『キカイダー01』感想・第17-18話
◆第17話「大巨篇!! 恐怖の巨人デビル始動」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳)
一般市民を尺八ロケットで吹き飛ばす虚無僧軍団!
ブラウン管の中から出現するシャドウナイト!
冒頭一分で、視聴者の正気のハードルを粉々に打ち砕く大巨篇!!
……サブタイトルで自ら「大巨篇」と銘打つ作品は、さすがに始めて見たような気がします、はい。
シャドウナイトは、ジャイアントデビルの動力として、ウランの10倍のパワーを持つという新エネルギー・ハイセリウムを狙い、開発会社の社長を脅迫。ハイセリウムの危険性を恐れ、重役会議にかけた上で闇に葬り去るつもりだった社長がそれを拒否すると、虚無僧軍団による社員の殺害映像を見せつけようとするが、そこにゼロワンが姿を見せる。
「我こそはシャドウロボット背番号3、虚無僧ドクロ!」
虚無僧の一人が怪ロボットの正体を見せ……本当に背番号だったのか。
全身赤のカラーリングで虚無僧感もドクロ感も薄い虚無僧ドクロ、先日シャドウゴーレムが所持していたのと同じような装置を首からぶら下げているのも気になりますが(なお、劇中で全く活用されず)、一応、右手にくっついた武器が尺八モチーフなのか……?
ゼロワンに作戦を妨害されたナイトは社長に実力行使を試みるがキカイダーに阻まれ、撤収。社長はジローからの護衛の申し出を断り、ハイセリウムの製造方程式を収めた鞄に、時限爆弾を仕掛けてある事を告げる。
「私は奴らが現れたら、わざとこれを奪い取らせます。そこで奴らは終わりです」
この社長、殺された社員の報復として、シャドウを壊滅させるつもりだ。
ところが、会社に向かう途上で道に倒れた女性を介抱した社長は、その女性――ミサオに財布を擦り取られ、その成果を共に喜ぶヒロシくんの正義感は、ど・こ・へ(笑)
ヒロシの教育係だったミサオは、生きる為ならダーティーな手段も辞さないはすっぱなアウトローとして登場し、もしかしなくても今作、長坂さんが本編に書くまでキャラの設定が共有されないのでは。
この運命の悪戯により、社長が財布の中に隠していたハイセリウムの方程式はミサオ&ヒロシの手に転がり込み、会社の前で首尾良く奪われた鞄の時限爆弾も、虚無僧ドクロによって見破られてしまう。金目の物を探すミサオ&ヒロシは、虚無僧が捨て置いた爆弾鞄を頂戴しようとするが、イチローに声をかけられるとバスに乗り込み慌てて逃走。一息つく二人だが、いつの間にやら草津温泉に辿り着いたバスの乗員乗客は、全てシャドウマン!
一方、さっぱりした髪型に変わったリエコと散歩していたアキラ少年が、ミサオ&ヒロシの投げ捨てた鞄を拾う形で運命の交錯は続き、それぞれ手持ちの情報が限られた登場人物達のすれ違いが群像ドラマを生む、というのは後年において井上敏樹の得意技ですが、今作では肝心のアキラとヒロシの心情にあまり焦点が当たらないので、もう一つ劇的な広がりは発生せず(この当時の時制や距離移動の大雑把さも大きいですが)。
ミサオ&ヒロシを追おうとしていたイチローは黒タロスの襲撃を受け、工場地帯で両者は対峙。
「ハカイダー! もう逃げられんぞ」
口の端を軽く持ち上げる表情が残酷すぎて、怖い、怖いよイチロー兄さん!
一方の黒タロスは、復讐の為に誘き寄せたのだと主張。
「相手になろう。貴様が生きていては、世の中の為に良くない!」
「よくぞ言った。行くぞ!」
敵認識してもらえてちょっと嬉しいハカイダーの突撃をかわしてチェンジしたゼロワンは、工場の屋根の上からダイビングゼロワンドライバーを放ち、あっという間に劣勢に陥るのがさすがハカイダーさすが。
苦し紛れにドラム缶を投げつけるも有効打には至らず、逆にゼロワンカットの直撃を受けたハカイダーは、爆発で目くらましをして撤収。折角、主題歌流して盛り上げようとしてくれたのに、「轟く爆音」のところで終わったぞ、戦闘!(笑)
無様に逃げ帰ってきたハカイダーを先程キカイダーに叩きのめされたばかりのナイトが嘲笑い、東映ヒーロー物においても史上屈指に低レベルと思われる内輪もめが発生するが、その間に別働隊はヒロシとミサオの身柄を確保しており、幹部不足に悩んでいたらしいビッグシャドウは、外部からのスカウトよりも、内部からの昇格を優先するべきだったのでは。
この一週間の間に、霊界アドバイザーのプロフェッサー・ギルを巧くおだてて話を聞き出していたのか、特殊インクはどこへやら、ヒロシの背中の図面はあっさりと読み取られ、更にミサオが所持していたハイセリウムの製造方程式も、シャドウ組織の手に落ちてしまう。
ミサオとヒロシがもはや用済みと処刑場に引き立てられていた頃、困った鞄を交番に届けたリエコとアキラは何故かパトカーに乗せられて、そのまま草津温泉に!
いつもなら、滞在先はいずことも知れぬ地方都市として処理できるのですが、今回に限って、虚無僧や鞄を拾得する場面の映像が都心部(銀座か大手町の辺りか?)に見える為、気がつけば草津温泉、が物凄く狂気を孕む事に(笑)
「あの……」
「なんですか?」
「随分遠いんですね。いったいどこへ?」
「どこへ? はっはははははははは……地獄」
邪悪な容貌に変わる警察官だが、ダークの女・リエコは、走行中のパトカーの扉を開けると、アキラくんと共に脱出。その前に立ちふさがった警察官はハカイダーの正体を現し、女子供には強気のハカイダーは二人を追い詰めるが、そこに炸裂するジローキック!
ジローに助けられたリエコはエンジンのかかりっぱなしだったパトカーに乗ってすかさず逃走し、ご都合主義を煮詰めたレベルが半端ではない存在のリエコさんですが、この思い切りの良さに関しては、嫌いではありません(笑)
危ない鞄に気付いたジローは慌ててその後を追い、時限爆弾を抱えたリエコ&アキラ←ハカイダー←ジローのチェイスシーンは、なかなかのサスペンス。……主に、ハカイダーが時限爆弾で吹き飛ばないかの不安で。
と固唾を呑んでいたら、転んだリエコが咄嗟に投げつけた鞄がハカイダーの鳩尾にクリーンヒットした瞬間に、爆・発。
「キカイダー……ここで俺と勝負を……つけろ……」
もんどり打って地面に倒れ、普通に死にかけているハカイダーはチェンジもしないジローに殴り飛ばされて絶体絶命クライマックスジャンプの危機を迎えるが、ビッグ社長によって回収され、もはや某電波人間を彷彿とさせる存在感になって参りました。
一方、処刑の迫るミサオ&ヒロシを救出するジローだが、罠を主張するナイトの命令により、虚無僧軍団の火炎放射に囲まれてしまう。
(くそぅ……奴らを倒すのは容易い。だが、俺がこの場を離れたら、二人は、焼き殺されてしまう!)
しかしその時、キカイダーが助っ人に駆け付けると、「我らのキカイダーが窮地を救った」と問答無用のナレーションが久々に炸裂し、イチロー兄さんはチェンジ・ゼロワン。
この世に悪のある限りー この世に敵のある限りー
変身したゼロワンが着地するところに綺麗にリズムを合わせて挿入歌が流れ出し、明らかに、主題歌よりこの挿入歌の方が扱いがいいのは何故なのか!(妙に好きではありますが)
ゼロワンと虚無僧軍団の死闘が、火山湖をバックに繰り広げられ、草津ロケという事は、後に正義のシンボルも修行した白根山でありましょうか。
ゼロワンカットで火炎放射尺八を切り落としたゼロワンは、虚無僧ドクロが頭から飛ばしてきた輪っか攻撃を軽々とかわすと、ドロップキック後に腕をクロスさせると光が放たれ、硝子の砕け散るようなカットが追加された凪の視線をじゃなかった、新演出のブラストエンドを放ち、斜面を転がり落ちた虚無僧ドクロは大爆発。
ハイセリウムの資料は、責任を感じて取り戻したミサオから返却され、社長が自ら焼却。ミサオ&ヒロシは再び姿を消してしまうが、リエコとアキラの無事を確認したキカイダー兄弟は、悪魔の兵器ジャイアントデビルの完成阻止を力強く誓う。
だが……ヒロシの背中の図面を元にジャイアントデビルの開発は大きく進行し、残すは既に心臓部のみとなっていた。
「ジャイアントデビルよ……ジャイアントディビルよ……おまえが存分に暴れられる日は近いぞ。おまえは全世界を征服できる。ゼロワンやキカイダーなど、おまえの小指でひねりつぶす事ができるのだ」
「殺す……ゼロワンとキカイダーを、俺が殺してやる」
果たして、キカイダー兄弟は残されたアキラの背の図面を守り抜き、ジャイアントデビルの完成を阻止する事が出来るのか?! 次回――「アキラを助けようとしたゼロワンは、アキラに触れた途端、大爆発した」。
今回、刺激の強い展開の釣瓶打ちはともかく、急に在庫整理を始めたような畳みかけ飛躍が激しすぎて、話の内容は今ひとつに感じていたのですが、次回予告があまりに面白すぎて、大幅加点(笑)
◆第18話「史上空前絶後!! 人造人間大爆発」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳)
サブタイトルの書き文字の背後が、完成迫るジャイアントデビル、という大変不吉な画面でスタート。
社長命令により出撃したデビル頭部は、工場地帯を爆撃して派手な爆発を引き起こす、今作にしては大変気合いの入った上々のデビュー戦を飾り、早速、虎の威を狩る気満々のシャドウナイトとハカイダー。そして、帰還したデビル頭部に一斉に拍手と歓声を送るシャドウ組織は、笑顔と触れ合いを大切にするアットホームな職場環境です。
「この背中さえ、この背中さえ……」
一方、アキラは背中の図面を消そうと洗車機に飛び込もうとしており、15-16話で描かれるも前回は完全に無視されていたアキラの哀しみが、長坂脚本でも拾われたのは良かった。
「アキラくん、心配しなくていい。ジャイアントデビルは必ずぶっ壊してやる!」
ジャイアントデビルの引き起こす災禍を目にして苦悩の深まるアキラと、それを見守るリエコの悲哀が掘り下げられ、誓いを新たにするジローだが、シャドウの用意した偽アキラロボットの罠にはまり、海中で大爆発!
海面に浮かび上がった赤いギターに目を瞠るリエコだが、続けてジローも同じ罠にはまり、偽アキラロボットと共に大爆発! リエコは爆心地で、バラバラに散らばった機械部品と、白いトランペットを発見する……。
ナレーション「イチローのトランペットだ! 卑劣極まりないシャドウの罠に落ちたゼロワンは、果たして死んでしまったのだろうか?」
シャドウ基地では、いつの間にやら捕まっていたアキラの背中の図面が遂に解読され、「出たぞーー」と皆で喜ぶシャドウ組織は仲間と共に成長していけるアットホームな職場環境です。
遂に完成に大きく近付くジャイアントデビルだが、果たしてキカイダー兄弟は本当に木っ葉微塵に吹き飛んだのか……? 疑問を呈すビッグ社長に対し、万全のセキュリティ体制をプレゼンするシャドウナイト(声変わった……?)だが、対キカイダー用トラップとして人造人間のマシンボディへの反応をやたら強調したので当然、イチローに変装したリエコによって突破されてしまう。
だが、リエコの変装はハカイダーに看破され、アキラとまとめて白根山処刑場で刑場の露となりかけたその時、山麓に木霊するトランペットの音色。それを吹き鳴らすのは――
「キカイダー?! 貴様生きていたのか?!」
「ハカイダー! あのアキラくんが偽ロボットだという事は、進み方の早さで見破った! 貴様等の罠に落ちるようなキカイダーではない! だが、このペットは兄さんのペットだ! 兄さんはどうした?! 俺は貴様達を許せん!」
俺は罠に引っかからないが、もしかしたら兄さんは引っかかるかもしれない、と本音が顔を覗かせるジローだが、続けてジローのギターを弾くイチローが登場する、わかっていても粋な仕掛け。
「貴様も生きていたのか?!」
「はははははははは! あんな子供騙しでは死にはせん。ハカイダー! 爆発速度よりも早く、俺が空を飛べる事を忘れていたのか!」
貴様等の罠などまるっとお見通しだ! と嘲笑うキカイダー兄弟ですが、君たち2人とも、後で真剣にリエコさんに謝れ(笑)
「ジロー!」
「兄さん!」
2人は互いの獲物を投げ合って交換すると、宙に飛び上がってチェンジし、そこに重なってボーカルの流れ出す挿入歌の入り方が、滅茶苦茶格好いい。
この世に悪のある限りー
「キカイダー! ジャイアントデビルは俺がやる! 雑魚に構うな! アキラくんとリエコさんを頼むぞ!」
シャドウナイトとハカイダーを十把一絡げに雑魚扱いしたゼロワンは草津基地の内部へと侵入し、基地破壊のテーマことED曲にチェンジ。佇むジャイアントデビルを前にゼロワンは次々と戦闘員を薙ぎ払い、途中からキカイダー達も加わっての大乱戦は力の入った殺陣。
唐突にタッグ攻撃を繰り出すナイトとハカイダーだが兄弟の前に打ち破られ、深刻なBGMが表現するのは、明らかにシャドウ組織の大ピンチ(笑)
基地を枕に最後の意地を見せるかと思われたナイトとハカイダーは始末書覚悟で撤退し、残るジャイアントデビルの砲火が兄弟に迫るが、兄弟はデビルミサイルを回避すると、兄弟のエネルギーをクロス。
「「ダブルブラザーパワー!」」
ナレーション「ゼロワンとキカイダー兄弟の合成エネルギー、ダブルブラザーパワーが遂に出た!」
合体光線が炸裂するとジャイアンデビルは呆気なく炎上し、その余波で草津基地は大爆発。偽アキラ、ジロー、イチロー、そして最後にジャイアントデビル、とまさに「人造人間大爆発」のサブタイトルに恥じないエピソードでありました。
大巨篇が2話で終了した気がしますが、一応、ダブルブラザーパワーは兄弟のシンクロが完璧でないと逆に二人が吹き飛んでしまう一か八かの切り札である、と後から解説され、久々の爽快な基地破壊に意気揚々と草津を引き上げるブラザーズ。
この世に悪の基地がある限り、基地破壊ブラザーズの戦闘力は3倍になるのだ!
かくして、ジャイアントデビルは炎に消え、草津基地と共に設計図も焼失。最強最大の超兵器完成にこだわるビッグシャドウは、再びアキラとヒロシの兄弟に魔手を向けるのであった…………と、幹部の一人をリタイアさせるでもなく、ジャイアントデビルの脅威をチラリと見せて、物語の構造はまた元に戻る事に。
一度、作品コンセプトごと大胆な整理を行って新展開に持ち込むぐらいするのかと思っていたのですが、大山鳴動して元の木阿弥。ジャイアントデビルの脅威を未完成状態で見せておく、という仕掛けそのものは面白かったので、蓄積されてきたキャラクターが今後のドラマに生かされる事と、シャドウ組織のテコ入れを切に祈りたいです。
次回――悪の戦士・キングインディアンと改造アパッチ軍団が襲来し、ハカイダーまさかの強化改造?!
もしかして今作のスピリットを最も継承している作品は『世界忍者戦ジライヤ』なのではないかという気もしてきましたが、どこへ征くのか『キカイダー01』、果てしなき戦いの道は続く!