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あつまれアニマル

『帰ってきた動物戦隊ジュウオウジャー』感想

◆『帰ってきた動物戦隊ジュウオウジャー お命頂戴!地球王者決定戦』◆ (監督:竹本昇 脚本:田中仁)
 「人間とジューマンと、多くの動物たちが共に生きる星、地球。人間の世界とジューランドが融合し、大きな変化を遂げたこの星で、大和達は新しい日々を送っていた……」
 新たな世界でそれぞれの道(セラ:養護施設?の先生、レオ:本編第8話で出会ったミュージシャンと改めて友人に、タスク:大学生、アム:ファッションモデル)を歩んでいた元ジュウオウジャーの6人の元に、地球王者決定戦の招待状が届き、人間とジューマンの絆を深める為の催しなら、と参加を決める大和達。
 だがバトルロイヤル型式の予選真っ最中にバドにさらわれた大和が目にしたのは、大会主催者・ポカネは影で闇カジノを運営し、他者の命を宝石に変えてしまう能力を持つ、デスガリアン残党という真実であった――。
 ・レオとセラの激突
 ・妄想フレンズの秘密
 ・バドと大和の共闘再び
 ・相撲
 などなど、本編の要素を拾い上げながらサービス満載で送るボーナストラック的作品で、ヒロインはサイ(CV:釘宮理恵)、そして、謎のコンドル推し。
 細かい成り行きよりもサービス重視の『帰ってきた……』らしい作りなのですが、「手堅い目配り」と「丁寧な段取り」を大きな武器としていた『ジュウオウジャー』本編とのギャップはどうしても大きく、短距離走向けの作品ではないな、と改めて。
 これを機会に今度こそレオと本気の勝負をする、と意気込むセラに対し、「勝ち進むと勝負する事になる」事そのものを考えていなかったレオ、とかはらくして面白かったですが(笑)
 レオとセラが格闘大会で雌雄を決する一方、見物に回っていたタスクとアム、途中離脱の大和くんはコスプレで闇カジノに潜入し、やけに自身満々だと思ったら鋭敏視覚を駆使してルーレットで荒稼ぎする大和くん、妙に手慣れているのですが、本編でジューマンに配られていた“お小遣い”の財源について、大きな疑念が浮上してしまいました(笑)
 タスクは麻雀で役満を連発し、本人「頭を使うゲーム」と主張しているのですが、上がっている役や捨て牌の数を見る限り、縦横無尽にイカサマを駆使しており、大学で何を学んでいるんだタスク。
 ……これがアムだったら、天然のラック値で手が揃っても納得がいくのですが、そのアムはツボ振りのコスプレに興じていました。
 闇カジノをまるごと沈めたダーティージュウオウジャーは、命の宝石を賭けた勝負を挑み、卑怯な罠を乗り越えたサワオが地球王者決定戦に見事優勝。ダブルノックアウトで倒れていたレオとセラが復帰して宝石を取り戻し、宝石にされていたバドも元に戻っていよいよ決戦へ……のところで、コピー幹部のジャグド(第1話で倒されたチームリーダー)を「誰?」と弄るのは、物語の勢いを削いだ上に悪ふざけ感も出てしまい、大失策。
 また、なんの理由付けもなく突然ポカネから生み出されるコピー幹部自体はサービス要素&戦闘の数合わせして許容するとしても、どういうわけか揃って「自分が死んだ後の記憶」を持っていたのは、不思議な上に不可解が重なってしまい、余計な要素に。
 一つの壁を越えた黄&青が強敵アザルドをタッグで撃破するのはともかく、ジニスの復讐の念に燃えるナリアを、本編で特に絡みのなかった白が単純にしばき倒すという全く噛み合わない状況も発生し、記憶の所持そのものがこれといって効果的にならず(台詞を作る都合としか思えず)、今作単独としても劇的さに欠ける上で、本編のキャラクター性も無駄に損ねる残念な事になってしまいました。
 “軽めのVシネマ一本で倒される丁度良い新たなる敵”そのものが、本編が綺麗に落着した作品ほど“本質的な蛇足”になってしまう事情はありますが、黒幕ポカネも大物として描きたいのか小物として描きたいのか話の都合で腰が据わらず(最終的にだいぶ小物に落ち着くのですが、その割にはやたら強い上にコピー幹部を繰り出してくるので見ていて戸惑う)、ヒーローを引き立たせる悪役として全く魅力的にならず。
 特に、人間体(演:林家たい平)の演技が破滅的に稚拙で、登場シーンが端から茶番劇になってしまい、中盤以降の物語が、緊張感や切迫感皆無という惨状を招く大きな要因に。
 夏冬の劇場版でよく見られる、お笑い芸人(など)のゲスト悪役出演と同じ流れでしょうが、そういった起用の中でも今まで見た作品で最悪レベル。
 葉巻になぞらえて扇子をふかすのがメタネタ(落語家だから)なのはキャストクレジット見てようやく理解できましたが、特に面白くない上に劇中だと全く意味不明の行動なので演出による肉付けも巧くいっておらず、いくら『帰ってきた……』とはいっても、作品一本の悪役を張らせるには無理のあったキャスティングで、キャストした方が悪いのですが、作品の出来、という点においては致命傷になってしまいました。
 『帰ってきた……』そのものは、戦隊サイドのサービス要素こそが中心のボーナストラック、と思えば割り引いて考えるべき要素ではありましょうが、最新作を引き合いに出すならば、スーパー戦隊が「極めて本気だ」を構築する為には悪役こそが肝心要であって、そこを構築できなかった事により、物語上のサービスは充実していたが、スーパー戦隊としてのヒロイックな盛り上がりには欠けてしまう事に。
 クライマックスバトル、愛の力でレーザーブレードを発動するサワオ、はちょっと面白かったですが(笑)
 今作最大のサービス要素は、本編で度々「ニンゲンのメスに粉を掛けるレオをゴミのような目で見るタスク」の描写から、アブノーマルな性癖なのではと疑われていたニンゲンとジューマンの異種族恋愛についての一つの解答。
 サイの意見を、採用した!
 最後は、今作必殺ダンスを始めればオチがつくメソッドにより、レッツレッツダンス。
 そもそもあまり期待値は高く持たないで見ましたが、物語云々という以上に、ゲスト悪役の演技・演出・キャラ造形、の出来の悪さが足を引っ張り、全体の質を大きく下げてしまったのが惜しまれます。
 ED後にメンバーがメタ気味な挨拶をする場面とか、そういうもの、としては嫌いではないだけに、悪役が水準レベルなら、ボーナストラックとしてもう少し素直に楽しめたかな、という一作でした。