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サヨナラは言わない

快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』感想・最終話

◆#51「きっと、また逢える」◆ (監督:杉原輝昭 脚本:香村純子)
 ルパン家の宝物庫、日本にあった。
 デストラさん、実質ラスボス説。
 特・別・拘・禁・室。
 の3本立てでお送りする『快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』最終回。
 前回の感想で、


 グッティならコレクション扱いでルパン家の倉庫から魔法の本の側に出る事が出来そうな気もしますが、ルパン家の倉庫はどこにあるのか?! パリだったら、『エッエッエッークス!』で3分ぐらいで行けるのか?! チキンか、シャケか、それが問題だ。
 と書きましたが、まさかの日本国内?でした。或いは、本気出したグッティはマッハ200ぐらい出せる。
 海外ドラマ『FLASH<シーズン1>』で、特技:物凄く早く走れるなアメコミヒーロー、フラッシュが叩き出した最高速度がマッハ2だったので、概算に概算を重ねてその100倍という事になりますが、これは多分、マッハ200を出しているわけではなく、加速段階の途中でワームホール的な何かが開いてグッティはそれをくぐり抜けてパリのルパン家宝物庫に辿り着いているのだが、グッティ本人にはその自覚が無い。
 「さーて……こっから出ること、考えないとな」
 ザミーゴを倒して大切な人達を取り戻すも、ドグラニオの金庫世界の中に閉じ込められたままの快盗トリオは脱出方法を窺い、外ではドグラニオと警察戦隊が対峙する。
 「さあ警察ども。この窮地、どうやって乗り切る?」
 「簡単だ! おまえを止める!」
 パトレン1号の叫び、パトレンジャーのダッシュから、OPイントロに合わせてモノトーン気味の映像で7人のアップが次々と映し出される、という最終回変則OPは格好良かったです。
 提供カットに合わせる形で金庫世界のそこかしこに銃を撃ってみる快盗達だが、手応え無し。通常のギャングラー金庫と違って無限の空間ゆえにという事なのでしょうが、まぐれ当たりで内部から金庫がドカン(まあその場合、快盗はまず死ぬ……)ルートは、ありませんでした。
 「うちら、これで終わりかな?」
 「……終わりだろうな。俺達の命と世界の平和……天秤にかけるまでもない」
 「だよね。ドグラニオの金庫明けてる余裕ないか」
 「ま、しゃーない。兄貴達取り戻せただけで、満足」
 目的を果たし、満足げな表情の快盗トリオは自分たちの運命を受け入れて朗らかに座り込み、外ではコレクションを大盤振る舞いするボスの攻撃により、警察戦隊が変身解除。金庫を開けようと切りかかったルパンXもあしらわれ、仕込み杖ーーーとボスのアクションも趣向を凝らしてくれて大満足。
 警察戦隊を蹴散らしたドグラニオは、更に派手な舞台を求めて暴虐の限りを尽くそうとするが、その前に圭一郎達4人は諦めずに立ちはだかる。
 「ここから先へは、通さない!」
 「――なかなかしぶとい警察だ」
 ここで命がけで抵抗し続ける姿で、ノエルの“世界を守りたい”という想いも本物である、という事を重ねて裏打ちし、伝わってもくるのですが、結局“それ以上”のものにならなかったのは、残念だった点。
 警察戦隊と快盗戦隊の橋渡しという役回り、それを成し遂げようとする確固たる意志、が強すぎて、ノエル自身に「変身」の機会を与えきれなかったのは、惜しまれるところです。例えば、パトレンジャーが自分を助けてくれた事に感動して感謝を示しても、それがノエル自身の大方針を変化させるかといえばそんな事はなく、ノエル自身の言行は、徹頭徹尾、初期から貫徹しているわけで(微細な変化は無いとはいいませんが)、個人的な好みでありますが、他者との関わりを通してそこに劇的な「変化」が生じる姿が見たかったなと。
 この点も、今作トータルにおいては、魁利の「変身」(とそれに関わる圭一郎)こそが最大の焦点であり、取捨選択としては正しいと思うのですが、ずっと高尾ノエルの「変身」に期待していたので、そこに手が回らなかったのは、物足りない部分となってしまいました。
 結果論の後付けとなりますが、登場時の方針(実際の本編と同じ物とは限らない)に基づいて行動していたノエルが3クール目の締め辺りで大きなやらかしをして、4クール目から方針を変更する事で真の共闘に繋がっていく……ぐらいにノエルの大きな躓きがある構造でも良かったのかな、と。結局、ノエルの能力不足などで万全に理想通りにはいかないというのは描かれても、ノエルの大方針自体は作品構造と密接に繋がりすぎた正解になってしまったのが、ノエルというキャラクターについての、個人的な不満点。
 そこで問題になってくるのは、ノエルをキーにして、折り返し地点でVSXをやらないわけにはいかなかった、という点であり、第25話時点では綺麗にまとめたのですが、後々まで脇腹に毒矢が突き刺さるような事にはなってしまい、これは今作のコンセプトから突破できなかった限界点を見てしまうところではあります。
 今作コンセプト、という話をすると、商業的に不振だったようなのは残念でしたが(この辺りは玩具デザインや時の運も絡みますが)、外部的に良くも悪くも硬直化している戦隊シリーズのイメージに大きな一石を投じ、これまで届いていなかった層に改めて戦隊の存在を届けた、という点では一定の成功を収めたのではないか? とは思われるところ(私程度の狭い観測範囲でも、ふだん戦隊の話題をしない方が話題にしているのを幾つか見ましたし)。
 “戦隊ってこうでしょ?”から“戦隊ってこんな事もしているのか”という一石にはいわば未来へ向けた種蒔きという側面があり、勿論、だから当該作品の質が悪くても良いというわけではないとした時(そもそも、“こんな事”に引きつけられた人をがっかりさせたら逆効果)、話題性先行の企画倒れになる事なく一定のチャレンジを乗り越えながら最後まで走りきった事は、長期シリーズの中におけるカンフル剤、野心的変奏曲という意味づけにおいて、その手の届き切らなかった部分も含めて、求められた役割の一つを果たしたのではないかな、と思います。
 願わくば、5年後、10年後、そこから新たな大輪の華開く事を期待したい。
 そして決着の刻は近付き――
 「貴様のような残虐非道な化け物から世界を守るのが、我々の仕事だ!」
 「お前達が来たせいで! 苦しまなくていい人達が沢山苦しんだんだ!」
 「彼らの為にも、我々がここで倒れるわけにはいかない!」
 「ふっふ……精神力でどうにかなるほど、このドグラニオ・ヤーブンは甘くないぞ?」
 大変ふてぶてしい、凶悪無比なラスボスの台詞として、今回のお気に入り。
 ドグラニオは4人を影で縛りつけると燃える岩石ミサイルを放つが、哀れ串刺し寸前、ミサイルは空中で消滅してしまう!
 「ん?! なんだと?」
 動揺するドグラニオの金庫の中では……魁利達が、金庫世界の中空に浮かぶコレクションを次々と回収して、コレクション図鑑を通してルパン家の宝物庫に転送していたのだった!
 第16話におけるギャングラーの金庫に関する布石は用いられませんでしたが、直近のコグレに渡された図鑑が意味を持つ、というのは納得の展開。実に“快盗らしい”形で、共闘が行われている、というのも美しく収まりました。
 「圭一郎くん、今ならドグラニオと戦える筈だ!」
 「……つかさ、咲也! このチャンス、必ず掴むぞ!」
 「ああ!」
 「はい!」
 絶体絶命から一転、コレクションの力を失ったドグラニオに対し攻勢に転じた警察戦隊は、4人並んでパトライズ。

「「「「警察チェンジ!!」」」」
「パトレン1号!」
「パトレン2号!」
「パトレン3号!」
「パトレンX!」
「警察戦隊!」
「「「「パトレンジャー!!」」」」」
「国際警察の権限において、実力を行使する!」

 顔出しスーツからメットオンし、ラスト恒例となっている顔出し変身を、警察戦隊はラストバトル、快盗戦隊は正体公開、の時に分けて用いるという一ひねり。
 「コレクションなどなくとも、俺は幾つもの世界を奪ってきた! 人間なんぞにやられるものかぁ!」
 ドグラニオは全身の鎖を広げると、ふはは怖かろう、とオールレンジ攻撃を行い、それを回避するパトレンジャー。金庫内部では魁利達がビークルとチェンジャーも図鑑に収め、今の自分たちに出来る事の全てを果たす。
 「これでドグラニオを倒しても、ノエルの願いは叶えられるな」
 「アルセーヌさん戻ってきたら、ちょっと会いたかったね」
 「……絶対倒せよ、お巡りさん達」
 微笑みを交わす快盗達は全てのコレクションが消えた金庫世界の空をスッキリとした表情で見上げ、自分たちの事は諦めた上で、ルパン家(ノエル)の為にコレクション回収は果たす、というのはとても良かったです。
 外ではスーパーパトレンXが発動し、更にマジック2号、シールド3号が、これまでの鬱憤を晴らす連続攻撃をドグラニオへ浴びせる。
 「この俺が……いったい何故……」
 「おまえは気付いていなかったんだ! 老いた体が思っていた以上に、コレクションの力に支えられていた事に!」
 「ぬぅぅぅぅ、黙れぇ!!」
 自身も高い戦闘力を見せていたドグラニオがコレクションによる攻撃を連発するのは、映像的なサービスに加え、コレクションの力に頼って足下をすくわれるという定番の展開かと思いきや、それ以上に痛烈な一撃に繋げ、ルパンレンジャーが夜で、パトレンジャーが日中であるならば、ギャングラーとは夕暮れにして逢魔が時であり、そして黄昏であったのだな、と。
 少し妄想を広げると、デストラはドグラニオに全盛期の力が無い事をハッキリ認識しており、それ故に無意識にでもコレクションの力に寄りかかる事を危惧しており、そんなドグラニオを「絶望」させない為に忠義を果たそうとするも願いは果たせず……改めて、デストラが倒れた時に、ギャングラーという組織は実質的に崩壊していたのかもしれません。
 「詩穗ちん、夢の続き、叶えてね」
 「彩……幸せになれよ」
 「ごめんな……兄ちゃん」
 死んでも叶えたい願いを叶え、出来る限りの契約を果たした快盗トリオは金庫世界の草原に転がってその時を待ち、超音速グッティからサイレンストライカーを受け取ったパトレンジャーは、パトレン1号が遂に超警察チェンジ!
 ……この大鑑巨砲装備は、やはり圭一郎向き感(笑)
 サイレンストライカーの火力ならば、ドグラニオの鎖を断ち切れるかもしれない――、一縷の望みを賭けて放たれた渾身のパトレンキャノンとドグラニオ全力の一撃が衝突し、押し込まれる1号だがその背を2号と3号が支え…………支え……えー、あの、パトレンXさん?
 もはやXに関しては“どちらでもあるがどちらにもなりきれない存在”と割り切って、決着はパトレンジャーで、という意図だったのかもですが、少々困惑するトレントライアングルで豚の角煮ーーー!!
 …………そうかつまり、ノエルの立場はゴがふっ(吐血)
 パトバズーカを叩き込まれたドグラニオは、寸前に鎖によるフルガードで凌ぎきるも全ての力を使い果たして膝を付き、ドグラニオ自身の戦闘力は皆無に等しくなるも、その身に纏う鎖は未だ健在。もはや、外部から強制的に金庫を開ける手段は無いのか……4人は銃をドグラニオへと向ける。
 「抵抗するな! 大人しくしろ!」
 「さあ! その鎖を外して、金庫を開けるんだ!」
 「……ふ、断る」
 メリット無いですしね(笑)
 「開けろぉぉぉ!!」
 「断る!」
 1号の絶叫に対し、ドグラニオは事ここに至ってもパトレン一同が怯む気迫で我を通し、戦況をモニターしていたヒルトップは、全ての責任を負うからドグラニオを倒せ、と悲痛な指示を下す。
 「さあどうする?! 正義のお巡りさんよぉ?」
 最終的にボスキャラの気概が、自分が死んでも倒した相手に目一杯嫌な気持ちを味わわせるという、命を賭けた嫌がらせに集約されるとは思いませんでした!(笑) ここまでのギャングラー上層部の描写の積み重ねから、成る程と納得はしましたが!
 ドグラニオを倒す為に、3人を救えないままでいいのか……震える銃口が下を向きそうになったその時、圭一郎の胸に魁利の言葉が蘇る。
 ――あんたはそっちに居てよ。こんな快盗じゃなくて、もっと沢山の人助けなよ。
 それを「選んだ」圭一郎は、嗚咽をこらえながらドグラニオに向けて近づいていき、それを見つめるしか出来ない2号・3号・Xの胸にも、それぞれ快盗達との思い出がよぎり、改めて咲也のおいしすぎるポジショニング。
 そしてパトレン1号も……
 ――俺が圭ちゃんになれないみたいに、圭ちゃんは、俺みたいにはなれない。
 ――ありがちゅー。
 ――世界の平和を頼んだぜ、お巡りさん。
 果たして、自分は、彼を救えたのか?
 そして今、彼らを救えず、世界を救うのか?
 その引き金が掴むべきは――
 至近距離でドグラニオの眉間に銃を突きつけたパトレン1号は、束の間、その背に魁利の存在を感じ取り、ウユニ塩湖、ウユニ塩湖はなぁ……正直、ここ数年で流行りすぎた演出なので、悪い意味で安易になってしまった感があり、良い流れだっただけにちょっとがっくり。
 パトレン1号の絶叫と共に、一発の銃声がこだまし……――1年後。
 今日もパトレンジャーは、ギャングラー残党と戦っていた。ルパンレンジャーが世界に取り戻した大切な人達――勝利、彩、詩穗はそれぞれの日常を過ごし……異世界犯罪者集団ギャングラー首領ドグラニオ・ヤーブンは、国際警察日本支部地下に存在する特別拘禁室に、がんじがらめで拘束されていた。
 やっぱりあった、秘密の地下室。
 「出せ……さもなくば殺せぇ! この、老いさらばえた体で、無力に生き延びるぐらいなら、死んだ方がましだぁ! ぬぅぅぅ……!」
 ドグラニオを倒す事なく監禁する、というのは全くの想定外でしたが、あの場でドグラニオを都合良く気絶させてから特別拘禁室を建造したとはとても思えないので、物語の開始当初から確実に存在したと思われる特別拘禁室、さっさとノエルをここに(以下略)すれば話がもう少し早かったような気がしないでもないですが、ここ、万が一にもドグラニオが力を取り戻さないように毎日僅かずつ消耗させた上で、細胞の一部を切り取ったり夜な夜な研究を続けているのだろうなぁ…………。

 「間もなく咲也くんは新たなギャングラーとなる」
 「あなたの本当の目的は……」
 「人間がドグラニオ細胞と融合し、その結果ギャングラーになる時、その人間の金庫を分析すれば、 新たな命が手に入るとは思わないかね?」
 など、皆様色々なシチュエーションでお楽しみ下さい。
 本編この時点では、残り時間でドグラニオ脱獄してW戦隊揃っての最終決戦まで持ち込むのか?! と僅かに考えたのですが、結局それは無かったので、先にドグラニオ様とギャングラーについてつらつらと。
 最終話にして、警察戦隊が容疑者を射殺せず、逮捕・収監、という予想外の展開となり、無様な老醜をさらす事になったドグラニオ様……ラスボスを滅殺以外の手段で攻略する、というのは過去作品にも例がありますが、攻略のクライマックスとなるフィニッシュブローの描写さえ存在しない、というのは戦隊史上でも初だったりするでしょうか……?
 最後まで好きにやろうとした結果、何も好きにできない身の上に置かれるというのは極めて因果応報であるのですが、なんだかんだでヒーローが悪をデリートするのは、因果応報のバランスとしてデリートした方がむしろ絵としてえぐくなくなる、という効果もあるのだよなぁ……という、歴史に残るえぐい身の上となりました。
 個人的にはWスーパーレッド、そしてラストVSXを期待していたのでカタルシスとしては不足を感じましたが、それをやらない事を選んだ上で、“世界の平和”の為に金庫の中と外で真の共闘を果たす、というのは、変則的ながら抑えるべき要素を抑えてくれて良かったです。
 ゴーシュ戦は共闘としては極めて不安定な状態であり、VSXも発動しなかったので、結局バトル的な共闘のピークとVSX最後の登場はデストラ戦となりましたが、つまり実質的なラスボスはデストラだったのでは(笑)
 バトルのピークという点でも、ギャングラーの要という点でも、改めてデストラさんの存在の大きさが偲ばれます。年末に倒れてから2ヶ月経ってもその存在を噛みしめる事になるとは、実にいいキャラでありましたデストラさん……。
 今思うと、最終決戦がかなり変則的になる可能性があったので、デストラ戦に全力投球していたのだろうか、という節も窺えますが。
 組織としてのギャングラーに関しては、幹部陣の出番の少なさを、スポットを当ててからのダッシュで乗りきるというかなりの力技をスタッフの手腕で成立させましたが、端々でもう少し掘り下げが進められればな……と、悪の組織好きとしては思うところ。W戦隊構造を考えると十分によくやったと思うので、後はあちら立てればこちら立たずという話になってしまいますが、警察戦隊とゴーシュ辺りをもう少し繋げられればな、というのは残念。特に<化けの皮>という要素がありながら、幹部陣で遊んでいる余裕が無かったなぁと。
 スカッとし切らない部分が残るのは今作全体の着地点にもなりますが……今作でギャングラー怪人のデザインを担当した久正人さんが、Twitterにあげていたイラスト(内容は非公式です)が素晴らしかったのでご紹介。

 〔久正人:Twitter〕

 そうかこれだ! という感動があって、ドグラニオの扱いについて、自分の中でストンと飲み込む事が出来るようになりました(笑)
 終盤、ずっと曖昧だった「異世界」=「ギャングラーの世界」という扱いになっていた事にやや納得しかねていたのですが(圭一郎達の認識はともかく)、今回ドグラニオ様が「コレクションなどなくとも、俺は幾つもの世界を奪ってきた!」と「異世界」=「複数の別次元が存在する」事を言明していたので、あり得るあり得る。
 宮本充さん、絶対、こういう役どころ、はまりますし。
 そんな未来が来るかどうかはともかく、ドグラニオ収監から1年後の世界は、パトレンジャーの活躍もあって平穏を取り戻しつつあった。
 「ギャングラー犯罪も減りましたね」
 「ドグラニオを特別拘禁室にぶち込んだからな。組織としては終わってるだろ」
 「ああ。だが、完全に撲滅するまでは油断できん」
 噂をすればなんとやら、残党出現の急報に出動したパトレンジャーは、コレクション持ちのカワセミギャングと戦闘になるが、そこに響く、懐かしい声。
 「そ、ギャングラーが持ってる、最後のコレクション」
 銃撃を浴びせたギャングラーが一旦逃走した後、姿を見せたのは――
 「だから俺達がいただかないと」
 魁利・透真・初美花、現世に帰還した快盗トリオであった!
 衝撃を受ける警察戦隊の前に続けて現れたのは、ジャックポットストライカー(劇場版ネタ?)。3人は、コレクション図鑑を通して金庫世界にやってきたジャックポットが、精神操作能力によって内側からドグラニオに金庫を開けさせる事で、ようやく外へと解放されたのである。
 そして、行方不明だったジャックポットを探し出したのは……
 「実はなー、3人の快盗に捕まったんだ」
 「「「え?」」」
 金庫から脱出し、怪訝な表情で振り返った魁利達が目にしたのは、3人の新たな快盗!
 大胆なスリットで歩み寄るその姿はそう、つまり……
 「ルパレン1号・朝加圭一郎、いや、圭子!」
 「ルパレン2号・陽川咲也、いや、咲美!」
 「ルパレン3号・明神つかさ。……これはそのままか」
 が一瞬頭をよぎったのはともかく、3人のニュー快盗がシルエットから珍妙な服装で登場したシーンは、なんだかとんでもない事になったぞ、と思わず吹き出してしまったのですが、その正体にいち早く気付いて顔を歪める透真、そして仮面を外して露わになるその素顔は――勝利・彩・詩穗、というのは震える展開でした。
 3人が助け出した大切な人達がまた、大切な3人を取り戻そうとする――という逆転の構図には某作品を思い出したのですが、宇都宮Pの好みだったりするのでしょうか。
 そして、快盗である事に一抹の後ろめたさを抱えていたであろう魁利達に対し、助けられた大切な人々が同じ存在となる事でイーブンな関係が成立し、浄化がもたらされる、というのは実に鮮やかで、積み重ねに積み重ねを経た末に、物語を貫いてきたキーが一つの壁を突破する瞬間、というのは個人的にも好物で、多少あっけらかんとした部分も含めて、大変好きなシーン。
 またここで、勝利・彩・詩穗、という普通の人達をシンボル化する事により、これまで目的はともかく手段は許されないイリーガルな存在として扱われてきた“快盗”の薄暗い部分をオミットして、“大事な人を取り戻す為に戦うもの”という要素だけを抽出し、“快盗”という存在をヒーローとしてクリーンナップしてみせたのは、お見事。
 存在の明言されている肉親である初美花パパママの(世間的)立場は少々気になりますが、詩穗ちんが快盗やっているぐらいなので、案外ノリノリで支援者ポジションを買って出て、喫茶店の経営など始めているやもしれません。
 かくして再び、警察に頼らないものが快盗となり、警察が救えなかったものを快盗が救う事となり、これは未来に希望を残した圭一郎にとっても大変な痛撃になるわけですが……魁利が目を見開いて固まる中、初美花は詩穗と、透真は彩と、駆け寄って抱きしめ合い、やはり面と向かって再会して欲しかったので、余計な言葉を語らないのも含めて万感のシーン。
 そして魁利も俯き加減に勝利に歩み寄り……
 「兄ちゃん…………」
 鼻をすすりながら、その顔を上げる。
 「……ごめん」
 金庫の中で別れを覚悟した時とここと、勝利に対する呼びかけが「兄貴」から「兄ちゃん」に変わり、今まで飄々とした仮面を被り続けてきた魁利の素の泣き顔と、それを見守る勝利の表情が素晴らしかったです。
 勝利は無言で魁利の鼻をつまんで、抱きしめ、ここに夜野兄弟は、再び向き合う日を迎えるのだった。その時、魁利の背を押したものは、朝日に吠えるあの男であったのかも、しれない。
 「――これで、勝利くんたちは、お役御免です」
 「彼らまでスカウトするとは……コグレさん、あなたは本当に酷い人だ」
 「ノエルこそー、お兄さん達を、快盗として、仕込んでたじゃないか」
 「どうしても、魁利くん達を助けたかったから」
 「私も、どうしてもコレクションを、全て集めたいんです」
 ルパン家ではノエルとコグレが微笑みを交わして朗らかな空気が漂い、あくまでコレクションの為と言いながら親愛の滲み出るコグレの言い回しが絶妙なのですが、が、が、が、ノエル多分「魁利くん達を助け出す方法は、僕が必ず見つけだすよ」と圭一郎たちに約束して警察を去った、とかではないかと思われるのですが、これ途中で完全に連絡を絶ったパターンでは……。
 まあ、あまり時間をかけると金庫世界の魁利達が「出せ……さもなくば殺せぇ! この、閉じられた世界で、無為に生き延びるぐらいなら、死んだ方がましだぁ! 伸ばして縮めて! 伸ばして縮めて! ヘイッ! フゥ! マッスルボーイ! マッスルボーイ!」と精神状態が危ぶまれるので、急ぐ必要がありはしたのでしょうが(現在置かれている状況や外の情報などに関しては、グッティが図鑑経由で定期的に内部に伝えていたのではないかと推測)。
 後、いいシーンなのであまり気にする所ではないのですが、ニュー快盗トリオが物凄く平然と特別拘禁室に入り込んでいるわけなのですが、つまり、真のスパイは誰なんだ?!
 ……まあ、転移系のコレクションを用いたという事なのかもですが、最終回にして改めて、ラスボス候補に座り直すルパン家。
 何はともあれ、1年越しの再会を果たした警察戦隊と快盗戦隊も、勢いで歓喜のハグ……
 「……あ。待てよ? お前達、まだ快盗を続けるつもりか?!」
 とは問屋が卸さないのであった。
 「お兄さん達は元に戻っただろ!」
 「だって、ルパンコレクション、まだ集めきってないもん!」
 「さっさとあいつからいただいて……」
 「お巡りさん達のも返してもらわないと」
 「な?! コレクションを持ったギャングラーは奴で最後でも、まだギャングラーは残っている。装備を渡すわけにはいかん!」
 そこにカワセミが復帰し、ルパンレンジャーのラスト名乗りで快盗・復活。
 「「「快盗戦隊! ルパンレンジャー!!!」
 警察戦隊も変身して主題歌に合わせて始まる大乱戦にスタッフロールが流れ出し、ラスト2分強ひたすらバトル、というのも歴代で大変珍しいでしょうか。
 「おのれ快盗ぉぉぉ!!」
 今作のスタイルを貫く激しい銃撃戦のさなか、パトレン1号の猛攻をしのいだルパンレッドはまんまとカワセミギャングのコレクション(OPに登場していたもの)を回収し、銃を向けて睨み合うW戦隊。
 「……フッ。予告する! あんたのお宝、いただくぜ!」
 ルパンレッドが決め台詞と共に画面に向けて銃弾を打ち込み、VとSのロゴがぶつかり合って、Fin。
 快盗戦隊を継続する為には、快盗であり続ける状況が必要だが、戦隊でそれはやらないだろう……と思っていたらそのまさか、ルパンコレクション争奪戦は続くのであった!エンドとなりましたが、ギャングラーのコレクションを回収完了した結果浮かび上がったのは、世界の平和を守る為に警察に横流ししたコレクションを回収しない限り、大切な人を取り戻す願いがかなわないという、ノエルの陥った地獄のようなジレンマ。
 そして両戦隊の融和を図っていたノエルが、両戦隊の対立を煽る構図となっているわけなのですが……ノエルは、圭一郎に一言でも、自分がコレクションを集めて蘇生させたい人が居る件について相談したのでしょーか。
 もはや両戦隊が協働してギャングラー撲滅を図ったほうが効率的な状況であり、勿論、ギャングラー撲滅を如何にして認定するか、潜在的危険因子の存在をどう考えるか、そもそもそんな奇跡を是認するか、という複数の問題はあるのですが、少なくともラストの状況に関しては、ノエルが警察戦隊と向き合わない事で余計な混乱を招いている気がしてなりません。
 ……まあ正体バラすと、ルパン家自体が非合法組織認定される可能性がなきにしもあらずというか後ろ暗い事が色々ありそうなのでそこは隠したい一線であるのかもしれず、また、アルセーヌは半ば人外なので奇跡で蘇生させるにしても慌てているわけではないのかもしれませんが。
 そしてノエル自身も自分・快盗・警察それぞれがチェンジャーを用いて「いつか世界が平和になった時」=「アルセーヌが甦る時」という、ある種の報償として納得している可能性はあり、そう考えるとそれこそが本編で描かれていない奇跡の“代償”であるといえますが、ネガティブにいえばそれは「見果てぬ夢」であり、作品構造的には「かなわぬ奇跡」であると同時に「奇跡的に実現するかもしれない夢」として、「アルセーヌの蘇生」が位置づけられていると見ると、腑に落ちるところです。
 この際コグレさんは置いておくとして、ノエルは今後、じっくりと時間を掛けて、自身の内と外の両面からそのジレンマと向き合っていく事になるのかもしれず、そうすると圭一郎に課せられるのはそんなノエルを「救う」とは何か、という問題になるわけですが……もうこれは完全に、『警察戦隊パトレンジャーvs快盗戦隊ルパンレンジャー』が半年は出来る(笑)
 戦いが抜本的な終結を見ない、というのは、VS戦隊としてのサービス構造もあった上で、お仕事戦隊としての誠実さ、とも取れるとは思うのですが、シリーズ過去における似たような性質の作品を思い出した時、今作とそれらに共通して見えるのは、単発エピソードへの親和性の高さであり、とすると今作には、
 ゴールの存在する戦隊vsゴールの存在しない戦隊
 という構造が秘められていたのかもしれず、であるならば、『快盗戦隊ルパンレンジャー』が終わって、『警察戦隊パトレンジャー』が始まった、と見る事も出来るかもしれません。
 警察戦隊は全てを救いきれず、ノエルは二つの望みの板挟みとなり、快盗はある意味でルパン家への巨大な恩義に縛られる事となり、それぞれが抱えてきた問題の70-90%を解決するが、トータル残りの20%の解決は視聴者に委ねる、という着地点は、個人的な好みからすると歯切れの悪いラストという面はあるのですが……人は生きている限りジレンマを抱え続けなければならず、100%解決しない世界で精一杯生きていく人達の物語、というのは今作がその中心に置いてきた「二律背反」というテーゼと密接に繋がっているとは思えます。
 そしてその先に、“奇跡”は有るかもしれないし、無いかもしれない、それを望み求め、実現の可能性を持つのは、生きている者なのでありましょう。
 最終的に、この物語世界の行き先をどう見るかは残りの20%を委ねられた視聴者それぞれの感性によるところが大きくなり、薄暗い方向に妄想を飛ばしがちな私としては、もう少し「ヒーロー」で突破する部分を描いてくれた方が好みではありましたが、そこをニュー快盗トリオである程度補ってくれたのは、嬉しかった部分(勝利兄さんは、最後の最後まで超二枚目)。
 キャラにしろ展開にしろ部分部分ここをもう少し……と言い出すとキリの無い面はあるものの、要所要所で抑えてほしい所は大体抑えて期待以上のものを見せてくれ、1年間、面白かったです。
 最初の情報時点ではまるで期待していなかった警察戦隊の扱いが予想を遙かに超えて良かったが故に、中盤以降、警察戦隊の扱いの悪化が逆に不満点に変わってしまう、というのがつくづく、バランスの難しい作品でありましたが……ホント『リュウソウジャー』の次(気が早い)は、『警察戦隊パトレンジャーvs快盗戦隊ルパンレンジャー』でいけるのではっ?!


異世界から現れた新たな犯罪者集団・ヤクザイヤー!

「魁利くん! なぜ君が奴らの味方をする?!」
「……こっちにも色々と事情があるんだよ、お巡りさん」

ヤクザイヤーに雇われた快盗?!
そしてノエルは、リバースコレクションの存在を知る。

「今度こそ、今度こそ僕は奇跡を起こしてみせる。待っていてアルセーヌ。
……その為には、快盗も警察も、どちらも邪魔だ!」
「誰かノエルを止めてくれー」

初美花にフられた咲也は失意の退職!
赴任した新パトレン2号はチームに馴染む事が出来るのか?!
激闘に次ぐ激闘の中、現れた第5の快盗の正体は!

「全てのコレクションは、僕が手に入れる!
――孤高に舞い踊る快盗! ルパンビリジアンY!」

マッスルボーイ! マッスルボーイ!

「成る程。それで、俺に取引を持ちかけようってわけか。――いいじゃないか」

闇の底で蠢く牙と、ぶつかりあう炎の意志――
親友の連載を守る為、借金を背負った店を守る為、レアぬいぐるみと年金を守る為――
それぞれの想いがぶつかり合い、警察と快盗は、戦い続ける運命なのか?!

新番組
『警察戦隊パトレンジャーvs快盗戦隊ルパンレンジャー』
第1話「もう一つのコレクション」!

「おのれ快盗ぉぉぉぉぉぉ!!」
(放・送・未・定)


 最後にどうしようもないネタを書き散らしてしまいましたが、以上、『快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』感想、長々とお付き合いありがとうございました。だいぶん長くなって頭も煮えてきたので、書き落としなどに気付いたらまた別項で。
 ……あ、そうだ、アクション面に関しては、ここ数年で最高傑作だったと思います! 最後の最後まで、非常に凝ったバトルを楽しませていただきました。特にデストラ戦は白眉で、あのバトルにより、戦隊恒例・浮きがちな3クール目の追加装備だったルパンマグナムが、半年分以上の存在感を持つに至ったのは、実に会心でありました。
 任務完了!