『ウルトラマンネクサス』感想・第30話
◆Episode30「監視者-ウォッチャー-」◆ (監督:八木毅 脚本:太田愛 特技監督:八木毅)
冒頭から忙しいリズムの音楽に乗せて、ナイトレイダー出撃、燐はネクサスに変身してビーストと戦う、早い展開。
(憐は戦っていた。そして僕は、憐と一緒に戦っていると思っていた。だけど、あの時にはもう……僕の思いもよらなかった敵が、静かに、確実に憐を捉えようとしていた)
ネクサスの光線が炸裂し、砕けたビーストの表皮が森に落下していく映像の見せ方が格好良く、その戦いにカメラを向けて分析する、ヘビ柄グローブの不審者。
亜空間のネクサスは呪われた蒼き光の剣でビーストを粉砕し、ティルトの処理班はビーストの細胞片を拾い集めるが、その内の一つが影に吸い込まれるようにして消えていく……そんな事は露知らず、一つの戦いを終えた孤門は従兄設定のまま遊園地の憐の元を訪れ……隊服で来なくて良かったーーー!!
孤門くんが、まだ完全にNRの闇に染まっていなくて、心からホッとしました。
「ここに来て初めて見たんだ。こんないっぱいの親と子供。……なんかいいよねー」
「……羨ましい?」
「……チビん時だったらすっげぇ羨ましかったと思う。でも今は、俺がちっこい子を肩車してやれる」
孤門は憐の口から、“プロメテの子”としての過去の一端を聞くが、憐はただ、今日を見つめてにこやかに微笑む。
「俺はね、孤門。ずっと早く大人になりたいって思ってた。だから今はとっても楽しい」
一方ティルトでは、ウルトラ砲が使用不可となった件について隊長に問い質す石掘が、ティルト内部のパワーゲームの噂について触れ、それを耳にする平木、そして通りすがりの管理官はシルエットの何者か(OPクレジット見る限り、佐原健二ですが……)と向かい合い、ようやくキャラクターそれぞれの交錯が描かれると共に、全体のスピード感が上がった事でサスペンス要素の見せ方もグッと引き締まる事に。
そして、イラストレーターの思考の断片という形で、固有名詞を書き文字で示しながら順序立てて関連性を説明していく、THE・力技。
(憐がデュナミストになった意味は、なんだ?)
遊園地では監視者の存在を憐に告げた瑞生が挟み撃ちによる確保を提案するが、ぼんやり孤門くんが緊張感ゼロで振り向いた事で監視者に逃げられてしまい、ホントなんの訓練受けていたんだ孤門。
監視者を追う瑞生はまさかの格闘アクション(MP流格闘術!)を見せるも、仮面の異相にぎょっとした隙に逃げられてしまうが、監視者が落としたメモリチップに……誰も気付かなかった!(笑)
驚愕の展開のまま、針巣のはからいでバーベキューパーティとなり、孤門は猫舌の頼りない男と判明(さもありなん)。
(それは、なんだか不思議なほど幸せな時間だった。あの短いゆうべ、僕たちは自分たちの過去も、運命も、未来すらも忘れていた。僕は頭のどこかで思っていた。こんな時間は……長くは続かないんじゃないかと)
特殊な過去を持つ憐にとっての安らぎの時間、のみならず、この前のシーンで監視者を取り逃がす一因となった事について憐も瑞生も孤門を一言も責めていない事が心に沁み、父さん、母さん、ここには、暖かい人と人の繋がりがあります……(涙)
ひとときの幸せな時間が描かれ、危うく遊園地の片隅に忘れ去られそうになったメモリチップだが、目ざとく拾っていた尾白から瑞生にパス。瑞生はその扱いを孤門に相談し、前回の大幅カットの影響もあってか二人の距離感の急接近には違和感がありますが(大変『ネクサス』的ではありますが)、瑞生の管理官に対する不審がMP上司にも広がっている、として消化できない事はない範囲でしょうか。まあそれにしても、孤門くんが急にコンピューターで色々調べる役回りになっているのは、無理矢理感が強いですが。
メモリチップに入っていたのは、憐について調べていたと思われる様々な数値……そして、
「ラファエルはまだか?」
という謎の言葉。
「ラファエルって、なんなの?」
「……大天使の、名前」
ここで実はオカルトに詳しかった孤門くん、が誕生せずホッとしましたが、瑞生は急いで憐の元を訪れ、慌てて室内を片付ける憐の愛嬌が挟み込まれた後、瑞生の口にした「ラファエル」という言葉に、これまで常に飄々としていた憐が手にしていたカップを取り落とすほどの激しい動揺を見せる……で、To be continued...
前回の実質1話分カットに続き、放映短縮決定による影響の直撃を受けたのか、『ネクサス』標準からすると驚くべき早さでアクションと事情説明が展開し、その結果としてサスペンス要素が引き締まるという思わぬ副産物が発生。
(※この回については大きなカットの対象にはなっていないという事で、制作上の雲行きの怪しさが与えた影響は量りかねますが、全体のスピード感が上がっているのは概ね設計通りの模様。……『ネクサス』はどうも、メタ視点から見てしまいがちで、反省)
一方でバーベキューパーティのシーンはじっくりと描かれるのですが、これも良い形で話の緩急となり、これまでの今作に著しく不足していた、エピソード内のメリハリが効果的に付く事に。
多分に追い詰められた状況が生んだ偶然の産物という感はあり、相変わらず、冒頭で戦闘を片付けて以後全てをドラマパートに割り振る構成が良いとも思えないのですが、制作上の事情が生んだ切迫感が物語の中にも波及する(※と見ている私が感じる)事で劇中のサスペンスが盛り上がりを増すミラクルで、今作の中では、かなり面白く見る事が出来ました(笑)
……翻ってやはり、前半の今作に足りなかったのは、受け手がハラハラドキドキする為の仕掛け(見せ方)であったなと改めて。その辺りを、ビースト絡みのホラー要素で補って、ストーリー部分は弱火でじっくり、という算段ではあったのでしょうが。