『スター・ウォーズ:ep9』感想(ネタバレあり)
カイロ・レンは怒っていた!
ポーとフィンは飛び回っていた!
レイは修行していた!
で始まる、《スター・ウォーズ》サーガ完結編。
以下、家人の付き合いで見に行った、シリーズにほぼ思い入れの無い身からの感想になります。ラストの内容まで触れるので、ご留意下さい。
……冒頭からライトセーバーと銃弾と宇宙船が飛び交うスペクタクルに次ぐスペクタクルがめまぐるしく展開する中で、恐らく前作で評判を落としたと思われるポーが凄腕パイロットらしい活躍を繰り広げ、フィンとローズはただの戦友に戻り、BB-8は基本レイに同行する、とep8からの流れや整合性よりも、評判の悪かった部分に手を入れる事を重視したと思われる(この辺りが特に評判が悪かったのかなと感じられる)、開き直った造り(笑) 8と9の間にほどほど時間が経っているようなので、その間に色々あったのです、きっと!
前作に関しては〔修行編〕の難しさというのもあったのでしょうが、合わせて、やたら賛美的に描かれていた自己犠牲的な特攻シーンを組み込むのを避け、ジェダイ問答も最小限に留めた事で、ひたすらスピーディーな冒険活劇となっており、若干以上に音と映像の暴力的な所はありましたが、緩急よりも疾走感を貫き通すという選択は、サーガの完結編として抑えたい要素が山ほどあるこの映画としては、悪くない判断であったように思います。
スピーディー加減でいうと、RPGで新しい街に辿り着いたと思ったら武器屋や道具屋に入る間もなく入り口をくぐった瞬間に強制イベント発動、が延々と続いていく感じなのですが、サーガ全体の要素も含め、散りばめていた様々なガジェットが収束していくクライマックスは、あまり詳しくない私でも十分に盛り上がる事が出来ました。またその局面において、レイが“導く存在”に収まるというのも、レイとレジスタンスの関係性の描写を、省略しつつも飛躍させる手段としては、上手いやり方。
個人的に前作では、メインキャラクターがどんどんバラバラになっていく展開がノリにくいというのがあったのですが、今作では、レイ・フィン・ポー、の“三人組”である事が非常に強調されており、それによりクライマックスにおいて、レイが仲間の為に皇帝の闇の誘惑に従いかける説得力が増し、いやそれでは駄目なんだ、とレンが駆け付ける姿を劇的にしてくれたのも良かったです。
そこに至ってしまうまでの事情や背景は描かれているにしても、あらかた自作自演なのですが、なんだかんだ、カイロ・レンが男っぷりを上げてくれたのはホッとしたところ。
一方で、7-8-9単位での目立つ短所を一つあげると、劇中では恐るべき悪の脅威の代名詞のように扱われる「ファースト・オーダー」の存在感が、もう一つピンと来ない事。最大の要因はep7におけるスーパーデススター砲的なやつの見せ方が凄く雑だった事にあるのですが、「ファースト・オーダー」「ファースト・オーダー」言われても、全宇宙に広がっていく恐怖支配やレジスタンスの絶望感が今ひとつ伝わってこず、物語全体の切迫感の不足を招いてしまいました。
この辺り、「帝国的な奴らが甦ったのだから脅威に決まっている」というのが、あまりにもメタ前提に頼りすぎた点はあったかな、と。
基本的にこの映画、サーガ全体としての大きな流れ(着地点)を守った上で、その場その場の展開においては描写や心情の積み重ねよりも「これが一番盛り上がるでしょ!」という選択の連続で進行していくのですが、娯楽作品としての一つの“正しさ”ではあるのかもしれません。
極端に言うと、その盛り上がる行動に至った背景の足りない行間は見た人それぞれで埋めてくれよな! それもまた、《スター・ウォーズ》サーガの楽しみ方だぜ! みたいなノリ。
そういった作りなので、特にレイとレンに関しては“物語”に操られている部分も多いのですが、その劇作上で与えられた役割と、血の宿命――メタ的には《スター・ウォーズ》サーガの呪縛――に縛られた両者のキャラクター像が奇跡的な合致を見せる事で、運命を乗り越えて「名前を手に入れる(取り戻す)」感動的なラストに繋がったのは、美しい着地でした。
そして私はここから歩き出す、そんな物語で、故に、「スカイウォーカーの夜明け」であるのだな、と。
なお、ぶっちぎりで一番面白かったシーンは、レイに飛行機を乗り逃げされ、デススター残骸の上で途方に暮れるカイロ・レンです!
それは、お父さんの幻影も見えてしまいましょう。