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超えていくのさ 誰もが闘士

ウルトラマンタイガ』感想・第1話

◆第1話「バディゴー!」◆ (監督:市野龍一 脚本:林壮太郎 特技監督神谷誠
 「賢者の拳を受けてみろ!」
 タイタスさんとはなんだか、親しみを持って向き合えそうな気がします(笑)
 先輩ウルトラマンが明確に存在・それと敵対する悪の青黒戦士・ニューヒーロートリオ登場・先輩達から託されるパワー・明確なキャッチフレーズ・レジェンドウルトラマンとの親子関係の明示・完敗から始まる物語、そして……
 ナレーション「この地球に、宇宙人が密かに暮らしている事は、あまり知られていない。これは、そんな星で出会った若者達の、奇跡の物語である」
 と、『オーブ』『ルーブ』『ジード』が、過去のシリーズ作品を前提としつつも、新たなウルトラマン像(世界)を構築しようとして双方のいいとこ取りをしようとした結果、宇宙人の扱いからウルトラマンの扱いから地球人の反応まで、随所でその曖昧さが世界観の亀裂を生んでいたのに比べ、思い切りよく諸々わかりやすくさっぱりした導入には好印象。
 まあ、タロウ大先輩が一目で
 「よせ! おまえ達にかなう相手ではない」
 と力量差を喝破する敵に対し、後輩達を煽って戦いに送り出した先輩達の節穴ぶりが凄くアレな感じになりましたが、見えない所で輝いてる光もある。ヒーローなんてのはそんなもんなんだよ。
 一方で、主人公の宇宙人へのリアクションがやや中途半端で、地面に転がった虫頭の異形の存在を見て「宇宙人……ですかね?」と言わせてしまった為に、劇中ではそれがまごう事なき異形の宇宙人に見える、という事をリアクションで後押しできず、むしろ覆面のコスプレ強盗にも見える可能性を示唆してしまい、「宇宙人の存在を認識しているゆえの比較的落ち着いた対応」のニュアンスだったのかとは思われるのですが、かえって、絵空事のリアリティを薄めてしまう事に。
 ここで必要だったのは、被り物を見て、
 「喋ってる……? サメが、ライオンが、ゾウが、トラが、立って、服着て、喋ってる?!」(『動物戦隊ジュウオウジャー』第1話より)
 という、それが劇中世界の人々には間違いなくリアルな異形に見える、事を示す虚構世界の念押しであったと思います。
 その為、この後取っ組み合う金髪宇宙人も、リアルな異形に見えているのか、コスプレの中年男性に見えているのか、劇中のリアリティがやや揺らいでしまい、ゴミ袋をひっくり返すノリが軽めのアクションと、宇宙人の目出しのスーツが輪を掛けてしまう事に。
 ところで本編の内容とはあまり関係ない話ですが、私、地球外生命体の存在が認識されている世界におけるその呼称としては、「宇宙人」より「異星人」の方が好きなのですが、あまり後者が用いられる事が無いように思えるのは、用語としては前者を基本とするルールみたいなのがあったりするのでしょうか。
 怪獣の赤ん坊をさらった金髪宇宙人の目的は、その母怪獣と侵略宇宙怪獣を戦わせる事による、地球を舞台にした怪獣オークションのプロモーション。ところが、今回のストーカーもとい変質者枠として現れた謎の白黒シャツ男が別の怪獣を召喚し、侵略宇宙怪獣をあっさり撃破。新たな怪獣の攻撃により炎に包まれたビルの中で、主人公は必死に怪獣の子供を助けようと手を伸ばす……
 (どうする? お前だけなら逃げられるぞ?)
 「うるさい! 僕は助けたいんだ! 今逃げ出したらここに、自分の気持ちに、心に嘘をつく事になる! だから僕が、絶対に助ける!」
 分け隔て無く命を救おうとする主人公の姿を見せ、タイガとの合一のスプリングボードとなる肝心の場面なのですが……謎の声(どこからともなく聞こえる)・泣いている赤ん坊怪獣(後方)・赤ん坊を守ろうとする母怪獣(正面)の“間”に主人公を立たせてしまった事により、主人公の向いている方向が定まらず、著しく劇的さを欠いてしまう事に。
 物語の進行方向と、キャラクターの物理的・心理的な進行方向を重ね合わせる事で、視聴者の視線や感情のフックとする仕掛けが機能しておらず、結果的に、敢えて言えば“TVの向こう側”に向けたヒーロー宣言、になってしまいました。
 わかりやすい例をあげると、「激昂したキャラクターが人質を助ける為に廃工場へ走って行く」場面は、物語とキャラクターの物理的・心理的な進行方向がダッシュという行為に劇的に集約され、ここに「人質のポジション」「廃工場の意味」などを足し引きしていく事で物語の奥行きや劇的さが変化するわけですが、近いところだと前回の『リュウソウジャー』の変身シーンは、母子を引き離す怪人への怒り→それを阻もうとするトランプ兵→見据えるリュウソウジャー、と衝突の要素を交えながら感情の方向性を視線に集約し、劇的な変身に持ち込んだ好例。
 ちなみにエピソード単位でこの「物語の進行方向」「キャラクターの行動・感情の進行方向」「向かっている場所の持つ意味」を重ね合わせていってクライマックスで見事に集約する構成の傑作が『機動戦士ガンダム』『伝悦巨神イデオン』の第1話で、素晴らしいテキスト、というのは 定期的に触れておきたい。
 話戻して、この一つ前のシーンでも、繰り広げられる怪獣バトル・赤ん坊怪獣を人質に取る宇宙人・隣の依頼者宇宙人、と主人公が意識を向ける要素を3つ配置してしまった為に、まだ演技の拙いキャストの“どこに立っていれば(視線を向ければ)いいのかわからない雰囲気”が加速してしまい、物語の進行方向が拡散かつ必要以上に主人公が棒立ちに見えてしまったのですが、演出上のもう一工夫と、若いキャストに対する配慮が欲しかったところです。
 (……おまえの覚悟、受け取った!)
 「良き旅の終わり。そして――始まり」
 謎の声は主人公の覚悟を買い、まるでそれが見えてでもいるかのように意味ありげに呟く白黒男。
 「俺はおまえで、お前は俺だ! その手で俺を掴むんだ!」
 「わかった! ――光の勇者・タイガ!」
 「叫べヒロユキ! バディ・ゴー!」
 「バディーーー・ゴー!」
 炎の中で、謎の声から光のブレスレットを受け取った主人公は、クルクル回る喋る栓抜きを手に掴んで変身し、あまりにも長くてテンポの悪かった前作の変身からすると、だいぶシンプルに。
 「あれは……?」
 「ウルトラマンタイガ。銀河に平和をもたらす光の巨人」
 宇宙人ゲストに「ウルトラマン」の名称とウルトラネームを言わせ、アバンタイトルに続いて、さっぱりした作りに。『ジード』『ルーブ』と、「ウルトラマン」の再構築を目指す意図が見える中で世界観をこねくり回すもあまり活用できなかったので、個人的にはこのさっぱり路線は好印象(シリーズの数を見ると、物足りなく感じるかもですが)。
 初回という事で終始優位に立ち回るタイガは必殺光線で怪獣を撃破……と思ったら、先輩アイテム使用の追い打ちでトドメとなったのは、最初ぐらい固有必殺技で倒しても良かったのでは、と思ったところ。
 この辺りは販促の事情もあるのでしょうが、あまりにもナチュラルにアイテムを起動の上、シルエットが短時間重なるだけ・初登場なので固有アイテム名か不明・必殺光線にそれほど大きな違いがない、ので、どの先輩の力を借りていたのかもわかりにくかったですし、必殺技を撃つも倒しきれない→こんな時こそ先輩の力だ! という一手間を踏んでも良かったかな、とは。
 そんなわけで、多分風来坊先輩のろくでなしエネルギーで怪獣を仕留めたタイガは、爆発四散した怪獣の核となっていた不吉な雰囲気のアクセサリを回収して飛び立ち、地上では怪しい白黒男がそれを見送って微笑むのであった。
 「……社長は知ってたんですよね?」
 「え?」
 「荷物の中身とか、もろもろ」
 「どうかしらねー。……でもこの街では、色々と起こるもんよ」
 色々わざとらしい社長が思わせぶりに呟き、これにて一件落着、と車に乗り込もうとする会社の仲間達ですが、君らほのぼのした雰囲気出す前に、生死不明の同僚を心配してあげて。
 ……なんかもう、タイガ=ヒロユキ、は共通認識なのか(この後、正体隠す気があるのかわかりませんが)。
 タイガとヒロユキは、宇宙へ去って行く怪獣母子を見送り、何を守る為に戦うのか、をストレートに見せてくる作りも、すっきり路線として良かったです。
 演出面はだいぶ気になりましたし、今作も序盤の販促が忙しそう、あえて世界を狭めて「街」にこだわる必要はあるのか……、変態ライバル頼りの作劇になる不安、など色々ありますが、とりあえず見ていこうと思います。
 何はともあれ、力強く「力の賢者」を名乗るタイタスの本格登場が楽しみ(笑) 「勇者」「覇者」も自己主張激しいですが、自ら「賢者」を名乗るのは、相当心が強い……。