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お仕事対決編、完結

仮面ライダーゼロワン』感想・第28-29話

◆第28話「オレのラップが世界を変える!」◆ (監督:杉原輝昭 脚本:高橋悠也
 「ヒューマギアが危険な存在である事は、明白です!」
 ……悪玉サイドのアジテーションに、反論の余地がなくて困ります。
 元を正せばアークを介したマッチポンプではあるのですが、少なくとも暴走の危険性が日常的な現実において、“それでもヒューマギアに依存する社会状況”がこれといって描かれていないので、当然「危険性」の面だけが印象に残ってしまう事になり、土台作りにおける正負のバランスの悪さが、決戦の開幕から豪快に火を噴く事に。
 ヒューマギア自治都市の是非を巡る住民投票を舞台に演説対決で雌雄を決する事になる飛電とZAIA、ZAIA側の代表として「ヒューマギアは雇用を奪う」と主張する政治家が登場し、どうやら不動産屋はこの仕込みだったようですが……「政治的信念、或いは利権や集票の絡む政治家の掲げる主義主張」と「一般市民の皮膚感覚の発言」はだいぶ意味が違うものなので、改めて不動産回は色々な見せ方がズレていたよなと思う事に。
 まあ、この辺りの世界観その他に関するあれこれは、お仕事編の迷走を経て婚活編で一度スクラップにされているので、もはやあまり頓着しない方が良いのでしょうが。
 飛電側の代表としてラッパーギアが出てきた時はどうなる事かと思いましたが、正攻法の演説スタイルで攻めてくるZAIA&政治家に対して、ここまで登場したヒューマギアの働きを歌詞に取り込んだフリースタイルラップで場を盛り上げる、というのは予想外に面白く、カット割りなどの見せ方の工夫にしろ、悪ふざけにならないラインの見極めにしろ、杉原監督の演出は、やはり凄く良くなっていて今後も期待したい。
 最後に出てきたアルトの、
 「ヒューマギアのセキュリティは、日々改善されています」
 の「日々改善」レベルで受け入れられると思っている危機感の無さは相変わらずで、ものすっごく空疎に響きますが……それで「受け入れられる世界」ならそれはそれで良いのですが、お仕事編に入ってから特にそこが怪しくなっているので、遅すぎた“世間”を描けば描くほど、支離滅裂さが増していく悪循環。
 一方、大変唐突に、不破と唯阿の脳内には人工知能搭載チップが埋め込まれている事が明かされ、不破さんはZAIAの実験体であるリアル改造人間でした!
 怒りのバルカンはサウザーに殴りかかるが、4話連続7回目の大爆発。
 ところがそこに復活のポイズンが乱入すると無数の矢をサウザーに浴びせかけ、振り返ってみると直接戦闘で負けた事のないポイズン、サウザーの行動を読み切って圧倒する強さを見せつけ、地面を転がったサウザーが変身を解除したところで戦闘終了。
 「なんで俺をかばった?!」
 「……それがアークの意志だからだ」
 育児用ギアの本分なのか、家出息子に続いて不良息子の面倒も見る事になった滅パパ、久々の登場という事もあってか、レインアローからの反転ステルス奇襲など、ポイズンのアクションはインパクトのある見せ方で格好良かったです。
 またOP映像に手が加わり、銃を構える迅と、日本刀を閃かせる滅が、それぞれ背中合わせで別のカットで描かれる、のが滅茶苦茶格好良く、特に満月を背に日本刀を一閃する滅は眼福。
 アルトはラッパーギアの情報を元に、対決相手の政治家の賄賂受け渡し現場に踏み込み、政治家に青臭い理想論をぶつける姿はらしくて良かったのですが(アルトの主人公性を引き出すには、「ヒューマギアへの偏愛」よりも「ヒューマギアの鏡となってくれる他者への愚直なまでの尊重」を押し出した方が良かったのかも)、「不正行為の証拠映像を司直の手に委ねる」のではなく、「公開討論の場で暴露する事で人間を陥れようとするAI」ってやはり駄目な気がするのですが……。
 ここでも戯画化された正義と悪の名の下にそれが物語として許容されてしまっており(悪徳政治家は、飛電/ヒューマギアの敵だから、陥れられても良い)、つくづく、お仕事対決編の構図そのものに問題があったとしか思えません。
 アルトがやるべきはやはり最初の最初から、徹底してお仕事対決の拒絶にあったよな、と。
 ……例えばこれが、ヒューマギアがまだ社会進出前夜であり、お仕事勝負を通してその有用性を世間に訴えるパフォーマンスの側面もあったなら意味が違ったのですが(前回の消防対決編のようなストーリーも素直に成立しますし、それが逆に反ヒューマギア論を生む構図もわかりやすい)、ヒューマギアと人間(社会)の関係、という根幹部分がエピソードの度にあやふやになっていく世界観の混濁が、脳まで届く致命傷に。
 ラッパーギアは、とうとうアークとの接続なしに「つくづく人類は滅びるべき生物だな」と宣言し、思惑通りの天津の指示により、レイドライザーを装着した唯阿さんが変身して、公開討論会の場はあっという間にZAIAテレビショッピングに。
 あ、あの、バルキリーは……?! と激しく戸惑いはあるのですが、鎌を構えた処刑レイダー(エジプト神話のアヌビス神がモチーフか?)は大変格好良く、完全に悪者っぽい色に変身した唯阿さんは、下手にライダーになって踏み台ポジションよりは、悪の女幹部路線で開き直ってくれる方がアリなのではという気はしてきました。
 「チェケラは俺が直す!」
 「ヒューマギアは廃棄すべきだ」
 暴走ドードーを止めようとするアルトの変身を見る形で、背後から進み出た天津がゆったりと変身する、というのは今作の関係ならではの面白いカットになり、立ちはだかるサウザーに対し、公衆の面前でいつものように思い切り剣を振り下ろすワークゼロワン……これはもう、アルトが100%迂闊としか言いようがありません(笑)
 以前に触れましたが、アルトの性格を考えたら、レイダーやサウザー(中身人間)に攻撃できるかどうか、を葛藤して乗り越えるエピソードが前後編ぐらいで必要だったと思うのですが、実際には二回目の戦闘から普通に殴り飛ばしていたので逡巡が全く感じられていなかった為、はめた天津の卑劣さよりも、アルトの考え無しの方がどうしても目立ってしまいます。
 場の混乱と仕込みのサクラを利用して天津がZAIA製品の売り込みとヒューマギアの危険性を訴えると群衆からは喝采があがり、アルトの若さ、というにもあまりにも身から出たサビなのが困った展開です……。
 まあアルトは今こそ、天津社長のヤバい動画の数々をネットに流すべきだとは思いますが。
 一方、自分は改造人間であり、脳内のチップを滅亡ギルドにより知らぬ間にハッキングされていたのかもしれない、という現実に混乱する不破の前には、迅が現れる。
 「あともう一人……解放しなきゃならない仲間が居る」
 不破諌こそが、仮面ライダー亡だった?! でつづく。
 天津社長、「親や教師の前では良い子にしているが裏に回ると弱い者いじめをしており、弱い者が必死の反撃に出ると巧く立ち回って周囲からの非難を向けさせる性格最悪の優等生」という、ある発達段階のコミュニティにおいては最低最悪の悪役としては非常に良く出来ていると思うのですが――それを企業社会で描いているために色々と綻びが出ているわけですが――そこは少し、ヒーローフィクションとして手加減が必要な部分であったのかも。

◆第29話「オレたちの夢は壊れない」◆ (監督:杉原輝昭 脚本:高橋悠也
 せっかく前回、嫌な仕掛けは巧くはまったなと感心していたらサウザーも公衆の面前でゼロワンに切りつけてしまい、ううん……だがそこに、顔パーツの一部が黒く変色したバルカンが現れて群衆を追い散らし、真実を求めてサウザーに銃を向ける。
 「真実を知りたければ、私に忠誠を誓いなさい。ZAIAの道具となり、ゼロワンを倒すんだ」
 「不破さんが、あんたの命令なんか聞くわけないだろ」
 ところが、声の変わったバルカンはゼロワンに銃を向け、付けてて良かった忠誠回路!
 動揺するワークゼロワンはサウザーとバルカンの連係攻撃で撃破され、不破は天津から、脳に埋め込まれたチップに、滅亡迅雷ネットの一人・亡(なき)の人工知能が内蔵されている事を告げられる。
 天津には道具扱いされ、迅には亡解放の為にハッキングを受け、滅にはアークの意志により亡の器としての存在を望まれ、モテモテの不破さんが自分の意志と亡の意識の間でアイデンティティの揺らぎに直面して芝居も状況も大変な事になっていますが、激しい雨に打たれる姿は、『ブレードランナー』への意識でしょうか。
 孤立無援のアルトは、草の根の活動を行うも住民投票の結果は圧倒的な反対に終わり、飛電インテリジェンスの運命は風前の灯火……天津に土下座を敢行してヒューマギアの助命嘆願を行うアルトだが、天津は容赦なくイズへと廃棄処分の刃を向け、絶体絶命のその時、精神力で忠誠回路を打ち破った不破が、身を挺してイズを守ると、ZAIAへと叛旗を翻す!
 「ヒューマギアをぶっ潰して、その先に何があるのか! 夢なんて、考えた事もなかった! けど……いつか見つけてやるよ。――俺が俺である為に。俺の夢を!! その為に、俺は戦う! 俺の、ルールでぇぇ!!」
 と啖呵を切った直後に取り出すのがZAIA製品なのが微妙な気持ちになりますが、どうも大森P作品は、「悪の組織が作ったベルトで戦う」行為は『仮面ライダー』の本歌取りとして説明不要な当然の事、という作りになっている節が伺え、「登場人物が如何にそれと折り合いをつけるか」の描写が不足しているのが、凄く悪い形のメタ前提になっている気がします。
 強引にキーをこじ開けてセットすると、次々と飛来する弾丸を身に受けながらアーマーを装着、解析されたプログライズキーのエネルギーが最後に追加外装となって大暴れバルカンが誕生する変身シーンは格好良かったですが。
 「刃! おまえの夢はなんだ?! ZAIAの奴隷になって、その先に何がある!」
 ゼツメファルコンに替わる左右非対称デザインとなったジュウオウバルカンは、チーター! スコーピオン! ファルコン! のジュウオウスピード殺法でサウザーを踏みつけにすると、唯阿の変身したジャッカルレイダーと改めて対峙。
 「おまえが本気の夢を語るまで、俺はおまえを認めない。おまえがおまえである為に! 俺はおまえをぶっ潰す!」
 自分が自分であるアイデンティティとは「夢」であると置かれ、「道具じゃない」と口にしながらZAIAの言いなりにしか見えない唯阿に怒りを向けるバルカンは、ジュウオウパワー殺法を発動。ジャッカルの振り下ろした鎌をノーガードで受け止めると、至近距離から放ったゴリララリアットから全力で振り回して投げ飛ばし、マンモス踵落とし、で浮いた所に空中サメバサミから地面に叩きつけ、エ・グ・い。
 俺ルール全力全開のバルカンは、最大火力わくわくアニマルブラストでサウザーとジャッカルをまとめて焼き払い、ファルコンアタックに使った片翼が、射撃時の支えとなるギミックは格好いい。
 そして、イズを守るという名目はあったものの、この戦いを棒立ちで見ていただけのゼロワン……。
 お仕事対決編ラストを締める主題歌バトルを、1000%バルカンに持っていかれたゼロワン……。
 「我々ZAIAに歯向かうという事がどういう事か、いずれ思い知るでしょう」
 1000%捨て台詞を残して天津は撤収し、殴り合いが何も解決しないので、もはや誰が何の為に殴り合っているのかよくわからなくなってくるよろしくないパターン。
 「あんたが何をしようと、俺たちの夢は壊れない」
 力強く宣言するアルトですが、「たち」とは一体……少なくとも不破さん、現時点では「夢なんて、考えた事もなかった」ので、「たち」ではない気がするのですが……ヒューマギア?
 ひとまず助っ人が殴り合いに勝ってイズは守ったが、会社は買収され、アルトは飛電インテリジェンスを去る事に。旧役員が自主退職を勧められる中、意地でも会社に残る事を決めた副社長と腰巾着コンビに飛電を頼むと頭を下げる。
 「これから、どうするつもりだ?」
 「俺の夢は変わりません。たとえ立場が変わっても、夢に向かって飛ぶだけです」
 かくして、飛電インテリジェンスを退職した飛電或人は、再び、お笑いの星を目指すのであった――。


-完-

 ……ではなく、ここから逆襲のターンが始まるようですが、主人公を逆境に追い詰める仕込みとしては時間をかけすぎた上に、その間に世界観の大事な部分が溶け去ってしまう痛恨の惨状。執拗に追い詰めた割には不破さんも自力で――アルトの言葉に感銘を受けたようではあるのですが――忠誠回路を打ち破ってしまい、どうにもパッとしない出来。
 思えば第1話で

 「何もわかってないくせに……人の夢を笑うんじゃねぇよ!!」
 「わかっている。夢とは、将来の目標や希望、願望をしめ」
 「人の夢ってのはな! 検索すればわかるような、そんな単純なものじゃねぇんだよ!」
 というやり取りがあり、「夢」を重要なキーワードとして繋げてはいるのですが、ではこの数話で「夢」が劇中で重視されていたかといえば第25話で取り上げたぐらいのもので、お仕事対決編の中でこれといって印象づけられてはいなかったので、あまりにも布石不足。
 基本設計の失敗に始まり、それが次々と物語世界の穴を広げていく事に歯止めが掛けられず、ヒーロー作品としてのカタルシスも著しく不足し、主人公への好感度も低下、とにかく純粋に出来の悪かった第2部ですが、情勢を大きく変えての新章で巻き直しに夢を見たいところです。
 とりあえず、不破さんと唯阿さんの絡みが強化されたのは、好材料