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苦しい時こそ鬼軍曹

電撃戦隊チェンジマン』感想・第36話

◆第36話「見たか! 俺達の力」◆ (監督:山田稔 脚本:曽田博久)
 「地球が危機の時、地球自らが発するという謎の力、チェンジマンを見出した、アースフォースはもはや出ないという事がわかりました」
 「所詮その程度の星だったのだ。小さな星のくせに手こずらせおったが、それも今日までの運命だな」
 何やら、“星の持つ力”に対して含みを感じさせるバズーの言葉の後、地球を襲うアハメスの大攻勢に対し、決死の覚悟で出撃するチェンジマンだが、本日もハードアタックで大爆発から変身解除。揃って転落から追い打ちの崖崩れに飲み込まれ、生身のヒーロー達が顔だけ出して土中に埋まっているという、冒頭から強烈な映像。
 「起きるんだ! 起きろー!」
 勝利を確信したアハメスは怪鳥と飛び去り、そこへ走ってきた伊吹長官は、チェンジマンを次々と土砂の中から引っ張り出すと熱く抱擁、なんてするわけなく、疾風の顔をはたき、飛竜に裏拳を叩き込み、最近鳴りを潜めていた鬼畜生ぶりが爆発(さすがに、さやかと麻衣の顔は殴らず、ホッとしました)。
 「みんな起きろぉ!」
 「長官……」
 「自分で立て!」
 「……無理ですよ……こんな、体じゃ……」
 「甘ったれんじゃない!」
 伊吹長官はしれっと懐から光線銃を取り出すと全員に威嚇射撃を撃ち込み、120%期待に応える展開なのですが、あなたは何故、自分の武器だけバージョンアップしているのですか(笑)
 テクノロジー的には、13-14話のナナ初登場編で熊沢博士が用いていたゴズマ製の密輸品がベースになっているのかと思われ、ナナちゃんが地球の軍隊(守備隊)への協力を拒む理由がそこはかとなく透けて見えます。
 「立てぇ!」
 「長官!」
 「起きるんだ!」
 生身に対する至近距離からの熱線射撃に、さすがに怯える5人を容赦なく追い立てるべく、続けざまに引き金を引く鬼軍曹。
 「殺す気ですか!」
 死ぬような目に遭わせれば、もう一度、アースフォースが出るかもしれないからな!(※独自の研究です)
 「やめてください! 長官!」
 「おお、立てるではないか」
 銃撃を止めようと食らい付いてきた飛竜に笑顔を向けると、あっさり背負い投げ。
 「立てぇ! ……君たちはまだ自分たちの力の全てを使い切っていない。持てる力の限界まで出し切ってないんだぁ!」
 「……うぁぁ! いい加減にしてくれ!俺達は必死に戦ったんだ……鬼だ……貴様は鬼だぁ!」
 「そうよ!」
 「鬼よ、鬼だわー!」
 前回ラストの決意はどこへやら、ハードアタックの恐ろしさにすっかり心の折れている5人から一斉に非難を浴びる長官だが、基本的に鬼軍曹ロールプレイをしているので、この反応にむしろご満悦。
 「アースフォースは君たちに戦士としての力を与えてくれた。その力を信じ、自ら引き出すんだ!」
 そして勿論、勇馬より遙かにガンギマリなので、人の話は全く聞いていないのであった。
 今回通して思うのは、伊吹長官は、「チェンジマンを信じている」のではなく、チェンジマンを選んだアースフォースを信じている」事(笑)
 例えるなら、


 「信頼して、くれますか」
 「俺たちはさ、坊やをXIGに入隊させた、コマンダーを信頼してるんだよ」
 (『ウルトラマンガイア』第13話)
 というやつで、作劇としてはスポ根物の構造を継承し(引きずり)つつ、いっけん選手を信じる鬼コーチの猛特訓モチーフのようでいながら、その実態は、オカルトへの強烈な傾倒であるというのが、伊吹長官を独自の狂気の高みへと至らせています。
 ……確かにこれ、「アースフォースは一回限りの奇跡」という認識にさせておかないと、伊吹長官が「走れ! アースフォースが出るまで走るんだ!」と世界各地にチェンジマン養成キャンプを作り続け、人的損耗が酷い事になりそうで地球が危ない。
 一方、チェンジマンを仕留めたと思い込んだアハメスは、電撃戦隊そのものを活動不能に追い込むべく、地球守備隊日本支部を強襲。その連絡を受け取る伊吹だが、傷ついた5人の戦士には立ち上がる力が無い……その時、伊吹とチェンジマンの前に、黒服&黒マスクで武装した、謎の兵団が姿を見せる。
 「君たちは……」
 「伊吹長官! マシンをお借りします!」
 兵士達はチェンジマンのマシンに乗り込むと日本支部の救援に急行し、クルーザーと実弾兵器でアハメス軍団へ奇襲攻撃を仕掛けるという、この時点で正体は察せられるので、なかなか熱い展開。
 「何者?!」
 「地球の戦士は、チェンジマンだけではないぞ!」
 だが所詮は一般兵、黒い兵団は奮闘むなしく次々と傷つき倒れていくが、逃亡した地球守備隊首脳部の情報を得たアハメスはその追撃を優先して去って行き、その後にチェンジマンが駆けつけてくる。
 「おい! なんてことをしてくれたんだ?!」
 「あんた達が、だらしないからだぜ!」
 兵士のマスクを剥ぎ取った飛竜が目にしたその正体は――これまで共に戦ってきたサポート部隊、電撃戦隊の戦士団。
 「驚く事ないわ! あたし達だって、戦うんです!」
 「今日ばかりは、俺達がチェンジマンになれば良かったと思ったぜ! ……でも……でも俺達はチェンジマンに選ばれなかった」
 「……どういう事だ」
 「かつては、俺達もチェンジマンを目指し……」
 地雷網を突破しながら、サブマシンガンで撃たれていた。
 「アースフォースは、真の勇者にのみ出現すると信じていた。俺達は、アースフォースを浴びるにふさわしい勇者になろうと、頑張った。……だがしかし……俺達には、アースフォースは現れなかった!」
 まさか、敵襲を受けて残り5名になる事が発生フラグだとは、さすがの伊吹長官も気付いていませんでした! 気付いていたら多分、身内の暗殺部隊に訓練キャンプを襲撃させていた(え)
 「……知らなかった。チェンジマンにそんな歴史があったなんて」
 「剣さん達は、私たちの代表なんです! 私たち大勢の仲間から選ばれた、最強の戦士なんです! 私たちの、誇りなんです……だから、だからくじけないでほしい!」
 もともと戦士団、チェンジマン誕生以前から電撃戦隊に参加していた(プロジェクト〔チェンジマン〕を知っていた)メンバーなので、元チェンジマン候補生という事に驚きはなく、むしろ飛竜達の反応が鈍く見えてしまったのは、少し残念だったところ。
 そこに存在する、“思えばわけもわからないまま地獄のキャンプに招集され、そこで生き残ったらチェンジマンになってしまった5人”と“使命感を持ってチェンジマンを目指すも果たせなかった戦士達”との温度差がポイントではあるのですが、序盤の一時期を除くと、基本的に飛竜達は力強くヒーローしていたので、その「心構えの弱さ」を説く、というのはもう一つしっくり来ませんでした。
 これは今日的な作劇・構成に慣れている、というのもありますが、“ヒーローとしての濃淡”を描く、という要素は、90年代に入ってより洗練された形で抽出される部分になるのかな、と(80年代後半の作品で何かあるのかもですが)。
 そこの弱さはある程度自覚的だったのか、戦士としての心構えを見つめ直すに際して、今の自分達が立っている場所には、そこに至る過去の積み重ねがあるんだ、という事――その重さを感じ取る事――を、メタファーも含んだ「歴史」という言葉に象徴させたのは好きな部分。
 チェンジマンと戦士団、それぞれのアップを交互に映し、選ばれなかった者と、選ばれなかった者の想いが交差する中、地球守備隊上層部がアハメス軍団に捕捉されてしまった、という急報が入る。
 上層部の護衛に回っていた伊吹長官はヒドラ兵を光線銃と素手の格闘術で迎撃するとパワフルな飛び蹴りまで披露し、鬼軍曹は伊達では無いところを見せつけ、噎せ返るような昭和の男臭さがストレートな格好良さ。
 「さすがは電撃戦隊長官ね。だが抵抗もそこまでよ!」
 振り下ろされるブーバの剣さえサバイバルナイフでガードしてみせる長官だが、シーマとの挟み撃ちからフラッシュ攻撃を受け、連続攻撃でピンチに陥った所に駆けつけるチェンジマンと戦士団。
 これまで、影に陽に戦いを支えてくれた戦士団の思いを受け止め、5人のチェンジマンに至る道のりに、積み重ねられてきたものの重さを知った飛竜達は、レッツチェンジ。連続のハードアタックに耐え抜いたその時、5つのパワーシンボルが浮かび上がる。
 「そうだ! それがアースフォースが与えてくれた、まことの力だ!」
 前回、“再度のアースフォースの発現”を否定してどうするのかと思ったら、“5人はまだアースフォースの全てを引き出していなかった”という展開は、個人的にはもう一つしっくり来ませんでしたが、そこに戦士団の存在を繋げて、サポート要員なども全てひっくるめて電撃戦隊なんだ、と打ち出したのは今作序盤からの見せ方を活かしてくれて良かったです。
 チェンジマンは5つのシンボルパワーを弾丸に込めた真パワーバズーカでハードウォールを突破し、かつてなく派手に吹っ飛ぶ青獣士。
 「負けた……私のスーパーパワーがことごとく負けるなんて! 退けぃ!」
 超越の力にすがる事なく自らの力で困難な壁を遂に打ち破ったチェンジマンに対し(ただ結局は、最初に得た超越の力がベースにあるので、“それを自らのものとして育てる”というニュアンスはわかるのですが、もうワンステップ欲しかったな、とは思うところ)、アハメスは終始、リゲルオーラによって得たスーパーパワーを振り回していただけであった、という対比がなされ、最初は「か、壁……?」と思ったハードウォールは、案外と意味のある名前の特殊能力でありました。
 後年になると新兵器が投入されたり戦隊自体が強化される所で、そこまでにかけられる時間の自由度が比較的高い一方、ビジュアル的な説得力は弱くなってしまう、という面が見えますが、シンボルパワーをパワーバズーカの弾丸に込める、という演出そのものはわかりやすくて格好良かったです。
 勢いに乗るチェンジマンは、巨大化した青獣士をさくっとサンダーボルトし、拍手と敬礼に迎えられながら、電撃基地に帰還。
 「みんな、チェンジマンは遂に自分の持ってる力の全てを、自らの力で引き出してくれたよ」
 「思い出します。俺達が初めてチェンジマンとなってここへ来た時、こうして迎えられました。でも今俺達は、本当のチェンジマンになったような気がします」
 かくして割と成り行きからアースフォースに選ばれた5人は、過去を知り、そこに積み重ねられてきた人々の思いを受け止め、自らの道のりと現在地を確認する事で、今こそ真の戦士となって強大な壁を乗り越えたのであった!
 ……という意味の部分を抜き出すと、2クール目の締めぐらいの方が納得感が高かったとは思うのですが、これは約30年前と現在との「求められている作劇」及び「1年間の物語における情報量とそれを処理するスピード感の差」が出ているところだろうとは思います(実際には、1クールの締めぐらいでここまでやるのが近年のスタンダードですし)。
 次回――えらく情報量の少ない予告で、果たしてどうなる?!