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渚にて君を想う

光戦隊マスクマン』感想・第40話

◆第40話「甦れ!愛のメロディー」◆ (監督:長石多可男 脚本:藤井邦夫)
 世界的に名を知られた天才ピアニスト・眉が、孤児だった自分を援助してくれた顔も名前も知らない恩人の“おじ様”を探す為、3年ぶりに帰日。
 姿長官の指示により眉をガードするマスクマンだが、再生能力を持った寄生獣を宿すバルドドグラーの能力により、眉の右手が石にされてしまう。なんとか眉を修道院に連れて行く事には成功するマスクマンだが、満足にピアノを弾けなくなってしまった眉は嘆き悲しみ、姿長官はタケルの問いに眉の素性を語る……。
 10年前――地底に感知された異常なエネルギーの調査に向かったある男が、洞穴の中で砂地獄に飲み込まれる女性の姿を目撃。男は続けて怪物に襲われそうになった少女を咄嗟に助け、しれっと光線銃を使ったぞ!
 目の前で母親を失った恐怖の記憶から幼い少女の精神を守る為、男は少女の記憶を消去し、「眉」として生まれ変わった少女に影ながら支援を続けていたが、名乗り出る事で眉が自らの出自を求め、その結果として恐怖の記憶を取り戻してしまう事を避ける為に、頑なに再会を拒み続けているのだった。
 相手が世界的ピアニストだけに、自称“おじ様”の詐欺師の類いなど出てこないか心配になりますが、恐らく眉の周囲には光戦隊特務部隊(全員忍者)が常に諜報の目を張り巡らしており、仮に二心ある人物が眉に近付こうものらば、おじ様怒りの闇討ちが容赦なく執行されるのです。
 ……このやり取りで最後までタケルが気付かなかったらどうしようかと思ったのですが、長官が握りしめるオカリナ(?のようなもの)を見て真相を察してくれて、ホッとしました(笑)
 物語としては、実は姿長官は(少なくとも)10年前に地底人に接触しており、地底文明の情報を得ていた事が判明しましたが……この人、もしかしなくても、美緒/イアルの正体に気付いていたのではあるまいか。
 地底で語られる眉の正体は、地底一の音楽部族・メルメ族最後の生き残り。
 「その音楽は地底人に安らぎを与え、戦う気持ちを奪う」
 て、それ2年前にやりましたよね藤井先生!!
 まあ、こういったアイデアの再利用/アレンジは珍しい事ではなく、ゼーバは家畜化光線もとい家畜化音波を操る眉の抹殺を改めて命じる。
 地上では、探し求める“おじ様”に届けるべきピアノを弾けない事に眉が嘆き、海そして海。
 (眉……負けるんじゃない。希望を捨てるな。きっと君のおじ様は、そう願っている)
 姿長官はあくまで見えざる“おじ様”に徹する事を選び、修道院に戻ったタケルは、犯人はたぶん長官、と情報を共有。なんとしても眉を守り抜こうと決意するが、フーミンを囮にイガムが眉を捕らえ、フーミンにしては雑に見つかるなと思ったら目的は暗殺ではなく陽動でした、という納得の流れ。
 眉を人質に取ったイガムは、手も足も出ないタケル達を一方的に攻撃し、恨み重なるマスクマンを相手に一石二鳥、という腹づもりだったのでしょうが、当初の目的を見失っているぞ!
 「負けて、たまるか!」
 「みんな頑張れ! 耐えるんだ!」
 ……あ、これは、虹色のパワースーツを来た長官が助けに来るパターンか(笑)
 「……おじ様?」
 「……違う。私は、X0・マスク!」(ポーズ)
 バルドドグラーの攻撃で地に伏すタケル達に自らトドメを刺そうと剣を振り上げるイガムだったが、フーミンをもぎ離した眉の体当たりを受けて思わず殴り飛ばした事でオーラマスクの隙を与えてしまい、進行する残念化(悪性ウィルス)。
 眉を逃がしたマスクマンは寄生獣の角を叩き折って眉の治療薬を手に入れると、後は用済みとばかりジェットカノン。巨大バルドのクロー攻撃を受けるグレートファイブだったが、慌てず騒がずグレートガンで本体を撃ち落とすと、珍しくシールドで光線攻撃を反射してから、ファイナルオーラバースト。
 中盤以降は特に、巨大戦はざっくり傾向のマスクマンですが、通常戦闘が気合い重視かつ追い詰められた時こそ命の炎が燃え上がるスタイルである事とのギャップの大きさもあり、結果的に物凄く、冷徹な計算を元に地底獣を抹殺していく印象になって闇が深い。……そういえば、初代戦隊巨大ロボであるところのバトルフィーバーロボには、劇中最強の存在である鉄山将軍をモデルに戦闘モーションがインプットされていた節があり、グレートファイブも敗戦を機に姿長官をモデルにしたニュー戦闘プラグラムが組み込まれたのかもしれません。
 寄生獣の角から作り出された治療薬により眉の右手は元に戻り、眉を励ますタケルに向けて、(いやおまえそこは俺のターンでしょ?! おまえ彼女いるじゃん! 俺に言わせろよ!)と視線を向けるケンタだが……考えてみると、戦隊シリーズにおいて、「二枚目ポジション」が赤、というのは割と珍しいでしょうか。序盤から、従来作とはややアプローチを変えたレッド(リーダー/主人公ーヒーロー)像を模索しているように見えるもあまり巧く機能していなかったタケルですが、物語が押し迫ってから、キザに活路が見出されるとは、さすがに思いも寄らず(笑)
 キザでニヒルでちょっと影のあるヒーロー、というのは一つ二つ前の世代のモデルといえそうですが、お義兄様には改めて、妹を誑かした男の身辺調査をお勧めしたい。
 そして……
 (おじ様、私、信じています。今は会えなくても、いつか、必ず会える事を)
 ドレスアップした眉のピアノが無人のホールに響き、舞台袖からそれを見守るタケル達は、そっと扉を開けてホールに入ってきた姿長官に気付く。
 (眉……私はどこに居ても、どんな時でも、君を見守っているよ。そして、いつか必ず……)
 しばし戦いを離れて目を閉じた長官は追想にひたり、海そして海。
 長石×藤井コンビとしては、ケンタ夏の蜻蛉回の同工異曲といえますが、藤井邦夫のロマンス趣味と長石多可男の映像的情緒が密接に絡み合い、海そして海。
 (親愛なる、おじ様。私は今日、おじ様に、会えたような気がしました。ありがとう、おじ様)
 去りゆく姿の背中、一心にピアノを弾き続ける眉、そして日本を飛び立つ飛行機、で、つづく。
 話が面白かったか、と言われると可もなく不可もなく、といった程度でしたが、やる事はやった上で、スト2分強、ピアノとモノローグと映像美だけで構成するという、当時の尺(本編17分強)を考えると、かなり攻めた一本。
 ケンタ回と比べると、姿長官のキャラクター性に合っていたのは良かったと思います。
 また、眉がチューブの重大な秘密を知っているのではないか? と推測するも、危うい記憶を甦らせてまで無理にそれを知ろうとはしない事でマスクマンのヒーロー性が上がったのも良かったところ(ちなみに4年後に「地球を守る為なので当然記憶を甦らせるべき」と、いたいけな少女を戦士思想に改造してしまう主人公が登場する戦隊があるのですが、公私を混同するな、俺たちは戦士だ!)。
 姿長官回としては、闇討ちオーラおじさんばかりではないダンディーな紳士の一面を引き出した上で、地底からの脅威への対策・調査が長年に渡り行われてきた事・地底人=絶滅させるべき侵略種族ではない事・姿長官はなんだかんだほどほど人情を介す人物、というこれまでの積み重ねを最終盤を前に補強してきたのは、手堅い。
 次回――これは、井上敏樹の大好きなパターンですが、果たして(笑)