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満を持しての藤宮祭

ウルトラマンガイア』感想・第18話

◆第18話「アグル対ガイア」◆ (監督:村石宏實 脚本:小中千昭 特技監督:村石宏實)
 前回までのあらすじ:元カノのハムスターを救ったウルトラマンアグルこと藤宮博也は、筋肉と会話できる俺なら怪獣とも意思疎通が可能な筈、と地底に眠る怪獣と契約。地球に迫り来る天体生物を破壊する為に怪獣の溜め込んだエネルギーを使おうとするが、待遇に不満を訴えた怪獣がストライキを起こしてしまう。一方、天の影と地の光に挟まれたガイアは全てを守り抜く知恵も力も足りず、最善の解決策を見いだせないまま目前の戦いに手一杯になっていた。地球の破滅を回避する為には、人類は切り捨てるべき存在なのか?! ガイアを押しのけたアグルは、強引に怪獣のエネルギーを放出する事を選んで殻をこじ開け……見ろ我夢、これが、筋肉の力だぁぁぁぁぁ!!
 アグルの行動に咄嗟に上空に飛んだガイアは、都内広域にバリアーを広げる事により、天体生物の爆破で生じた放射熱から街を守り抜くが、消耗しきって墜落。
 「自分の命を犠牲にしてまで、なぜ人間を守る? 我夢」
 倒れたガイアを見下ろしてアグルは去っていき、ガイアはエネルギーを放出して再び眠りに落ちた怪獣を地底へと戻し、前後編で一挙2体出しだった怪獣が、共に冒頭で片付けられてしまう、という贅沢な展開。
 ハッタリ的にもデザイン的にもディグローブはかなり好みだったので、突撃→迎撃であっさり終わってしまったのは少し残念でしたが、巨大すぎたので他に使い道がなかったか(とはいえ今作の敵はフォームチェンジが多いので、少しばかり期待していたのですが)。
 「優しいんだ……ガイアって」
 後始末を終えた我夢は基地に帰投し、オートパイロット機能に、ロボ犬的なアバターが登場。
 「藤宮が……あんな考えになるなんて……信じたくないよ。人間が、地球にとって不要なものだなんて……絶対に違う。でも、じゃあどうして、アグルの力を、あいつは掴めたんだ」
 「私ニハ、答エラレナイ質問デス」
 「ううん、いいよ。誰にも聞けない事だもの。僕が、自分で答を探さなきゃいけないんだ」
 という台詞が、印象的。
 その夜、報道特番への出演を終えた玲子が、急に粉かけてきた倫文をかわして帰宅しようとすると……
 「ウルトラマンは、根源的破滅から地球を救済するのものだ」
 エレベーターホールで、壁に隠れながら語りかけてくる藤宮ぁぁぁぁぁぁ!!
 それは、格好いいつもりなの藤宮ぁぁぁぁぁ?!
 ……もしかすると藤宮、例の我夢への筋トレハッキング映像も「俺格好いい」アピールだったのかもしれず、凄く基本的な所で変質者属性なのか藤宮よ。物語の盛り上がりとは別のところで、今回最高に面白かったシーン(笑)
 「ならどうしてウルトラマン同士が戦ったの?」
 「自分がすべき事をわかってるかどうかの差だ」
 「すべき事?」
 「地球を救う事と人間を救う事は、同じではないんだよ」
 玲子の後を追ってきた倫文が、警備員さん変質者です! と間に入って玲子をエレベーターに押し込み、なんとなくそれっぽいポジションではあったものの、風水回で風水師に鼻の下を伸ばすなど、特にこれまでは明確な描写の記憶にない倫文が今回やたら積極的に玲子さんに秋波を飛ばすのですが、藤宮と玲子が近づいていく中でのアクセントという事になっていくのでしょうか。
 「今度TVに出る時、その事をちゃんと言うんだな」
 そして、語らいを変な奴に邪魔された、と結局顔を出す藤宮ぁぁぁぁぁ……!
 面白い、面白いよ藤宮……。
 藤宮の信念としては重要なことを言っているのですが、序盤についてしまった「女子アナが好き」「TVでアピールしたい」というイメージも手伝い、心に雑念しか響いてこなくて困ります。
 一方、我夢は一人寂しく、藤宮が怪獣に取り付けたと思われる装置を自室で分析しており……え、何この、可哀想な対比構造、と思ったら敦子から「部屋に行っていいか」と通信が入って、ホッとしました(笑)
 なんだかんだドギマギしちゃう我夢は、上着も羽織って髪も整え(部屋の中は、どうにも片付けようがなかった)、緊張した面持ちで扉を開くが、敦子の背後にチーム・ハーキュリーズ という酷すぎる罠はさすがになかったものの、敦子に続いて顔を出すジョジー
 前回、ちらりと触れてそのままだったジョジーの誕生日を祝おう、という名目で二人が乗り込んでくるのですが、なぜ、我夢の部屋で、3人で1つのホールケーキを平らげようとするのか(笑)
 藤宮×玲子のシーンとの対比としては構造的に綺麗ですし、3人の関係性の掘り下げとしても悪くはないのですが、何やら根本的な所で、オペレーターコンビと他メンバーとの間に横たわる深い溝を感じてしまいます(笑)
 (やだー、梶尾リーダーがまた、大臀筋と会話してるー)
 (どうして食堂のメニューに、ラーメンがなくてプロティンはあるの?)
 みたいな日常を送っていると、まだ我夢は、“こちら側の人間”という扱いなのではないか(笑)
 その頃、ジョジーから“ハンダ付けが甘い男”認定を受けた藤宮は、結局玲子と普通に立ち話をしておりなんだか凄く駄目な感じが漂いますが、藤宮にとって「人類の扱いが雑」なのは“手段”であり、「地球を救う」という“目的”の為の代入可能なプロセスである、という部分に藤宮自身が迷いを抱く余地がある、というのが誕生編からしっくりと来る流れ。
 「ウルトラマンには、人間の言葉が通じるって教えてくれたよね。……なんとなくわかった。ウルトラマンは人間なんだなって」
 「俺はそんな事まで言っていない」
 ほぼ自白であり、面白すぎるぞ藤宮……。
 「本当は言いたいんじゃない? 自分が青いウルトラマンなんだって」
 口ごもって背を向ける藤宮、正直、言いたそう(笑)
 「……違うか! だったらいいなーって思ってさ。だってそしたら私、独占スクープできるし」
 その気配を感じ取ってか、一歩引いた玲子は冗談めかして誤魔化すが、垂らされた釣り針に食いついてくる藤宮。
 「……あんたの言うとおりかもな」
 「え?」
 「俺は誰かに言いたかったのかもしれない」
 「……やめてよ」
 形としては、言葉のプロフェッショナル玲子さんが、劇場型犯罪者の自供を引き出したみたいな事になっていますが、この後の藤宮の行動を考えると、藤宮としては何かの踏ん切りを付ける為のきっかけが必要であり、玲子はそれを敏感に察したというようにも思えます。
 「しかし言ったところで、どうにもならない事だ」
 「やめてよ! どうして私にそんな事まで教えるのよ!」
 一方的に、自分という人間の記憶を押しつけて藤宮は去って行き、取り残された玲子はその背に叫ぶが、藤宮はもう振り向かない。
 そして一夜明け――遂に藤宮は、自分よりもTVに映る機会の多いエリアルベースに、直接テロ行為を仕掛ける。
 「こんなもので地球を守れるなど……愚か者の考えだ」
 ブリッジを占拠した藤宮は、エリアルベースのシステムに介入してリパルサーエンジンを停止させようとし、それを阻止する為、等身大変身による壁のすり抜けにより藤宮の前に立つガイア。外の通路ではXIGメンバーが状況打開の為に動き出し、ウルトラマン対決のみならず、エリアルベース墜落の危機、という緊迫感が劇的な面白さを高めます。
 「こんなのものがあるから人間はつまらない希望をいだいて、現実を見つめない」
 「希望を持つのが、いけないというのか?」
 「地球がもたん時が来ているんだよ我夢!」
 「人間の知恵はそんなもんだって乗り越えられる!」
 「ならば……今すぐ愚民ども全てに筋肉を授けてみろ!」
 「貴様ほど急ぎすぎもしなければ、人類に絶望もしちゃいない!」
 …………隕石落としからライバル対決と対話、という流れは、富野由悠季ファンとしてはどうしても『逆襲のシャア』を思い出してしまう所なのですが、実際、意識はあったのかなかったのか(笑)
 両雄の直接対話には一定の必然性があるとして、そこから逆算した前振りとなるエピソードが小天体衝突の危機、というのは一種のオマージュ?とは気になってしまう所です。
 「力には力しかないんだよ、我夢。――地球が隠していた、強大なる力。それを俺は託されたんだ。この地球からね」
 「嘘だ! 人間を犠牲にした力なんて、間違ってるぞ」
 「アグルこそこの地球を救う者なんだ。我夢、おまえもその一人だと思っていたが、あくまで敵となるのか!」
 両者の主張が平行線を辿る一方、エリアルベースが駄目になるかならないかの瀬戸際です、やってみる価値はありますよ、とブリッジのシステムを通さずにメインコンピューターに直接アクセスすべく、無駄に長くて危険な筋肉の鍛えられる梯子を下りていくオペレーターコンビ。ブリッジではガイアとアグルが肉弾戦に突入する中、階下ではシーガルが突入ルートを模索するという複数構えの作戦が展開し、オペレーターコンビはなんとかメインコンピューターに到達。
 「あっこ、頑張ってね」
 「わかった――やる」
 ここでEDの吹奏楽アレンジBGMが流れ出して雰囲気を盛り上げ、ケーブルを抜き差ししてプログラム修正を行う敦子、突入径路を発見するシーガル、とウルトラマンだけではなくXIGも戦う姿が非常にドラマチックに集約され、ガイアvsアグルだけに寄りかからず、チームの戦いを手抜かり無く見せる、『ガイア』らしさの色濃く出た素晴らしい展開でした。
 過去の人間関係を切り捨ててアグルの使徒として地球の救済を遂行しようとする藤宮と、XIGに入って地球と人類をともに救おうとする我夢の対比としても、鮮やか。
 シーガルが天井に打ち込んだ壁破壊用の貫通弾が足下から直撃したアグルは腹を押さえ、全方位に面白すぎるぞ藤宮。
 コマンダーの指揮する陸戦部隊がブリッジへ突入寸前、ガイアの開けた空間ゲートからアグルは外へと逃走し、それを追うガイアともども、コマンダーと監督に目撃される事に。
 「ウルトラマンが……なぜここに」
 そして空中でアグルを探すガイアは、一足早く巨大化していたアグルから、悪の宇宙人めいた笑い声とともに、不意打ちの巨大パンチを食らう(笑)
 「フハハハハ」
 藤宮……おい……藤宮……。もう、ツッコむエネルギーが足りなくなってきたよ藤宮。
 (このまま僕は、落ちてしまうのか? アグルの力が、本当だとしたら……)
 一時的に変身の解けた我夢は、真っ直ぐに落下しながら目を開く。
 「僕はただ、思い込んでいただけなのか? ウルトラマンは、地球と人類、みんなを救う光だって。…………違う! 絶対にアグルは間違ってるぞ! ガイアーーー!!」
 地上激突寸前、我夢は再びガイアに変身してなんとか墜落死を免れるが、そこに巨大アグルのビームが容赦なく迫り、巨大なウルトラマンを見上げ、ビームから必死に逃げる小さいウルトラマン、というのは面白い絵。
 ガイアはエネルギー不足で巨大化できず、それを見たアグルは、敢えて同じ大きさになると、どっちの筋肉が優れているか、決めようじゃないか? と人間大での殴り合いがスタート。
 一進一退の攻防が続き、ガイアのボルン-オッペンハイマー近似回し蹴りを喰らったアグルは、右手に纏うフォトンブレードを発動。青白い刃が虚空を切り裂き、追い詰められるガイアだが、間一髪うにょんバスターでブレードを弾き飛ばし、光線の打ち合いは互角。互いのカラータイマーが明滅する中、渾身の飛び蹴りがぶつかり合うも、全く互角のまま揃って変身解除する事に。
 「強くなったな……我夢。しかし……おまえは倒す! 俺の邪魔をする存在は、排除しなくっちゃな」
 捨て台詞を残して藤宮はよろけながら去って行き、なにしろ、生身同士の戦いの場合、相手は殺傷力のある銃火器を持っている可能性が高いので、逃げの一手です!
 「藤宮…………どうして、地球は……アグルの力を」
 消耗の激しい我夢は、膝を付いたまま、掴んだ力の意味に惑い、果たして、二人のウルトラマンが居る意味は……
 「何故だ……どうしてなんだぁぁ!!」
 という絶叫で、つづく。
 1-2話以来となる前後編の後編、力の入ったガイアvsアグルの直接対決エピソードに、藤宮と玲子、XIG各員の奮闘も詰め込んで、大変面白かったです。特に、サブタイトルからもガイアとアグルの激突という要素に終始するのかと思いきや、ウルトラマン以外の要素も置き去りにしない構成の目配りが利いて、組織としてのXIGの戦いや地上の一般市民たる玲子の存在も抑える充実の内容で、両ウルトラマンのスタンスの違いをくっきりと彩ったのは、実にお見事。
 シーガルの活躍も嬉しかったですし、エリアルベースの筋肉重視構造に愚痴りつつも任務を果たすオペレーターズも、良い存在感を出してくれました。
 我夢は改めて、地球の意思とは何か? ガイアの力とは何か? なぜ自分がガイアにアクセスする事が出来たのか? と向き合う事になり、アグルとの対決を通して、我夢が自身の力を見つめ直していく、という展開は好み。またそれにより、「地球か?」「人類か?」というテーゼに対して大上段から大仰な言葉を振りかざす事なく、我夢個人が「自分で答を探さなきゃいけない」という、我夢自身から出てくる言葉を探す道のりが示されている(視聴者も一緒に考えていく事ができる)、という作りは上手い。
 それがまた、光の巨人という超越存在に、ちっぽけな人間が足下から近づいていくプロセスにも見えて、この先が楽しみです。
 一方、エリアルベースにテロを仕掛け、我夢を悪役スマイルで殴りつけ、大量殺人も辞さない実力行使に出た藤宮は、思わせぶりでひねくれたライバルを通り越して完全に悪役の活動で一線を越えてきましたが、果たして次は、どんなテロ行為に出るのか、こちらも楽しみ。
 「コマンダー! 大変です! エリアルベースのトレーニングルームの映像が地上に無差別送信されて、全世界から「むさ苦しい」「むさ苦しい」「むさ苦しすぎる」という嵐のようなクレームが!」
 次回――「またまたあいつがやってくる」。もはや定番扱いになっている波動クラゲの暗躍により、ぎくっ!スケバン敦子!?