東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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筋肉はペンよりも銃よりも強し

ウルトラマンガイア』感想・第46話

◆第46話「襲撃の森」◆ (監督:原田昌樹 脚本:長谷川圭一 特技監督:満留浩昌)
 とあるオフの日、エリアルベースの廊下にて。背広姿でびしっと決めた梶尾の落ち着きの無い反応を見た我夢は、ある事に思い至る。
 「はっはーん…………はっはーん」
 「なんだよ?!」
 「……そういう事ですか」
 今回はある意味、冒頭のここだけで満足(笑)
 挙動不審になる梶尾さんとそれをからかう我夢の人間的成長と見ても素直に楽しいのですが、得心顔で梶尾に背を向ける我夢の「そういう事ですか」の吐き捨て加減が、80%の祝福と20%の嫉妬にも見えて笑えます。
 僕たちの梶尾さんの心を奪った女が居るなんて、許せない!!
 ……はさておき、大学の友人ズから相談を受けた我夢は、友人ズの一人・サトウ(女好きキャラ?)が、根源破滅教団に入れ込んでしまった事を知らされ、まさか友人ズがこんな形で活用されるとは思わず、お見事。
 根源的破滅招来体の脅威にさらされる世界における、パラダイムシフトの一つの象徴として良い味を出していた根源破滅教団が遂に大きくクローズアップされ、その考えを許せない我夢はサトウを脱会させようと教団の集会に乗り込むが、友人ズともども教団の信者達にぐるりと取り囲まれてしまう事に。
 「彼は理解したんだよ。人間の傲慢さを」
 「地球は怒っています。今に必ず、その罰を与えます」
 ……あ、ここ、東映ヒーローがよく戦っている場所のような(笑)
 ぐいぐいと顔を近付けて迫る不気味なカルト集団に圧迫され、哀れな3人が水落ちを披露していた頃、はっはーんは、暗い色調の服――半分喪服、のイメージか――を身に纏う律子さんと、ベイサイドを歩いていた。
 「梶尾さん……空ってそんなにいいですか?」
 「え?」
 「私には、待つ事しか出来なかった。きっと帰ってくる。いつもそう信じて待つ事しか。そしてある日、帰ってこなくって。結局……最後は空に取られちゃったんです」
 律子は手にしていた花束を海へと投下し、服装といい言動といい、前夫の命日なり何なりで律子にとっての区切りと踏ん切りをつける行為であったのかと思われるのですが、梶尾さんと律子さんのドラマは、大幅に途中を省略しながら(ウェイトを割く所ではないわけですが)たいがい雰囲気だけで展開していて、放映当時いったいどれだけの人が、これを見ながらニヤニヤできたのかは少々気になります(笑)
 私としてはツボにドンピシャすぎて、手の平の上で踊りまくっているわけですが!
 「自分は……! …………」
 「…………梶尾さん。あなたは……必ず帰ってきてくれますか?」
 梶尾は律子の問いに言葉を返す事ができず……エリアルベースに戻った我夢は、藤宮の言葉を思い出していた。
 ――「我夢……俺はまだ時々疑う事がある。奴らを呼び寄せるのは、やはり人間なのかもしれないってな」
 「……そんな事」
 「なに独り言云ってんの」
 通りすがりの敦子さんは、この後待ち受ける修羅場を予期しているかのように、普段より3割増しぐらいできつかった。
 「破滅を受け入れ美しく滅びる事。それが人類に与えられた最良の選択なのです」
 「――そして、私たちは生まれ変わる」
 地上では教団の集会が続き、まるでその思念が呼び水になったかのように、地中から突如、高エネルギー体が地表へと出現する。
 「根源破滅よ、導きたまえーーー! 我らを救いたまえーーー!!」
 歓喜の声をあげつつも及び腰に逃げ出そうとした教祖を巻き込み地底から姿を現したのは、第三の地球クリーンマシーンを中心に、異常に巨大化した多数の樹木。地面を、ビルを突き破り、巨大樹木群はあっという間に森林を形成していくと都市を飲み込んでいき、爆発的に成長・繁茂する樹木が次々と地底から出現する特撮は、いつもとちょっと違う下方向からの破壊と範囲の大きさが迫力たっぷり。
 「あれも、自然コントロールマシーン……」
 今回もコマンダーがプレシャス表面の篆書体?を「深緑」と読み解き、上層部は人類文明そのものを脅かす勢いで拡大する森を食い止めるべく、ファイヤーボムの投入を決意。だがその余りに早い森の侵攻にこのままでは大きな人的被害は免れない……我夢はアルケミースターズへと助力を求め、通信で登場したキャサリンの姿に、無表情でボールペンを取り出す敦子、そんなところばかり拾われて、敦子……。
 市民の大混乱を描く玲子さんレポートをちらっと挟んだと思ったら、キャサリンがブリッジに立っているのはかなり無理矢理で、どうも今回、梶尾×律子に決着をつけたい監督と、エント編の後始末をつけたい脚本の思惑が整理しきれていないというか、そこに年間のオーダーであるプレシャスの真相を含めて無理を承知で全て強引に放り込んだら、やはり鍋が吹きこぼれたといった感。
 深緑の内部構造はエントに酷似しており、破壊工作のアドバイザーとしてキャサリンを同行させてスティンガーが出撃。敦子はボールペンをへし折り、ハーキュリーズはデレデレし、まあキャサリン、かなり筋肉の使徒寄りですからね!
 「……脳天気すぎる」
 「……チューインガム、何か言ったか?」
 「い、いえ、いい天気だなって」
 スティンガー着地の震動で倒れる放置自転車に「スティンガー被害者の会」と書いた紙が張られているという小ネタを挟み、前回に引き続いて大活躍のスティンガーは、深緑の外壁を破って内部へと突入。ここでハーキュリーズの三人が防衛システムと戦っている間に我夢とキャサリンの二人だけを先行させ、それどころか内部に二人を残したまま一時撤退をしてしまうのは、我夢×キャサリンと深緑と繋がる女の対話をさせる都合で、かなり無理のある展開になってしまいました。
 どうしてもそうするなら、やむにやまれぬアクシデントで分断されるか、キャサリンを連れて先行を主張する我夢の筋肉をハーキュリーズが信じる、的な我夢×ハーキュリーズの友情の集大成になるような劇的な要素を入れてほしかった所です。
 深緑の中心部では、破滅教団に参加していた女が我夢とキャサリンを待ち受けており、これまで出現した地球クリーンマシーンとはそもそも、地球環境の再生の為に自ら滅びを受け入れた人類が作り出したものであり、破滅を望むその思念を通じ、破滅招来体に未来から導かれたのだと語る。
 「もっと早く人類に滅びてもらう為に」
 「嘘だ! そんな事ある筈が!」
 抵抗した我夢はツタに捕らえられてガイアの力も封じられ、女はキャサリンへと囁きかける。
 「人類は待つしかない。滅び去るその時を」
 「未来は、ただ待つだけのものじゃない! 今、今自分に負けなければ、きっと変えられる!」
 可能性未来のエントを操る、恐らくは可能性未来のキャサリンである女が、科学の行き着く先は「地球を滅ぼす」か「人類を滅ぼす」かの二者択一でしかないとキャサリンの諦めを促すも、我夢のエールを受けたキャサリンがそれに抗う……という展開なのですが、肝心要の、女の言葉を受けたキャサリンの「葛藤」が欠落している(映像的には、一切迷わず撃っている)為、プレシャス人女が一方的に語っているだけになってしまい、プレシャスの種明かし含めて、どうにもピンと来ないシーンに。
 それこそエント回(第33話)では、キャサリンの心境の変化に我夢が積極的に関わらず、キャサリンが一方的にエピソードの主題を繰り返すばかりになっていたのですが、今回は我夢とプレシャス人が一方的に語るだけになってしまいました。
 それに対するキャサリンのリアクション、キャサリンが「科学」「未来」「自然と人間」について、どんな信念を持って女の言葉を跳ね返すのか、が最も重要な部分だと思うのですが、これといった葛藤の描かれないまま筋肉で拘束をぶち破るだけなので劇的さに欠け、エント回の後始末としてもテーゼが宙ぶらりんで締まらない出来に。
 「自分自身で未来を掴め!」
 という我夢の言葉は作品全体を貫く要素であり、そちらとの接続を重視したとは言えますが、


「どうすればいい……何が未来を変えるんだ?!」
「――意志です」
「意志?」
「ええ。死のうとするか、前向きに生きようとするか。どの未来を選ぶかは、人間自身の意志なんです」
(第32話「いつか見た未来」)
 エピソードの内容ともはまって大変綺麗に持ち込んだ第32話と比べてしまうとパッとせず、「個人の問題」から「普遍的なテーゼ」へのスライドが上手く行きませんでした。
 キャサリンの一撃により深緑のシステムが停止し、我夢はガイアへと変身。対する深緑も変形し……って、足が生えただけだ!
 その間にキャサリンはスティンガーへと戻るのですが、一人で戻って「みんな我夢に助けられたわ」では、さすがのハーキュリーズも、我夢=ガイア、と気付くのでは(笑) ……まあもう、XIGメンバーは皆なんとなく気付いていてもおかしくないですし、キャサリンがみんな知っていると勘違いしている可能性もありますが。
 歩く釣り鐘状態でガイアの飛び蹴りを受けた深緑ロボは、森のエネルギーを吸収するとフェイスオープンして腕が飛び出す第三形態へと変形し、ガイアと激しく激突。
 技モーション中にツタで拘束され電撃を浴びるガイアだが、ライトニングとスティンガーが怪ロボットに攻撃を浴びせた隙に全身全霊で筋肉をフル稼働すると体制を立て直し(そのガイアを応援する仲間達の顔が次々と映されるのが盛り上がります)、拘束を引きちぎる動作とエネルギー集中モーションを重ねて放つ、滅茶苦茶格好いい真・うにょんバスターにより、深緑ロボを撃破。
 この最終盤に来て、今作らしく筋肉を強調しながらこれまでに無い見せ方で必殺技が放たれ、うにょんバスター好きとしては、大満足の一撃でした。
 そして――EDパートに入り、今日も死線をくぐり抜けて帰還した梶尾は、ベイサイドに佇む律子に一輪の花を贈る。
 「自分は……帰ってきます。この戦いが終わったら、必ず」
 そんな二人を、高山我夢が見ていた。
 木陰に隠れて二人の姿をじっと見守るピーピング高山は、抱きしめ合い頬を寄せる二人の姿にのけぞってあわあわとひっくり返り……梶尾さんが男を見せた告白シーンよりも、それを覗き見しながら激しく動転する我夢、の方が面白くなっているのは良いのか悪いのか。
 「お姉ちゃん、頑張って」
 色々な色々な色々なものから脱落した敦子は、それを更に遠くから見つめながら愛する姉にエールを贈り、見えない見えないあそこで覗き見している我夢の横に誰か居るとか全っ然見えない。
 公園に座り込んでいた藤宮は、少女(例のビル崩落から助けた少女か)から花を貰って頬にキスを受け、我夢は我夢で一緒についてきていたキャサリンから頬にキスを受け(しかしまあ、相手はカナダ人ではある)、その背後で抱きしめ合う梶尾と律子……から、水面がキラキラしている同じような背景で何故か見つめ合う我夢と藤宮、という超ドッキリシーン(笑)
 危うくとんでもない事になりそうな流れでしたが、真剣な表情の二人から並び立つガイアとアグルの姿に繋げ、迫り来る死闘の予感を見せて、つづく。
 残り話数も差し迫り、劇中の色々な要素に決着をつけようという姿勢そのものは好きなのですが、梶尾×律子派からするとキャサリンがノイズであり、キャサリン派からすると梶尾×律子がノイズであり、地球クリーンマシンをエントと絡めて処理しようとするも中途半端、と三方一両損みたいな印象のエピソード。
 特に、吉田伸→川上英幸→長谷川圭一、と登場回の担当が別々となった地球クリーンマシンの扱いに苦慮した節が窺えますが、最初の吉田回の「人類の理解の範疇を超えた得体の知れないマシン」という扱いが巨視的なスケール感もあって好きだったので、これに関しては無理に理屈をつけなくても良かったのではないかな……と。
 まあ、そこになるべく理屈をつけていきたがるのが『ガイア』らしさとはいえますが、プレシャス初登場の第7話はかなり好きだっただけに、その後なんとなく持て余される扱いになってしまったのは、残念でした。
 不満はありつつ、梶尾×律子派としては途中で放り投げられずにここまで到達した事に感涙ものの満足感がありますが、ホント、いったい何がどうして、この二人はこんな事になったのでしょうか(笑)
 次回――予言の刻、来る。