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ウルトラマンガイア』感想・第14話

◆第14話「反宇宙からの挑戦」◆ (監督:根本実樹 脚本:武上純希 特技監督:佐川和夫)
 木星軌道に発生したワームホール内部から巨大な反物質の塊が出現し、地球に迫る……え? 反物質って何?
 というレクチャーから始まるのが、今作にしてもクドくて重く、どうにかもう少し、話の中に馴染ませられなかったのか、と思ってしまいます。説明され役になる千葉監督と、わかったような顔しているけど多分わかっていないコマンダーが、エピソード通して基地で突っ立っているだけ、というのも印象がよくありません。
 監督とコマンダーが突っ立っているだけなのはいつも通りなのですが、なればこそ、専門用語を説明される役としてだけ出すのではなく、物語としてワンポイントを与えてほしかったところ。
 巨大反物質――アンチマターが地球に衝突すれば、対消滅で生じた莫大なエネルギーは太陽系をまるごと消滅させかねない……我夢は対アンチマターの為、反物質を物質に変換するシステムの開発を請け負いジオベースと連携、アルケミースターズのネットワークに協力を求める事で、なんとかその完成にこぎ着ける。
 「彼らは天才集団ですが……地球を愛するという思いは我々と一緒です」
 「それで、奇跡が起こせたと」
 「それが、アルケミースターズです」
 まるで何者かの意志が介在しているかのように、大量発生した天才集団であるアルケミースターズに対し、コマンダーが一種のミュータント的なものへの不審を抱えているのが「天才集団ですが」という逆接の言い回しから改めて窺えるのですが、根本的に太陽系が駄目になるかどうかの瀬戸際なので、地球を愛しているから協力するというレベルの話ではなく、どうも冒頭から歯車が幾つもズレっぱなし。
 「あの……わかってるんでしょうか。今度の任務は大変危険で、もし失敗したら、爆発の波動で……」
 「わかってます。説明を始めて下さい」
 我夢が作戦に選抜されたのがライトニングでなくファルコンである事に疑義を呈するというのも、越権×脱線+今頃序盤に逆戻り、と余計な要素だったように思えますし、ファルコンを指名した堤チーフの優れた部隊運用能力が描かれて、クロウ案件で断崖絶壁から地面に叩き落とされた株価の回復を狙っているのかと思いきや、そこにも特別スポットは当たらず、あちこちつまみ食いして全て中途半端に食べ散らかした感じに。
 いよいよ迎撃作戦が始まり、迫り来るアンチマターに向けて放たれる物質変換光線だったが、その表面を覆うバリアーによって阻まれてしまう。敢えなく作戦は失敗し、地表に降り立つアンチマターだが、すぐに対消滅を起こす事なくバリアによるフィールドを地上に広げ、その内部の物質を次々と反物質化していく。まるで知性を持つかのような行動を取るアンチマターの目的、それは……
 「宇宙創成の時、反物質より物質が僅かに多かった為、今の宇宙が出来たと言われれている。そのため反物質は異次元に封印されてしまった」
 「……何が言いたいんだ?」
 「アンチマターは地球を反物質にしてシールドを消す」
 「そんな事したら、宇宙そのものが消えるぞ!」
 「もう一度サイコロを振り直せば、二分の一の確立で反物質の宇宙ができる」
 「……奴は、宇宙を創り直すつもりか。……そんな事!」
 現場に飛んだ我夢は藤宮の説明を受けてガイアに変身しようとするが、ウルトラマンがそのままバリア内部に飛び込んだら、対消滅によって大爆発が起こる、と制止される。
 「どうしたら……」
 「アグルのパワーでガイアのバリオン数を反転させれば、反物質ウルトラマンになれる!」
 いきなりだな藤宮!!
 第5話での本格登場以来、名乗られていなかった青いウルトラマンの固有名詞が劇的さゼロで自己申告されて大変ガックリしたのですが、これ、スタッフの方も丁度良く差し込む機会が無くて困ったりしていたのでしょうか……設定上は存在するけど必要も無いのに自ら名乗らない、というのはある種のリアリティではあるのですが、「ガイア」の名前はそれなりに劇的に名付けただけに、「アグル」も一工夫欲しかったところで、残念。
 我夢と藤宮は並んで変身し、アグルによって反物質化したガイアはバリア内部にワープ。サイケデリックな色彩の空間でペスターっぽいデザインのアンチマター中心部と戦い、幻惑的な動きに苦戦しつつも光線技でその一部を吹き飛ばす。ところがこの欠片がバリアの外へ飛び出してしまい、そのままでは物質と対消滅して爆発してしまう、という所でチームファルコンが飛来。物質化ビームを華麗に浴びせ、危惧されたあわや見せ場無しは回避するが、物質化した時点で満足してしまい、空中に舞ったそれなりの大きさの破片を無視して飛んでいってしまうので、大変間抜けな事に(追加装備の関係でミサイル積めなかったのかもですが……)。
 空中で待機していたアグルがこの破片をビームで消し去るのは、アグルの見せ場確保の狙いがあったのでしょうが、地球そのものの消滅を望まないアグル/藤宮が対アンチマターに協力するまでは良いとして、破片で市街地が壊れるぐらい気に留めそうにないのに、サービスでゴミ掃除をしてくれたのはだいぶ違和感。……それとも、逃げ遅れた野良猫の姿でも目に止まったのか藤宮ぁ!!
 弱ったアンチマターはサナギのような状態になり、中空のアグルはバリアに開いた穴まで塞いでくれる万全のアフターフォロー。二人のウルトラマンはバリアごとアンチマターを抱えて宇宙へと飛び出し、そのままワームホールへと送り返すと、宇宙の穴もばっちり塞ぐのであった。そして……
 「さあ、ビームを!」
 事前に「俺が気まぐれ起こしたらどうするよ……?」と脅されていたガイアが、物質に戻してくれないアグルの態度にちょっと焦るのですが、軽い嫌がらせレベルで気を持たせてからあっさりと元に戻し、我夢と藤宮が素直に共闘しているイメージを残したくなかったのかもですが、物質に戻してくれとアピールするガイアの姿が大変間抜けになった方が、ダメージ大きかったかな、と。
 変身前に脅かされた我夢が、「それでもやる」と決断を見せるようなシーンも何故かスキップされてしまい(この時の心理をチームファルコンが伝えてきた覚悟に繋げる、とかやりようはあったと思うのですが)、一連のやり取りを通じて特に二人の心情が掘り下げられる事もなく、今回はどうにも歯車が噛み合いません。
 「またここへ戻ってきてしまったな」
 「地球を守るために、これからも命を張り続けろって事ですよ」
 「僕たちはいつまでも米田さんについていきます」
 出撃前から「こんな花道を用意してくれてありがとう」みたいな事を言って死ぬ気満々だった米田さん、これまではファイター組の中で年長者&人格者ポジションだったのですが、一つ一つの任務に常に命がけで臨んでいるアピールを通り越して、「生死の狭間で戦うファイターパイロットな格好いい俺」に泥酔している人になってしまい、今エリアルベースに必要なのは、食堂にラーメンを導入するなど、隊員の精神を健全に保つ為の施策ではないのか。
 茶道だ! コマンダーの茶道講座だ!!
 XIG隊員のメンタルケア問題は喫緊の検討課題として、我夢と藤宮も地上へと帰還し、我夢は藤宮に手を差し伸べる。
 「君となら、きっと二人で、人類を守る事ができる」
 「――勘違いするな」
 じ、人類の為に腹筋してるんじゃないんだからね!
 「僕は信じてる。同じ地球の子なんだから」
 握手を拒否し、歩み去る藤宮の背中を見つめながら、我夢は呟くのであった……で、つづく。