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さくさく?再起動ゼロワン

仮面ライダーゼロワン』感想・第15-16話

◆第15話「ソレゾレの終わり」◆ (監督:諸田敏 脚本:高橋悠也
 大変お久しぶりになってしまいました『ゼロワン』感想、リアルタイムでは昨年末放映の辺りという事で……
-前回までのあらすじ-


 続発するヒューマギアの暴走、更に滅亡迅雷ネットによる人類への宣戦布告により、世間の風向きが飛電インテリジェンスにますます冷たくなる中、有名漫画家へのストーカー疑惑、声優ギアとの密会スキャンダル、「白衣の天使ギアの写真集を出します」宣言……などなど、新社長・飛電或人の相次ぐ失態により、飛電インテリジェンスの株価は終わりのない大暴落!
 このままでは四畳半一間風呂なしトイレ共同の売れない芸人生活に逆戻りだ、と起死回生を狙い、共同記者会見で放った渾身のギャグも不発に終わり、苦境に追い込まれるアルトに差し伸べられる、買収の持ちかけ。
 「御社の株価を100%、いや、1000%、上昇させて差し上げましょう」
 ヒューマギア消毒機関A.I.M.S.のキック担当こと刃唯阿の本来の所属先である、世界的大企業ZAIAエンタープライズジャパン社長・天津垓の目論みとは、何か?
 一方、テロにより瀕死の重傷を負ったA.I.M.S.のゴリラ担当こと不和諌は、ヒューマギア医師の緊急改造手術により体組織の35%をヒューマギア化したフワイダー01として蘇生。仮面ライダーバルカン:アサルトゴリラに覚醒するが、その心は頑なにヒューマギアへの憎悪に占められていく。
 「わるい゛ヒューマギアはい゛ね゛ぇぇぇかぁぁぁぁぁ?!」
 宇宙バイクの不正使用をきっかけに飛電内部のスパイの存在が発覚し、経理上ますます苦しい立場に追い込まれるアルトだが、シャイニングのくれた筋肉は、真理へと導く光――すなわち、筋トレこそが株価回復の手段! と錯乱の末にまたも新装備を作ってしまい、そろそろ税務署が動き出しそうな気配の中、副社長・福添は先代社長から託された巾着袋を見つめていた。
 「飛電インテリジェンス危急存亡の折には、この袋を開けよ、と先代はおっしゃった。しかし……」
 乗り越えろ筋肉痛! 飛電の株価がVやねん! 様々な欲望と陰謀が渦巻く始まりの地――デイブレイクタウンにおいて機能を復元したアークを前に、今、人とヒューマギアの新時代を巡る死闘が、幕を開けようとしていた……!
 「飛電はまだ倒されてはいない! ちょっと追い詰められただけだ!!」
 そんなわけで前回、怒りのメガトンゴリラパンチであっさりとスクラップにされた雷兄ちゃんの墓を作るも滅に足蹴にされる迅と、昴とイズをともない、父ヒューマギアの名も刻まれた飛電家の墓を訪れるアルトの姿が対比され、「ヒューマギアも家族」と断言するアルトの言葉に理解を示し、シンギュラリティに近付いてくイズ、そして昴。
 劇場版との関連もあってか、アルトのヒューマギアへの思い入れの根源は、祖父が作り、父代わりであった其雄ギアの存在にあった事が強調されるのですが、「ヒューマギアさえ家族と思うアルト」というよりも「ヒューマギアを家族の代替え品として育った結果、人とヒューマギアの境界線が曖昧なままそれを全世界に拡張してしまっているアルト」に見える部分があり、改めて先代は、とんでもない負の遺産を遺していったマッドサイエンティストなのでは。
 もし狙ってやっていたなら、だいぶ邪悪。
 その頃、A.I.M.S.は滅亡時迅雷ネット消毒作戦の為にデイブレイクタウンへと出入りを仕掛け、待ち構えていた滅&迅と正面から対峙。
 全身筋肉痛の不破を制して進み出ると独り変身する唯阿/バルキリー、それはそれとして全く話を聞かずに背後にA.I.M.S.隊員をズラリと並べて変身する不破/バルカン、相変わらず強いポイズンにバルキリーが追い詰められた時、横から飛び込んでくるシャイニングホッパー、とヒーローの劇的な見せ方へのこだわりは、今作の一貫した長所。
 ゼツメポイズンはシャイニングバッタバズーカの直撃を受けて吹っ飛び、余裕かましていたら凄い勢いで追い詰められているのですが、実はこの人割と、彼我の戦力差を計算できないタイプだったのか……?
 ゼツメファルコンにも怒れるアサルトゴリラの必殺キックが迫り、その瞬間、滅はアークへとアクセス。
 「……それがアークの意志ならば、従うまで」
 アークの意志のまま、ゼツメポイズンはゼツメファルコンをかばってマグネティックゴリラキックの直撃を受け……今作の次回予告は映像のチェイスがどうも上手くなく、大ダメージを負った滅の姿も見せすぎだったと思っているのですが、滅が自らの滅びの時も、アークの意志のままに選択する、というのは、良いらしさになりました。
 宿願の一つを果たした不破は壮絶に吐血して戦闘不能となり、瀕死の滅を抱えて嘆き叫ぶ迅だが、何故かいきなり迅の目の前に一人でのこのこ出てきたイズが、滅亡迅雷ネット大将討ち取ったりーーーと神経逆撫でしてワイヤー攻撃を受けてしまい……いやあの、イズはどうしてそこに出てきたの???
 滅の状態に微笑むイズに対する迅の怒り、というのがシンギュラリティ関連で外せない要素だったのかもしれませんが、何の前振りもなくイズがゼロワンらの対岸に登場するという完全に意味不明な脈絡で、ゼロワンだけにブラストエンド(キカイダー01の事象変換系必殺技。多用する事で世界の法則を乱し、時制や空間の混乱を引き起こす)の副作用ばりの時空の歪みが生じてしまう肝心な所なのに大惨事。
 これなら、吐血して倒れた不破をヒューマギアの本能的行動によりかばう、とかでも良かったのでは……結果、また増えたトラウマに苦悩する不破さんとか大変見たかったのですが(笑)
 「いよいよ方舟が甦る……進捗率・999%」
 ZAIAでは天津社長が事態の進行を満足げに見つめ、イズを修理しようとするアルトと、滅を修理しようとするも拒否される迅の姿が再び対比。
 「息子よ……人類を滅亡させろ。アークの意志のままに」 
 滅は決定的な「呪い」を迅に遺して機能停止し、徹底して悪い父親を貫くのですが、上述したように、先代は先代で、アルトに強烈な「呪い」を施していた或いは壮大な実験のサンプルにしているような気がしないでもなく、やはり衛星ゼア(是阿)の中で全てを見ているのでは、是之助脳。
 迅の完全な覚醒に反応し、再起動した湖底のアークにより暴走マギア軍団が大量生産され、それを率いた迅は滅の意志を継いで街を襲撃。迎え撃つA.I.M.S.だが、またもギーガが暴走。不破も唯阿も次々と戦闘不能に追い込まれた時、イズの修復を昴に任せたゼロワンが駆け付け、衛星ロボでギーガーを撃破する。
 「おまえが人類を滅亡させたいっていうのはわかった。だったら……おまえにとってヒューマギアはなんなんだ?」
 「……友達だよ」
 「友達なら、なんでイズを傷付けた」
 瀕死の父親的存在を「ざまぁw」と笑われたからです!
 「イズだけじゃない。今までだって! おまえはたくさんのヒューマギアを傷付け、利用してきた。そんな酷い事をする奴は、友達なんかじゃない」
 それはそれとして、個々人の“やりたい事”を尊重せず、一つの意志の強制を良しとする事を、滅亡迅雷ネット/アークの「悪」と定義し、それ自体は納得できるのですが、ヒューマギア自身の意志も結局は「人間に規定されたプログラム(の延長線上)」に過ぎない以上、“意志を上書きする事”と“意志を規定する事”のどちらがより残酷なのかは、悩ましいところです。
 今作はこの辺り、「ヒューマギアの幸福」を、あくまで「ヒューマギアである」事に置く傾向があるのですが、一方でイズのシンギュラリティに関しては「ヒューマギアを越える」方向性が見られ、今後の舵取りの興味深い部分でもあり心配な部分でもあり。
 「黙れ! ……全ては、アークの意志だ」
 「人間とヒューマギアの未来は、俺が守る!」
 借り物の言葉と共に迅はゼツメファルコンに変身し、対するアルトはゼアの指示によりアサルトウルフキーを拾うと、そのグリップをシャイニングホッパーキーに接続。ドライバーに読み込ませる事でゼアとアーク、二つの衛星からデータを受け取り、新たなる姿、シャイニングアサルトホッパーへと変身する!
 「おまえを止められるのはただ一人、俺だ!」
 シャイニングの黄色とアサルトの深い青色が混ざった配色のシャイニングアサルトホッパー(長い)は、でこぼこ系としてはなかなか格好いいデザインで、公認バスターをアックスモードに展開するとゼツメファルコンに躍りかかる、でつづく。
 合成変身システムに関しては正直よくわからなかったのですが、直後の玩具のCMを見るに、アサルトはグリップが本体なの……?

◆第16話「コレがZAIAの夜明け」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:高橋悠也
 「滅亡迅雷ネット、おまえらは俺が止める!」
 「僕たちは止まらないよ。滅亡するのは、人類だ!」
 見る側の私が少し間を空けてしまったというのもあるのですが、前回今回の大きな問題点が、滅亡ギルドの「人類を滅亡させる」感の薄さで、どうにもこうにも、物語上で煽っている危機感と、ここまでの積み重ねが同調しない為、迅の言行が空回り気味になってしまい、それを食い止めようとするヒーロー――ここではシャイニングアサルトホッパーフォームそのもの――の存在感も弱くなってしまっています。
 滅亡迅雷ネットの唱える「人類滅亡」そのものが、アークの意志に基づく借り物の言葉にすぎず、迅も滅も徹底して操り人形に過ぎない虚無感、というのは意図通りの部分はあるのでしょうが、それにしてもここで「第一部完」という体裁を取るのならば、もっと市民目線における滅亡迅雷ネットの脅威感を煽っておく必要はあったかな、と。
 一応、医療施設の大規模襲撃はありましたが、滅亡ギルドのテロ行為による「飛電インテリジェンスの危機」は描かれていても、「ヒューマギアという社会インフラに及ぼす危機とその影響」が圧倒的に描写不足(なにしろ、物語の進行に応じて一般市民がヒューマギアに危機意識を感じている様子が一切ないまま共存が続いている)な為に、最強新フォームが登場しての決戦感そのものが、薄くなってしまったのは大変残念。
 “お仕事”物エピソードにより旧来のヒーロー番組的な面白さを取り込みたい狙いが、結果的に「“お仕事ギア”とそれに向き合うゲスト」の構造に縛られてしまい、エピソードごとの“特殊な関係性”という狭い箱の中に収まってしまう事で、社会とヒューマギアの関係性の変化を描けていなかったツケが、ここで「第一部完」という体裁を取った事により、大爆発してしまいました。
 商業的な諸事情もあるのでしょうが、ここで滅亡ギルドを退場させて「第一部完」をやるなら、お仕事エピソードの在り方をもう少し考えた方が良かったと思いますし、お仕事エピソードにこだわるのならば、ここで「第一部完」という構成に無理があったのではないかな、と。
 背中から毒針カバンショットを叩き込まれたゼロワンは、追いギーガーでぷちっとされそうになった所で、高速思考空間に入り修理中のイズと再会。ここでアルトが飛ばしたギャグにイズが応える、というのは1クール分の二人の積み重ねとして良いシーンで、ゼロワンはシャイニングアサルトホッパーの機能を最大限発揮するシャインシステムを起動。
 リフレクタービットを展開するとほとんどガンダムのノリでゼツメファルコンを圧倒し、必殺キックの打ち合いの末、迅は大爆発。ここに、滅亡迅雷ギルドは壊滅し……
 「進捗率・1000%」
 動かぬ滅の体を踏みつけにした天津は、アークが作り出したと思われる二つのキーを手にして嗤う。
 「あれどうすんだ? 回収してからなんだかいじくり回してたようだが」
 A.I.M.S.では出向を終えた唯阿がZAIAに戻る事になり、不破の視線の先には機能停止した、が、拘束着を着せられて横たわる滅の姿が。
 「……おまえの好きにしろ」
 「俺は何と戦ってたんだろうな? ……ずっと滅亡迅雷ネットを憎んできたのに……目の前にあるのは、ただの鉄の塊じゃねぇか」
 唯阿は不破の慨嘆に言葉を返す事なく去って行き、滅はこのまま退場するには惜しいと思っていたので、復活の可能性が残されたのは嬉しい限り。
 「アルト社長、多数の笑顔を検出しました」
 「ヒューマギアと人間が、笑い合える夢を、これから叶えていこう」
 副社長によるアルト社長解任動議は、ゼロワンが滅亡ギルドを壊滅した事で否決され、ひとまず最大の窮地を乗り越えて迎えるクリスマス。
 鮭有ります
 ……て中澤監督ぅぅぅ?!(誰のお遊びかはわかりませんが(笑))
 しかし……
 「滅亡迅雷ネットはなくらない。この世界にヒューマギアが存在し続ける限りね」
 「どういう意味ですか?」
 「方舟――つまり、アークが生きているからさ」
 「……アーク」
 「そもそもアークを生み出したのは、私だ」
 12年前、打ち上げ予定だった衛星の人工知能に、徹底して人類の愚かさをデータとして与えた結果、生み出された人類に敵意を持つ人工知能――それがアーク。アークはやがて滅亡迅雷ネットを生み出すがデイブレイクによって墜落してしまい、天津の目的は、甦ったアークを利用してZAIAのテクノロジーを全世界に君臨させることにあった。
 ……天津社長、20代に見えなくもないのですが、もしかしなくても中高生の若気の至りで「愚かな人類め」的な人工知能を作ってしまったのではないか、とドキドキします。
 言い方からすると、アークを今の形に仕立てたのは社長だけど、現在のアークそのものが社長に制御されているわけではないようなので、終盤、アークに手を噛まれる社長、というのもありそうですが。
 或いは、アークすら手駒扱いだった是之助脳の降臨。
 街には天津の思惑通りにゼツメマギアが再び出現し、たまたま居合わせたアルトと不破は筋肉痛も顧みずにシャイニング&アサルトでこれを撃破するが、高まる不穏な空気。
 「何か……やばい事が始まりそうな気がするな」
 この事件により株価V字回復からの大暴落ジェットストリームを引き起こし、記者会見で糾弾されるアルトは釈明に追われ、そこにとっくりセーター社長が進み出るのが、第2話の対比になっていて、にくい見せ方。
 「飛電或人社長、あなたはいつまで夢にすがっているつもりでしょうか」
 主役剥奪、ならぬ記者会見乗っ取りを敢行した天津は、その場で飛電インテリジェンスに対するTOB敵対的買収)、そして経営権取得の暁には全ヒューマギアの廃棄を宣言し、ここに始まる社長対決。
 そして、A.I.M.S.に確保された滅の目が開くと蒼く光を放ち――新たなドライバーのようなものを手にした天津は、社長室でほくそ笑む。
 「これからは1000%……私の時代だ」
 露骨に裏で糸を引いていた天津が表舞台に登場して次回から新展開という形になるようですが、上述したように、今作ここまでのアプローチと、敵組織退場による大幅切り替え、が噛み合ったようには思えず。とはいえアークや天津など、この辺りまでは初期構想通りだろうとは思われ、この先上手く転がってくれると良いのですが。
 滅亡ギルドの組織としての適当な感じは、「全てアークの意志のまま」なので、という事にして処理されましたが、あまりにも露骨に踏み台&捨て石感が出てしまったのも、残念なところです。
 唯阿がいじくり回していたという滅が、未だアークの支配下にあるのかはわかりませんが、不破さんと絡んでくれるようなので、そこは期待したい要素。ファルコンキーはゼロワンが回収していましたが、ポイズンキーはカバンショットの後に描写されていないので、果たしてどこに転がっているのやら。
 次回――社長から「片腕」認定されて最初のお仕事が、生け花対決の進行役となった唯阿さんの明日はどっちだ?!
 なるべくさくさくめの感想で追いつきたい気持ちです。