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胡蝶のネクサス

ウルトラマンネクサス』感想・第6話

◆Episode06「遺跡-レリック-」◆ (監督:北浦嗣巳 脚本:荒木憲一 特技監督:北浦嗣巳)
 衝撃! 副隊長、孤門を心配する!
 飛行物体に触れて吹き飛ばされた孤門に駆け寄り、しかも、覆い被さってかばい、副隊長にも部下を気にかける人の心がある事が示されたのは良かったのですが、いっそこれまでと別人に見えるのは如何ともしがたい。
 前回ラスト、革ジャン男の心臓目がけて放たれる副隊長の凶弾、だが……「鍛え上げた筋肉が銃弾にも勝る事を見せてやる!」
 モスト・マスキュラーーーで銃弾を受け止め弾き返した革ジャンさんは、変身アイテムから打ち出した、石棺のようでもあり石造りの小型戦闘機のようでもある謎めいた飛行物体の中に吸い込まれ、いきなり撃つ人(副隊長)も、いきなり触る人(孤門)も、どちらも迂闊で似たもの同士。
 表面が金属質に変質した飛行物体は震動波を放ちながら飛び去り、他のメンバーもゲンゴロンを取り逃がし、帰還した基地において副隊長は、革ジャン男についてはあくまで口を噤む。
 「君は優秀なティルトの隊員であり、私の右腕だ。期待を裏切らないでもらいたい。間違っても、前任者の時のようにな」
 「…………私は、あの男とは違います」
 露骨に疑わしい副隊長に釘を刺す隊長は、何やら前任者(死神さんとの会話に出てきた人物か)とは問題があり、今また「優秀」で「右腕」と評する副隊長との間に現在進行形でろくな信頼関係が築けていないのですが、節穴疑惑が急浮上すると共に、ティルトの人材難が深刻です。
 ……まあ、何やら特定の素質が必要なようなので、ティルトの人材難はリアルに深刻そうな雰囲気ですが。
 今日も今日とて、ノーguard! ノーfear! ノーpain! 恐れるものは何もないで、相手が根負けするまで笑顔で握手を求め続けるスタイルの孤門くんは、謎の飛行物体に触れた際、革ジャンの抱える「耐えがたい後悔の念と、絶望的な孤独」を感じたと副隊長に説明。
 「ビーストに同情しろとでも?」
 「ビースト?」
 「命令があれば巨人を攻撃する。命令がなくとも、あたしは躊躇なく奴を撃つ」
 本当に、大丈夫なのか、この人。
 そもそも命令の判断基準になる情報を自ら止めているので、現場判断を言い訳に職務と私怨を混同している、というのは意図通りの描写なのでしょうが、ここまで通常任務での活躍がほとんど描かれていない為、普段から「頭をぶちぬいて動いたらビースト、動かなくなったら事故」という自制心の足りない人なのか、過去のトラウマから革ジャンさんに対して必要以上に感情的になっているのか、が判然としない為に効果的になっていないのが困ります。
 「…………彼が、ビースト?」
 副隊長の思い込みに疑問を抱き、飛行物体から流れ込んできた記憶の映像を頼りに過去の新聞記事を調べた孤門は、映像と酷似した写真を発見する。
 その撮影者の名は――姫矢准。
 革ジャンさんの名前がようやく劇中に登場し、写真の掲載された新聞社を訪れた孤門は、姫矢の過去を知る元同僚と接触。正義感と野心に燃える凄腕のカメラマンだった姫矢は、社会不正を暴く内に人間のおぞましさに飲み込まれていき、それらを振り切ると同時に自分をより追い込むように赴いた紛争地域で、親しくなった少女の死を目の当たりにする。少女の死に責任を感じながら、その地で撮った写真が世界的な評価を得た事でますます苦しんだ姫矢は、新聞社を離れ、その姿を消した……。
 そして――姫矢准は夢を見る。
 銃弾の犠牲になる人々を前にシャッターを切り続け、わずかな救いだった少女の死までをもそのフレームの中に収めてしまった自分から、逃げて、逃げて、密林の中を逃げ続けた末に、姫矢は奇妙な遺跡に辿り着く。逃げて、逃げて、遺跡の奥で石碑に触れた姫矢が、銀色の巨人の姿を目にした時、雷鳴と共に森林に出現するケルベロスビースト。
 今回のビーストは、胸部からギーガー調の目のない頭部が突き出し、その右上には左目、その左上には右目がそれぞれ潰れた犬顔という三つの頭を持っているのが面白いデザインで、迫力も十分。
 ビーストの前に立ちはだかったウルトラマンは繰り出される鋭利な爪に苦戦するが、蹴り技からの強烈なチョップで体勢を逆転すると、最後はモスト・マスキュラーーーーー光線でこれを撃破。
 鍛え上げた筋肉からは光線だって飛び出すのは、宇宙の摂理です。
 ビーストを撃破したウルトラマンの姿は荒い息をつく姫矢へと転じ、果たしてそこは、現世か幽世か――姫矢が戦ったのは夢か現かはたまた幻なのか……。
 「俺は夢を見ているのか……それとも…………現実なのか」
 マジックアイテムを握りしめながらの姫矢の呟きは、孤門くんモノローグの意味にも変化をもたらしてきて、良かったです。
 そんな姫矢に執拗に絡み、張り込みを行う新聞記者・根来……そして、白い人もまた、姫矢准という男に辿り着いていた。
 「この男が――二番目」
 謎めいた呟きで、To be continued...
 世界観や人間関係に謎を散りばめ、個々のピースが離れすぎて絵の見えてこない爽快感不足のゆったりとした展開はこれまで通りですが、毎度疲れる孤門×副隊長の会話シーンが大幅に削られた事、ようやく革ジャンさんこと姫矢の素性が一端でも見えた事、なにより、革ジャンさんについて能動的に調べる孤門(世界の謎に積極的に向き合う主人公)の姿が描かれた事が大きく、ここまでの『ネクサス』では一番面白かったです。
 巨大戦も、回想シーン?の中に盛り込む事で、物語の重苦しさから切り離して爽快感重視で描けたのはアイデア。その分、物語の乗らない弱さはどうしてもあって、盛り上がりが一定以上にはならないという短所は出ざるを得ませんが、作品全体の流れとしては、ここで一つシンプルな戦闘シーンを見せておけたのは良かったと思います。
 次回――黒い目の怪人、現る。