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夜明けの光はまだ射さない

快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』感想・第44話

◆#44「見つけた真実」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:金子香緒里)
 「そう、僕は人間じゃないんだ」
 ノエルから快盗への告白などにより、今回判明した事実関係もろもろ。
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 ・ルパンコレクションはもともと、ノエル達の祖先が作った物
 ・「ノエル達の祖先」とは1000年前までギャングラーと同じ世界に住んでいたが、世界征服を目論むギャングラーに殺戮され、コレクションと共に人間社会に逃げ込んだ異世界難民
 ・異世界難民たちはコレクションと共に世界各地に散らばり、人間の中に紛れて生きていく事に
 ・コグレやノエル、ルパン家に仕える人間は全てその血筋を引いている為「厳密には人間じゃない」
 ・100年前、アルセーヌ・ルパンは世界中に散らばっていた全てのコレクションを集めて「願い」を叶えた
 ・ノエルの「取り戻したい人」とは、ルパン家の当主アルセーヌ・ルパン(本人)
 ・アルセーヌはコグレやノエルにとって命の恩人
 ・孤児だったノエルを拾い、生きる希望を与えたのがアルセーヌ
 ・ギャングラー襲撃時に、アルセーヌは死亡
 ・<化けの皮>の素材は人間
 ・国際警察フランス本部がこれまでとは別の意味でヤバい
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 これだけ引っ張った末のノエルの「人間じゃない」は、てっきり、真の姿は金庫人間で、現在の外見は偽装ぐらいの爆弾が投下されるのかと思って身構えていたら、回想シーンの少年期から外見上は地球人と変わりませんし、1000年も血が混じっていればむしろ「ほぼ人間と一緒」と言えそうで、もっと鬼畜な設定でも大丈夫だったのに(真顔)
 勿論これは、ギャングラーを怨敵と定める魁利達にとっては心理的に看過できない衝撃でありますし、ルパン家サイドが真実を濁してきた理由としては納得できるのですが、あまりにも引っ張りすぎて、“期待していた爆弾”と“快盗トリオが直面する爆弾”の威力の落差が大きくなりすぎて、快盗達の受ける衝撃に同調しにくくなってしまいました。
 警察サイドでも年間レベルの重大な仕掛けが同時進行している事もあり詰め込みきれなかったのでしょうが、快盗達の衝撃に同調する為の心理的誘導の下地が、エピソード単位で一つ欲しかったかな、と。
 肝心の「人間じゃない」も語義を弄ぶような部分が大きく、警察サイドとの連動という面でも、ノエルに向けて「それはおまえの本当の姿なのか」と問うぐらいはあっても良かったかなと。前回-今回と共通して、蓄積されてきた情報の処理に手一杯になってしまって、その蓄積を爆発に向けて飛翔させる為の、踏み切り板を上手く用意できなかった、という印象。
 エピソードの構造的にいえば、「東雲悟」がその踏み切り板とはいえるのですが、快盗サイドとの絡みは無いですし、特別編のキャラクターを年間の仕掛けの起爆剤にするのは難しかったなというのが正直。
 出自もあってか、他者との関係性において“受け入れられない事”を前提にする臆病さのあまり、裸で突撃するか煙に巻いて逃げるかの二択しか無かったノエルが快盗トリオから逃げ出した後、もう少し大人の立場であるコグレが、出しゃばりを承知でノエルに対する理解を求めてフォローを入れる、という関係性は良かったですが。
 アウトサイダーとして同族意識の強いコグレからすると、ノエルが外界との接触で“傷つく可能性”を憂慮していたようでもあり、序盤から大変胡散臭かったコグレは、だいぶマイルドに着地。「外」との関係性において、割り切る事を選んだコグレと、割り切れないノエル、という二人の対比は、出来れば終盤にもう一度絡めて、マクロなテーマに繋げてほしい要素。
 で、劇中におけるノエルとコグレの立ち位置がハッキリした事で浮かび上がってきたのは、高尾ノエル26歳が、何故いきなり年齢から入ったのかというと、ノエルこそがメインキャラで最も青臭いキャラであったのだな、と。両陣営の間で巧く立ち回っているつもりで立ち回りきれなかったり、臆病と無謀が奇妙に同居していたり、出自のあれこを踏まえた上でも堂々と掲げる理想主義の原動力はどこから来ていたのかといえば、青春していたという事に、振り返って色々と納得。
 考えてみると今作のW戦隊、片や願いの為に世界のダークサイドに足を突っ込んだ裏稼業、片や理想は高いが嫌というほど現実を見せつけられている警察稼業であり、双方の持っていない要素がノエルに与えられていたのも見えてきますが(あと、ノエルが一番波長が合うのが咲也、という事にも納得)、その辺りも含めてノエルの秘密判明はもう少し早い方が、構造的にはスッキリ見られたかも。
 総じて、長いスパンの伏線を溜め込む傾向のあった今作ですが、今回明かされた真実の中で最大のトピックは、
 ノエルの「取り戻したい大事な人」=アルセーヌであり、そのアルセーヌの「死亡」が断定された事。
 警察サイドの見つけた真実から、
 〔<化けの皮>の素材は人間〕+〔<化けの皮>はザミーゴの独占事業〕=〔凍結転送先は、<化けの皮>の素材貯蔵庫〕
 という点まではほぼ確定事項と見て良さそうですが、どれだけの人間が処理済みなのか? 処理されると本当に死亡するのか?(現状あくまでタツノオトシゴからの伝聞情報)と快盗の「願い」に関して引き続き気を持たせる一方で、仮にコレクションの奇跡が実在するとしても、今作の物語世界的にはアルセーヌの蘇生可能性は限りなく低そう=ノエルの「願い」が叶う可能性は限りなく低そうとなると、物語のバランスとして快盗の「願い」にも影響必至で、再び大きな暗雲が立ちこめて参りました。
 まあこの「低そう」はあくまで私の認識なので、あっけらかんと死者蘇生の大団円に持ち込んでくる可能性もありはしますが。
 ……いっそ、被害者全救済の奇跡を起こした上で「その手があったか!」と納得できる、脳髄が痺れるような超絶技巧による結末を、見てみたいといえば見てみたい。
 ノエルの過去を快盗トリオに伝えたコグレは3人に頭を下げると、ルパン家に仕える者達の「最後の希望」として、ルパン家の宝物庫に繋がるコレクション回収ブックを置いて去り、国際警察では咲也が、そもそもノエルが日本支部に来る前からギャングラーへ情報が漏れていた事実を指摘。
 仮にノエルがフランス本部時代から情報の横流しを行っていたのなら、鳩時計ギャングの一件と矛盾する事につかさが思い至り、一見ドジで頓馬でオチ要員の咲也が、特務部隊のメンバーらしい頭脳と思考能力を持っているのが、改めて今作の良い所。
 咲也は今回、
 「それでも僕は……ノエルさんを信じたいです」
 もキャラの蓄積が活きて真に迫っており、真っ直ぐなお人好しだが愚鈍ではないという立ち位置が非常に良い感じでしたが、映画回から爆弾回まで、金子さん的には咲也が動かしやすいのか(夏の総集編でも咲也がかなり面白かったですし)。
 「俺はノエルの想いを、今まで聞こうとしていたのか?」
 ノエルを信じるか、悟を信じるか、揺れる圭一郎は自分が先入観によりノエルと正面から向き合っていなかったのではないかと自問し、悟が座席に忘れていった音楽プレイヤーに目を止める……そして、国際警察が見つけだした真実は。
 「昔の悟なら、疑う事はなかった。だが……聞こえてこないんだ」
 ノエルへ対する偽のスパイ疑惑、圭一郎とつかさの仲裁役だった過去と人が変わったかのような強硬姿勢、そして、データの入っていない音楽プレイヤー。
 全ては、東雲悟という存在に対する疑念を指し示していた。
 「やれやれ……警察の勘は鋭いなー」
 本性を剥き出しにした悟?は、他人の体を操るコレクション能力で同士討ちをさせようとするが、間一髪、ノエルの投げつけた快盗カードが飛来してそれを阻止し、舞い落ちるカードの向こうで残心を決めるノエルが格好いい。
 続けて放たれた快盗カードが悟の<化けの皮>を引きはがし、正体を現したのは、タツノオトシゴギャングラー。
 「体を操るコレクションと、声を変えるコレクション。二つの力を使って、僕たちを騙していたんだね、ステイタス・ダブル」
 「しかし……なぜ悟の姿に?!」
 「手に入れた<化けの皮>が、たまたま東雲悟だっただけさ」
 「<化けの皮>とはなんだ! 悟はどうなってるんだ?!」
 「知らねぇよ。ま、<化けの皮>になったて事は、死んでんだろう?」
 予告から推測された通りの残酷な真実が警察戦隊に突きつけられるのですが、少々気になるのが、ギャングラーの共通認識ではありそうなものの、「<化けの皮>の素材としての死亡」が断定されてはいない事。これが真実ならば、なんとかザミーゴを絡めて本人から断定させた方が、スマートかつ衝撃度が高かったように思え、やや中途半端に感じました。
 それが、話をスムーズにまとめる為の都合だったのか、一筋の光明なのかはなんともで、単純に勘ぐりすぎかもですが(今作なんだかんだ、勘ぐる要素が多い割に結論はストレート、という展開が多い印象も有り)。
 「ギャングラぁぁ」
 「……許さん」
 怒りを言葉として絞り出す圭一郎とつかさに対して、ノエルと咲也がそれぞれ気遣うような視線を向ける姿に悟との関係性の差が盛り込まれていて、安易に同じ怒りを抱いてはいけない――抱けると思いはしない優しさ――が表現されているのが中澤監督らしい演出。
 「「「「警察戦隊・パトレンジャー!!」」」」
 圭一郎とつかさが前に踏み出し、4人並んでパトレンジャーは変身。緑と金の援護射撃を受けながら赤と桃が猛然とラッシュを仕掛け、二人の修羅の息の合ったコンビネーションが素敵。ギャングラーに受け止められた1号のパンチを、3号が後ろから飛び蹴り決めて押し込むというのは格好良かったですが、多分、殴られたギャングラーより、蹴られた1号の肘の方が痛い(笑)
 ところが再び、コレクション能力によって自由を奪われ、警察戦隊は同士討ちの危機に陥ってしまう。しかしその時、マグナムが一閃すると飛び込んできた快盗が二つのコレクションを回収。
 「みんな……なんでここに?」
 「さあな」
 「…………へへっ」
 快盗の見せ場・ノエルと快盗トリオの和解・コレクション回収、とやっておかないといけない要素があるので仕方なかったのでしょうが、同士討ち寸前→ノエルの快盗カードに助けられる、同士討ち寸前→ルパンレンジャーに助けられる、と警察の危機が快盗に助けられる同パターンが2回続いてしまったのは、今作にしてはアイデア不足で残念。
 「「「ノエル、決めるぞ」」」
 快盗はさっさと去って行き、スーパー銀とパトレン融合のW必殺でギャングラーを撃破。
 「あーらX、その内あなたを可愛がってあげるわ。楽しみに待っていてね」
 あ、なんか、ロックオンされた。
 混血異世界人とか大変興味深い研究対象になりそうで、年明け、ノエルのマッチアップ相手はゴーシュになるのか。
 巨大タツノオトシゴは、念願のサイレンパトカイザーとXガンナーのW砲撃により、火力で滅殺。
 「あーらら……折角の情報源がっ。……まいっか」
 戦いを見ていたザミーゴは嘯き、国際警察のスパイ問題は落着。国際警察秘書課所属・丸出美紗子ではありませんでしたが、<化けの皮>を被ったギャングラーが潜入していた、という、似たり寄ったりの真相となり、これまでブラックボックスだらけの特殊装備を最前線の戦力部隊に送りつけるという兵隊の使いっぷりなどから裏でルパン家とズブズブの関係なのではなど様々な暗部に疑念のあった国際警察は、街中に監視カメラとか仕掛けているのに内部の情報管理が超ザル、という別の意味でヤバい組織にジョブチェンジ
 ノエルが潜入捜査官の肩書きで好き放題やっているのも納得のザル加減。
 「悟……見ていてくれ。おまえの為にも事件の真相に辿り着いてみせる」
 圭一郎とつかさは悟の音楽プレイヤーに誓い(もし圭一郎の音楽の趣味が悟由来だったらますます辛い……)、先輩2人の横に並ぶのではなく、同期にして戦友に対する特別な思いを理解し、少し距離を取ってその背中を見つめている咲也、という気遣いのある立ち位置が凄く良くて、今までごめん咲也……君は(多分)いい奴だな……。
 ジュレでは、コグレから預かった本に快盗トリオがコレクションを収納。
 「最後の希望、なんだろ? だったら……俺たちも乗っかるしかないっしょ」
 「……メルシー」
 「礼なんかいらない」
 そして3人は、ノエルを加え、4つのチェンジャーを重ね合わせる。
 「俺たちの願いは一つだ」
 ――予告する!
 しんみりした空気の後だが、次回は、真冬に脳髄が溶けそうなギャグ回だ!
 と見せかけて意外と重いボールが投げ込まれるのも今作だとありそうですが、予告の内容からして、沈む先輩2人を元気づけようとした咲也が散々空回りしそう(相棒になりそうなノエルも、そういうの絶望的に不向き)という、約束されたおいしさ。その末に、「咲也も立派な戦友じゃないか」と認められるようなエピソードになると嬉しいですが。
 それから今回、陰に回った快盗にとって大きなポイントだったのは、ノエルの境遇に対する同情・自分たちと共通の目的、というものはあれど、3人が明確に、ルパン家(ノエル)の為にも、コレクションを回収した事。これまであくまでそれぞれの目的は別、という一線を引いてきた3人が、ノエルと4つのチェンジャーを重ね合わせたのは大きな意味を持ちそうです。
 そして自然な成り行きで3人に託された回収ブックは、何かの布石になりそう……全て回収寸前のコレクションがブックまるごとギャングラーに奪われてしまう、なんかは如何にもありそうですが、実はアルセーヌの死は偽装で、ドグラニオと入れ替わっていたとか、トンデモトリックが炸裂しないかも気になるところです(笑)
 後はアルセーヌが100年前に叶えた「願い」というのも気になるところですが、最終章に関わってくるのかこないのか。
 今回、幾つかの種明かしはされた一方で、「情報の整理」はあまり進んでいないのですが、ノエルが異世界難民である事をパトレンジャーは知らない・<化けの皮>の素材が人間である事を快盗は知らない(ノエルは知っている)・<化けの皮>の元締めがザミーゴである事を誰も知らない、という錯綜が果たして綺麗に片付くのか。最大級の爆弾である「快盗の正体」はどう組み込まれるのか。
 次回――チキン騒動の末に疲れ果てたノエルが思わずジュレトリオに「やあ、快盗くん達」と呼びかけてしまい店内激震、必死に誤魔化している所にブラッと飛んできたグッティが「え? 知らなかったの?」と軽い調子でトドメを刺してしまい聖夜に乱れ飛ぶ銃声、とかにならないといいな……。