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稲田怪人ではなかった

『騎士竜戦隊リュウソウジャー』感想・第5話

◆第5話「地獄の番犬」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:山岡潤平
 春のプレゼントまつりで久々に見た常磐ソウゴは、なんだか銭湯帰りみたいな恰好をしていた。
 冒頭いきなり、こたえソウルによる尋問で、Youtuberがスライムを飲まされた時の潜在記憶を半強制で引き出し……と、友達?
 友達にしていい事と悪い事があると思うわけですが、例えばこういう時に、ういに協力を求めて承諾を得た上でソウルを使う、といったようなくだりを省略せずに描いてほしいところ。
 しかもその後、マイナソーの種を植え付けている元凶のスライム野郎をバラせばいいんだな! と盛り上がると、辛い記憶を引き出されて涙をこぼしたういに一声もかけずに走り出し、と、友達……?
 友達って、ナンダロウ。
 ナニが残るというのだろう。
 一応、ういから声をかけられたアスナが振り返ってフォローを入れるのですが順序が逆で効果半減以下ですし、第3話の「友達」関係を補強するチャンスだったのに、むしろトップロープからの豪快なブレーンバスターでリングアウトさせるという大技で、今作のまずい部分が開始30秒からダッシュ全開。
 一方、トワは捨て犬を世話する女の子・早苗といちゃいちゃしており、「黒いと人気ない」という発言は現実の問題なのでしょうが、舞台装置が舞台装置だけに、黒……犬……人気ない……軍○、○平の事なの、と思わずにはいられませんでした(それを耳にするバンバ、というのも、手前では真剣な内容の会話をしているのに笑わせたいのか笑っていいのか、やや中途半端な演出になった感)。
 そんな折、街にスライムキノコが現れ、それを追い詰める黒と緑。
 「おまえにもう、明日はない」
 だがそこにまたもタンク様が横槍を入れ、500ポイントゲット。はやソウルとかたソウルによる連携攻撃に、赤青桃も駆けつけタンク様をひるませ、緑黒の参戦が大きいという事なのでしょうが、タンク様の急速な弱体化に脳の処理が追いつきません。
 あと、これまで描かれてきたリュウソウジャーの強さって、スキルソウルによる攻撃バリエーションと、訓練の積み重ねによってそれを活かす連携力にあるので、赤青桃の連携と、緑黒兄弟の連携が噛み合うようになる事でタンク様をも凌ぐ今まで以上の力を得る(当初は連携が噛み合わない)、みたいな流れが欲しかったところなのですが、この後の展開を考えると、どうにもそういう事をしている時間が無い模様。
 仇敵タンクジョウを相手に優位に立ったかと思われた5人のリュウソウジャーだがその時、大地を地震が揺らすと、タンクジョウは唐突にそのエネルギーを吸収してアースフォースを込めたタンクバズーカを放ち、全員まとめて変身解除。
 「ふひゃははははは……俺は地球のエネルギーを手に入れた。これでおまえらや人間達みたいな、ちっぽけな虫けらの命など、一ひねりだ」
 えええ? タンク様が急速に弱体化したと思ったら急速にパワーアップして脳の処理が追いつきませんが、ドルイドンの側が地球パワーへの親和性を持っている?(悪用、なのかもですが)、というのは今後に向けて少々不穏な描写。
 「命を……なんだと思っている! ……命に……大小はない!」
 懸命に立ち上がろうとするコウの言葉に、トワは人間の都合で捨てられる動物の命を憂う早苗の言葉を思い出し、大のために小を切り捨てる事を是としてきた選択と合わせて心境の変化が綴られるのですが、前回ラストで口にした「感化」というならこれが「感化」で、ボタンのかけ違いが、穴がズレているどころか服が間違っているレベル。
 ようやく、ゲストキャラの存在とメインメンバーの心情を「命」というキーワードで繋げて物語に立体感は出たのですが、トワとコウの絡みという点でも前回の方がふさわしい内容に思え、派手に乱丁した本を読んでいるような気持ち。
 「俺は……人の命を弄ぶおまえを、絶対に許さない! リュウソウチェンジ!」
 咆哮したコウが変身して因縁のタンク様に立ち向かい、その間仲間4人は地面に転がっているという赤の見せ場に雪崩れ込むのですが、ここまで黒緑に焦点を合わせて進行してきたのに準備運動ゼロでいきなり赤が舞台中央に躍り上がるのに面食らってしまい、劇的な盛り上がりのピントも、あれ、そっちに行くの? とズレてしまった感じに。
 勿論、不意打ちで場をさらっていくという手法もありますが、このシーンはそうとは思えませんし、受け手に対する心理的な誘導の仕込みがとにかく不足。
 その為、目の前で展開するアクションの盛り上がりと、それを見ての感情の盛り上がりにだいぶ温度差が出てしまいました。レッドの攻撃を受け止めるタンク様の、「あの世でマスターと、献血ごっこでもするんだな」は面白かったですが。
 また、戦闘中に「やめろコウ!」、戦闘終了後に「コウ、怒りに任せて戦うな」と、コウをたしなめるメルトは、戦士としての心構えを説いているのはわかりますが、コウがタンク様に立ち向かっていなかったら全滅一直線だったので、一時退却に繋がる行動を取っているならともかく、ずっと地面に伸びていたのに何を……となってしまい、冷静キャラを描こうとするあまりに、わけのわからない事に(状況と関係なくこの態度が一貫しているならキャラクターですが、これまでは苦境だと弱気になるキャラとして描かれていましたし)。
 いち早く立ち上がったトワとバンバは援護に入ろうとするが、茂みから飛び出してきた犬マイナソーにトワが噛みつかれ、それを見たタンク様は撤収。
 そのマイナソーの素体はトワの知り合いの少女・早苗であり、マイナソーの毒にやられながらも、トワは早苗をかばう。
 「俺、やっとコウ達の事がわかった気がする。大勢の命を救う為なら、一人の犠牲を払うのも、仕方がないと思ってた。……けど違う。その一人にも、家族が居る。大切な人が居る。だから!」
 2-3-4話と続けてきた「家族」テーマと、今回持ち込んだ「命」テーマを接続し、ここまでの展開を集約して「リュウソウジャーは何の為に戦うのか?」を打ち出そうとする狙いは悪くなかったと思うのですが、肝心のところで、「家族」テーマと赤青桃の間に接点が皆無というのが物凄く残念。
 黒緑は「家族」テーマへの接点があるのですが、赤青桃の「家族」要素は一切匂わされておらず(むしろ何の頓着もなく森を出てきたように見える)、森に普通に家があるなら何かの拍子に軽く触れるとか、天涯孤独なら憧憬を窺わせるとか、マスターが家族同然だったのなら思い返すとか、そういう劇的な効果を高める仕込みがとにかく欠如。
 逆に、「何の思い入れも無いのにその為に命を懸けて戦える」というのも、それはそれで面白さになりますが、その「何の思い入れも無い」描写も存在しないので、どちらに転がっても何もありません。
 では「命」はどうか、というとこれも特に無かったので、コウのタンク様への啖呵は、全くコウ(とタンク様)ならではの言葉になっていなかった為に『リュウソウジャー』として劇的にならず、結局は、素体キャラクターとリュウソウジャーの間が物語として繋がっていかない、という2-3-4話の短所が、集約に際してそのまま弾け飛ぶ事に。
 序盤から不安はありましたが、ものの見事に床板が抜けました。
 誤解を招くかもしれない表現なので少し横道にそれますが、上述した「コウならではの言葉」というのは、特徴的な言い回しや斬新な発想が必要という事ではなく、例えば、「俺に任せろ!」というごくごくありきたりな言葉でも、「俺」の存在がしっかりと積み重ねられておりしかるべき状況の中で発せられたならば、それは「ならではの言葉」に化けるものであり、それこそが“物語”というものの魅力の一つではないか、と思うわけなのです。
 気を失ったトワの為、みえソウルで犬マイナソーを発見したバンバは、鼻をくんくんさせて毒の匂いを追うが、背後ではタンク様が雑に巨大化し、立ち向かう騎士竜王。匂いを追った黒は、浄水場に毒をばらまくという古典的な作戦を決行しようとしていた犬と激突し、ドルイドンの行動も早くも一貫性が薄くて困ります。
 「固ソウルをなめるな!」
 黒は毒の牙をアーマーで食い止め、犬マイナソーは正式にはケルベロスマイナソーだそうですが、三つの頭が重なって三重の口になっている、というのは面白いかつ気持ち悪いデザイン。
 一方、タンク様のパワーに苦戦する騎士竜王の中で再び青にたしなめられた赤は、マスターとの稽古を思い出す。
 「俺が間違ってた。タンクジョウを倒す事が、マスターの為だと思ってた。でも! ソウルを一つに、みんなを守る為に戦わなきゃ!」
 相手に打ち勝つ為ではなく、大切な人を守る為に戦う事こそが本当の強さ、とマスターの教えを取り戻す赤だが、タンク様の地震パワーに苦戦。そこに犬マイナソーを単独撃破した黒とその騎士竜ミルニードルが駆けつけ、パワー系のキシリュウオーミルニードルが誕生する!
 両手に肉叩きを装備した騎士竜王ミルニードルは、「力には力だ!」と四股を踏みながら前進(これはロボのアクションとして大変面白かったです)すると、溢れる筋力でタンク様を投げ飛ばし、タンクバズーカの発射をニードルミサイルで阻止。切り札を封じられたタンク様に、ダイナミック肉叩きラッシュを叩き込み、タンク様、大・爆・発。
 「なんというパワーだ……おのれ……リュウソぉウジャぁぁぁぁぁ!!」
 (メタ視点では常連声優という事もあり)長持ちしそうにないなぁ、とは思っていましたが、予想より2倍速かったです(笑) 10話ぐらいは保ってくれると思ったのに……。
 タンク様の爆死に、毒づきながらアジトへ戻ったスライムキノコだが、そこには満身創痍のタンク様が座り込んでおり、この人達、普通に野宿なのか。
 タンク様がリュウソウジャーへの雪辱に燃える一方、犬マイナソーを倒したにも関わらずトワも早苗も意識が戻らず、がっくりと力を失うトワの運命や如何に……で、つづく。
 次回――3本の剣から5本の剣へ、というわけで、第4話で緑、第5話で黒の騎士竜と合体し、第6話で5身合体、というスケジュールならそれは忙しくもなろうとは思いますが、「コウがマスターの教えを取り戻した事」と「バンバが騎士竜王を援護した」事の間に関連性が1ミクロンも存在しないので、「ソウルを一つに、みんなを守る為に戦わなきゃ!」と「騎士竜王ニードルによるタンク様の撃破」にも因果関係が成立しないという、ブラックホールみたいな内容。
 マイナソーを倒す使命がある黒が騎士竜王に助力する事自体はおかしくないのですが、それが「赤とマスターの物語」とは99%関係ない(一応、マスターについての会話はあり)という驚愕のクライマックスで、どうしてこうなった。
 前回、黒桃コンビが神殿に辿り着くも更地でビックリ → ラストで黒が神殿の中に入って騎士竜と接触、という雑すぎて謎な展開がありましたが、今回も、犬マイナソーを撃破後の黒の心情が一切描かれないまま物凄く雑に黒の騎士竜が増援に現れてしまい、これ、脚本段階ではもう少し間に何かあったのが、カットされまくって野ざらしのあばらやみたいになってしまったのでは、という疑念も浮かびます。
 とはいえそういったバランスも読んで必要不可欠な情報を入れていく手腕も要求されるわけで、今のところ見事に、東映ヒーロー物未経験の脚本家にスケジュールの詰まった作品を担当させてあっちにもこっちにも手が届かないパターンに直撃している感。
 仲間であると同時にロボのパーツというメインギミックである騎士竜(とリュウソウジャーの関係性)をしっかりフィーチャーしてくれるなら、それはそれで良いのですが、緑の騎士竜にしろ黒の騎士竜にしと、トワとバンバが散々探し回っていた筈なのに、物凄く雑に出会って物凄く雑に初登場するので、どこにスポットライトを当てたいのかも大変困惑。合わせて大変あっさり意気投合しているので、なんだか、メルトだけが物凄く性格が悪いみたいな扱いに。
 スケジュールが落ち着いたら、長所が出てくる可能性はありますが……タンク様が予想以上に早々リタイアとなると、この後はウルッポイゾから追加戦士の流れも控えていそうですし、スピーディすぎる展開と、物語が噛み合ってくる事はあるのかないのか。
 とりあえずバンバはやはりツボに近い感じなので、次回、5本の剣が美しく揃ってくれると良いのですが。