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電撃職場訪問

電撃戦隊チェンジマン』感想・第27話

◆第27話「ゲーター親子の夢」◆ (監督:山田稔 脚本:曽田博久)
 熱海後楽園ホテルに謎の招待を受けるチェンジマン。そこで待ち受けていたのは……
 「ゲーター!」
 と一斉に躍りかかるが5人だが、実はそれは女装したゲーターではなく、ゲーターの妻・ゾーリーであった。
 「いったい俺達を呼んで、なんの真似だ?!」
 ゾーリーは、ゴズマに単身赴任してもう3年になるゲーターを、子供に再会させる為になんとか協力してくれないか、と床に頭をこすりつけんばかりにしてチェンジマンに頼み込み、歩み寄るとその頭を上げさせる疾風。
 「戦争で犠牲になるのは、いつも女と子供ってわけか」
 「はぁ……女だと宇宙人でも甘いんだからな~」
 「簡単に信用はできない。ゴズマの卑劣なやり方は、いやというほど見てきたからな」
 ゲーター似の宇宙人相手でもフェミニストぶりを発揮する疾風だが、一気にほだされるのかと思いきや、他のメンバーの反応は割とドライ。
 立ち位置や表情からすると、麻衣は比較的同情寄りに見えますが、さやかに至っては、基本的に終始無言。まあ、下手に喋らせるとシビア過ぎて印象が悪くなるか、この後の展開により頭脳派ポジションを損ねてしまいかねないので、良い判断だったとは思います。
 対応を苦慮する5人だが、地球守備隊エネルギー研究所がゴズマの襲撃を受けているという急報がもたらされ、新開発のプラズマエネルギー発生装置が強奪される寸前に駆けつけると、戦闘開始。
 研究所の救援に向かった筈が、背景がどうも熱海に思えるのですが、つまり熱海にあるのか、研究所(笑)
 カタツムリ顔の宇宙獣士ギロムが最近恒例のゴム鞠爆弾を放つと、続けてギロムホールによってグリフォンのズーカを奪い取り、火力に頼る傾向があるチェンジマン、割と最大のピンチ!
 更にギロムの必殺攻撃で5人まとめて謎の球体に吸い込まれてしまうチェンジマンだったが、それを目にしたゾーリーに助けられる。チェンジマンの信頼を得るべくゴズマのアジトに案内すると申し出るゾーリーに対し、「待て。どうも信じられない」と飛竜は厳しい視線を向け、割って入った疾風との対立が続く。
 「どうして信じてやらないんだ。宇宙人だって家族一緒に暮らしたいと願う気持ちは俺達人間と変わらないだろう?! それはいつも剣が言ってる事じゃないか!」
 今回、ゲーターをショッキングピンクに塗りたくったような宇宙人ゲスト、という絵面がギャグ寄りの一方、その必死の懇願とチェンジマンの対応が至極シリアスに描かれる事により、ギャグとシリアスの境界線が混濁し、一種酩酊状態に似た幻惑効果を生んでいるのですが、それがメタ的な視点も含め、この異星人を信用できるかどうか(今回はギャグなのかシリアスなのか?)、を視聴者に問う形になっている、というのがなかなか秀逸な構造。
 コミカルなゲストを軸にした人情小話、みたいなのはあまり好みではないので捻り方が良かったのですが……なんだか、単なる野球好きに見える怪人は敵のスパイなのか? というサスペンスが、路線変更を繰り返してきた作風と渾然一体となってギャグとシリアスの境界線を高速で走り抜ける奇跡のドライブ感を生むに至った『ジャッカー電撃隊』第21話を彷彿とさせます(笑) (※総合評価は高くできない『ジャッカー』において、大変印象深いエピソードなのです)
 ……ジャァック!!
 遂に飛竜は疾風の言葉を聞き入れ、ゾーリーの案内で5人が向かったのは、入り口の両サイドにモアイ像が立ち、壁面に獅子のレリーフが刻まれた方形ピラミッドのような建造物……で、さすがに今回の為のセットには見えないのですが、「伊豆シャボテン公園の高原竜」的なオブジェクトのでしょうか、これ。
 ゾーリーの情報通り、奪われたプラズマエネルギー発生装置がグリフォンズーカに組み込まれそうになっているのを目にした疾風は内部に突入するが、ここでゾーリーが裏切り、閉じ込められた疾風は、哀れ建物ごと木っ葉微塵の大爆発。
 「星王バズー様、遂にチェンジマンを罠にかけ、倒しました。ゲーターの女房を呼び寄せ、一芝居打たせた私の、作戦が、まんまと図に当たったのです」
 「そう願いたいものだ」
 「は?」
 「果たしてあのチェンジマンがそう簡単に倒せるものかどうか」
 “私の作戦”を強調するなど、最近どうも演出が小物寄りになっているギルークは、アハメスに人気面で押され気味なのかどうか、先行きがちょっぴり不安(笑) 頑張れぼくらのギルーク指令! いざとなったら魔法中年にクラスチェンジだ!
 熱海ではゲーター夫婦がホテルの一室で仲むつまじく乾杯しており、卑劣な策略を裏打ちする描写がえぐい。
 そこに乗り込む疾風を除いた4人のチェンジマン。タイミングを考えると、爆発跡での疾風の捜索よりも卑劣な裏切り者の抹殺を優先したと思われ、慌てて逃げ出す夫婦を取り囲むが、今度はゲーターが、全てはギルークの指示であり、家族の事は真実であると泣き落とし。
 (駄目だ……出来ない)
 涙を流し抱きしめ合う2人の姿に真の愛情を感じた飛竜は、拳を握りながらも処刑執行を躊躇うが、そこに獣士の攻撃が突き刺さる。
 「5人揃わぬチェンジマンなど、敵ではない!」
 「今日こそ貴様等を全滅させてくれるわ!」
 ブーバも現れて遊園地でのバトルに突入し、アトラクションを活用しながら、高度を活かした映像が大変面白いシーンに。
 ヒドラ兵を蹴散らすも、獣士の吸い込みホール攻撃にチェンジソードを奪われてしまったチェンジマンは窮地に陥るが、そこに飛び込む黒い影。
 「疾風!」
 ヒドラ兵を蹴散らしてチェンジソードを取り返し、櫛で髪を整えながら振り返ったのは、爆発の瞬間、グリフォンに変身する事で九死に一生を得ていた疾風翔。
 チェンジマンが再び5人揃う一方、作戦失敗の罰としてゾーリーはゴズマの宇宙船に回収され、嘆き悲しみ膝を付くゲーターの姿に、疾風は複雑な表情を浮かべる。
 「ゲーターもゾーリーも、本当に哀れな立場なんだな」
 「許せないのは、そういう宇宙人を戦いに仕向ける、星王バズーと大星団ゴズマだ!」
 地球に対するゴズマの尖兵もまた、侵略被害者の一面を持つ、という今作の大枠の基本構造が改めて確認されると共に、背後に存在する真の敵の存在を強調。あまり突き詰めすぎると、毎回の獣士にも家族が居るのでは……と戦いにくくなってしまうので掘り下げは程々にとどめそうですが、序盤から今作の一貫した世界観が、明確に言語化――チェンジマンに認識されたといえます。
 (※余談ですが、今作から丁度10年後の『重甲ビーファイター』の中盤以降において、侵略者の尖兵を一概に「怪人」としていいのか、という問題が描かれており、今作への意識があったのかはわかりませんが、興味深い点です)
 改めて主題歌インストでバトル再開するも、ギロムホールに吸い込まれて干物にされかけるチェンジマンだが、シンボルパワーで脱出し、パワーバズーカでファイヤー。巨大戦でもホール攻撃に苦しめられるが、ギロムの急所をミサイルで破壊すると、サンダーボルトで一刀両断するのであった。
 かなりの強敵だった今回の宇宙獣士、終わってみれば下手に爆殺をはかるよりも、奪ったズーカを隠して力押し(パワーバズーカを失ったチェンジマンの戦力は大幅減)が正解だったように見えますが、よくよく考えてみると予備のズーカが電撃基地から熱海に小包で届けられる可能性もあり、互いに戦力を把握しきっていない状況での戦闘ゆえの敗北だった、とも言えるでしょうか。
 岸壁に落ちていたゾーリーのペンダントを拾ったチェンジマンは、その中に収められていたゲーター一家の写真を目にする。
 「幸せそうじゃないか」
 「ゲーターもナビ星にかえれば普通の宇宙人だったんだな」
 ……長らく、「アリゲーター」?にしては、緑色以外はワニモチーフには見えないな……と思っていたゲーター、「ナビゲーター」だったのか、と深く納得。
 「ああ。奥さんや子供、家族を大切にする生物は、みんな人間と同じさ。……いけないのは星王バズーだ! 宇宙で平和な暮らしをしている者達を、戦争に駆り立てている。許せない、絶対に許せないぞ!」
 改めて、真の敵への怒りを駆り立てられるチェンジマンであったが、ゾーリーはどうなってしまったのか、さすがに気になります。ゲーターの立ち場を考えると、まだ人質として利用価値があるという扱いかもしれませんが、割とゲーター、有能な航海士だったりするのか。
 そしてこれまでコメディリリーフ要員だったゲーター、今後はあまり間抜けなノリでは描きにくい気もしてきて、描写に変化を付けてくるかは気になるところです。……案外、憎しみの方向がチェンジマンに向いて復讐鬼として覚醒し、広瀬匠に変身したらどうしよう!(待て)
 物語も折り返しを過ぎ、そろそろ刺激的な新展開が欲しくなってくる頃合いですが……次回、何故か続けて疾風回。