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追いかけタイガ

ウルトラマンタイガ』感想・第5-6話

◆第5話「きみの決める未来」◆ (監督:田口清隆 脚本:皐月彩)
 注目は、力強く「にん!」と声を出すウルトラマンフーマ。
 冒頭から街に怪獣が出現し、巨大怪獣を直下から思い切り煽りで撮るのはもはや珍しくもなんともない演出ですが、カメラを横に移動させながら画面手前にモブ群衆の姿を差し込む事で、逃げ惑う群衆の姿と、ただ歩くだけで破壊を撒き散らす怪獣とを同じフレームに納め、圧倒的な巨大さとそれに対する恐怖を真に迫る迫力で描いて見せたのは、田口監督らしい映像で今回の白眉。
 突然のTKB怪獣情報による怪獣出現の報に、事務所をこっそり抜け出したヒロユキはタイガとなって立ち向かうが、怪獣にねちょねちょした光線を吹きかけられて倒れ、あっという間の大ピンチ。なんとか零距離ストリウム光線で怪獣を撃破するも、大きなダメージを負ってしまう……。
 ウルトラマンが倒した怪獣は、召喚者が存在する限り完全に倒す事が不可能な侵略怪獣である、と近所の宇宙人から情報提供を受けたイージスは、右腕を負傷したヒロユキを残してそれぞれ調査に向かい、その途中で欲しかった服に目がくらんだピリカは、同じセンスの女性・葵と意気投合し、地球の危機をほっぽり投げてショッピングを楽しむ事に。
 勿論その葵の正体こそが、侵略怪獣の召喚者……というのが、あまりにも露骨。
 ひねればいいというわけでもありませんが、見えすいた悲劇の前振りとしての幸せな一時、というのは見せられて特別楽しいわけでもないですし、「作風」という言葉にまとめてしまう事が可能にしても、2-3-4-5と4話連続でどれもこれも悲劇寄りというのはさすがに食傷。
 侵略行為に殉ずる事しか知らずに生きてきた宇宙人の哀しみを背景に置きつつ、「侵略者だってやむにやまれぬ事情がある」という点を突いてきたのは悪くなかったのですが、それを翻す最大の要因が「地球の文化が気に入ったから」ではあまりにも軽いですし、そこをもう一押しして飛び越える「個人」の繋がり、に説得力が出るほど“ピリカならでは”という要素が描かれなかったのも残念。
 個人と個人の繋がりを描いているようでいながら、「生き方」や「仕事」を持ち出す事で説得材料がマクロ側に寄ってしまった事で、サブタイトルやキーワードもあまり効果的に機能せず、むしろもっとパーソナルな方向に狭めた方が良かったのではないかな、と。結局、この話が終わった時に、ではピリカはどんな人物なのか、というのがわかった気はあまりしませんでしたし(この辺り、女優交代の影響があったりはしたかもですが)。
 あと、今更の気付きなのですが、田口監督って怪獣エンタメバトルに関しては当代随一の撮り手だと思うのですが、もしかして、あまり、女性キャラの可愛さを引き出すのは、得手ではない……?(『オーブ』とか思い出しつつ)
 ピリカと葵の関係性の、根っこの部分が前回の「もうあんたの時代は終わったんじゃぁ!」「しばらく見ん内に随分デカい口聞くようになったのうアホンダラぁ!」と引き出しが一緒な気が、なんとなく。
 そんなわけでピリカと葵がどちらがよりインスタ映えするか仁義なき戦いを繰り広げている背景で、「俺に任せろ!」と飛び出すも次から次に怪獣の毒にやられていくトライスクワッドが大変間抜けな事になっており、鍛え上げた筋肉も毒には勝てない事が判明。
 侵略行為に縛られた生き方を捨て、自分の未来を決める事を選んだ葵は、自らが犠牲になる事で召喚者の持つ抗体をウルトラマンへと与え、毒無効体質になったタイタスは筋肉の導くままに怪獣を撃破。またも新たな禍々しい指輪を入手するのであった……で、つづく。
 予告から想像されたそのままの内容というのもありましたが、悲劇は繰り返されると麻痺が起きやすくもありますし、エピソードの内容以上に、シリーズ構成としての配置が悪かった感。
 エピソード自体も、工夫が足りていたとは言いがたく誉められる出来ではありませんでしたが……3人のヒーローを出す都合もあってか、割と戦闘の尺が長めに見えるので、近作の中でもドラマパートに割く時間が少なそう、という点は影響しているのかもしれません。
 前回今回と、〔ウルトラマンと怪獣の戦い/レギュラーとゲストのやり取り〕を同じ場面の中で並行して展開しているのは、そういった事情を踏まえているのかなと見えるところ。

◆第6話「円盤が来ない」◆ (監督:田口清隆 脚本:足木淳一郎)
 本日も旧友の息子達への嫌がらせに励むトレギアに雇われ、地球を訪れる宇宙ヒットマン。その姿を目撃した中年男性は、自らを地球に取り残された宇宙人と称し、星の海に連れ帰ってくれるようヒットマンに頼み込むが、目撃者は消す、と銃を向けられてしまう。そこに行き会った社長が男を助けて事情を聞くが、二人はヒットマンの凶弾に狙われる事に……!
 見所は、
 「怪獣の力を使うぞ!」
 から、遠慮会釈なく放たれる毒液攻撃。
 ……なんかこう、「昨日の敵は今日の友」というよりは、搾取の構造を感じてならないのですが、皆揃って平然と使用しているという事は、倒した怪獣のエネルギーを封印して隷属・兵器化する、タイガスパークのデフォルト機能であり、光の国の最新装備(制作:ヒカリ博士)という理解で良いのでしょうか。
 これは怪獣オークションと、同質の発想なのではないか。
 「私がやろう。鍛え上げた筋肉が銃弾にも勝る事を見せてやる!」
 それはそれとして、モスト・マスキュラーーーーーってなんか必殺技の名前みたいだなと思う今日この頃。
 「キレてるよー!」
 前回の雪辱とばかり本当に銃弾を弾く筋肉からタイタスはバックドロップを決め、筋は銃よりも剣よりも強し。宇宙の真理です。
 「鍛え方がなってないな! 私が適切なトレーニング方法を教えようか?」
 ところがパンチで吹き飛んだヒットマンが社長と男を見つけてしまい、それに気付くや「変われ旦那!」と瞬間チェンジしたフーマが高速ダッシュで身を挺して二人をかばう流れが大変格好よく…………えー、あれ、タイトルになっている主役ウルトラマン、誰でしたっけ?
 ……た、タタ、タ……タトバ?
 「なんでそんなに、他人の為に、戦えるの? ウルトラマンも、君も」
 「前に、星に帰りたかった宇宙人の子供に会った事があってね……。でも私は、その子を救う事ができなかった。それが、今でも心残りで。だからあなたの事、余計に放っておけなかったのかもしれない」
 「……そういえば、まだまだやりたい事があるって」
 「……地球を貴方みたいな人も、自由に生きられる星にしたいの」
 「地球人は、そんな世の中を作れると思うかい?」
 「少しずつでも変えたいと思ってる」
 この辺りは移民問題のストレートなメタファーと思われますが、社長の背景を垣間見せつつ、どうして今この仕事をしているのか、への繋ぎとしては悪くなかったです。
 そこから画面手前で次々とミニチュアが弾け飛ぶフーマVSヒットマンの戦闘にテンポ良く移行し、スピードでヒットマンを凌駕するフーマは、ウルトラ忍法残像身代わりの術で相手の剣を奪って切りつけると、ビクトリー先輩の力を借りた必殺Vの字手裏剣で真っ二つに成敗し、フーマ普通に格好いいな!
 で…………えー、あれ、タイトルになっている主役ウルトラマン、誰でしたっけ?
 ……た、タタ、タ……タラコ?
 すっかり、某Mさん(『仮面ライダー電王』)みたいな事になっていますが、ウルトラマンTの明日はどっちだ!!
 そして今夜も夜空の星を見つめる男の傍らには、いつの間にか一人の宇宙人の姿が。
 「もう少し、この星で、暮らしてみるよ」
 だが男はサイケ宇宙人の誘いを断って地球に残る事を選び(見方によっては、社長の色香に迷ったように取れなくもないですが……)、宇宙人は、“懐かしい円盤”と共に飛び去っていくのであった……。
 さすがに悲劇の5連投は避けられた上で、くねくねしたヒットマン、ねばっこい握手にハンカチを広げるトレギア、アピール過剰気味なタイタスなどなど、打って変わったコミカルな演出。
 最後に登場する宇宙人で裏打ちされるように、タイトルからして『ウルトラセブン』第45話「円盤が来た」オマージュだったのでしょうが、私個人の「円盤が来た」の記憶が「間違いなく一度は見ているが、映像演出のぶっとんだ回だったような……程度のぼやけた記憶しかない」為にオマージュ要素は9割方わからず、かといって存在は知っているのでどうしても背後に存在がちらついてしまい、純粋に『ウルトラマンタイガ』として虚心で見る事もできない、という、一番もやもやするパターン!
 前回のピリカと比べ、社長のパーソナルな部分の組み込み方は悪くなかっただけに、どっちを向いても楽しみにくいのが残念でした。
 次回――今度は、邪神体系で、またもフーマのターン?!