『ウルトラマンネクサス』感想・第20話
◆Episode20「追撃-クロムチェスターδ-」◆ (監督:阿部雄一 脚本:赤星政尚 特技監督:菊地雄一)
タンク砲の発射機会を逃したNRはファイターモードでの空中戦に移行するが、付近の温泉街に多数の人々が残っている事を知り、大困惑。変身したネクサスはカメラマン助手とモデルをなんとか救うが、ビーストの首を一つ跳ね飛ばした所で力尽きてしまい、位相空間お散歩能力の回復したビーストは再び姿を消してしまう……。
「無駄だとか無駄でないとか! 人の死というのはそうやって測れるものでないと、私は考えます」
「最近は、感情的な発言が多いですね」
ミッションエリア内に人が残っていた事をCICに問い質すも通信を切断され、管理官に食ってかかってはあしらわれる隊長が急速に歯車から人間になろうとしているのですが、3段飛ばしぐらいの駆け足を補う為に、実際にこれまでは考えるのをやめたウォーモンガー泥人形であったものが思考と人間味を取り戻しつつある、と他のキャラから言及させる事で、ガスバーナーで軸をあぶってねじ曲げる勢いの軌道修正を図る力技。
今回時点では言及されませんが、恐らくは、孤門の影響を受けているんだ! みたいな方向に持っていかれそう。
温泉街で姫矢の姿を見かけた根来は、山を下りてきた助手&モデルと遭遇。カメラマンの形見となったカメラに目を止めると、そこに残された写真を目にし、メモリーカードを奪って逃走する。
そこに姿を見せた姫矢は「根来さんなら、あの写真を必ず公表してくれる」と請け負い、前職の間に育まれた信頼があるのでしょうが、劇中では全く描写が無いので、相変わらず人間関係の積み重ねがダイジェストなのが困ります。
助手とモデルはMPによって記憶を消され、この一日でいったい何人の記憶を消して回る羽目になっているのか、雑な仕事しやがってイラストレーターーー! とMPの人が深く静かに猛り狂っていそうですが…………いやちょっと待って、この辛く苦しい本日の仕事の記憶を消してしまえば、明日からまた新鮮な気持ちで仕事に臨めるの?! どうなの?!
一方NR基地では。イラストレーターがしれっと新型機が用意できた事を告げ、志願した孤門が乗り込む事に。
姫矢は悪夢にうなされ、根来は写真の公開に向けて動く中、位相空間へ突入して鉱石ビーストへアタックを仕掛ける孤門――物語の流れとしては、溝呂木の嫌がらせを乗り越え、NRに自らの居場所を見出した孤門が、積極的に新型機を駆りビーストに挑んでいく事でヒーローとして前に進んでいく劇的な状況を意図しているのでしょうが、孤門が新型機を任されるだけの信頼をメンバーから得ているという蓄積や、それに対する周囲のリアクションが皆無なので、実態としては、「いつの間にか孤門と厚い信頼感で結ばれている事になっている隊長が独断で新型機を任せ、他メンバーは作戦のキーとなる新型機を孤門が担当する事について無反応」という職場の空気が、ひたすら辛い。
劇作としては、その「無反応」(特に文句をつけない)こそが、育まれた「孤門への信頼」の現れ、という意図なのかもしれませんが、そこに説得力を見出すのはハードルが高いですし、石掘と平木は戦闘中のリアクション以外また無言になってしまい(戦闘中に喋る分、前半よりはマシですが……)、副隊長すらなんの言及も無いのは、あまりにも空疎な欠落。
そこでメンバーが出撃前の孤門に一言ずつ声をかけるだけでもだいぶ印象が変わると思うのですが、とにかく、その時その時にスポットが当たっているもの以外は、舞台隅の暗がりに放置されて一顧だにされない相変わらずの『ネクサス』作劇。
新型機クロムチェスターδが別の位相空間に突入し、フィルターをかけた画面でのビースト遭遇シーンは、映像の新味に加えてビーストの不気味さも出て面白かったですが。
孤門機の活躍でビーストを通常空間に追い込み、タンク砲を炸裂させるNRだったが、バリアで砲撃を軽減した鉱石ビーストは位相お散歩能力まで回復させてしまい、街へと迫る。
そこに飛び込んできた姫矢がネクサスへと変身し、街の灯りを背に敢然とビーストの前に立つネクサスの姿は英雄的なのですが、「雄壮」よりも、ボロボロの体に鞭打って立ち上がる「悲壮」の方が前に出ているのは、個人的な好みからはちょっと外れるところで、うーん……。
助手とモデルがMPに記憶を改竄されながらも、亡きカメラマンから受け取った情熱がその生き方に前向きな変化をもたらし、姫矢→カメラマン→助手&モデル、の間で、記憶や目的を失っても魂の火は決して消えない、事が示されるのもだいぶ不穏ですが、果たして孤門は姫矢准という存在の証明にどう関わっていけるのか。
NRは、鉱石ビーストを亜空間に引きずり込んだネクサスを援護しようと内部へ突入するが、亜空間のネクサスは睡眠不足で倒れてしまい、もはやその肉体は限界なのか?! でTo be continued...
次回――根来流忍術vsMP流格闘術! そして姫矢に迫る改造実験の危機! の急展開。