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サブタイトルが凄い

電撃戦隊チェンジマン』感想・第48話

◆第48話「海賊ブーバ愛の嵐」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 「ブーバ! 貴様を宇宙獣士にしてやる!」
 「なにぃ?!」
 山上で激突するギルークとブーバ! ブーバを吹き飛ばすスペースメテオ! という急展開。
 「バズー様! スーパーギルークのあのような所業を……お許しになるのですか!」
 この内ゲバに、「所業を」と「お許し」の間に溜めを入れかぶりをふって訴えかけるアハメス様の芝居はホント素晴らしい(笑)
 「チェンジマンさえ倒せれば、ブーバだろうと、お前達だろうと、宇宙獣士にされても一向に構わんわ」
 だがバズー様の反応は冷たく、ギルークのスーパーパワーを浴びたブーバは両手両足が獣の様に変貌してしまう。
 「ひゃーはははは、あははははは!」
 それを見て哄笑するギルークの表情がまた、素晴らしい怪演。
 だがそこに、「ブーバーが強力な宇宙獣士になるという情報をキャッチしたドラゴン」が駆けつけ、タイミング的にアハメス一味からのリークというのも無理がありすぎるため、もはやドラゴン的ヒーローセンサーの反応としか思えず、凄まじい勢いで跳ね上がるブーバのヒロイン力!
 介入を嫌ったギルークはドラゴンと大技をぶつけあって一時撤収。満身創痍のブーバはドラゴンに切りかかろうとするもその場で倒れたところを、突如現れた宇宙船によって身柄を回収される。
 「あの旗は……夢だったのか。……は?! 宇宙海賊・ブーバの旗! なぜ、こんなところに……」
 船内で目を覚ましたブーバの視線の動きから、床に突き立てられる剣、そこに現れる人影、をじっくり映していくのが、長石監督らしい見せ方。
 「ジール……女海賊ジール!」
 「ブーバ、会えて嬉しいわ。ずっと貴方を探していたの」
 「……ジール、この旗は?」
 「この旗はね、貴方が星王バズーに敗れた時、打ち捨てられていたのを私が拾ったの。いつか貴方に渡そうと思ってね」
 船内の壁に掛けられていた真紅の海賊旗がブーバの瞳の中で翻り、甦る栄光の日々。
 「ブーバ、また2人で暴れましょうよ」
 だがその誘いに、ブーバは首を左右に振る。
 「今の俺は! ……大星団ゴズマの副官ブーバ」
 「でも心まではゴズマではない! 心は、宇宙海賊ブーバ!」
 「云うな! おまえにはわからんのだバズー様の恐ろしさが! チェンジマンを倒さねば、自由にはなれん……! ……だが宇宙獣士なんぞにされてはたまらん! 剣は俺の力で倒す。自由はこの手で取り戻すしかないのだ!」
 追い詰められたブーバは、宇宙海賊の矜持を甦らせ、電撃基地へと挑戦状を叩きつける。負傷しながらもそれを受けて立った飛竜は基地を飛び出すが、挑戦状を叩きつけるだけ叩きつけて、ブーバは宇宙船の床でもがいていた(笑)
 愛するブーバの為に代わりに飛竜に襲いかかるジールだったが、援護に入った部下の足軽獣士の槍が誤って突き刺さって重傷を負い……運命の悲劇にしても間抜けすぎて、ここはさすがのどうにかならなかったものか。
 ブーバと共にゴズマの手を逃れて静かに暮らしたかった、というジールの真の望みを聞いた飛竜は、仲間達とともにジールを宇宙船まで運び、ブーバに魂の鉄拳制裁。
 「ジールは動けない……おまえの代わりに戦おうとしたんだ!!」
 ジールの願いを知り衝撃を受けるブーバだが、そこへ再び、卑劣な悪のライバルキャラが板についてきたスーパーギルークが姿を見せる。
 「ブーバ! やはりおまえは宇宙獣士にしなければ駄目だ!」
 「黙れぇスーパーギルーク! たとえ無様な姿をさらそうと、心は宇宙海賊! 貴様さえも俺の海賊魂は奪えなかった事を見せてやる!」
 よろめきながらもスーパーギルークに立ち向かおうとするブーバだが、必死のジールが足にすがりつき、そこにギルーク配下に鞍替えした足軽獣士と、ヒドラ兵の一団が登場。飛竜達は成り行きでブーバとジールを守る形でレッツ・チェンジし、「獣士化」という形で“他者を道具にしようとする”ギルークすなわち、ミニマムなバズー、にチェンジマンが立ち向かう、という構図。
 宇宙船で逃げようとする海賊2人だがギルークに追い詰められ、遂に全身のほとんどが獣と化してしまったブーバが、藻掻き苦しむ内に壁の海賊旗を引きはがしてしまう、というのが実にドラマチック。
 駆け寄ったジールはブーバをかばってギルークの光線を受け、反撃を放った衝撃で宇宙船は墜落。ギルークは脱出に成功するが、無惨に砕け散った宇宙船の中でブーバとジールは死亡したのか……? しかしその時、真紅の海賊旗をマントのように体に巻き付けたブーバが、瓦礫の山を押しのけて復活する。
 「俺はジールに誓った。この旗をいつかまた宇宙に翻してやるとな!」
 海賊旗を外して放り投げると、その下から現れたのは、いつも通りのブーバ!
 「俺はやっぱり、骨の髄から宇宙海賊よ!」
 渾身の見得を切りやたらと格好良いブーバはスーパーギルークへと躍りかかり、副官ブーバ、かつての上司に海賊の矜持を見せつけて散る、という思わぬ決着?!
 と両サイドからダッシュで切り結ぼうとするギルークとブーバがスローモーションで描かれて盛り上がったのですが……
 「やめろ!」
 お・こ・ら・れ・た(笑)
 決闘BGMをぶちっと切断した星王バズー様は、キャプチャービームで二人を引きはがし、勝負は水入り。
 残った足軽獣士は電撃・ビクトリービーム(ジャンプしてVの字に並んで放つ空中一斉射撃)で鎧を失うと大リーグバズーカ2号で爆殺され、剣&盾vs槍、の立ち回りが少しあった後、スーパーサンダーボルト。
 ブーバはジールの遺体を海賊旗で包み込むと、抱え上げて歩み去って行き、チェンジマンはひととき戦いを忘れ、その背を見送る事しか出来ないのであった……。
 「ゴズマの掟には、ブーバほどの男でも逆らえなかった。……悲しい男だな、宇宙海賊・ブーバ」
 ここまで小悪党ぶりを積み重ねてきたブーバがその芯に残っていた海賊の矜持を見せるにあたり、真紅の海賊旗というビジュアル的にわかりやすい象徴を繰り返し劇的に見せる事で、台詞だけでは生まれえない説得力を持たせたのが、好演出。ドラゴンセンサーとか突き刺さる槍とか話そのものは割と雑だったのですが、情感を重視する長石監督らしい演出がはまり、後半の盛り上がりの印象深いブーバ回となりました。
 この3話、シーマ・ゲーター・ブーバ、とゴズマ幹部陣に1話ずつスポットを当て、シーマ回はともかく、前回今回は完全にチェンジマンがおまけ扱いという大胆な展開なのですが、残り何話なのか『チェンジマン』。次回――シーマにも迫る獣士化の危機!
 ゴズマ上層部それぞれの事情を改めて描いた事により、今作の根底に存在する“侵略者もまた侵略の被害者である”というテーゼが深められ、副官らを単純に抹殺しにくくなっていたのですが……そこで、宇宙獣士なら仕方ないよね、という今作の基本ルールが顔を出して落としどころをほのめかし――「バズーによる宇宙獣士の作成」「宇宙獣士になると理性を失ってしまう」事は既に物語上で描かれている――、しかもそれを遊撃戦力であるスーパーギルークが行う事で、アハメス一味とスーパーギルークの主導権争いと、その狭間で道具にされる者達の悲劇性、そしてその全てを黙認するバズーという“悪”の存在、までを今作全体の構造と重ね合わせている、というのが実に良く出来た作り。
 更にギルークは、一度は宇宙墓場で“獣士と一体化する”事で生きながらえた過去を持ち、打倒チェンジマンの非情な作戦にかこつけてアハメス一味に意趣返しの怨念をぶつけているという嫌がらせの手段としても納得が行き、宇宙獣士を作り出す力を得たギルークをミクロ・バズーとする事で「他者を道具とする悪」のより具体的な提示もしてみせるという、要素の連動が実にお見事です。
 次回はここにワラジーも関わってくるようで、どう転がるか大変楽しみ。