回に留まらない盛り沢山の内容で、半分ぐらいザンギャック回(笑) これまで目立たない存在だったバリゾーグの出自が明かされてジョーとの因縁が構築される一方、次回はジョーとマーベラスの掘り下げが加わるようで、今作“戦いの途中”から始まるシリーズでは珍しい構造なのですが、過去からの関係性が明かされて海賊戦隊の輪郭が見えてくる流れが上手く物語としての面白さになっています。
 レジェンドゲストは、今回限りでは、ヒーローである事はしっかり見せつつ、姫はアクション要員、丹波はコメディ要員と、ある程度割り切った使い方。丹波は本編以上にコメディリリーフ主体で“懲りないおじさん”扱いなのがちょっと残念でしたが、本編でかなり独特の位置づけのキャラクター(『シンケンジャー』最終盤を円滑に進行する為に劇と一体化したキャラクター)だったので、本編以外だとなかなか使いづらく、姫を姫たらしめるオプションとしてコメディ部分を押し出すしかなかった、というのはありそうでしょうか。
 次回、『シンケン』要素がどう“大いなる力”に繋がっていくのかも、楽しみな部分です。