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その名はガイア

ウルトラマンガイア』感想・第51話

◆最終話「地球はウルトラマンの星」◆ (監督:村石宏實 脚本:小中千昭 特技監督:佐川和夫)
 見所は、最終作戦の担当オペレーターが女子だと知り、(うわ、面倒くせぇ……)という顔になる梶尾さん。
 やはりこういう人は、年上のキレイ系に手綱を握られるのがお似合いだな、と改めて思う最終回。
 律子さんと黒田さんが出せればほぼパーフェクトでしたが、そこまでは出来なかったものの(出せても1カットぐらいだとオファー出すのも現実的になかなか難しいでしょうし……)大半の要素を拾いきって、見事な大団円となりました。
 「どんなに空がイナゴに覆われようと、宇宙からニュートリノが、降り注いでいるわ。地球はひとりぼっちじゃない。広大な宇宙と地球は、繋がっているの」
 破滅招来体によって人生を歪められた被害者、ともいえる稲森博士が、最後にメザードの擬態ではない精神体(ないし藤宮の垣間見た幻視)として出てきたのも良かったです。
 「俺達にはまだやるべき事があったぜ、我夢!」
 アグルの聖地でプールを見つめていた藤宮は、稲森ソウルの示唆により、地中を貫くニュートリノを媒介にした通信システムを即興で構築し(たまに忘れそうになるけど、天才です!)、封印されていたクリシスへとログイン。イナゴによる電波障害の影響を受けない、光量子ネットワークを生き返らせる事に成功する。
 なお、玲子さんらが入ってきたタイミングで「稲森博士が教えてくれた」と口にしていた為、ちょっぴり、気まずい!
 ……まあもはや、くどくど会話を交わさなくても通じ合える関係、という事ではあるのでしょうが、この後、藤宮と玲子さんに一切会話が無いので、ちょっとドキドキします(笑) 一方で、懸命に声を張り上げて何かを必死にアピールする敦子とは対照的な扱いなのですが、結局、村石監督の中では〔敦子 < キャス〕という、若干の私情が滲み出た感。
 「力を貸して下さい。ファイターで戦ってきた、XIGの技術と経験が必要なんです」
 通信の復旧と共にガード:アメリカのダニエルからXIGに協力要請が届き、キャスは我夢と藤宮に「あなた達に、地球の光を戻してあげる」と宣言。
 「私たち、アルケミースターズが、なぜこの地球に生まれたと思う?」
 「僕たちの出来ること、僕たちの力を信じるんだ」
 キャスの発案により、世界中に散らばるアルケミースターズとの共闘態勢が確立、そしてXIGファイターに緊急改造が施され、チーム・ライトニング/ファルコン/クロウの9人にシーガルの神山を加えた10名のパイロットが中核を成す、XIG最終作戦が発動する。
 「ミッションネームは――ガイア」
 「ファルコンはアジアを担当する。林、塚守……よく俺についてきてくれた。感謝している」
 「自分たちは……米田リーダーだから」
 「ファルコン最後のミッション、絶対に成功させます」
 出撃前、及び作戦中に各人に台詞が配分されているのが嬉しいのですが、チーム・ファルコンは「いつか見た未来」で描かれた、「その気になれば退役は可能だがエリアルベースの為に敢えて残り続けていた」という繋がりが背景にあるので、やり取りが重く響きます。それを意志によってくぐり抜けた先で迎える、未来を掴む為の最後のミッション、というのも実に格好いい。
 XIGファイターはジオベースから次々と飛び立っていき、東京に戻り、“初めてガイアに変身した場所”で光を待つ我夢と藤宮の元を訪れるコマンダー
 「必ず、生きて帰ってこい」
 「……あの! ……どうして、どうして僕がウルトラマンだって……どうして、僕の事を信頼してくれたんですか」
 「理由などいるか?」
 コマンダーは我夢に笑顔を向けて去って行き、てっきり高山両親を連れてでもきたのかと思ったら、現場を抜け出して格好いい事を言いたかっただけでした!
 最後の最後でちょっと株が下がったのですが、一度死の淵を覗いている身なので、仕方ないのか!
 一方、世界各地に散ったXIGファイターは、破滅イナゴと戦い続ける地球怪獣の頭上に位置する……キャスの考案した、我夢と藤宮に地球の光を届ける作戦、それは、アルケミースターズの演算能力によるマニュアル誘導により、ファイター下部に取り付けたリパルサーフィールドの反射角度を調整し、地球怪獣が体内に秘めた核融合エネルギーを一点に集中させる、というものだった!
 「リパルサーフィールド、照射」
 神山の台詞に合わせてOPが流れ出し、人事を尽くした先にウルトラマンが現れる、という今作を貫くテーゼが凝縮された、最高のタイミング。
 クリシス、アルケミースターズ、地球怪獣、などなど、今作ここまでに散りばめた要素を拾い集めながら到達する最終作戦ですが、怒濤の勢いでキーワードが寄り合わされていく展開が気持ちいいと共に、“見るからに無茶苦茶な作戦”である事が「大逆転の一手」としての説得力を生じさせ、更にそれを成功させるにはアルケミースターズの能力のみならず、それを実行に移せるXIGファイターズの“経験”が必要である事により、ここまで積み重ねられてきた数々の死闘そのものが最終作戦の説得力になるというのが、実にお見事。
 人と超越の力が共に戦い続けてきた、ウルトラマンガイア』1年のまさに結実となりました。
 「地球の怪獣達の光が、今ここに集まってきます。ガイアとアグル、二人のウルトラマンは……私たちの心の光です」
 そしてそこに、地球の命の一員として、地球怪獣の放射する光線が加わり、リパルサーフィールドによって反射・調整された光が地球を駆け巡る――
 「我夢ー! もうじき来るよーーー!」
 「……ったく、緊張感のない声だな」
 色恋に発展する雰囲気は特にありませんが、我夢とジョジーというのは友人としては凄くいい距離感だな、と改めて。返す返すもカナダ回でジョジーにスポットが当たらなかったのが惜しまれますが、結果としては最終回まで出張るキャス登場回であるので、敦子もジョジーも、助っ人メジャーリーガーの前に敗れ去ったのだ。
 光の到達直前、現場近くに我夢両親がやってきて、近づいて言葉のやり取りこそ無いものの、無言の激励を贈られてサムズアップをかわす、というのは互いが向き合う瞬間として大変良かったです。
 それは多分、地球と繋がり、今までとは違う環境に飛び込み、数多くの戦いを経験してきたからこその、我夢にとっての大事な気付きだったと思うので。
 TV中継に向けて世界中の人々が祈りを向け、そして遂に、光は始まりの地へと凝集する。


「ガイアーーーーーー!!」
「アグルーーーーーー!!」

 その光を受け取った藤宮と我夢は揃って変身し、天空を覆うイナゴの群れへと突撃。これまで以上の力を得た両ウルトラマンは、瞬く間に世界中の空からイナゴを消し去っていくが、そこへ現れる蝶天使。だが、地球の命の繋がりをその身に宿したガイアとアグルは、ソニック天使ウェーブを跳ね返すと、怒濤の連続光線技で、天使を迎撃。追い詰められた天使は、大迫力の超巨大怪獣へと変貌する……!
 超天使を更に上回る巨大さの破滅天使怪獣は、「大迫力」としか表現しようがない、大迫力。物語が地球と人類の破滅寸前という規模なので、下手な造形では映像が位負けしてしまうところでしたが、最後の脅威の象徴として、納得のいく存在感と凶悪さ。
 大腿筋に溜めた地球のパワーキックで天使獣の角を破壊するも、あまりにも巨大な獣にぺちっとはたき落とされてしまう両ウルトラマンだが、その窮地に割って入る壬龍。その間に体勢を立て直したガイアとアグルは、ツインカムマッスルスピンで獣の体を貫くと、怒りの突撃をしてきた獣にカウンターで合体地球の隙間光線を浴びせてその巨体を木っ葉微塵に吹き飛ばし、遂に破滅の使徒を打ち破るのであった!
 最後の最後で極めてインパクトのある、皮膜型の巨大な両翼が、凄まじい勢いで砕け散り千切れ飛んでいくのが実に贅沢かつ強烈で、『ガイア』のラスボスにふさわしい怪獣と爆発でした。
 「これが地球の光です。この星には、ウルトラマンが居ます。こんなに素晴らしい星が、破滅なんか絶対にしません。私たちが、させない努力を、していく限り」
 最終回の玲子さんは、マイクとカメラの力もあってか語り部モードに終始するのが、良くも悪くも玲子さんという感じですが(藤宮とのウェットな部分はあっても良さそうなところでしたが、尺の都合でカットでもされたのか)、ウルトラマンが勝てば万事解決なのではなく、「私たちが、させない努力を、して」いかなければならない、というメッセージが入ったのは良かったです。
 人々の声援を受けながらガイアとアグルは夕陽を背に友情タッチをかわし――かくしてひとまず、地球は破滅の運命を覆した。
 そして……
 海を見つめながら砂浜を歩く藤宮はどうやら旅の途中、といった感じで、性格的にも規模的にも前半のやらかしをスッキリ片付けられはしないでしょうから、藤宮なりの償い方を探し続ける事になりそうですが、一方で自分に浸る傾向がだいぶあるので(フェニックス……!)、何も言わずに玲子さんの家に「……ふふ、馬鹿言うなよ。俺は銀河の流れ星だぜ」と意味不明の供述を置き手紙として残し、某風来坊後輩を思わせる、120%残念ムーヴを炸裂させたののではないか、と不安になります藤宮ぁ!!
 PALはプログラムなのでやはり復活し、大学に戻った我夢は友人達と街を歩く中でふと、都会の真ん中でたくましく育つ植物の芽吹きに気付く。そして、顔を上げた目に映るのは、おぼろな壬龍の姿。
 「そうなんだ……これが……これが地球なんだ。…………おーーーーい!!」
 様々な命が集まって成す地球の息吹をその身に感じた我夢が、宇宙に向けて声を張り上げてスタッフロールに入り、メッセージが記されて、エンド。




地球には怪獣がいて、ウルトラマンがいる。
この美しい星を、私たちはもっと愛していきたい。



 スケールの大きすぎる根源的破滅招来体に関しては、“そのもの”を倒したわけではなく、しかしだからこそ、地球を破滅させないように生きていく事が必要なんだ、というのは、フィクション(ウルトラマン)から現実(視聴者)へのフィードバックとしても、良いまとめ方だったと思います。
 年間通してアベレージの高い作品でしたが、最終章らしい惑星規模の大がかりなカタストロフを展開しつつ、ここまでに散りばめてきた要素を結集した逆転劇に繋げ、実に綺麗に風呂敷を畳んだ逸品でした。
 特に、無茶苦茶な作戦を実行する説得力を物語の積み重ねによって得る事により逆転劇そのものの説得力に1年間の厚みを持たせる、というミッションコード・ガイアの構成は、お見事の一言。
 キャラクターもほぼあますところなく使い切り(そういえば、さすがに瀬沼さんはねじこめなかった……)、その辺りの目配りも、良い作品でした。
 公式配信としては、ラストに20年後の高山我夢が登場してメッセージを送る大サービスで終了。
 その他、全体の事や個々のキャラクターの事などは、また別項で書きたいかと思います。
 「物事の基本は、体力……!」
 以上、『ウルトラマンガイア』感想、お付き合いありがとうございました。