『快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』感想・第43話
◆#43「帰ってきた男」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:金子香緒里)
OPから、デストラさんが、消えたーーーーーー。
戦隊では珍しくないマイナーチェンジですが、ただいつものシーンに不在なだけでなく、灰になって消えていくエフェクトがかかっているというのが、欠落感を引き立てて好アレンジ。
死闘を乗り越え平常運転に戻った快盗戦隊はトカゲギャングラーからコレクションを回収しようとするが、金庫の中身は既に空。何者かにコレクションを奪われたと語るトカゲから情報を聞き出そうとし……情報の分断や錯綜を重視してきた今作において、「言われた事を素直に答える」ギャングラーで楽してしまったのが、今回の大失点。
尋問中に警察戦隊が乱入し、先週、
「快盗も!」
「「「警察も!」」」
「ギャングラーには屈しない!」
「「「「「「「終わりだデストラ!!」」」」」」」
とかありましたが、冒頭から警察が快盗を背後から撃つのは、凄く今作。
トカゲは逃げ、快盗も逃げ、残った警察の前に現れたのは、一人の青年。
「「悟!」」
「圭一郎、つかさ、久しぶりだな」
「…………ええっ?!」
優男風の青年は、圭一郎とつかさの同期で元戦力部隊・東雲悟。フランス本部に異動となった悟が一時帰国した特別任務とは、陽川咲也のリストラによる人員整理、ではなくて、
「日本支部からギャングラーに情報が漏れている」
以前から疑いのあった、内通者疑惑の内偵であった。
「我々の近くにスパイが居るって事か」
「ああ。その為に俺が派遣されたんだ」
その悟が疑っているのは、本部でも快盗との癒着が噂になっているらしい高尾ノエル26歳。
「ギャングラーと取引しているという噂もある」
「取引? ……そんな事するような奴じゃないさ」
その点においてはノエルを信用している圭一郎だが、快盗とは取引していると言われて沈黙し、普段の行いが人の信用を作ります。
「悪いが……俺は高尾ノエルを信用していない。とにかく、気を許すな」
これまでの蓄積や今回諸々の描写から、ノエルのスパイ疑惑は高確率でミスリードですが、一方でノエル登場前から黒パカ金庫の件など情報が漏洩している事もほぼ事実なので、果たして真のスパイは、ジムなのか?! ヒルトップなのか?! やっぱり咲也なのか?!
「国際警察戦力部隊所属パトレン2号、陽川・咲也……いや、氷川・朔夜! 貴様がギャングラー、ザミーゴ・デルマの弟だという事は既に調べがついている!」
「……そうか! それであの時、ザミーゴは異世界で俺たちを助けたのか!? どうなんだ咲也?!」
「……あーあ、結構巧く行ってたと思ったんですけど……全部が全部嘘ってわけじゃないですよ。たまに感動してうるっとしたし? 騙して悪いなーとも思いました」
「咲也ぁぁぁ!」
という可能性を、ギリギリまで諦めないスタイル。
……まあ、実際のところは悟(になりかわったギャングラー?)こそが本当のスパイで、ノエルが国際警察のPCを不正に弄っていたのは、フランス本部に潜むスパイを調査する為だった、という辺りに落ち着きそうな気配ですが。
何者かの罠にはめられたノエルは、「新しいコレクションをプレゼント」した事になっているトカゲに友好的に話しかけられて困惑している所を、アジトに踏み込んできた圭一郎達に目撃されてしまう。
「ノエル……ここで何をしていた」
いくら人間に友達が出来ないからって……!
「そうか……確かに今、何を言っても無駄のようだね」
一手先を行く悟に巧妙に弁明を封じられたノエルは、パルクール解禁で逃亡。その背に銃を向けるも引き金を引けない圭一郎だが、悟が横からそれを奪って追跡し、咲也とつかさは逃げたトカゲを追う事に。
トカゲの前には一足先にルパンレンジャーが立ちはだかると、ビクトリーの予知能力によりコレクションを回収。取り囲んでノエルについて問い質していたところに、ゴーシュが姿を見せる。
「Xは人間とは別の血が流れているのよ」
それこそが前回ゴーシュが双眼鏡でのぞき見たノエルの秘密であり、コグレとノエルがゴーシュを強く警戒していたのは、双眼鏡そのものに危険な効果があるというよりも、それが自分たちにとって致命傷になる可能性を持っていたから、という事になりそうでしょうか(確かにそれなら、恐れている理由=秘密の存在、になってしまう為、快盗トリオに説明しないのも納得)。
「貴方たちを利用しても、おかしくないと思うけど?」
「……は? なにいってんのか全っ然わかんないんだけど」
「あら~。知らなかったの? Xは人間じゃないわ」
第28話の感想に半ば以上冗談で書いた「ノエル=ギャングラー疑惑」が巡り巡ってまさかの的中の気配になってきましたが、「ギャングラー」は厳密には組織名なので、コグレの態度も含めて考えると、ルパン家そのものが、ギャングラーに属さない異世界人……?
「人間じゃ……ない?」
「なんだよ、それ」
「嘘……」
「可哀想に……騙されてたのね」
「騙されてた……?」
楽しげにゴーシュが不審を煽っている内に、こっそり逃げ出そうとしたトカゲは現着した2号と3号に轢き殺され、ゴーシュはそれを巨大化して帰宅。
「Xのお陰で面白くなってきたわ。うふふ」
狼狽するルパンレンジャーだがとりあえずルパンカイザーを完成させると、逃げるトカゲの前に回り込んでシールドで空中に打ち上げたところにジャイロの竜巻を浴びせ、空中換装から全質量を乗せたキック、そして顔面に丸鋸からのガトリング! と改めてエグい初期武装による連続攻撃に、
「おまえ達、何か、荒れてない?」
ニンジンに突っ込まれた!
八つ当たり気味にマグナムでトドメを刺したルパンレンジャーだが、突然の爆弾投下に「アデュー」をする余裕もなく、大混乱。
「ノエルさんが……人間じゃないなんて」
その辺り、そこのニンジンが知っているのでは、と思ったら……
「え? 知らなかったの?」
あっさりと来た(笑)
「「「は?!」」」
当のノエルは、やはりハッピートリガー属性持ちだった悟から逃げ回っていたが、その前に滑り込むパトカー……から降り立つ圭一郎。
悟が戦力部隊に居た時代の回想シーンで、ギャングラー構成員に追い詰められた圭一郎を、悟の運転するパトカーが格好良く回収するシーンがあったので、てっきりそれと重ねて、圭一郎がとりあえず腹を割って事情を聞きたいとノエルを乗せて逃走するのかと思ったら、特にそういう事にならなかったのは肩すかし。
「圭一郎くん……」
「ノエル……本当におまえは俺たちを裏切ったのか」
ノエル視点はともかく、警察視点だとずっと裏切ってましたけどね!
弁明する間もなく悟が追いついてノエルは逃走を再開し、取り残されて立ち尽くす圭一郎を、激しい雨が打つのであった……でつづく。
ノエルに関わる衝撃の事実が明かされ、物語の背後に横たわるルパン家という存在そのものに光が当たりそう、という激震の展開だった筈なのですが、トカゲの大失点により最初の一歩のハードルを普通に歩いているだけで越えられる低さに設定しまった為にエピソード全体のテンションが落ちてしまい、本来はもっと張り詰めて劇的になるだろう筈のシーンがそうはならず、蓋を開けたら繋ぎ回だったという事で納得するしかない出来になってしまいました。
残り話数が限られてきた中でややこしい展開を捌く難しさはあったのでしょうが、プロデューサーと監督はじめ、ここは高いハードル設定を維持してほしかったところです。
次回は、今回の物足りなさを吹き飛ばす劇的な爆発と、お土産に持ってきたチョコを美味しそうに食べる悟に対する「悟は……甘いもの苦手だったよな?」というつかさの発言から推測できる悟の正体に、トカゲ人間体への透真の「どこかで見たことがあるような気がする」発言が重なって、<化けの皮>の秘密に繋がる展開でザミーゴが絡んでくれる事に、期待。