映画『ペンギン・ハイウェイ』感想
原作既読。
ある日、町にペンギンが現れた。
突如姿を見せ、そして忽然と消えた数十匹のペンギンは、いったいどこから来たのか? 父親に倣い、日々ノートを付けながら自己研鑽に励む少年・アオヤマくんは、かかりつけの歯科医に務めるおねえさんが缶ジュースからペンギンを生み出すのを目にし、ペンギンとは何か? お姉さんは何者なのか? その謎を解くことを約束する――。
これは、ぼくが、あと三千と八百八十八日で大人になる夏の日の、物語。
森見作品の、シャフト的な方向性ではないアニメ化という事で気になっていたのですが、いや面白かった!
夏休み・謎・冒険・憧れのおねえさん・ちょっとSF、という少年ジュブナイルファンタジーの煮こごりである原作のエッセンスを抽出して真っ向勝負で描き抜き、ラストまで気持ちのいい快作。
昔の日記を確認したら、原作小説を読んだのが約3年前だったので、あまり細かい部分は覚えていないのですが、クライマックスの辺りは映像にする事によりわかりやすくなっていた印象。また、基本的に少年が、憧れのきれいなお姉さんの為に奮闘する構造を遵守しつつ、終盤、クラスメイトの為に立ち上がる姿がきちっと劇的に描かれていたのは良かったです。
原作では特に印象に無かったのですが、少年の口にする「わかりません」が随所で印象深く置かれ、「わからない」事は「わからない」から「わかろうとする」少年の姿も凜々しく、最近少々、文章が陰に入り気味だったのですが、それを吹き飛ばしてくれる明るさを持った作品でありました。
中途半端に照れて誤魔化したり恥ずかしがる事なく、徹底的に正攻法のアプローチによる、良く出来たジュブナイルファンタジーで、そういったテーマが好きな方には、お薦めできる一作。
そして改めて、アオヤマくんは京都大学には進学しませんようにと願うのでありました(森見ワールドだから)。