『魔進戦隊キラメイジャー』感想・第0話
(※地上波放映を視聴。多少カット箇所があるとの事。)
◆エピソードZERO◆ (監督:山口恭平 脚本:荒川稔久/下亜友美)
「美しい宝石の国、クリスタリア。平和で幸せで、全てがキラキラ輝いてていました。そう、この時までは――」
全体は姫様のモノローグで進められ、平和だったクリスタリアに侵攻するヨドン軍、の陣頭に立つクランチュラさんが、凄く、悪そうだ……!(笑)
「美しいものは忌々しい。クリスタリアの王、オラディンよ。貴様らの輝きなど、全て汚し尽くして闇に塗り替えてやる。ヨドン皇帝の為にな」
「たとえ私一人になろうと、この国は守る!」」
オラディン王はマブシーナに「もしもの事があったら、我が友が居る地球に行け」と指示して物陰に隠すとヨドン軍を迎え撃ち、雑兵を軽々と蹴散らす立ち回り。近接戦闘もこなしてみせるクランチュラだが、オラディンの反撃を受けて剣を突きつけられ、絶体絶命のその時、横合いから突き刺さった闇の波動がオラディンを吹き飛ばす。
「なに……?! ……ガルザ!」
命の、恩人だった。
クランチュラがなにかとガルザに甘い理由の一端が見えた気がしつつ、クランチュラさんのヒロイン効果により新たな兵士を率いたガルザの登場が劇的となり、因縁の仇としてのガルザの存在感を強調。
「このクリスタリアは、ヨドン様のものだ。兄上」
「そうか……何もかも、おまえが手引きしたのか」
ガルザの三連撃を受けて倒れたオラディンに雑兵が群がり、袋だたき・あがる悲鳴・物陰で必死に声を押し殺すマブシーナ、と直球のホラー演出で、オラディンの最期?は予想外のショッキング映像。
兵士のぐねぐねした動きや、咀嚼音めいたSEが聞こえる事を考えるとゾンビ物のイメージも入っていそうですが……とすると後半、ヨドンウィルスに感染し生ける屍と化したオラディン-T型とか出てきてしまうのか。
「クリスタリアは……落ちた」
物言わぬオラディンが床を引きずられていく姿で王国の陥落が念押しされ、本編の断片的映像から、父の死と叔父の裏切りを目にしたマブシーナがどうやってクリスタリアを脱出したのかが気になっていたのですが、割と豪快に無視されていました!
いっそ故意なのではとさえ思われる不手際ですが(まあ、オラディンさえ倒せば後は眼中に無かったのでしょうが)、打ちひしがれる姫様は玉座の背に埋め込まれていた5色の魔石の励ましも受けて地球へと飛び立ち、どうもオラディン、弟には魔石の存在を秘密にしていた……?(王位継承者だけに伝えられるクリスタリアの秘密、とかなのかもですが)
この出来事は充瑠の見た夢として本編と接続され、地球に辿り着いた姫様を拾ったのは、オラディン王から受けた忠告を元に、既にCARATを設立済みだった博多南無鈴。
「こっちも、対ヨドン体制は整えてある。一緒に、王の仇を討とう!」
ガッツポーズを決めるも落ち込んだままの姫様に対して「まだ目が覚めていないようね。オラディンは、死んだのよ! ヨドン軍に、殺されたの!」と平手打ちを一閃じゃなかった、「我が財団が造った、キラメイチェンジャー」を取り出し、この辺り本編では全く説明されていない部分ですが、謎の資金力・謎の開発力・謎のコネクション、の三拍子に引くほどの熱意を併せ持つ博多南は、だいぶ昭和戦隊の長官ノリ(笑)
「探すんだ! キラメイストーンと、運命で惹かれ合う、戦士達を!」
かくして、各キラメイストーンと共鳴するメンバーの姿が一人ずつ取り上げられていき、「探したぞ、君は、戦士だ」と声をかけて回る、じゃなかった、物陰からその様子を窺うマブシーナ。教室でスケッチブックにペンを走らせる充瑠は、面白半分にちょっかいをかけた女生徒が思わず感心してしまう程、何かに夢中になれる存在として描写され、内に秘めたキラキラの芽を見せる形に。
説得・交渉シーンはすっ飛ばされて(良い判断だったと思います)、為朝・瀬奈・時雨・小夜はカラットに集い、劇場版仕様という事もあってか皆、凄く気合いの入った服装(通常OPのキャラ紹介で着用)で、今見るとちょっと笑えます(特に時雨)。
(でも、わたくしには……地球の方達が、あの恐ろしいヨドン軍に太刀打ちできるとは……どうしても思えなくて)
パートナーを迎えて喜ぶ魔石たちに対して半信半疑の姫様だが、ヨドン軍襲来の警報が鳴り響き、ひとまず脱出しようとした6人はヨドン兵士の襲撃を受けて、背中にフォークを叩きつけられた博多南が倒れてしまう。
「ごめんなさい、お父様。やはり、無理でした。こうなってはもう、地球も……クリスタリアのように、蹂躙される……」
ガックリと膝をつくマブシーナ、だが……
「諦めんな! 俺たちが居るだろう……!」
高らかに叫ぶ為朝が、プロローグから普通に格好いいぞ……!
「やりもしないで、逃げちゃ駄目よ!」
「選ばれたからには、全力で突っ走るから!」
「こんな奴ら、全員返り討ちだ」
「その為に俺たちを選んだんだろ?」
体勢を整えた4人はマブシーナを励ましながらヨドン軍と対峙し、サブリーダーポジションとしての為朝が場の主導権を握るのですが、ショベ爺が、為朝軍団を造ろうとしたのも納得です(笑)
「みんな……変身とやら……いっちょやってやろうぜ!」
「「「「キラメイチェンジ!!」」」」
揃って変身から主題歌でバトルスタートし、キラキラ輝く為に巡り会った戦士達が華麗に躍動。
「疾きこと風のごとし! お嬢様、実にすんばらしい! ……サイコーです!!」
ちょっと変態の芽生えを感じさせるマッハ、戦闘中はとにかく格好いい青、兵士を椅子にして女帝モードを発動する桃、くるくる回って爺から喝采を浴びる黄、と大体この後に繋がる要素が持ち込まれており、ヨドン軍を壊滅させたキラメイジャーは倒れた博多南に駆け寄るが……小夜が診察すると、全くの無傷。
実は全ては、最新技術のMRを用いた偽の襲撃によるシミュレーションであり、薄々そんな疑念はありましたが、博多南はクルクルクルマジックにより4人をテストしていたのだった。
「もう……本気で心配したんですから!」
博多南は姫様の鉱石ヘッドバッド(VRゴーグルを粉砕する威力)により相応の報いを受けつつ、
「これで前を向けそうだね、姫」
と、なによりも国を失いともすれば絶望に押し流されそうな姫様の為だったのだ、としてフォロー。……まあ、一歩間違えるとオラディンの死と博多南の死をオーバーラップさせた姫様の絶望から闇の巨人が生まれかねないところでしたが、博多南さんの思考回路はややもすると80年代。
「……ええ! ……何があっても、決して澱まない、皆さんの、魂の煌めきがあれば!」
とはいえ、思った以上に全てを失い亡命を余儀なくされた正統派ヒロインだった姫様の、悲しみや苦しみにしっかりフォーカスした上で、本編スタート前にそれを解消しておく、というのは第0話の使い方としては良かったと思います。
それにより、充瑠(真の主人公)を物語の流れの外に置きつつ、戦いの発端と戦隊の始動という要件を満たした上で、「マブシーナの物語」として第0話が第0話としてまとまっている――絶望から希望へとダイナミックな心情の転換が描かれたところで物語が幕を閉じている――のは、上手い構成。アクティブ姫様が華麗に誕生した一方、約一名、共鳴者を捜している内に第0話が終わってしまった魔石レッドは、若干の被害者になりましたが(笑)
「これより地球を汚す! ヨドン様は、美しいものをお許しにならない!」
かくしてキラメイジャーを見出すマブシーナだが、仇敵ガルザは三日月アーマーを身に纏い、地球にはヨドン軍の蛇口タコが襲来。
「けれど、わたくしたちには希望があります。キラメイジャーの力があれば、きっと勝てます。……最後の戦士にも会える筈。そう――赤の戦士は、きっと奇跡を起こします」
最後の一人の存在、そして、魔石から魔進への変化が暗示されて、物語はエピソード01へ――。
なお充瑠がクラスメイトをモデルに完成させた絵は世紀末芸術というかなんというか、内面の闇を描き出して大不評を買い、確かにその調子だと、評価してくれる人間が周囲に居なくても仕方ないかな、とおもいました。
新戦隊のプレストーリーを描く、という戦隊冬映画の新企画。キャラ紹介的なものでも番外編でもなく、本編スタート前の出来事を描いて本編に接続する純然たるプロローグであり、本編見ている際はそれほど気になりませんでしたが、これを見ると、特にクリスタリア関係は今作前提の造りになっていた事が伺え、第4話でやや急いで接続する事になったのも納得(まあその上で第4話は、“夢”の要素の使い方があまり上手く行っていませんでしたが)。
驚いたのは、本編第1話の印象だと既に何度か戦闘を経験していそうに見えた黄緑青桃の4人が、実質初陣だった事で、恐るべきキラメンタルの場慣れ力。そして、名実ともに最初に戦った怪人が、ラグビー邪面だったのか、キラメイジャー……。侵略者という存在に対して、凄く、バイアスがかかっていそうだなキラメイジャー……(笑)
それにつけても、持つべきものは、金とコネのある後援者。