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清々しいほど藤井脚本

電撃戦隊チェンジマン』感想・第41話

◆第41話「消えた星の王子!」◆ (監督:山田稔 脚本:藤井邦夫)
 「貴様は、誰だ!?」
 「はっははははは! 星王バズーの王子、イカルス!」
 荘厳なクラシック調のBGMを背に、宇宙獣士ボーラをともなって遠征軍を訪れた翼を持った美青年イカルスは、アハメスから指揮権を奪い取るとチェンジマンに挑み、変身する間も与えない強襲を仕掛ける。混戦の中、思い切りイカルスの細剣に突き刺された飛竜を救うべく、体当たりで組み付いたさやかの顔を見たイカルスは、驚愕の表情を浮かべると空に飛び上がり、戦闘を中止して全員に撤収を指示。
 「渚さやか…………母上」
 なんとさやかは、イカルスの亡き母に瓜二つだったのだ!
 開始3分で、期待に応える「残念」に突入したイカルスですが、やはり王子か、王子の肩書きがいけなかったのか。
 2年前の『科学戦隊ダイナマン』にレギュラー幹部として登場するメギド王子が、素晴らしい残念王子ぶりで大好きなキャラだったのでどうしても彷彿とさせるのですが、『ダイナマン』は名作(定期)。
 残念もといイカルスはチェンジマンの個別撃破を指示すると、防衛隊の基地を襲撃して誘い出したチェンジマンを分断し、アハメスvs赤、獣士vs黒、ブーバvs青、シーマvs桃、そして、イカルスvs白、がマッチアップ。
 シーマの鮮やかな回転ハイキックがフェニックスに炸裂したりする中、イカルスはマーメイドをさらって戦場を離脱。
 「イカルス! 私をどうするつもりなの?!」
 「私の妻になってもらう」
 ネーミングからの印象もありますが、この、目をつけた女をとりあえずさらうのが凄く、ギリシャ神話の中の人っぽい(笑)
 「私はいつか必ずイカルス星を再興する。その為に子孫が必要なのだ」
 そして、直球だな!!
 どうして私なのか、と問われるとさやかと瓜二つである母のメモリーを見せ……どん引きですね!!
 ある意味、ここまでで一番ヤバいやつが出てきました。
 「渚さやか、私と共にイカルス星を甦らせるのだ」
 「そんな事、できないわ」
 「何故だ!」
 「母親そっくりという理由で粉かけてくる男とか(以下、不適切な表現の為、削除)」「私はチェンジマンよ! 仲間と一緒に、地球を守る使命があるわ」
 「私が他のチェンジマンを倒し、地球を征服し、ここを第二のイカルス星にすれば問題はない! これから奴らを倒す!」
 その頃、指揮官が真っ先に姿を消した為か、緩んだゴズマの包囲を抜けた飛竜達はさやかを捜していたが、そこに姿を見せる悪霊ギルークの、大変お呼びでない感。
 「チェンジマン……宇宙の墓場で味わった苦しみ、お前達にも味わわせてやる」
 眼球エフェクトの気持ち悪い光線を放ったギルークは唐突にマーメイドの話を始めるが、そこへ飛んできたイカルスにより宇宙の墓場へと送り返され、悪霊ギルークを出さなくてはいけない、という縛りがあったのでしょうが、今回は割り切った感じでかなり強引に。話全体の内容とバランスからすると、今回は仕方なかったかな、と。
 状況をこっそりとステルスで窺う、という史上最も情けない姿のアハメスの前で、獣士と共に放ったWイカルスビームでチェンジマンを吹き飛ばしたイカルスは、監禁場所へ戻ると再び熱烈なアプローチ。
 「チェンジマンは私が倒した。やつらは木っ葉微塵に吹っ飛んだ。もうお前に仲間は居ない。私と一緒に、イカルス星を再興するのだ」
 「……イカルス星の悲劇や、あなたの気持ちはわかったわ。でも仲間を倒したあなたを、私は許さない!」
 それはそうだ、なのですが、さやかの返答に驚くイカルスの姿を見るに、自分と同じ境遇になれば自分を受け入れてくれる、という身勝手な思い込みは、全てを失い他者への思いやりを学べず、奪う事でしか欲しい物を手に入れる事の出来なかったイカルスの、不器用で悲劇的なアプローチという面があったのかもしれません。
 「あなたは、イカルス星や、イカルス星人が恋しいかもしれない。でもそんなあなたが、様々な星を侵略し、自分と同じ哀しみを持った人々を、作り出しているのよ!」
 「強いものだけが生き残る……それが、それがバズー様の作った宇宙の掟だ!」
 「間違っているわ。……どんなに小さな星でも……どんなに弱い星でも……命の重さは変わらないわ。イカルス、あなたのお母さんだって、そう教えてくれた筈よ」
 お得意の悲恋物をプロットの基盤にしつつ、今作において特に藤井さんが繰り返し描いてきた“地球を攻撃してくる獣士も広い意味ではゴズマの犠牲者である”という今作を貫く背景から、だからこそ悲劇の再生産を食い止める想いで、バズーの作る宇宙の否定へと昇華するという、『チェンジマン』藤井脚本の集大成といった内容で、作品終盤らしいまとめ方がお見事でした。
 (この辺り、やはり積極的な侵略者の一団としては使いにくくなってしまったゲーターが、夏のゲーター回(曽田脚本)以降、台詞が激減してしまったのは、やや残念な点ですが)
 趣味の偏向や戦隊作劇との相性があって、波の荒い印象の藤井先生ですが、ここに来て、秀作を連発。
 「イカルス、その女を処刑するのだ」
 だが、さやかの言葉によろめきかけたイカルスは、中央から辺境まで小まめに配下の忠誠度チェックを欠かさない事には定評のあるバズーの御前に呼び出されてしまう(恐らく、こそこそしていたアハメスからの連絡があったのか)。処刑命令を拒否したイカルスは、バズー様のお仕置き光線(出力90%)からさやかをかばうと2人まとめて地球に弾き飛ばされ、大地へと叩きつけられる。
 「母上……」
 瀕死のイカルスはさやかに手を伸ばすが……届く前に力尽き、物凄い藤井節だな!
 「イカルス、さらばだ」
 バズー様はその死体を何故かキャプチャーし、ギルーク同様ダークネビュラ送りかと思われますが、わざわざ回収する行為が意図的な伏線だとすると、宇宙獣士墓場にもなにやら秘密がありそうです。実母を通したイカルスとさやかの関係に焦点を合わせた分、バズーが何故イカルスを養子扱いしていたのか、という点は特に掘り下げられませんでしたが、何か理由があっても面白そう。
 イカルスの忠実な従僕であったボーラはブーバにそそのかされてさやかに牙を向けるが、そこに生きていた4人が合流し、チェンジマーメイドで揃い踏み。イカルスの死に泣き叫ぶボーラの悲痛な姿が描かれるも、怒りにかられた宇宙獣士は抹殺するしかない、というシビアな判断が重く、マーメイドの連続攻撃から大リーグバズーカ2号で爆殺し、巨大化。
 ……ところである時期から、ドラゴンの「チェンジロボ、発進!」の時に背後で黒がポーズ決めながら「ふん!」と力んでいたのですが、最近それに青も参加するようになったのは、数々の死闘を繰り広げて絆LVが上がったのでしょうか(笑)
 三叉槍を持ちだしたボーラに電撃剣で対応し、珍しく近接武器での殺陣をちょっと挟んだ後で、サンダーボルトでスマッシュ。戦い終わり夜空を見上げるさやかに、そっと寄り添う麻衣と飛竜。
 「イカルスも、可哀想な人ね……」
 「イカルスは宇宙の孤児となり、星王バズーに育てられたのが悲劇だったんだ」
 (……私は、もっと平和な時に、イカルス星の王子、イカルスに会いたかった)
 主題歌ピアノアレンジをバックに、母の胸に飛び込んでいくイカルスの幻影が夜空に映し出され、切な
 ナレーション「さやかは、思った。平和な時に、イカロスに会えたら、きっと、友達になれただろうと」
 ナレーションさんの残酷な一言に、切なさが一刀両断された!
 ……いやま、主要視聴層を踏まえて作品メッセージ的には妥当なスライドですし、さやかの心情としても(恋愛関係は……無い)という方が納得度が高いのですが、あまりに容赦ないぶった切り具合に、吹き出さずにはいられませんでした。
 ナレーション「いつの日か、様々な宇宙人と、友達になれる事を信じて。戦え、電撃戦隊チェンジマン
 ラストシーン、さやかに麻衣が寄り添うというのは、以前の麻衣の初恋回を意識的に踏まえたのかなと思われるので、そちらに流れたらどうしようかと若干ドキドキしたのですが、やはり宇宙のイケメンでも、告白の理由が「母に似ている」は、生理的に無理。
 それはともかく、イカルスの陥った悲劇とは、この世界に蔓延る悲劇であり、チェンジマンの最終的な目標とは、そんな悲劇の再生産を繰り返す世界の根治にある、と地球を守る使命感ばかりでなく、チェンジマンの戦いそのものを宇宙的視野に広げて、つづく(勿論これは、現実世界のメタファーを含み、バズーとは概念的悪の具現化されたシンボルといえるわけですが、この辺りのテーマは次作『超新星フラッシュマン』に部分的に継承されてもいたり)。
 次回――本当にナナちゃん再登場! をギルークと絡めるのは面白そうですが、やはり麻衣回は飛ばされる運命なのか。