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この空と命があふれる大地

ウルトラマンガイア』感想・第50話

◆第50話「地球の叫び」◆ (監督:村石宏實 脚本:小中千昭長谷川圭一 特技監督:佐川和夫)
 「神々しい姿だ……」
 「我々の味方なんでしょうか?」
 地球に降臨したセントパピリア、じゃなかった、蝶天使が手をかざすとディープワンズの亡霊は消滅していき、今回も謎のままなのですが、やはり小中さんのクトゥルーネタなのですか。
 優にウルトラマンの4倍はあろうかという破滅天使の姿は大迫力で、その手招きになんかふらふら近づいてしまうアグル、アグルーーーーー。
 案の定、アグルはソニック天使ブームの直撃を受ける会心の藤宮ムーヴを発動し、周囲の建物などを破壊しながら、綺麗なくの字になってビル街を滑っていくど派手な破壊シーンが、色々あんまりなアグルと、それはそれとして力の入った特撮が融合して、何度見ても絶妙に笑えるシーンに(え)
 破滅天使の追撃を受けたアグルは地面に派手に叩きつけられ、微笑を浮かべる天使に飛びかかったガイアもあっさり同様の目に。
 街並みのミニチュアが衝撃の余波で次々と吹き飛んでいく映像が実に凝っていて、完膚なきまでに叩きのめされるウルトラマンという展開のインパクトを引き上げ、今回ここまで、10回ぐらい繰り返し見てしまいました(笑)
 鈴を転がすように笑う天使の放ったビームにより、絶体絶命の危機に陥ったガイアをかばうアグルは、ビームをその身で受け止めながらの突撃も敢行するも一歩及ばず、全てのエネルギーを失ってしまう。ガイアとアグルは天使ブラスターでまとめて吹き飛ばされ、ビルを5つほど貫通すると地面に倒れ、カラータイマーの光が消滅。
 天使はガイアとアグルの体から立ち上った赤と青の光を吸収し、二大ウルトラマン、ここに完敗!
 と冒頭からトップギアでアクセル全開。
 「二人のウルトラマンが負けた……?」
 「立て……立ち上がれ我夢!」
 コマンダー達の声も届かず、瞳からも光の失われたウルトラマンはその姿を保てなくなり……回り続ける倫文のカメラは、全世界にウルトラマンの正体――我夢と藤宮――を中継してしまう。
 「ウルトラマンが、人間……?」
 「どういう事なんだ?」
 TVの電波だけが生きている、という状況から、予想できた絶望の念押しではありますが、前回ウルトラマンを希望の象徴として人々に伝えたカメラがそのまま、打ち砕かれる希望を広めてしまうという容赦の無さが深く突き刺さります。
 「馬鹿な……そんな馬鹿な」
 「見て! ちゃんと見て! ……あれは我夢よ。これまでずっと私たちにも黙って……あの子……!」
 高山家では我夢両親がこの映像を目にし、画面から顔を逸らそうとする父を母が止め、そこはかとない距離が匂わされていた我夢の両親が、異端の子である我夢と“向き合おうとする”要素を拾ってくれたのは、嬉しかったです(終盤やや強引になったダーク我夢回は、ドイツ飛ぶより、家族や友人ズと絡めてくれれば良かったのかな……と思ってもみたり)。
 「我夢ぅ! 逃げてぇ!!」
 「藤宮くーん!!」
 生身の我夢と藤宮目がけ、天使バニッシュが迫るその時、飛来する一つの機影……
 「ファイターEXだ! パイロットは?!」
 「居る筈がない!」
 「パルだよ!」
 「我夢の作った人工知能が……」
 巨大な天使にたった一機で挑んでいくEX機の勇姿、コントロールルームのやり取りを挟んで、無人のコックピットの中がアップになると、CGの表情も凜々しいパルと操縦桿が映し出され、勇壮なBGMが流れ出す、というのが物凄く格好いいシーン。
 EX機の射撃は破滅天使を怯ませ、更に……
 「今だぁ! スティンガーぜんしーーーん!!」
 「「了解!!」」
 地上からはスティンガーが攻撃を仕掛け、前回のXIG分の不足を一気に補う熱い展開。『ガイア』が大事に描いてきたものが集約され、共に闘う仲間があってこそ、というのが盛り上がります。
 「チューインガム助けるぞ!」
 「「おう!!」」
 対ウルトラマンに特化した事で実体弾に弱かったのか、スティンガーの攻撃に怯む破滅天使だが、宙返りを見せて攻撃を仕掛けたEX機はソニック天使ビームの直撃を受けて爆散してしまい……まさか、殉職キラーパスがこんな形でゴールするとは。
 作風的にはあまり登場人物の退場で盛り上げる展開は好ましくない……と書いておいてなんですが、ここまで何度か登場し、我夢が話しかけたりはしていたものの、「キャラクター」として成立していたとは言いがたいパルが、最後の最後で“戦う仲間”の一員として「キャラクター」になったのは、お見事でした(ただリタイアさせればいいというわけでも勿論なく、パルへの親しみを感じさせるジョジーのリアクションが非常に秀逸)。
 それはそれとして堤チーフは内心、(え……パル……ってなに? 一応俺のEX機、いつの間に、自動で突撃する仕様になってるの……?)と冷や汗を垂らしているに違いありません。
 我夢と藤宮はEX機爆発の衝撃に巻き込まれ、それを見た天使は去って行き、後にはただ、絶望した人々だけが残される――。
 「……ウルトラマンは、ただの人間だった」
 「神様じゃなかった……」
 「ただの人間に、地球が救える筈ないよ!」
 超越者から地上に落とされるウルトラマンですが、果たして、真に地球を救うべきものは、誰なのか……? という反問が刻み込まれていて、印象的な台詞。
 「あの天使みたいなやつは、俺達を倒す為だけに生まれた。最終兵器が天使とは、奴ら神を気取っているつもりらしいな。しかし…………俺達は勝てなかった」
 「負けてない! 僕はまだ!」
 一面の砂の海に埋もれたアグルとガイア……かつて見た幻視から目を覚ました我夢は、TV中継を見て現場に駆けつけた大学友人ズに拾われていた事を知る。砕け散り、光を失ったエスプレンダーを手にした我夢は、ウルトラマンの正体を追うマスコミから友人ズと一緒に逃げ回っていた所を田端チームに拾われ、マスコミを引きつける囮を買って出た友人ズと別離。
 「みんなは?!」
 「俺達は大丈夫だよ!」
 「なんてたって俺達!」
 ウルトラマンの親友だぜ!」
 個人的な趣味嗜好ですが、主人公にとって物語の中で作られていく“新しい関係”が重視されるのは当然の事ですが、それが重視されるあまりに、物語が始まる前から“既に持っていた関係”が実質無かった事になってしまうのがあまり好きではないので、最終盤に来て忘れずに、我夢の大学友人ズを物語に絡めてくれたのは、非常に嬉しかったです。
 もちろんストーリーや設定にもよるので作品それぞれではありますが、なんというか、主人公が主人公になる前、“世界にとってのその他大勢”の頃からの友人が、決して物語の主軸には関わらずとも、友人であり続ける、みたいなのが結構好きなのです。
 KCB車に乗り込んだ我夢が友人ズに頷き返し、前を向くと物凄く真剣な表情を見せる、というのも劇的な切り替わりとして大変格好良く、今回のかなり好きなシーン。
 ウルトラマンの正体生中継という衝撃から、家族と友人に物語を繋げる、というのも上手く転がりました。
 一方ガード首脳部は、全面的な武装解除をする事により恭順の意を示し、知的生命体と推測される破滅招来体に対して交渉による全面降伏の余地を探る最終プログラムに運命を託そうとするが、コマンダーはXIGの武装解除を敢然と拒否。
 「破滅招来体が閉ざしたのは、太陽の光だけではありません」
 「人の、心です」
 「我々にはまだ戦う力が残っています。いや……戦う意志を、戦う誇りを持っています」
 地球の人々を守る為、XIGは最後の最後まで戦い続ける事を宣言。
 KCB車では、倫文と田端が我夢に謝ろうとするのが手抜かりのないところで、しかし我夢は、田端の謝罪を制止する。
 「いえ、みんな、自分のすべき当たり前の事をした。そうでしょう?」
 基本的に穏和でどこかぼんやり、という見せ方だった我夢ですが、ここに来て、物凄く格好良い表情を連発。
 「僕たちは……破滅する為に生まれたんじゃない。絶望するために生まれたんじゃない! 僕を連れてって下さい、藤宮のところへ。心当たりがあるんです」
 藤宮も行方不明と聞いた我夢は、KCBの車をある場所へと向かって走らせる……。
 XIGでは乱橋チーフを中心に急ピッチでファイターの整備が進められ、反攻作戦の準備中。
 「我夢……みんな頑張ってるよ」
 前回今回と、急激にヒロイン力を増大させていく敦子さんが、次回、崩壊したジオベースの下敷きにならないか少々心配になってきました。
 だがその頃、我夢とKCB一行の前には、激しい地響きと共に地球怪獣が姿を現していた。
 「もうこんな時に地球から怪獣なんか出なくてもいいじゃんよ~!」
 「これが破滅なのか?」
 「違う!」
 世界各地に次々と出現した地球怪獣は、空を覆って太陽光を閉ざすイナゴに向けて攻撃を仕掛けていく!
 「奴らは立ち上がった……自分の生まれた、星を守る為に」
 「地球の……地球の叫びだ!」
 道中、少々ややこしい扱いになっていた地球怪獣は、「同じ地球の命」として、怪獣なりに破滅に立ち向かう存在となり、この「地球怪獣の扱い」というのは今作メインストリームに関わる中で最も蛇行した要素だと思いますが、整理するには情報量が多いので、完結後に余裕とやる気があれば、別項で取り扱えればな、と思います。
 空を覆うイナゴの群れは合体すると地球怪獣に襲いかかり、ウルトラマン不在の巨大戦成分をカバー。その光景を見つめる柊は、ガード地上部隊の出動を指示する。
 「なんの為の出動だ?」
 「地球で、共に生きるものの為に」
 ガードの砲撃が地球怪獣を支援してイナゴ怪獣に突き刺さり――そしてKCBが向かうのは、アグルの聖地(多分)!
 ラストで我夢が劇的に名前を叫ぶのですが、なにぶん長くてややこしい名称で、初登場時も何を言っているか明確に聞き取れませんでしたし、もう少し、わかりやすい名前が良かったよな……と改めて(笑)
 ED映像はここまで今作を彩ってきた、個性的な怪獣達とのバトルダイジェストが流れ、そういえば、地球怪獣の中にしれっとガンQが混ざっていたら面白かったのに(おぃ)
 開幕のウルトラマンvs破滅天使が力の入った特撮で大迫力でしたが、完敗の後、それぞれの場所で戦う者達を描いて反撃の気運を盛り上げていく物語の流れも手抜かり無く、その中で織り込まれた様々な視点が、実に『ガイア』集大成。
 次回――ミッションネームは、「ガイア」!