東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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急ぎ足ゼロワン

キカイダー01』感想・第41-42話

◆第41話「天下無敵 空中戦艦爆破!!」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:曽田博久)
 「「この空中戦艦が、本当の力を発揮した時に、全人類は破滅し、世界征服が可能になります」」
 「世界征服……人類が破滅する……おお、俺はその日を待っていたのだ。ザダム、説明しろ」
 「「空中戦艦は、世界の気候を自由自在に操る事ができるのです」
 超高熱による日照りや、超巨大竜巻を発生させる機能を備えた、シャドウの空中戦艦が出撃! その戦力は空飛ぶ円盤の1万倍で、今度こそゼロワン対策もバッチリだ!!
 「ザダム、俺をあまり喜ばせる事ばかり言うな! 俺はもはや世界を征服した気持ちになったぞ」
 「「はあ、ただ一つ問題があります」」
 しかし、強力な反面、機構が複雑になりすぎた空中戦艦はシャドウマンの頭脳回路だと扱いきれないかも……と不安を洩らした直後、機器のトラブルに対応できないシャドウマンの姿が描かれ、某像状態になった空中戦艦から一体が派手に落下。
 もはや、劇中でどういう扱いなのか(どう扱えばいいのか)よくわからないアキラとヒロシがそれを目撃し、そこにやってくるイチロー
 「あの雲は……ただの雲じゃないぞ」
 以前から思っていたのですが、こういった「じゃないぞ」といったような台詞の言い回しや力の入れ方、声のかすれたトーンが、イチロー兄さん(池田駿介)と後のストレッチマン宇仁菅真)は物凄くそっくり。もしかしたら役者さんに血縁関係でもあるのだろうか、と調べてみたらそんな事はないようなので、純粋に、演技として後者が前者を意識した結果でしょうか。或いは、ヒーローぽい喋り方を工夫した末の偶然の一致なのかもしれませんが。
 不安の的中したザダムは、空中円盤を操縦できる優秀なパイロット確保の為にシャドウロボ・サタン(邪悪さと黒さの増したネズミ男みたいな風貌)を送り出すが、暴走状態の空中戦艦からは次々とシャドウマンが墜落し、今度はマリが花売りの少女を救う。
 更に続けて、ワルダーが落下してきたシャドウマンを空中でぶった切り、変な方向で面白くなってきました(笑)
 「おお、遂に免許皆伝の極意を覚ったぞ。今の技、ワルダー燕返しの秘術と名付けよう」
 善意も悪意もなく、ただ己の技を磨いていただけのワルダーであったが、その行為は結果的に一人の少女(花屋妹)を救う事に。
 「あなたは殺し屋なんかじゃないわ。私には、神様みたいに見えるわ」
 前回今回と同じ曽田脚本において、いたいけな少年少女から人造人間が「神様」になぞらえられ、少女の「いい人」絨毯爆撃から逃げるように走り去ったワルダーは、たまたまイチローと遭遇して戦闘に突入。
 「拙者ご貴殿のその正義面が憎いのだ!」
 自分が何者であるのか、己の中に迷いを抱えるワルダーは、純粋に正義の為にのみ戦う事に迷いのないイチロー/ゼロワンに憎しみを向け、ワルダーと戦う度に、限りなく神に近い“ヒーロー”としてのイチロー人間性の欠落が浮き彫りにされ、“ヒーロー”とは何かが相対化されていくのが、ワルダー登場後の今作の面白いところ。
 だが対決は、両者まとめて空中戦艦のハリケーンに飲み込まれた事で水入りとなり、イチローとワルダーは、道ばたに倒れていたところを花屋姉らに発見される。
 花屋に運び込まれて息を吹き返したイチローは、空中戦艦撃破の為にシャドウマンの電子頭脳を求めるが、それを回収しようとサタンが出現し、ゼロワンとの決着を望むワルダーは、花屋妹をもぎ離して刃を閃かせる。
 「拙者、傷つけばつくほど戦いたくなる。参れ!」
 「あなたはそんな人だったの?!
 「いかにも。拙者しょせん殺し屋でござるわ」
 振り切るようにイチローに切りかかるワルダーだが、前回なます切りにされた恨みとばかり、毎度恒例お邪魔虫ダーが背後からワルダーを撃ち、しかしその追撃を阻んだのはビジンダー
 「この世に花があるところ、私は花の中から躍り出て、悪に立ち向かうのよ!」
 先生を見習い、決め台詞からヒーローの道へ踏み出してみるビジンダーであったが、乱戦の中で花屋妹がサタンにさらわれてしまい、花屋姉はワルダーへと怒りをぶつける。
 「妹はあなたを信じていたのに! あなたという人は犬にも劣る人よ!」
 「……拙者は……拙者間違いなく犬にも劣る男でござろう……」
 己の美学ゆえに、悪役になりきれない悪役であるワルダーですが、ここで、自らの韜晦を面と向かって他者から叩きつけられるのは実に強烈で、空を見上げて横向きのワルダーの垂れ目が、泣き顔に見えてくるのが絶妙なカット。
 辛くも確保した電子頭脳から空中戦艦のスペックを把握したイチローが、ビジンダーと共に空中戦艦に立ち向かう決意を固める一方、悔恨に打ちひしがれるワルダーは二人に背を向けて立ち尽くすだけであり、ヒーローと非ヒーローの境界線を残酷に引きつつ、ワルダーの抱える葛藤への描写が実に丁寧。
 「ワルダー、もし私が死んだら、私の良心回路を、あなたに譲るわ」
 「……ビジンダー殿、拙者、言うべき言葉もござらん」
 両者が去って行った後、カメラは背中を向けたままのワルダー――何も出来ずにいる者――へとズームインしていき、「人間性を喪失していくヒーロー」への疑義を呈する一方で、「そこで踏み出せる者」としてのヒーローの描き出し方が、鮮やか。
 5人のパイロットを揃え、地上に竜巻攻撃を仕掛ける空中戦艦へ向けて突撃を図るゼロワンとビジンダーだが、猛烈な砂嵐に阻まれてマシンで近付く事ができず、「後はただ一つ」と「ブラストエンドと、ビジンダーレーザーを体に転換して、ロケット噴射のエネルギーに」とはつまり、信じれば空も飛べる筈!
 空中戦艦に乗り込まれたサタンは貴重な戦力を預かっている自覚が足りなかったようで、「死なば諸共」と洗脳したパイロット達&花屋妹を空中に放擲すると、自身は脱出。花屋妹らはゼロワンネットによって安全に着地し、ワルダーは渾身の燕返しにより、逃げようとするサタンは空中で両断される。
 「モモコ殿、そなたを救ったのはゼロワン殿とビジンダー殿でござる。拙者ではござらん」
 空中戦艦は、決死の合体技ブラストレーザーで灰燼と化し、それぞれの次の戦いへと旅立つマリとイチロー
 ナレーション「マリ、傷を癒やす暇はない。シャドウと非情の戦いは、一段と激しくなるのだ。立てマリ、進めマリ、希望の光が、おまえを励ましているのだ」
 本日も私情による肩入れの激しいナレーションさんはマリに熱いエールを贈り……
 ナレーション「――イチローゆけ。シャドウとの総力戦に体当たりするのだ。たとえ五体が無惨に散ろうとも、それは人造人間の宿命だ。進めイチロー、シャドウを倒すのは、おまえだ」
 あ、ナレーションさんが、マリを生き残らせる為に、イチローを生け贄にする気だ。
 メタな空間から不穏な動向が盛り上がる中、今度こそシャドウ帝国を打ち立ててみせるとザダムの遠吠えタイムで、つづく。

◆第42話「同志討ち 火を噴く影法師銃」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳
 シャドウ組織が7年の歳月を費やして作り出した影法師製造機は、光線を照射したあらゆる影に命を与えて実体化し、それを3分間だけ影法師ロボットにする事が可能であり、なんでも「ロボット」と言えばいいと思っているのが、実にシャドウ。
 そして、全身黒ずくめ+大きく「影」と書かれた黒覆面、を「影法師ロボット」と言い切る姿勢が、実に『01』。
 「oh、ワンダフル……」
 何故か前回から英語路線になったビッグ社長へのプレゼンは続き、影法師ロボットの戦闘力は、影を作り出した本体の2倍の強さ! そしてその心は、本体とは正反対。
 つまり、仮にゼロワンから影法師ロボットを作り出す事が出来れば、3分間限定ながら完全邪悪の最強ロボットを生み出せる(筈)なのだ!!
 この作戦を聞きつけたワルダーは、殺し屋と武人のプライドにかけて中止を要請するが、だったら先にゼロワン倒せばいいじゃん、と社長に冷たくあしらわれ(ここまでのところ完全に給料泥棒なので致し方ござらぬ)、一方のイチローはシャドウマン&影法師ロボとの連戦を繰り広げていた。
 本日も軽快に悪を滅殺していくイチローだが、チェンジしたその瞬間にゼロワン・カゲを作られてしまい、胸の太陽電池プロテクター部が真っ黒になった自らの影が最強の敵に! 基本はオーソドックスなコピーアイデアなのですが、これまでのゼロワンがゼロワンだけに、脅威感は物凄い事に(笑)
 ゼロワンが自らの影と取っ組み合いの死闘を演じている頃、影法師ロボに襲われるも命からがら逃げ延び、その後にミサオらと知り合いになった少年の家にどういうわけか影法師製造機が送り込まれ、少年の母親から誕生した影法師が少年をさらい、ゼロワン影との戦闘がスキップされたイチローが駆け付けて「遅かったか……」と呟く、前後の話が全く繋がらない『01』超編集が久々に炸裂。
 何が凄いって、主人公ヒーローとコピーヒーローの激突! という一大スペクタクルが、次元の狭間で消化されてしまうのが、凄まじい(笑)
 その頃、マリもまたシャドウマン&影法師ロボットの部隊に執拗な襲撃を受けており、長めの尺を採った生身アクションで大暴れ。マリの疲弊を見計らってハカイダーが現れ、チェンジビジンダーした所に影法師光線を浴びせようとするが、笛の音と共にワルダーがその間に割って入る。
 「邪魔をする気かワルダー!?」
 「邪魔はいたさぬ。拙者そういうやり方を好まぬ」
 ハカイダーを挑発したワルダーは自ら影法師光線を浴び、誕生する首から下が黒塗りのワルダー・カゲ。
 「見よ、正義のワルダー・カゲが誕生したぞ」
 「くそぉ……くたばれぃ!」
 ワルダー影に殴りかかるハカイダーだが相手になるわけがなく叩きのめされ、ワルダー二倍パンチを受けて命乞いポーズを取ったところを投げ飛ばされて、無様に退場。
 その間に疲弊したビジンダーを逃がそうとするワルダーだったが、それを止めたワルダー影が照射した影法師光線により、手袋が黒に染まったビジンダー・カゲが誕生してしまう。
 「ワルダー・カゲ! おまえは善の心の持ち主ではないのか?!」
 「ふふ、俺には何が善で何が悪なのかわからん。勝手気ままにやりたい事をやるまでのことだ。ふふふふふふふふ……」
 光と影のビジンダー対決が始まり困惑するワルダーだが、善も悪もない虚ろな心の鏡像は、己の生き様に対する矜持を失った怪物でしかなく、ワルダーが、善も悪もわからない殺し屋ロボであるならばせめて「悪」でありたい己自身と、一方でその鏡写しとなる「善のワルダー」を見てみたい、という二つの望みを同時に打ち砕かれるのが、実に痛切。
 「……何が悪で、何が善なのかわからぬ。影までが、拙者の影までが中途半端な心を持つとは……ええぃ……拙者、せめて犬ほどの善悪を見分ける心が欲しいんじゃ」
 ワルダーは拳を震わせ嘆き、コピーロボットイデアの最大の焦点がゼロワンでもビジンダーでもなく、虚ろな人形に善と悪の心とは宿りうるのか? というワルダーの葛藤に繋げられる一ひねりで、ワルダーを描く長坂さんの筆は本当に活き活きと加速しています。
 純粋正義としての主人公ヒーロー像はそのままに、ライバルロボットを用いて内面との対話を描くアプローチが、見事にはまる事に(80年代曽田戦隊の作劇に繋がっていくともいえるのか……?)。
 アキラとヒロシは、ビジンダー影との戦いの末に気絶したとおぼしきマリを発見し、イチローはマリを修復。
 ミサオがそんな二人の姿に嫉妬の炎を燃やす要素は継続して拾われるのですが、毎度アキラとヒロシに混ぜっ返されて終わるに留まり、この3人を絡めて話がとっちらかるよりも、人造人間コミュニティ中心に描いていた方が構成がすっきりまとまるのは相変わらずなのですが、なんだかんだと40話台まで顔を出し続ける事に。
 「行こう。……たとえ勝てぬとわかっていても、行かなければならないんだ。……それが使命なんだ」
 子供をさらわれ悲しむ母親にも、「全力は尽くします」と勝利を確約できないまま、イチローとマリは、少年を救うべく、影法師製造機を構えて待ち受けるハカイダーの元へ。少年を人質にされ、再び影法師と戦う事を余儀なくされそうになった時、義によってワルダーが助太刀に入るが、ハカイダーは数話かけて手なずけていたらしいシェパードを口笛により召喚し、ワルダーは敢えなくフリーズ。
 ところが、ハカイダーの発射した影法師光線はゼロワンとビジンダーにかわされてワルダー影を生んでしまい、ワルダーと正反対のワルダー影は、犬には超強気だった、という犬に酷い展開。
 ハカイダーは、7年の歳月を費やして作り出した兵器を放置してとんずらし、発生機は無慈悲にブラストエンド。
 ……ええとなんか、発生機の爆発時に「うわぁ!」と絶叫が聞こえたのですが、画面の外でハカイダーが消し飛んだのか、実は影法師製造機ロボだったのか、世界的オカルト結社シャドウの謎は深い。
 ワルダーは前回会得した奥義を応用し、空中二回転からの飛び道具で自らの影を撃破。果たして、“生きている”とはなんなのか、自らと影の違いに何かを見出したのか否か、ワルダーは何も言わぬまま、ゼロワンとビジンダーに背を向け、去って行くのであった……。
 お互いを思いやりながらも擦れ違ってしまったゲスト母子の仲は無事に修復され、マリとイチローの、戦いの旅路は続く。
 ナレーション「だが、マリの心は寂しい。マリは知っている。人間でない我が身の哀しさを。微笑んでくれマリ、見せてくれビジンダー、あの太陽にも負けない、輝くような笑顔を」
 ビジンダー登場後のナレーションさんは、基本的に二次創作が入り気味で、ちょっぴり心が不安定。
 ナレーション「いつの日か、きっといつの日か心から笑える日が来る。走れイチロー、行けゼロワン。シャドウとの、遠く長い戦いの道を」
 ですが、そこから流れるようにまとめてくる名調子は相変わらずで、嫌いになれません(笑)
 次回――そこはかとなく見覚えのある顔の人が大暴れしている影響か、かつてなく、予告のイチロー兄さんの出番が少ない!