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胸にキラリと海賊のプライド

海賊戦隊ゴーカイジャー』感想・第5-6話

◆第5話「ジャッジメント・パイレーツ」◆ (監督:坂本浩一 脚本:荒川稔久

 ――「これにて一件コンプリート。悪が居るから、俺は斬る!」


スペシャルポリス心得の条-

ひとつ、卑劣な悪を撃て
ふたつ、振り返らずに撃て
みっつ、未来の為に撃て
よっつ、横っ飛びで撃て
いつつ、言われる前に撃て


なお、死して屍拾うものなし
死して屍拾うものなし

 料理、筋トレ、そして賞金首の値段を確認……と海賊達の日常風景が描かれ、ハカセ、格安。
 鳥占いにより地球の警察に向かってみる海賊達だが、ザンギャックの支配下にないこの惑星にも賞金首の手配書は出回っており、そこに居合わせたS.P.Dの礼紋茉莉花/デカイエローに、まんまと手錠をかけられてしまう事に。
 「おまえら賞金に目がくらんで、ザンギャックの犬に成り下がったのか?」
 「ふざけないで。ザンギャックとなんか手を組むわけないでしょ」
 この世界では、ザンギャックはザンギャック、宇宙警察は宇宙警察、として存在している事が明らかになり……指定暴力団指定暴力団が全面戦争手前の状態で睨み合っていると思っておけばいいでしょうか。
 マーベラスの目配せを受けた仲間達が一斉に逃げ出すと、マーベラスは手錠をかけられたままの足技で警官隊を蹴散らし、坂本浩一監督らしい生アクションでギアチェンジ。
 「じゃあな、美人のおまわりさん」
 包囲を破ったマーベラスも署を脱出し、マベの“年上の綺麗なお姉さん”への対応は、「なんかそれっぽい事を言ってみる」でした!
 追っ手を振り切ったマベは車両基地に逃げ込むが、いきなりの銃撃から逃げようとした所に膝蹴りを叩き込んできたのは、宇宙一格好いい犬。
 「宇宙警察地球署署長――ドギー・クルーガー
 マベに銃を蹴り飛ばされたドギーはすかさず剣を抜いて切りかかり、警察署からの脱走劇を皮切りに、アクションがフルスロットル。その斬撃を利用して手錠を切断しようと試みるマベだったが、一枚上のマスターは寸前で切っ先を止めると打撃で抵抗力を奪い、変身用の携帯電話を回収。
 「俺は宇宙警察に捕まるような事した覚えはねぇぞ」
 「言い訳は取調室で聞いてやる」
 手錠付きとはいえ当代主人公をさっくり拘束する犬が少々やり過ぎ感はあるのですが、戦隊スタッフはホント、ボスが好きすぎ……(笑) 声を演じる稲田徹さんが作品愛を語りまくる人で相思相愛な上に、ボス自身が80年代メタルヒーローから00年代戦隊ヒーローを繋ぐキャラクターそして着ぐるみである、というのは大きいのでしょうが。
 血に飢えた野獣の巣窟・宇宙警察に連行されてジャスミンのリーディングを受け「や、やめろ……俺は、か、川原で見つけた捨て猫に毎日餌をあげにいったり……してねぇ! はじめてのおつかいに行く近所のガキを、物陰から3時間見守ったりなんて……す、する筈ねぇだろ?! た、たまには鳥にうまい餌でも食わせてやるかと……闇市を探し回ったりなんて、そんな事は絶対にしねぇぞ!」「……ボス、こいつ、悪い奴じゃないのでは」「うむ。俺も段々、そんな気がしてきたところだ」の危機に陥るキャプテン・マーベラスだったが、ザンギャックの兵隊が現れて物陰に身を隠し……なんとそこは、地底ミサイル作戦を遂行中の行動隊長の秘密アジトだったのだ、と今回のザンギャックの行動に繋げる流れがテンポ良く鮮やか。
 地底ミサイルにより世界中の主要都市に大規模同時攻撃を仕掛けるザンギャックの目論見を知った二人だが、携帯電話が鳴って気付かれてしまうのは、仮面ライダークウガ』ネタですか(笑)
 モバイレーツには、一条さんの“大いなる力”が宿っているのですか(不利な特性《着信アクシデント》が発生する代わりに、《射撃》スキル+5)。
 『デカレン』回という事でか本編に準じたネーミングのトリガー星人率いる部隊の攻撃を受け、怪人の早撃ちで手帳を破壊されるボス不覚。手錠をかけられたままながら生身戦闘力の高さを発揮していたマベもトリガー星人の銃撃を受け、銃弾を雨あられと浴びそうになったところをドギーに助けられ、両者は一時撤収。
 「どうせあのミサイルを止めに行くんだろ。これ外してモバイレーツ返してくれたら、手伝ってやってもいいぜ」
 「ふざけるな! 海賊の言うことなど信じられるか。おまえはここで大人しくしているんだ」
 「してるわけねぇだろ!」
 「逃げたければ勝手にしろ。だが、手錠はそのままだ。ミサイルを止めたら、俺は必ずおまえを捕まえにいく。地獄の果てまでもな」
 格好良すぎるボスの態度に思うにままならず壁を蹴り飛ばすマーベラスだが、地面に点々と落ちた血の跡から、自分をかばったボスが負傷していた事に気付き、その流血から敵に気付かれ窮地に陥ったボスを救出して再び一時撤収。
 一方、マベの反応を追って車輌基地までやってきたジョー達は防衛に当たっていたスゴーミン部隊と戦闘になり、赤抜きでレッツゴーオン、そして気力転身。ゴーオンで個人武器を次々と披露した後は、ダイレンジャーでワイヤー使った格闘戦を演じ、後者は特に坂本監督の好みを感じるチョイス。
 「なぜ俺を助けた?」
 「借りを返しただけだ」
 刻一刻と地底ミサイル発射のタイムリミットが迫る中、安全地帯にドギーを横たえるマーベラス
 「逃げなかった事を後悔するぞ。ザンギャックと宇宙警察の両方に追われて、逃げ切れる筈が無い」
 「知ったことか。俺達は俺達の誇りを持ってこの宇宙を旅してきたんだ。その誇りを守る為なら徹底的に戦う。たとえ海賊と呼ばれようが、たとえ……全宇宙を敵に回そうがな!」
 ドギーの言葉に対してマーベラスは堂々と自らの拠って立つものを宣言してOPナレーションと繋げ、ボスと真っ向から信念で切り結ぶ事で主人公の面目躍如。
 1-2〔海賊の流儀(美学)〕、3〔レジェンドとの距離感と物語の目標設定〕、4〔海賊戦隊にとってのチーム〕と来て、今回は〔劇中世界における“海賊”の扱いと、それに対するマーベラスらの考え〕を示し、引き続き、基本設計の順序立てた見せ方が実に鮮やか。“法治の側のヒーロー”としてデカレンジャーを相対する存在としたのも、綺麗にはまりました。
 「俺を助けたのは、その誇りの為か」
 「どうだかな」
 誇りを持って自らの流儀を貫くマーベラスの姿に信じられる何かを感じ取ったボスは、立ち上がるとマーベラスの手錠を外す。
 「……頼む」
 「警察のくせに、海賊を信じるのか?」
 「海賊を信じるんじゃない。おまえの誇りを信じるんだ」
 「……ふん」
 思わずニヤリと笑みがこぼれ、マベちゃん、こういうの本当に好きだな……!(笑)
 マーベラスはなんというか、自らロールプレイはしないけど、シチュエーションが転がり込んでくるのが大好物な感じ。
 「後悔しても知らねぇぞ」
 モバイレーツを受け取ったマベはコートの裾を翻して駆けていき、ミサイル発射まで残り1分、誇りをかけてたった一人で敵陣に乗り込んでいくと、主題歌に乗せて単独バトル、と実に坂本監督らしい見せ方。
 ゴーカイレッドは怒濤のん十人斬りを見せると地底ミサイルの停止に成功し、仲間達とも合流。
 「お人好しの宇宙警察に助けられた」
 「へ?」「え?」
 「助けられたのは俺だ。お人好しの、宇宙海賊にな」
 改めてフル名乗りしたゴーカイジャーはトリガー星人と戦闘になり、デカレンジャーにゴーカイチェンジ。主題歌インストに乗せて警棒を叩き込みまくり、ここでようやく気付いたのですが、トリガー星人の二丁拳銃はジュウクンドー(デカレッドの用いるオリジナル格闘術)の裏返し、という事だったのでしょうか。
 締めは五人の一斉銃撃で、「ごっちゅう」……とは言わないのがゴーカイジャー(笑)
 巨大戦ではドギーの言葉を受けてデカレンジャーの“大いなる力”が引き出され、両腕と両足からにょっきり顔を出すガトリング。
 逃げる奴は犯罪者だ!
 逃げない奴は訓練された犯罪者だ!
 悪の匂いを銀河の果てまで追いかけ正義の前で息の根を止める宇宙警察魂を注入されたゴーカイオーの胸部からは巨大パトカーが発進してトリガー星人を翻弄し、二丁拳銃の銃撃戦の末、犯罪者を完全消毒するゴーカイハッピーガトリングでデリート執行され、大変、満足度の高い“大いなる力”でした(笑)
 ここまでのところゴーカイオーの強化は、“中から生えてくる”ので、『ガオ』以降のコンパチギミックというよりも《平成ライダー》的フォームチェンジに近い印象ですが、「ロボットの強化」という作品上の要件と「過去戦隊に認められて“大いなる力”を手に入れる」物語上の仕掛けを繋げる事により、“大いなる力”を具現化してしまう、のは個々の戦隊の掘り下げとしては物足りない面もあるものの、そこにこだわりすぎると泥沼にはまる可能性があったと思われるので、上手い落としどころを見つけたのかな、と。
 宇都宮P作品というと『シンケンジャー』最終盤における「巨大ロボの意味づけと使い方」が非常に面白かったのですが、今作においてはゴーカイオーが「“大いなる力”の出力装置」として機能する事により、スーパー戦隊における巨大戦とは何か? が「戦隊の力の証明」として改めて定義付けされているのは興味深い点。
 そしてゴーカイオーが元々、“がらんどうのロボット”であるならば、そこに“中身を詰めていく”のが今作の物語構造といえ、つまりゴーカイオーとはでっかい夢の宝箱であるのだな、と納得。
 鍵を回して開いた時に、そこに現れるのは“戦隊の魂”――それはまた、鳥にもなれる雲にもなれる無数の夢の小さなタマゴでもある――というのは、10年越しに、ゴーカイガレオン(オー)とは何か、に自分の中で一つの解を見つける事が出来ました。
 いいロボットだなぁ……。
 戦い終えた海賊達&ドギー(をハカセに押しつけたりせず超ナチュラルに肩を貸しているマベ……マベ……初見気分で見ると書いておいてあれですが、後の事を考えるとニヤニヤしてしまうシーン)は地球の警官隊に囲まれるが、それを止めたのはツンツン頭から一転、随分と髪の伸びた赤座伴番。
 その特命調査により、ゴーカイジャーの罪状とされていた海賊行為の数々はザンギャックの捏造である事が証明され、晴れてゴーカイジャーは宇宙警察からは無罪放免となり…………つまりこれは、宇宙警察公認の私掠船扱いなのでは……?(笑)
 「俺達の力を下手に使ったら許さねぇぞ。俺はボスほど甘くねぇからな」
 「ふん、文句があるならいつでも来ていいぜ」
 元デカレッド・バンとキャプテン・マーベラスは挑発をかわし、去って行く海賊達の姿で、つづく。
 第3話の魁に比べると、導入のジャスミンと締めのバンはサービス出演という扱いでしたが、その分をデカマスターが濃厚に埋め、着ぐるみなのでがっつり出しやすい事情は当然あったでしょうが、ボスが大暴れしていると『デカレンジャー』成分がなんの問題もなく注入される、ハイヌーン・ドッグファイト
 ハイテンポな展開で充実のアクションを主体にしつつ、ボスと正面から向き合わせる事によりキャプテン・マーベラスの在り方が引き立てられ、バランスの取れた良エピソードでした。

◆第6話「一番大事なもの」◆ (監督:坂本浩一 脚本:荒川稔久

 ――「金は必ずつええもんのところに集まるからなぁ」

 「この世はお金で動いているのよ!」
 「いいね君!」
 宝石店で趣味の悪い金持ちと意気投合したルカは、宝石の報酬につられて大富豪・春日井家でメイドとして働く事になり……坂本監督の煩悩いっぱいでお届けします。
 「あの木を見つけてから、何もかも変わった。昔のお父さんはあんなじゃなかった……」
 春日井家の資産の秘密は、宇宙から降ってきたプレシャス・金の成る木。その名の通り黄金を生み出す木に、侵略予算確保の為に目を付けたザンギャックからだいぶギャグノリのステルス宇宙人が送り込まれ、戦うメイド・ルカは、報酬を取り付けるとバルパンサーとボウケンイエローにゴーカイチェンジしてこれを撃破。
 「ありがとねー、100万円くーん!」
 は、新鮮な最低さでした(笑)
 娘は、金の成る木にしか興味を示さない父親に反発しており、思い出のぬいぐるみを手に、貧乏でも暖かい家族が幸せ……とか描かれたらどうしようかと思いましたが、
 「ばっかじゃないの」
 とルカがぶった切ってきて、価値観の一つとしてはともかく、全肯定されなくて良かったです。
 「お金が無くても幸せなんてただの綺麗事。簡単に言わないでよ」
 貧民街で子供達の面倒を見ていたとおぼしき過去を思い出したルカがガレオンでダーツに苛立ちをぶつけていると、そこにふらっとやってくるジョー。
 「前に言ってただろ、金にこだわるのは夢があるからだって」
 「……言ったっけ?」
 「……で、なんなんだ。おまえの夢って」
 「言ったでしょ。かなわなくなるから言わないって」
 いつものペースを取り戻したルカの姿に、ニヤリと笑ってジョーは去って行き、先日、ルカがジョーの過去に触れたので、今回はジョーがルカの過去に触れ、各人の過去を少しずつ仄めかしながら、全体のバランスを調整。
 翌日――春日井家に正面から乗り込んできたステルス怪人は放火からの押し込みをはかるがゴーカイジャーが立ちはだかり、火を付けたら木が燃えるぞ、と至極真っ当にツッコむ青。
 「まだ中に、一番大事なものがあるの!」
 春日井娘の頼みを聞いたルカは火事場でゴーイエローに変身して内部に突入し、足止めを買った4人は冷たく固いサイボーグにゴーカイチェンジ。格闘アクションしながら名乗りを入れてくるのは今作ここまでにない形で、坂本監督からアクション監督にリクエストでもあったのでしょうか(笑)
 4人はジャッカーハリケーンを放ち、燃え落ちようとする屋敷から黄が回収してきたのは、金の成る木、ではなく、娘の思い出のぬいぐるみ。
 「これが私の、一番大事なものだよ」
 過ぎた欲望の象徴として金の成る木が溶け落ちていく一方で、互いに支え合い向き合っていた過去を思い出した父娘は和解。
 「なーんかこの空気苦手」
 黄はイエローレーサーに変身して仲間と合流し、ワイヤー二刀流から最後はファイナルウェーブで、ひたすらやかましい高木怪人でした……(ほぼお任せで喋っていそう)。
 巨大化したステルス怪人は軟体ボディで粘るかと思われたがさくっとハッピーデリートされ、これにて一件コンプリート、本日のメガロポリスは鉛玉の雨模様。
 ルカが回収したぬいぐるみの中には春日井父から渡された小切手が仕込まれており、「金の成る木を回収してくる」報酬は受け取らなかったルカだが、「娘の面倒を見る」報酬として最初に約束した宝石はしっかり手にしており
 「やっぱりルカはルカだ……」
 と抜け目の無いがめつさとそれだけではない美学の一線が共に示されて、つづく。
 第5話までで基本事項を提示したところで、小休憩、といった感のあるコミカル寄りな一本。成金も怪人もくどすぎてちょっと好みのトーンからは外れましたが、過去と未来の夢(ベクトルが双方に向いているのが上手い)を示した上で個性を強め、ルカのキャラクター性の補強面では十分な出来でした。
 3-4-5-6と、レジェンド回と通常キャラ回を交互に仕掛けてきた今作ですが、次回――猫ぉぉぉぉぉぉ?!
 大変、信用できない人が出てきましたが、ある意味、対デカレンジャーより不安(笑)