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地底のライダー

光戦隊マスクマン』感想・第27-28話

◆第27話「盗賊騎士キロス!」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 「――来る。……地の底深く何かが向かってくる!」
 暗闇の中をひた走る白馬、そしてその気配にカッと目を開く姿長官!
 「気をつけろ! 気をつけるんだ。……ただ事では済まないような気がする」
 反応を追うマスクマンの前に、地面を割ってど派手に現れたのは、火を噴く馬を駆る男――盗賊騎士キロス!
 「誰も俺を束縛はできん。俺は地底を駆け巡る、一匹狼。マスクマンを倒す為に、それはそれは果てしなく深い、地の底からやってきたのだ」
 白銀の鎧を纏い、紅白二色の頭部(兜飾りなのか頭髪なのか、現時点ではなんともいえず)という派手な身なりのキロスがサングラスを投げると衝撃波が巻き起こり、男として何か闘争本能を刺激されたのか、爆風の中でおもむろに上着を脱ぐタケル(笑)
 直後、キロスのブーメラン攻撃を受けてオーラマスクするので、本当にどうして脱いだんだタケル。
 「奴め、あの風地獄の中で、生きていたとは」
 自らの欲望の赴くまま、欲しい物を手にする為には傍若無人の限りを尽くす事で地底にその悪名を轟かせる盗賊騎士キロスは、2年前、イアル姫?の水浴びを覗いて言い寄るが、地底の落とし穴である風地獄に落ちそうになった彼女を助けるも、自らが風地獄に飲み込まれてしまったのだった……という一部始終を何故かイガムが回想しており、そのイアルとはイガム(実は女性)であったのか、或いは、妹の入浴タイムはこのイガムが必ず守ってみせる!と貼り付いていたのか、もしくは、キロスはイアルのつもりでイガム(れっきとした男性)に言い寄っていたのか、3つの疑惑が同時に浮上。
 「狙ったものは必ずいただく盗賊騎士キロス。レッドマスク、おまえの命、もらった!」
 チューブには所属せず、独自の職種を主張するキロス、アウトロー要素の強調に加え、イアル姫(美緒)を巡るタケルのライバルポジションになりそうな事もあって、ネガタケル、すなわち“姿長官に出会わないまま裏街道を歩み続けたIFタケル”といった第一印象ですが、お陰で衣装が、白い特攻服(と書いて「トップク」と読む)に見えて仕方ありません。
 チューブ上層部の見つめる中、2年間のムショ暮らしから帰ってきた特攻隊長キロスの鎖鎌による攻撃に対し、レッドマスクはかろうじてゴッドハンドでカウンター。
 「俺の鎧は返り血を浴びた事はあっても、埃に汚れた事はなかった」
 その一撃を受けたキロスは、白いブーツと足の間から真紅のハンカチを取り出すと鎧の表面を払い、ほんのちょっと足を踏み外すと、奈落の底で多くの先達が手招きしている、面白キザ枠に堂々と仁王立ち。
 「レッドマスク、俺を本気で怒らせてしまったな」
 キロスが鎖鎌を振り回して放つ必殺クレセントスクリューに対してショットボンバーを打ち込むマスクマンだが、その威力は拮抗。出力を上げようとするマスクマンのオーラパワーに耐えきれずにショットボンバー本体に亀裂が生じ、鍛えれば鍛えるほど人体からは未知のパワーが引き出せるが、それを受け止めるマシンのスペックには限界がある、というのは今作らしい必殺兵器の敗れ方。
 「2年かかったのだ……この技を編み出して、風地獄を脱出するのに、2年の歳月が」
 そして、自業自得とはいえ敵にも修行フェーズを与える事で説得力を付加し、更に馬に変身していたベームドグラーの加勢により、遂に砕け散るショットボンバー。マスクマンはクレセントスクリューの衝撃とショットボンバーの暴発による大爆発に飲み込まれ、5色の爆煙でポーズを決めるヒーローはお約束ですが、5色の爆煙で弾け飛ぶヒーローは、割と珍しい……?(笑)
 チューブ謁見の間に乗り込んだキロスはボンバーの残骸を床に投げ捨てると、マスクマンを倒した暁の報償としてイアル姫を要求し、ゼーバはそれを承諾。
 (如何に裏切り者とはいえ、妹を、こんな男に……)
 お兄さんはギリギリと奥歯を噛み、回想の真実に関しては、現時点では濁されます。
 ほぼほぼ自分たちのオーラパワーで半死半生となったタケル達は本部へ帰還するが、キロスはコンビナート地帯を攻撃してマスクマンに宣戦布告し、5人は休息を取る間もなく、その挑発に応じて出撃。ショットボンバーを失い、傷だらけのマスクマンはキロスとベームドグラーの連係攻撃の前に無惨な最期を迎えようとするが、死生の狭間にこそ活路はあり、と炎の渦の中で瞑想を開始。
 「行くぞマスクマン……たった一度しか使えぬ、命のオーラ!!」
 本部で同じく瞑想に入った長官が全身全霊を込めて放ったオーラと同調すると、マスクマンは姿フォースによりキロス等の攻撃を反射して窮地を脱し……一応、「たった一度」と言明してはいるのですが、目の前の危難を見過ごせないヒーロー性としては正しいものの無為無策で出撃 → 追い詰められてとにかくメディケーション → 姿フォースで奇跡上乗せ、と『マスクマン』作劇の悪い部分が濃縮されて結合。
 鍛えた心身から引き出す力により土壇場で奇跡を呼び込む、というのは今作のフォーマットではあるのですが、ギャラクシーロボ誕生編から間もない為に繰り返しの印象が強くなった上、パターンに変化を加えようと姿長官を介入させた事により“奇跡”が「外部」から挿入される形になってしまったのが決定的に面白みを削いでしまう事になり残念な解決になってしまいました。
 巨大化したベームドグラーはGロボの二丁拳銃からスパートしてギャラクシーで合掌され、折角面白かったのに馬が1話きりなのも残念で、作品の商業的本分として致し方ないとはいえ、巨大戦ノルマを果たすための地底獣の扱いの雑さが、どうも今作ではマイナスに目立ちます。
 姿長官の決死の助力により勝利を収めるマスクマンだが、恐るべき強敵、盗賊騎士キロスを前に、新たな必殺武器の開発を迫られるのであった……で、つづく。

◆第28話「美緒がイアル姫?!」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 新兵器開発の為、不眠不休でカプセルの中に閉じ込められるマスクマン!
 「馬鹿野郎! 出せ! もっとオーラを出すんだ!」
 「いい加減にしてくれ! 俺達を殺す気か?!」
 「俺達だって……人間だぞ」
 思ったよりも本格的に実験動物扱いだった!
 「一刻も早く必殺武器を作らないと、あなた達だってチューブには勝てないんですよ?!」
 新兵器の開発を担当する若き技師チームの女性が、物凄く厭な理屈で5人を責め、生かさぬよう殺さぬようオーラパワーを絞り尽くそうとする技師チームは技師チームで地上防衛の為に必死という事なのでしょうが、これといった貯金が無い為に(ある程度、意図通りっぽくはあるのですが)大変嫌な雰囲気に。
 一方、自在に飛び回る謎の巨大岩石が出現して街に被害を及ぼし、新兵器の完成を急ぐか街を守るかの選択を迫られたマスクマンは、タケルが単身スピンクルーザーで出撃。自信満々で必殺のウィリーアタックを放つが巨大岩石に弾き返されてしまい、岩石を割って中から飛び出したのは、盗賊騎士キロス!
 ……え、中、入ってぐるぐるしてたの?!(笑)
 そして、どういう仕組みなのか割れた岩石の方は正体であるロックドグラーへと変身し、割と格好いいデザインなのですが、本当にどういう仕組みなんだ(笑)
 「地底の風地獄には、こんな奴がうようよと腹を空かせているのだ」
 前回の馬に続き、キロスの手駒のドグラーは風地獄から連れてきたという事になり、ますます暴走族風味。基本ゴロツキなので一騎打ちにはこだわらない姿勢のキロスはロックとの連係攻撃により赤を追い詰め、変身解除したタケルが大事な首飾りを落とすと、それに目を止め手を伸ばす。
 「イアル姫!」
 「イアル姫だと?!」
 「これは確かに、イアル姫のもの」
 キロスは2年前の覗きをまざまざと思い返し、キロス主観だと、貴婦人の沐浴に遭遇するのは騎士道ロマンスの王道なのでしょうが、現代劇目線だとただの覗き魔なので、2年間、それへの執着で地獄を生き延びた男、の持つ内外の視線の温度差が大変困ったキャラクターに(まず確実に、イアル姫に捧げる詩、とか書き溜めてる筈)。
 「……これは美緒がくれたもの。……じゃあ、イアル姫とは美緒の事か? いったいイアル姫とは何者なんだ?!」
 首飾りのチェーンを左右で握りしめ、タケルとキロスが至近距離で睨み合うカットは面白く、しかしそこに炸裂する第三者の爆撃。両者をまとめて攻撃したバラバは、イアルが地底貴族イガム家の姫であり、イガムと双子の兄妹である事をタケルに突きつけると、凍結刑についても明かす。
 「すると……美緒は……生きているんだ」
 「殺す……貴様を殺す!」
 バラバの目論み通り、嫉妬に燃えるキロスはタケルに殺意の刃を向け、両者は壮絶な死闘を展開。その間に、キロスの命令を受けたロックは他の4人を誘き寄せる為に街で暴れ回り、出撃したマスクマンが次々と球体にやられていくのは、なかなか面白いアクション。キロスの鎖鎌による戦闘と合わせて、アクション面の工夫は光るエピソードでした。
 タケルはケンタと打ち合わせて、キロスとロックドグラーを鉢合わせさせる事でロックに大ダメージを与える事に成功し、オーラを込めたマスキーブレードでロックを撃破。巨大ロックは連続切りからのその場ファイナルオーラバーストで一刀両断し、なんとかショットバズーカ無しで地底獣を相手の勝ちを拾うのであった。
 「やはり盗賊ごときに期待してみたのは甘かったかな」
 「俺は、盗賊騎士キロス! 欲しいと思ったものは、必ず手に入れる男!」
 一匹狼を気取る割には律儀に報告に戻ったキロスは、ゼーバ様のお仕置きビームを浴びて中空で藻掻きながらも矜持を込めて自らの名を叫び、井上脚本と大変相性が良さそうなのは、今後に期待したい部分。
 ……相性が良すぎてスピード違反の末にヘアピンカーブでコースアウトしそうな危惧はありますが、まあ、それはそれで(笑)
 次回――今回は感じの悪さだけが先行してしまった開発チームの方に焦点を合わせそうな雰囲気ですが、ククク、いい事を思いついたぞ、強大なオーラパワーに耐える砲身を作るという発想がそもそも間違っていたのだ! オーラの器、すなわち、人体そのものを兵器に改造してしまえばエネルギー供給バイパスに関する問題も全て解決! そう、これが地上を守る究極の力! オーラ獣・ショットタケールの誕生だ!!
 「タケル……幾ら美緒さんを助ける為だからって、スピンクルーザーと合体するなんて……」
 「許さない……盗賊騎士キロス、絶対に許さないぞ!」
 「いつか……いつかチューブに勝った日には必ず、タケルをレーシングカーの姿に戻しましょう!」
 「ええ、その時は、必ず美緒さんも一緒に……!」
 『Pipi...! Pipipi!』
 「みんな、タケルの心は、新たなマシンの中に生きている。オーラパワーを引き出すんだ!!」
 スピンクルーザーが今回で殉職扱いになっていないか、大変心配しております。