東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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西の空に飛び立ちかける

電光超人グリッドマン』感想・第36-37話

◆第36話「やったぜ! ベイビィ」◆ (監督:北村義樹 脚本:新藤義親)
 新築ショッピングビル・マックス桜が丘の管理システムのセキュリティに対抗意識を燃やした武史、さっそく 筋トレしながら ハッキング。
 だが最新のセキュリティシステムは堅牢で打ち破る事ができず……言行も人間性も最悪だがコンピューター技術は自称通りに天才的、というのが武史のアイデンティティだと思っていたのですが、こんなあっさりポイ捨てしてしまって、それでいいのか。
 カーンデジファー様のアドバイスを受けて暴君超獣デビルフェイザーを作り出した武史は、怪獣の電磁波でセキュリティを打ち破り、強引にハッキング。ビル管理システムを好きにいじり回すが、そこには直人・一平・ゆか・ゆか従姉が訪れており、ゆかと、臨月間近のゆか従姉が、エレベーターの中に閉じ込められてしまう!
 <レスキューポリス>だったら、この後、地下駐車場で爆発が起きてエレベーターが炎に包まれるところですが、これは『グリッドマン』なので火災は発生せず警備員が雁首揃えて右往左往しているだけであり、武史とカーンデジファー様は、今回これから、何をすれば世界征服に繋がったのか。結果的に人命の危機には繋がっていますし、今回の行為も暴君超獣の実験でであり、これでどんなセキュリティも破れれば……など発言があれば良いのですが、怪獣を送り込んだ後に逆恨み同盟サイドに一切カメラが向けられないので、視聴者への危機感は煽られているけど、物語としては逆恨み同盟側の中身が何もない、と粗雑な事態に。
 二人と分かれて行動していた直人&一平はゆか達の危機を知り、Gコールを受けてジャンクに戻るとアクセスフラッシュ。ここも、警備室に入り込んでエレベーター内部の映像を目にするくだりが都合が良すぎるのはまだしも、以前に恐竜の化石回で、ジャンクと現場が離れているので遠隔アクセスフラッシュというエピソードがあったにも関わらず、ショッピングビルからジャンクまでの距離が完全に無視されるというのは、あまりにも大雑把。
 その癖、ショッピングビルをうろうろとする4人の尺が割と長いのですが、従姉と遊びに行くのを妙に秘密めかした上に最終的に直人と一平を誘うのが割と意味不明なゆかに始まり(嫉妬を煽って手の上で転がそうと思ったら予想外に激しく食いついてきたので誤魔化したようにしか見えないのですが、ゆかのこれまでのキャラとはそぐわない)、ほいほいとそれについていった上で、妊婦を気にせずダッシュする男2人、初対面の相手におごってもらう前提でお代わりを繰り返す一平、CDショップで値切る予告する一平、といずれも、「馬鹿っぽくて微笑ましい」というよりは「率直に感じ悪い」事になっており、面白くもなければ好感度も上昇せず、話の軸も目標も、揃って行方不明(総合的には、ゆかヒロイン推し回なのですが)。
 「どうしたグリッドマン!? 二人、三人の命がかかってんだぞ!」
 という台詞は良かったですが、どうしたもこうしたも、グリッドマン平常運行なのが……(笑)
 一平はゴッドゼノンを送り込むが、電磁波による干渉でゴッドパンチを跳ね返され、流れ弾の直撃を受けるグリッドマン(笑)
 (負ける訳にはいかない! ここで、私が倒れてしまったら……!)
 珍しく戦闘中に独白で気合いを入れ直すグリッドマンですが、おもむろにやる事が、怪獣の背中に乗って動きを封じている内にゴッドゼノンに殴らせるなので、どうにも盛り上がりません。
 最終的には一平が分析した弱点をスパークビームで破壊し、ゴッドゼノンのアッパーで吹き飛んだところをグリッドビームで粉砕。ゆかと従姉は助け出され、赤ん坊も無事に生まれるのであった。
 次回――カーンデジファー様、憲法をつくる。

◆第37話「えっ! パパが死刑?」◆ (監督:北村義樹 脚本:右田昌万
 ナレーション「その日は、宗一郎の誕生日だった。そして、命日にもなろうとしていた」
 このフレーズの破壊力は、素晴らしい(笑)
 「制限速度」通り走っていた直人父は、高圧的な警官に「スピード違反」で手錠をかけられてしまう。更に「免許証所持」、そして、無事故無違反の優良ドライバーであった事から、更に罪が重くなる事に。
 「死刑だな。死刑は免れんぞ」
 家では家族が誕生日のお祝いを準備して帰りを待っていたが、そこにかかってくる一本の電話。
 「ママ、刑務所から電話で、パパが今日処刑されるんだって」
 囚人服を着せられた直人父は、怪しすぎる刑務官達によって電気椅子に座らされ、死刑執行は午後6時……処刑室のシーンを演劇的にやや過剰な装飾とライティングで描く事により、全体をブラックコメディ色の強い不条理劇の趣で成立させ、うん、今回は、面白いぞ!
 翔家を揺るがす処刑通告……事の起こりは、武史が立ち小便を咎められた出来事にあった。
 「法律法律って、法律がそんなに偉いのか?」
 「偉いんや。法律を守らん人間はみんな逮捕や、みんな罪人や。おまえかてそうや」
 武史に指を突きつけ、親と学校に連絡すると告げる尼崎、以前に喧嘩の仲裁に入った時、突き飛ばされるや「公務執行妨害だ!」と警棒を振り上げたりしている人なので割と洒落にならないのですが、前任の小金村と違い好感度を上げるような積み重ねがほぼ皆無な為、間違ってはいないけど度が過ぎている印象が悪目立ち。
 どういう事情があったのか、3クール目からの途中登場でスタッフも掘り下げを諦めている節はあるのですが、完全に嫌な奴、というわけでもない中途半端な扱いが、色々と残念。
 自転車を蹴り倒して逃走した武史が、帰宅してカーンデジファー様に愚痴ると、どくさいスイッチーーー! じゃなかった、魔王精神に火が点いたのか、大変エキサイトするカーンデジファー様。
 「儂が法だ、儂が掟だ。儂たちが守るべきは法律じゃない。命と愛だ!」
 じゃなかった、すみません、やり直します。
 「儂が法だ、儂が掟だ。儂以外に法律など、必要ないのだ。よし、こうなったら儂が憲法を作ってやる」
 「え?」
 「カーンデジファー憲法を作って、人間共を服従させるのだ」
 かくして司法省のコンピューターに毒蜘蛛怪獣が送り込まれ、日本中にカーンデジファー憲法が広まる事になり、今回は台詞の切れ味があちこち鋭い(笑)
 「掃除は法律で禁じられとるやろ。住みにくい地球、汚い環境、掃きだめの街を一人一人が、心がけて作るよう、法律で定められとるやろ」
 日本警察はトランシーバーの無線を通してカーンデジファー憲法に支配されてしまい、尼崎はゴミ箱を蹴り飛ばすと掃除していた馬場母に罰金を命じ、警察署の署長は万引き犯に表彰状を授与。
 「凄い……これは凄いですよ。カーンデジファー様が法律を変えた」
 「ふふふふふふ、そうか。元がぐらついておるから、楽な仕事であった」
 カーンデジファー様は褒められて満更でもなさそうな様子を見せ、逆恨み同盟が盛り上がる一方で、重苦しい雰囲気に包まれた翔家はタクシーで刑務所へと向かっていた。だが空気を読まないGコールが鳴り響き、母親の叱責を受ける直人。
 「母さん、僕は……僕はね!」
 これまでも家族を救ってきたという自負から、危うく背景をキラキラさせそうになる直人だが、すんでのところでタクシーは刑務所へ到着。しかし直人はそこで降りる事なくそのままタクシーに乗ってジャンクの元へと急ぐ。
 「一刻も早く、君のお父さんを救いたい」
 グリッドマンの熱いエールを受けるとアクセスフラッシュし、毒蜘蛛怪獣に果敢に肉弾戦を仕掛けるグリッドマンだったが、蜘蛛の糸攻撃に絡め取られて本日も大ピンチ。だが応援のドラゴンが火炎放射で糸を焼き払うと、竜帝合体からキンググリッドファイヤーで勝利を収め、父は刑務所から解放されて命日を回避するのであった。
 ……ところが、父の最期かもしれない場所に駆けつけなかった事で、誕生パーティから追い出されてしまう直人。寒空の下、座り込んでいる所に一平とゆかがやってくる。
 「父さんが無事に帰ってきたんだ。それだけで十分俺は嬉しいよ」
 「直人もグリッドマンで苦労して、随分大人になったな」
 「あれ……あの星座、グリッドマンみたい」
 天にグリッドマン座が描かれ、父子も和解。秘密のヒーローの一抹の寂しさと、その中で守られた親子の愛が描かれ、トンデモ展開が上手く演出されて面白かったです。
 次回――急展開! 同盟決裂で地球に迫る危機!!