『ウルトラマン80』感想・第1話
◆第1話「ウルトラマン先生」◆ (監督:湯浅憲明 脚本:阿井文瓶)
ナレーション「爛漫の春でした。のんびりと平和な日本でした。けれども、この春の中に、充ち満ちている危険を、人に先駆けて感じている一人の青年が居ました」
物語は中学校の入学式からスタートし、鷹揚で少々コミカルな校長、ルールに厳しい生真面目な教頭、運動神経抜群のマドンナ先生、そして入学式早々に遅刻する新任理科教師――矢的猛が次々と登場。
今作の放映開始が1980年4月頭、『3年B組金八先生』の放映開始が1979年10月末なので、企画段階でどのぐらいの影響を受けていたのかわかりませんが、中学の名前が桜ヶ丘中学(『金八』は桜中学)だったり、矢的先生の服装がまるきっり金八先生だったりで、学園ドラマとしての意識はそこはかとなく窺えます。
教師としての初日、自らのモットー「一所懸命」を生徒達に説明していた猛は、小さな地震に続き、朧気な怪獣の気配を感知。一方、地球防衛軍の中でも怪奇現象を専門に扱うUGMでもこの奇妙な地震をキャッチしていたのだが……
「…………怪獣だ」
「まさかぁ! だってキャップ、怪獣この5年間、一度も出現していないんですよ」
「キャップだけですもんね。実際に怪獣と戦った事があるのは」
古強者の大山キャップの判断を若い隊員達は笑い飛ばして暇つぶしのゲームに興じ、このやり取りが物凄く格好良くて、一気に物語に引き込まれました。
本物の戦場を知るナイス三十路(?)だが若い部下からの信頼感は微妙な大山キャップは、平和に慣れ士気の緩みきったぼんくら共には任せておけない、と単身パトロールに出撃。
一方、生徒達に怪獣の予兆をその目で確認してもらおうと校外学習を行うも、まともに取り合ってもらえない矢的先生は自然のものとは思えない変色をした石を集めている内に、一人の男性にぶつかる。
「……君もか」
「……はい」
石を手にした私服のキャップと石を抱えた矢的先生、同じ異常に気付いていた者同士の、運命の出会いであった。
「僕は、醜い心や悪い心、汚れた気持ち、憎しみ、疑い、そういったものが寄り集まって、怪獣が生まれてくるんだと思います」
猛はキャップに力説し、今作における怪獣の位置づけを、自然の生き物ではなく邪念の具現化のようなもの、としてひとまず定義(※独自の研究です)。
「僕は、怪獣の生まれてくる根本を叩き潰したいんです。僕は、怪獣と戦うのと同じような気持ちで、先生になったんです」
怪獣にリアリティを感じられない生徒達自身が、いずれ怪獣を生み出す側に回るかもしれない……それを変えていきたいという強い気持ちを猛は語り、猛=80と知った上で聞くと、猛にとっては「教師として生徒達を導く事」=「怪獣とのもう一つの戦いである」事の意味が大変重く、非常に熱い宣言。
寓意的表現としての「怪獣」を、どうすれば生まない世界を作れるのか? そんな悪意の存在から目を逸らし、忘れようとしている世界を背景に、メタ的な要素を多分に含みつつ「教育」をそこに当てはめ、主人公はなぜ教師なのか、という意味づけがしっかりと主人公の信念と繋がって鮮やか。
極めて、真剣に、怪獣の再来を、子供達の未来を憂える矢的先生だが、社会人としては激しく空回り気味で教頭から注意を受け、怪獣に興味を持ってくれたと誤解したマドンナ先生に早口で怪獣について語るも「ロマンチストなのね」発言に大ショック。
猛との出会いに力を得たキャップは臨戦態勢を宣言して部下達の尻を叩くが、その矢先に二人の懸念は的中し、怪獣クレッセントが遂に出現。
その目から放たれる熱線により、実戦経験の少ない地球防衛軍の戦闘機も、UGMの特殊戦闘機も次々と撃ち落とされ、転んだ子供を身を挺してかばった猛が、逃げ惑う群衆に何度か踏みつけにされるのが、なかなか痛烈な映像。
人々の避難を確認した猛は、怪獣に立ち向かうと変身アイテムを掲げ――ウルトラマン80へと変身。
ナレーション「猛は、M78星雲からやって来たウルトラマン80だった。しかし、ウルトラマンに変身するところを見られたら、 ローストチキンにされ 地球上には居られないのだった」
秘密のヒーローの理由は、多分、光の国のルールである、とナレーションさんからさっくり説明され、80が出現した途端に子供達が歓声を上げて応援する、という無条件さはこの時代らしい見せ方。
子供達の声援を受けた80は青春キックからの青春チョップ、そして青春スパークでフィニッシュ。
後日、校長室に呼び出された猛を待っていたのは校長……と、大山キャップ。
「校長先生に頼み込んでね、放課後と日曜日、君をUGMに借りる許可をやっともらったところだ」
「は?」
僕の余暇は?
「これからはね、UGMと学校、二ヶ所で一生懸命頼むよ」
青のスーツでびしっと決め、ウインクを飛ばすキャップが壮絶なまでに格好いいのですが、言っている内容は赤色の血が流れているのか疑わしいほどの外道。
ナレーション「こうして、ウルトラマン80、矢的猛の 地獄の日々 物語が始まった」
だから、僕の余暇は???
教師と防衛隊員をどう兼任するのかと思ったら、たるみきったUGMに刺激を与える為に特命隊員としてスカウト、というのは「5年間、怪獣が出ていない世界」とも上手く繋がり、納得。
今後、教師とUGMのバランスが物語の中でどう取られていくのか、で話のタッチがかなり変わりそうですが、主人公にとっての「教師である事の意味」を信念として明確にしてくれた事で、入りやすい第1話でした。そして、大山キャップがとにかく滅茶苦茶格好いい。
基本あっさり風味の感想予定で、続けて見ていきたいと思います。