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緑の仮面は謎の人

光戦隊マスクマン』感想・第39話

◆第39話「復活!謎のX1マスク」◆ (監督:山田稔 脚本:井上敏樹
 バラバからの挑戦を受けて対決に向かったマスクマンは、待ち受けていたマグマドグラーの凄まじい膂力に大苦戦。冒頭から戦闘員も交えた激しい戦いが繰り広げられ、空中で赤い光球が弾け飛ぶと炎の雨が降り注ぐマグマの必殺ヘルバーストは、派手な火薬の使い方で、迫力たっぷり。
 変身解除に追い込まれたマスクマンに迫るマグマドリルを飛来したナイフが妨害し、崖の上に現れた通りすがりのバイク乗りに浴びせられるアングラ兵の集中砲火、だが……
 「チェンジパワー! X1・マスク!」
 叫んだ青年は緑ベースの強化スーツを身に纏った姿(白マフラーの印象か、ちょっとデンジマンぽい)に変身し、アングラ兵を軽々と蹴散らすと霧隠れの術でタケル達の逃走を支援。なんとか本部に撤収したタケル達の報告を受けた長官は、一人の男の名を思い出す。
 「リョウ……X1マスクの正体は、アスカ・リョウ」
 かつて正義に燃えて姿長官の厳しい特訓に耐え抜き、マスクマン第1号となったアスカ……だが彼は、長官にも何も言わず、ある日突然姿を消してしまったのだった。
 昭和ヒーロー顔のアスカは瀟洒なレストランでグラスを傾け、店に流れるピアノの音色に、ある女の面影を思い出すのが凄く井上敏樹です。ピアノの音色が甦らせる思い出に耐えきれなくなったアスカだが、バイクにまたがろうとしたところで迫り来る飛び蹴り。
 「さすがだな……凄い身のこなしだ」
 長官直伝の闇討ちを防がれたタケルはニヤリと笑い、光戦隊の闇はぬばたまよりもなお暗い。
 X1マスクの助力に礼を述べるタケルに対し、こんな裏社会の喧嘩屋稼業には関わりたくないと人違いを主張して去って行くアスカだが、その後を追いかけたタケルはビリヤードに割って入ると横から勝手に球を撞き……大変、井上敏樹です。
 なおも逃げるアスカに粘着質な嫌がらせを続けるタケルは、アスカがプレイ中のスロットマシンに横から手を伸ばすと目押しで777を出し、光戦隊の闇はマリアナ海溝よりもなお深い。
 予告からてっきり、濃い二枚目のゲストキャラが大暴れする内容かと思いきや、話が進むにつれてキザ度が増していくタケルが井上キャラ化していく予想外の事態となり、タケルの裏社会伝説がどんどん公式に近付いていきます!!
 度重なる嫌がらせに音を上げたアスカはタケルに正面からのバイク対決を持ちかけ、ロックンロールに乗せて両者がバイクのアクセルを吹かすのは、これもやはりツッパリ物文脈なのでしょうか……?
 (こいつ……死ぬ気か?!)
 姿長官の下で鍛えに鍛えに鍛え抜かれ、ギンヌンガガプよりもなお深い闇をたたえて据わりきったタケルの視線に恐怖を覚えたアスカは先にハンドルを切り、敗北。かつてマスクマン計画を知ったチューブの暗殺部隊との戦いで、当時の恋人を失った過去を語る。
 (同じだ……俺と)
 タケルは美緒との別離を思い出し、ここを繋げてきたのは後の井上敏樹らしいストーリーテリングが窺える妙手。
 「そして、俺はマスクマンを捨てた。一人の女を守れなかった俺が、地球の平和を守れる筈はない。……話はそれだけだ」
 「……違う」
 「何?!」
 「じゃあ何故あの時俺たちを助けたんだ?」
 「……降りかかる火の粉を払っただけさ」
 「嘘だ!」
 過去を振り切るべきだ、とアスカにつきまとい続けるタケルだが、二人の前にマグマドグラーが出現し、アスカはいち早くバイクで逃走。
 「ふん、いい仲間を持ったな、レッドマスク」
 だが、マスクマンという過去から逃げ続けようとするアスカの胸に、それを覆すタケルの言葉が響き渡る。
 「――あんたは今でもマスクマンだ。なぜ未来を見ようとしないんだ」
 己の胸に宿り続ける正義の炎を自覚したアスカは取って返すとバイクアタックを決め、タケルを救出。
 「タケル、おまえはマスクマンのリーダーにふさわしい男だ。死んではならん男だ!」
 「X1マスク!」
 「そうだ、俺達の仲間だ!」
 仲間達も駆け付けて6人のマスクマンが今こそ一堂に会し、タケルがマスクマンの一人としてアスカを受け入れるのが、格好いいところ。
 冒頭ではベルトから霧を噴射して目くらましを放ったX1、この戦闘では指先からのオーラ投擲ポーズが何処か手裏剣投げを思わせ、つまるところ……マスクマンのオリジンとは飛驒忍法だったのか!!
 仮面の忍者・緑影!! マフラーですし。
 恐らく姿長官はその研究過程でハルカの実家とも接触し、アスカを失った後にハルカをスカウト。更に忍術以外の様々な武術のデータを取り込む事によって、現在のオーラスーツを完成させたものと思われます。
 アングラ兵を蹴散らす6人のマスクマンだったが、勇者の剣の魔力を注ぎ込まれた強化ヘルバーストが発射され、咄嗟に反応したX1は空中でその弾頭を掴むとマグマドグラーにダンクシュート! 自身も大ダメージを受けるが強敵マグマドグラーを瀕死に追い込む事に成功し、残り5人がジェットカノンでオケランパ。
 巨大戦ではGロボが安定した戦いぶりでマグマを仕留め、一命は取り留めるも変身能力を失ったアスカは、これからは子供達に拳法と正義を教える事にする……とバイクで走り去っていくのであった。
 70年代なら9割方死んでいたところですが、生き残るも変身能力を失い、「未来を見て」後進を育てていく道を選ぶ、というのは後味も良く納得の着地。
 アスカと姿長官との会話が全くなかったのは惜しまれますが、タケル同様、魂と魂で繋がっているような気はしないでもなく。というか、一度オーラを捕捉されたが最後、地の果てまでオーラ通信が追ってきそう。