東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

ウルトラ任侠伝説・誉の龍

ウルトラマンタイガ』感想・第4話

◆第4話「群狼の挽歌」◆ (監督:田口清隆 脚本:中野貴雄
 第1話における地球人離れした身体能力により宇宙人疑惑の仄めかされていたトンファー先輩が、街のダークサイドに存在する宇宙人裏社会で名を馳せた宇宙人ギャング(元)であった事が明かされ、怪獣爆弾により金銭を要求してきた犯行グループの所在を突き止めるべくかつてのコネクションに接触していくノワール風味を効かせたサスペンスフルな展開が、面白い味付け。
 「久しぶりだな、ホマレさん」
 「ヴォルク……やっぱりおまえだったか」
 「昔のあんたは格好良かったぜ」
 だがその捜査中、先輩とヒロユキは犯行グループに拉致されてしまい、ホマレの前に姿を現したのは、かつて命を救った事もある弟分・ヴォルク。
 「あんたに食わせてもらった茶漬けの味は忘れんぞ」
 「誰が絵を描いてる?」
 「なんだって?」
 「ゾリンのオヤジを裏切るなんておまえの器量で出来るわけがない
 「俺は随分軽く見られたもんだなホマレさん! 物事は変わるんだよ!」
 ヤクザ映画丸出しのやり取りで伝説の若頭と野心家の元舎弟がギラギラした火花を散らし、ヴォルクはホマレへと銃を向ける。
 「ホマレさん! あんたが腰を上げてくればついてくる奴はたくさんいる! なんせあんたは……!」
 「それ以上言うな!」
 「……ならしょうがない。残念だ」
 銃口が火を吹く寸前、ホマレは拘束を引きちぎってヴォルクの手下を叩きのめし……今ここに、太陽を求めて這いだした男と、闇の中を這いずる事しか出来ない男、二匹の狼の魂が激しくぶつかり合う!
 「俺には人間様の暮らしは……とっても務まらねぇ。ヴォルクよぉ、俺はいろんな奴をぶん殴ってきた。だがいつも……そいつの痛みが……拳を通って伝わってくんだよ……。暴力じゃ、なにも解決しねぇんだよぉ!!」
 「あんたは牙を抜かれちまったんだぁ!!」
 咆哮をあげながら2人は取っ組み合い、私は今いったい、何を見ているのか(笑)
 仁義なき抗争に突入する世界だがその時、ヴォルクがオヤジの差し向けた暗殺者に背後から撃たれ、暗殺者と相討ちになるも怪獣爆弾は起爆。
 ……いくら鎖に縛られて身動き取れないとはいえ、先輩が必死に爆弾を解除しようとしている時に背後から「もう駄目だ。逃げましょう!」はどうなんだ……主役(笑)
 起爆により倉庫一つを吹き飛ばして怪獣が出現し、運良く拘束の外れたヒロユキは、怪獣を食い止めるべく、ここまで無言だったタイガを召喚。……かなり深刻に宿主の命の危機だったので、もう少しなんか中のタイガが慌てるとかあったら面白かったな、とは。
 爆発の中より現れた全身これ兵器というフルアーマーメカガメラの一斉射撃を回避したタイガが空中に飛び上がり、迫り来る砲弾を光線技で広範囲に撃墜するなど、長回しを利用したり空間を広く使ったバトルシーンは、田口監督らしい映像。
 瀕死のヴォルクに呼びかける先輩の前には、事件の裏で糸を引いていたトレギアが姿を見せ、怒れる先輩を物理であしらいながら嘲笑い、「では、また地獄で」と言い残して炎の中に消えていくいやらしさは印象的。
 ここまでかなりストレートに、悪魔の化身めいて描写されるトレギアですが、光の国の裏切り者として堕天使のイメージが根にあるのだとすると、シリーズとして「ウルトラマンベリアル」の正統なる系譜、という表明でもあるのでしょうか。
 先輩に抱きかかえられた瀕死のヴォルクが、脅迫による現金強奪に成功したらそれを、かつての自分と同じ寄る辺を持たない宇宙人の子供達の為に使いたかった、と真相を語り、ヴィランギルドから巻き上げた宝石の首飾りを先輩に託している間、背後では零距離砲撃受けるなどタイガはガメラの火力に大苦戦中。
 (ここは私に任せろ! 力には力で!)
 現状パーティーで一番賢い人の堂々たる発言が、最高です賢者(笑)
 (まあ待ちなって)
 ところがそこに割り込む、第三の声。
 (頭と仲間は、生きてる間に使うもんだぜ!)
 (その声は!)
 どういうわけか、ヴォルクの差し出した首飾りに宿っていた青い光がウルトラマンの胸の中へと吸い込まれていき…………えー、前々作の「あいかた」回におけるリトルスター発現のくだり辺りを思い出す残念展開なのですが、前回今回と、“大切な仲間”の復活にヒロユキとタイガが一つも能動的に関わらない、というのは実に拍子抜け。
 その為、タイタスとフーマがヒロユキと合身するのは、良く言えば「タイガが認めた男だから」なのですが、現実的には「既にタイガと融合している丁度良い器があったから」に見えてしまい、説得力が不足しているのは、今後の不安材料。出来れば今後もう一度、個々のウルトラマンがヒロユキを器として認めるエピソードは、欲しいところです。
 「よお兄ちゃん! おまえは俺を呼び出すチケットを手にした」
 「え?!」
 容れ物当人は明らかに、迷惑だと思っていますし!
 「俺の事はこう呼べ――風の覇者・フーマ!」
 突然の復活に目をつぶれば、フーマの気取った台詞回しそのものは個性も強く出ていて面白く、第三の栓抜きを手にしたヒロユキは、和風なジングルで、風の覇者・ウルトラマンフーマへと変身。
 「俺の名はフーマ。銀河の風と共に参上!」
 テンション上がった3ウルトラマンは、ヒロユキそっちのけで、桃園もといトライスクワッドの誓いを復唱し、今回改めてやるなら、やはり前回は要らなかったのでは……。
 スピードタイプのフーマは、残像さえ浮かぶ超高速の動きで怪獣の銃撃をかわし、圧倒的な速度から繰り出す連続攻撃でフルメタル亀の爆発的な火力を無効化すると、ギンガレットを起動。
 「これはピースマークじゃねぇぞ。おまえはあと2秒で終わりって事だ!」
 知らない先輩の力を発動したフーマは背後からの手裏剣で怪獣を爆殺し、ここまで色々と派手にやっていた反動か……決め技、大変・地味。
 前回のタイタスに続き、各ウルトラマンの戦闘スタイルの違いは明確に出て、アクションの色分けそのものは文句のない出来でしたが。
 そして今回も嫌がらせに登場したトレギア、格好良く飛び去ろうとしたフーマの足を掴んで顔面から地面に叩きつける、という掟破りの荒技を披露し、挑発に乗ってきたフーマの巨大手裏剣を正面から撃ち込まれるも、平然としたまま虚空に消えていくのであった
 ……段々、陰湿で外道な悪役を通り越えて新手のマゾみたいになってきたトレギアですが、タイガ・タイタス・フーマそれぞれの大技を正面から受け止めており、これは、その行為そのものに何か意味がある……のか?
 鍛え上げた大胸筋のアピール……なの、か?
 闇の宇宙インターネット・トレギアチャンネルで、「ウルトラホームジム」を販売している……の?
 真相はさておき、これで3話連続、トレギアがウルトラマンを嘲笑いながら去って行くオチになったのは、よくスポンサーがOKしたなとはつい思ってしまいます。
 田口監督は割と好きなので参加は嬉しく、演出も前半のノワール風味から後半のバトルまで楽しく見たのですが、瀕死のヴォルクとトンファー先輩の会話が計3シーンに及んだのは、死にかけ演技がくどくなって台詞も聞き取りづらく、少しやり過ぎだった感(これも、その手の映画のお約束だったのかもですが)。
 事件が終わり、夕陽を見つめて黄昏れる先輩は、密かに地球で暮らす宇宙人たちの人生を守りたくてヤクザからイージスに転身した事をヒロユキに語り、「俺の仕事」ではなく「僕たちの仕事」でしょと歩み寄ろうとするヒロユキであったが、「今日の俺は機嫌が悪い」と一蹴され、ホマレルートは開放されませんでした。
 ……まあ、弟分に託された首飾りがウルトラマンの養分にされて売却価値の無いただの石ころになった事で遺言を果たせなくなったのではという雰囲気があり、それは当たりもきつくなろうというものです。
 後やはり、
  >「もう駄目だ。逃げましょう!
 ではなく
  >「僕の事はいいから、爆弾を止めて下さい!」
 が正しい選択肢だったのでは。
 思わせぶりに引っ張りすぎる事なくホマレの過去を早々に明かし、個別にトレギアとの因縁を作ると共に、ゼットン星人など先に展開できそうな要素を残したのは好印象。ヒロユキと一気に距離が縮まりすぎなかったのも、良いバランスの間合いであったと思います(なにぶん、かつての舎弟を失った直後でもありますし、ヒロユキ自身はその物語に何も関わっていないので)。
 次回はハッカーメイン回になるようで、仇敵トレギアの存在を押し出しつつも、まずは主人公周辺のキャラクターを固めていく、という正攻法のアプローチは好感が持て、後はヒロユキと3ウルトラマンのサイドでギアが入ればぐっと面白くなりそうなのですが……上手く噛み合っていってほしい。